東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#57 君は特別だ

時間は少し遡り、雄二と四方が車に乗り、絋輝を拾う地点まで向かっていた。

 

「……」

 

「……」 

 

運転している雄二と四方は始終会話がなかった。

接点が余りないのもあるが四方は極度の無口なため会話が続かない。

そのため雄二も話しかけるのを諦めたが気まずい空気に耐え切れず、もう一度挑戦する。

 

「なぁ、アンタってさ。やたらと篠原にあたり強いよな。何でだ?」

 

「………」

 

雄二が質問するが四方は黙ったままだ。

 

「訓練の時なんか骨を折る勢いでやっているだろ。なのに霧島に対しては妙に優しい。まさかアンタ……」

 

雄二が言葉を続けようとすると四方は目だけを向ける。

その目は自身の核心に近づく雄二を警戒するものだ。

 

「霧島が好きなのか?」

 

「………はあ?」

 

雄二の言葉に四方は珍しく変な声を出した。

 

「確かにアイツは美人だが性格はガキだろ。あっ、もしかしてロリコンか?」

 

「………」

 

四方は窓の方を向いて話すことはないと態度を出した。

 

「え?その反応はマジなのか?マジでロリ……」

 

雄二が言葉を続けようとした時、車の右側から車が突っ込んで来て衝突した。

雄二たちが乗っていた車は派手にクラッシュし回転して止まる。

運転席側に車が衝突したため雄二は血まみれになってピクリとも動かない。

対して四方は頭から血を流しているが意識はハッキリしており、状況を確認する。

 

「……くっ。おい、無事か?おい!」

 

四方が雄二に声をかけるが返事はなく、脈を確認すると僅かにあるくらいだ。

ひとまず動かそうとすると衝突してきた車から1人の男が降りてくる。

 

「ふぅ!結構派手にいったね」

 

降りてきたのは無傷の齊藤であり、それを確認した四方は即座にマスクを付けて車から出てくる。

 

「やっぱり喰種か。僕の見立ては間違っていなかった訳だ。君たち篠原絋輝の関係者だろ?まぁ、もしくは亜人を狙う喰種一派の可能性があるけど」

 

四方は指を鳴らして戦闘体勢に入り、それを見て齊藤も助手席に置いてあったアタッシュケースを手に取る。

 

「話は手足を捥いでからにしようか」

 

齊藤は事前にCCGから渡されていた新米捜査官が持つクインケ『ツナギ』を展開し、四方に向ける。

四方は風のように駆け出し、齊藤に一気に近づく。

 

(コイツを速攻で殺して篠原絋輝のもとへ向かう!)

 

目的のために速攻で仕掛ける四方だが齊藤の顔を目掛けて振るった腕は当たる寸前で空振ってしまう。

そして次の瞬間、目に入ってきたのは下から迫るクインケだった。

 

「っ!?」

 

四方はギリギリのところでクインケをかわすが肩に浅くない傷を負ってしまう。

 

「早いね」

 

(動きが……見えない!?)

 

痛む肩を手で抑えながらマスクの下で冷や汗を流す。

特に構えもせず、クインケを片手に悠然と立つ姿は四方の怨敵とも言える『CCGの死神』を彷彿させるものだった。

 

「来ないならこっちから行くよ」

 

人間離れした脚力で距離を一気に詰める齊藤に四方はタイミングを合わせてカウンターの蹴りを胴体に向かって放つ。

しかし、その動きすら分かっていたかのように逆に蹴りを軸にしてかわすと今度は首を目掛けてクインケを振るう。

四方もその攻撃をかわすが蹴りの足を掴まれて、その場に転がってそこにクインケを振り下ろされる。

咄嗟にその場から跳躍してかわすが地面に着地する前に齊藤が目の前に来ていた。

 

「っ!」

 

「はい、終わり」

 

空中で身動きが取れず、振り下ろされるクインケを防ぐことも出来ずに殺されようとした瞬間、その間に『ヴェノム』が割って入り四方を助ける。

 

「させねーよ」

 

マスクを被った雄二が『ヴェノム』を召喚して加勢する。

クインケを防いだヴェノムは齊藤巨大な拳を振るうがヴェノムの体を蹴って軽やかに距離をとる。

 

「大丈夫か?」

 

「………」

 

「こんな時も話さないのか」

 

「……あの男」

 

雄二が四方に話しかけるが相変わらずのだんまりだと思ったが、言葉を出した。

 

「動きが人間のそれじゃない」

 

「だよな。人間離れしてやがる。2人同時に行くぞ」

 

四方は肩から紫電の様な羽赫を出し、雄二は自分の元にヴェノムを戻して車に乗せてあったショットガンを構える。

四方が走り出したのと同時に雄二はショットガンを乱発し四方を援護するが、齊藤は弾丸を最小限の動きでかわし、近づいてきた四方の赫子での攻撃をクインケで受け止める。

更に追撃でヴェノムが獣じみた動きで丸太のような腕を振るうがそれも体を逸らすことでかわされる。

ヴェノムの操作と戦闘に慣れている雄二とあんていくの中でも上位の実力者である四方の攻撃に斉藤は余裕で対処する。

 

