東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#7 例えお前が誰だろうと家族だ

家までの道をフラフラと歩く絋輝の頭の中には色々なことが渦巻いていた。

自分が亜人だということ。

殺されたこと。

董香と芳村が喰種だということ。

そして、何よりその事実をどうすれば良いのかと頭を悩ませる。

いつのまにか家の前に着いた絋輝は玄関を開けようとするが、手が止まる。

もし、家の中に父である篠原がいたらどうする?

董香たちが喰種であることを告げるべきなのか?

自分が亜人であることを告げるべきなのか?

そんなことを考えても答えが出ず、突っ立っても仕方ないので家に入る。

 

「ただいま……」

 

「絋輝?アナタ今日学校があるのに泊まって休むなんて……どうしたの!?顔が真っ青よ!?」

 

母親は絋輝の顔色が悪くなっているのに気づき、慌てる。

絋輝も玄関に備え付けてある姿見で、初めて今の自分の顔を見る。

そこには確かに顔色が悪い自分が写っていた。

 

「あっ……いや、何でもない。ちょっと具合が悪くて、学校に行かずに帰ってきたんだ……」

 

「そ、そう?」

 

「悪いんだけどもう部屋に行くよ」

 

絋輝は母親とは何も話さず、足早に自室に向かい、母親はそれを心配そうに見送るしかなかった。

部屋に入ると絋輝はベットに入ろうとせずに立ち尽くす。

そうしていたと思いきや、突然本棚の本を投げ始めたり、机の上の物を払いのけ始めた。

この迷いをどうにかしたくて仕方なかった絋輝は手当たり次第に物に当たるしかなかった。

涙を流す絋輝はいくら暴れても心の迷いを捨てることができなかった。

 

ーーーーー

あんていくではいつもの始業になっても店の看板を下げ、開店しておらず重苦しい空気を漂わせていた。

店内には芳村とここの従業員である入見と古間が話し合っていた。

 

「董香ちゃんはどうしました?」

 

入見が心配そうに董香の状態を尋ねる。

 

「看病と泣いて疲れてしまったのか寝ているよ」

 

董香は休憩室のソファで寝ているらしい。

 

「それでこれからどうするんです?」

 

古間が次に尋ねると芳村は厳しそうな顔をして告げた。

 

「いつでも逃げられる準備をしておいて欲しい。カヤくんには董香ちゃんが起きた後、逃げる準備を一緒にしておいてくれ」

 

「わかりました」

 

「店長、この魔猿には?」

 

「ここで店番をしておいて欲しい。もし彼奴等が来たならば手順通りにしてくれ」

 

「了解です……!」

 

その後、詳しい作戦を伝えていると入見がどうしても聞きたかったことがあった。

 

「芳村さん」

 

「何だい?」

 

「何故、篠原君に正体を明かしたんですか?」

 

「…………」

 

確かに自分たちを危険に晒すのは確実なのに晒すのは余りにも馬鹿げている。

それを一番よくわかっているのは他でもない芳村だ。

入見はどうしてもそこだけが理解できなかった。

 

「四方くんにも言ったが、私は信じたいんだ、『愛』をね」

 

「………」

 

入見と古間は黙って聞く。

 

「董香ちゃんと絋輝君の愛は本物だと思う。それに賭けたかった」

 

そして芳村は2人に頭を下げた。

 

「すまなかった。皆を危険に晒してしまって」

 

しかし、それでもここを危険に晒しているのは自分でもわかっている。

今の自分にはこうやって頭を下げることしかできなかった

頭を下げる芳村を見て、入見と古間は仕方がないなと言った表情をする。

 

「頭を上げてください、店長」

 

「そうですよ。俺たちは店長に付いて行きますよ」

 

入見と古間は昔芳村に救われた。

その恩返しとは言わないが、この人の為なら命を賭けれる覚悟がある。

2人のその言葉に芳村は嬉しそうにする。

 

「ありがとう2人とも」

 

2人の気遣いに顔を綻ばせながら、休憩室で寝ている董香を心配した。

2人の関係がどうなるのかはわからないが、見守るしかなかった。

しかし、望むならば明るい未来があることを望んだ。

 

 

ーーーーー

夜になり、明かりも付けず、絋輝は荒れた部屋をそのままにしベットの上で横になっていた。

いくら考えてもどうすればいいかわからない。

行き詰まっており絋輝は顔を腕で覆って、もう何も考えたくないと思っていた。

するとドアをノックする音が聞こえた。

 

「絋輝、私だ。少しいいかい?」

 

父の声がして、絋輝は飛び起きる。

どうするか迷ったが体は自然と扉の前に立っていた。

ドアノブに手を伸ばすが、咄嗟に引っ込めてしまう。

父と会った所でどうにかなるのか、喰種捜査官である父に董香のことを相談するべきなのか?