「うん……もう()()()()

 

齊藤はそう呟くと先までの動きより一段階素早い動きでしゃがみながら四方の足と胴体を切る。

 

「ぐっ!?」

 

突然の反撃にバランスが崩れる四方に追撃で蹴り飛ばすとヴェノムが庇うように間に入って齊藤を攻撃して、その間に雄二が四方に駆けつける。

 

「おい!無事か!?」

 

「あ、ああ……問題ない」

 

四方の怪我の具合を確かめている間にヴェノムは齊藤に両腕と首を断ち切られて消えてしまった。

 

「化け物め……!」

 

「君たちが言うかい?」

 

齊藤がそう聞き返すと四方は痛む体を鞭を打って、相手を丸ごと吹き飛ばそうと羽赫から特大の攻撃を放つ。

齊藤はそれを跳躍してかわすと四方目掛けてクインケを突き刺そうとするが雄二が間に入って、代わりに胸を刺される。

 

「がはっ!?」

 

雄二は刺されたまま後退すると齊藤はクインケを更に押し込む。

 

「ぐあぁぁ……!」

 

「君は実験動物行きだ」

 

齊藤は冷笑を浮かべると雄二はマスクの下で挑発的な笑みを浮かべた。

 

「そうか……!なら、しっかり捕まえとけよ!」

 

雄二が後ろには自分たちが乗ってきた車があり、その後部座席に手を伸ばしてある物を引き抜く。

それは手榴弾のピンで咄嗟にクインケを離そうとした齊藤の腕を雄二は掴んで離さない。

 

「逃すかよ!!」

 

「チッ」

 

齊藤は雄二が離さないた分かると即座に雄二の腕を掴み返すと腕を捻って関節を蹴り骨を砕いた。

 

「うがぁっ!?」

 

力が抜け、すぐさま離れると雄二を巻き込んで爆発が起きた。

爆風が収まると雄二と四方の姿はなく、齊藤は逃したか、と少し残念に思っていると背後から気配を感じ振り返ると待ち望んだ人物が現れた。

 

「やっと来たね。初めまして『ゴースト』くん」

 

 

ーーーーー

爆発した車から炎が立ち上り、2人を照らし出す。

齊藤は微笑んでいるが絋輝は額に冷や汗が流れ、その様子に気づいた齊藤が燃え上がる車と絋輝を交互に見る。

 

「君のお仲間だったんだろうね。ゴリラみたいなIBMを出していたよ」

 

まるで世間話をするかのように話す齊藤に絋輝は頭が状況を飲み込まず、動くことが出来なかった。

そのことに気づいた齊藤は絋輝に自ら近づく。

絋輝は身構えるが齊藤からは戦意が感じられなかった。

 

「少し話そうか『ゴースト』くん……いや、()() ()()()くんって呼んだ方がいいかい?」

 

自分の名前を呼ばれ、マスクの下で驚愕し、動揺する。

 

「そんなに驚かなくても……って無理か」

 

緊張した状況だというのに世間話をするかのような空気を出す齊藤に絋輝は何も喋ることが出来ない。

 

「いつ気づいたと思う?……正解は最初からでした!君も薄々気づいていると思うけどキメラ喰種の実験って僕主導で動いているから戦った君のことは勿論知っているさ」

 

齊藤は話し終えると少しため息を吐いた。

 

「何か話してくれないかな?ずっと1人で話しているヤバイ奴みたいじゃないか」

 

「………何で」

 

「うん?」

 

「何でなにもしてこなかった?俺の正体に気づいていたなら調査するなりできただろうが」

 

その言葉に齊藤は得意げな笑みを浮かべて、絋輝の周りを歩き出す。

 

「それじゃあ、つまらないだろ?」

 

「……つまらない?」

 

「僕はね……この世界に興味がないんだよ。いや、なくなったって言った方が正しいかな。自慢じゃないけど僕って大概のことは何でも出来てさ。周りの人間なんて僕にとってはどいつも有象無象なんだよ」

 

齊藤は手でクインケを弄びながら語り続ける。

 

「そんな時に君たち亜人ことを知った。久しぶりに興味がそそられたよ。その中でも君は特別(ユニーク)だ」

 

齊藤はクインケの切先を絋輝に向ける。

 

「異常な数のIBMの出現可能数、そして今までの個体にはなかった謎の進化……君はとても面白いよ」

 

「だからって何で……」

 

「だからさ。だから君は簡単には狩らない」

 

齊藤は獲物を見る目で絋輝を見つめる。

 

「さぁ、僕を楽しませてくれ」

 

「くっ!?」

 

齊藤は一瞬で絋輝との距離を詰めて、クインケを振り下ろす。

寸前で体をそらして避けるが更に近づいてきて絋輝の腹にアッパーをぶつける。

絋輝の体が僅かに持ち上がり、骨の折れる音が自身の体で響く。

 

「ぐふっ……!」

 

「さぁさぁ!抗ってくれよ!」

 