そんなことを考えながらもその手は徐々に下に降ろしていく。

扉を隔てて2人は向き合うが、その隔たりが大きかった。

亜人になってしまった自分は家族として接していいのかわからなかった。

 

「絋輝、お前が何を悩んでいるのかわからないが話して欲しいと思っている。何があろうとお前は私の息子なんだからな」

 

篠原はそれだけを告げて扉に背を向けてリビングに向かおうとすると、扉が僅かに開く音が聞こえた。

振り向くと僅かに開かれた扉から気まずそうに顔を覗かせる絋輝の姿があった。

それを見た篠原は嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

「少し出かけるか?」

 

 

ーーーーー

絋輝と篠原は自宅近くの商店街を並んで歩いていた。

 

「いやー、久しぶりにあそこのラーメン屋行ったが味は変わらずに格別だったな!」

 

「………」

 

篠原は少し膨れた腹を摩りながら満足そうに言うが、絋輝は未だに気まずそうにしていた。

息子が悩みを自分から話してくれるまで待つつもりだったが、これは自分から聞いた方がいいのかもしれないと思っていると、公園が目に入った。

 

「ちょっとあそこの公園で休もうか」

 

篠原に誘われ、公園のベンチに着くと篠原は自販機から缶コーヒーを買い、絋輝に渡す。

 

「ほら」

 

「……ありがとう」

 

まだ春先な為か暖かい缶コーヒーが手先から絋輝を温める。

篠原は一口缶コーヒーを飲んで一息つくと、本題に入る。

 

「何かあったのか?」

 

「………」

 

篠原の質問に絋輝は言葉を詰まらせる。

相談しようにもできない。

自分が亜人であると言えば恐怖の目で見られ、裏切られるかもしれない。

董香のことを話してもいいのかわからない。

いっそのことを全てを打ち明けるべきだが何故かそれをしようとは思わない。

絋輝は缶コーヒーを握りしめ、悩む。

それに気づいた篠原は絋輝の肩に頭に手を置き、ゆっくりと撫でる。

 

「絋輝、お前が何を悩んでいるかわからないが一つでもいい。家族である私たちにその悩みを分けてくれないか?血は繋がっていなくてもお前を育てて来たのは私たち親だ。そしてそれはこれからも変わらない。例え、お前に何があろうとな」

 

絋輝は篠原の家族の誰とも血が繋がっていない。

昔ある事件で絋輝はCCGに保護され、その担当だった篠原が絋輝を引き取ったのだ。

しかし、篠原は後に生まれた子供たちと何ら変わらず愛情を絋輝に注いで、今まで育ててきたのだ。

父の手の温もり自分を思ってくれるその言葉を感じて、目から涙が溢れる。

何があろうとお前の親だと言ってくれたことに絋輝の悩みが一つ消えた。

 

「ふぐっ……えぐっ…うぅっ……!」

 

「ハハッ、大きくなってもやっぱりお前は子供だな」

 

漸く感情を見せてくれるようになった息子に篠原は微笑む。

そして、泣き止んだ絋輝は恐る恐る口を開く。

 

「父さんは……俺が何であろうと親だって言ったよな?」

 

「ああ」

 

「俺が………亜人でも?」

 

絋輝は真っ直ぐ篠原を見つめる。

篠原は一瞬呆然としたが、すぐに微笑む。

 

「当たり前だ。例えお前が誰だろうと家族だ」

 

肩を抱いて自分に引き寄せる篠原に絋輝は漸く笑顔を見せた。

 

篠原自身は亜人は何かの冗談だと思っていると思うが、絋輝はそれでも自分を受け入れてくれると自信と篠原たちに信頼があった。

 

「さあ、帰ろう。母さんたちが心配しているだろうからな」

 

「うん」

 

父に相談してよかった。

絋輝は幾分か軽くなった気持ちで自分を待ってくれる家族の元に帰った。

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