齊藤は絋輝の左腕を切り落とし、そのまま体を下から深く切り上げる。

その傷で絶命した絋輝が地面に倒れ、雨で血が地面に流れていく。

絋輝の体から黒い粒子が溢れ出ると切り落とされた手足は粒子で新たに作り出されて傷も治る。

 

「第2ラウンドだ」

 

「ぐっ!」

 

絋輝は倒れたまま素早く懐に手を入れて捜査官からどさくさに紛れて奪った拳銃を取り出して齊藤に向かって撃つ。

放たれた弾丸は真っ直ぐに斎藤に向かうがその弾丸が見えているかのようにクインケで真っ二つに切る。

 

「っ!?……アァッ!!」

 

その光景に驚く絋輝だがすぐさま立ち上がり、齊藤に体当たりをするがまるで岩にぶつかったかのような感触に戦慄する。

 

「ガッカリだなぁ。IBMを出せないとこんなに弱いのかい?まださっきのゴリラの方が良かったな」

 

絋輝の体に膝蹴りをくらわすと身体を引っ張り上げて再びクインケで切ろうと振り下ろす。

しかし絋輝はそのクインケを直接握り締める。

 

「?」

 

握り締めたところからは血が流れるが同時に黒い粒子が漏れ出る。

万力に締め上げられたようにビクともしないクインケに不思議に思った瞬間、車にぶつけられたような衝撃が齊藤を襲う。

吹き飛ばされた齊藤は壁にぶつかり、痛む体に苦しむ所か笑みを浮かべる。

 

「ハハッ!そうこなくちゃ!」

 

絋輝は近くにあったドラマ缶の縁を掴むと掴んだ部分がその怪力で歪む。

片腕でドラマ缶を齊藤に向かって投げると齊藤はドラマ缶を切り捨てて、走り迫る絋輝に笑みを浮かべて向かっていく。

2人の戦いが激化するように風と雨が激しくなっていく。

 

 

ーーーーー

鉄と鉄がぶつかる音が港の一部で響く。

黒い粒子を纏った絋輝の腕が齊藤のクインケと鍔迫り合っていたのだ。

 

「体から溢れている粒子が鎧代わりになっているのかい!?それに身体能力も異常に向上している!今までの個体にはない特性だ!」

 

興奮している齊藤に対して絋輝は苦い表情をしていた。

新たな武器となった向上した身体能力と鎧となる粒子のおかげで戦えるようにはなったがいまだに絋輝が不利だった。

力は絋輝が明らかに上だが速さと技術は齊藤が何枚も上手だった。

いや上手どころか別次元の領域だ。

一撃でも決定打が入れば勝負が付くはずなのに攻撃は掻い潜られ、自分の体に傷がついていく。

頭に目掛けてクインケが振り下ろされそうになり、咄嗟に頭を守ろうと腕で庇うとガラ空きになった胴体にクインケが突き刺さる。

齊藤は絋輝の体を近づけて耳元で呟く。

 

「ぅぎぃっ……!」

 

「もっと魅せておくれよ……!」

 

その言葉に絋輝は歯を食いしばって耐えて答える。

 

「漸く、捕まえた……!この距離なら……逃げられない!」

 

その言葉と共に腕を掴んで、齊藤の体を殴り飛ばした。

殴った瞬間に伝わった骨が折れる感触と齊藤が地面に倒れて動かなくなったのを見て、絋輝は力が抜けてその場に座り込んでしまう。

 

「ハァッ…!ハァッ…!……はぁぁ」

 

長く息を吐き、呼吸を落ち着けて腹に刺さったままのクインケを抜こうと触れた瞬間、倒れたはずの齊藤の体が僅かに動いてそのまま立ち上がった。

 

「クソッ……!」

 

「ハハッ、今のは効いたねぇ」

 

僅かに痛む腹部を手で抑えながら立ち上がり、体の具合を確かめるように動かしながら絋輝に近づいていく。

絋輝も逃げようとするが腹に刺さったクインケのせいで立ち上がれず、足を引き摺りながら後ろに下がるしかできない。

間近に近づいた齊藤はさっきの余裕の顔とはうって変わって、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。

クインケの柄を掴むと常人とは思えない膂力で持ち上げて絋輝だけを投げ飛ばした。

地面に転がった絋輝は血を流しながらも逃げようと立ち上がるが一瞬で齊藤は絋輝の前に移動して四肢を切断した。

 

「………ッァ!!?」

 

一瞬の出来事で頭が追いつかない絋輝だが地面に倒れて広がる血の匂いと切断された痛みで思考が追い付いてきた。

 

「アアアアァァァァッ!!?」

 

「あー……しまった。またやってしまった。僕の悪い癖だね。楽しくなるとつい力が入って壊してしまう」

 

クインケに付いた血を振り払いながら悲鳴を上げて倒れ伏す絋輝に近づいていく。

 

「まぁ、殺せばすぐに復活するから楽しみはまだあるし、一度君を捕獲しようか」

 

クインケを逆手に持ち、絋輝の頭に添える。

 

「一旦死ね」

 

目の前に突き付けられたクインケを凝視する絋輝だがその目は少し遠くを見ていた。

それに気づいた齊藤は見上げると()()の化け物が舞い降りた。

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