東京喰種ーGhostー   作:マーベルチョコ

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#8 君はどうしたい?

朝になり、絋輝は代えの制服を着ていつもより早めに家を出た。

昨夜は家族たちに相談して、受け入れてくれることに自信を持てた。

後は董香のことだ。

元とは言え捜査官だった父に話すのはまだ早いと思った絋輝は父には相談せずにある人物の元に急いだ。

いつもの登下校の道には公園があり、そこに待つ友人に会う。

 

「悪い、待たせたな。吉桐」

 

待っていたの絋輝の唯一と言っていい男の親友、新田 吉桐だ。

 

「いいって、君から相談したいことがあるって聞いたんだからな」

 

2人は公園のベンチに座り、登校する同じ学校の生徒たちを眺める。

 

「…………」

 

「…………」

 

絋輝から話すのを待っているのか、どちらとも話す気配がない。

当の本人である絋輝はどうやって相談すればいいかわからなかった。

董香が喰種であることをそのまま話すのは論外、かといってどうやって他のことに例えて話せばいいのか悩んでいた。

 

「君が話さないなら僕が当てようか?霧島と何かあったんだろ?」

 

その言葉に絋輝は苦い表情になる。

それを見た吉桐は図星だな、と思った。

 

「何かあったのなら取り敢えず謝っておけばいい、この前雑誌にそう書いてあったし」

 

いつもの何気ない馬鹿な話をする吉桐だが、浮かない表情の絋輝を見て真剣な表情に戻す。

 

「………もし、お前の恋人が重要なことを隠しててそれを知ってしまったらどうする?」

 

「………?」

 

漸く口を開いた絋輝の言葉に吉桐は疑問符を浮かべる。

 

「しかもそれが周りの人に迷惑をかけてしまうことだったら?」

 

「………」

 

吉桐は腕を組んで考え込む。

 

「……先ずは君がどうしたいかじゃないのかい?」

 

「俺が……?でも、周りの人が………」

 

「周りなんて後で考えればいい。君がどうしたいかが大切じゃないか。君は霧島の恋人なんだ。君がどうしたいかが彼女にとっても重要なことなんだ」

 

吉桐の言葉で董香のことを思い返す。

一緒に笑いあった瞬間、怒られた瞬間、愛おしいと思った瞬間、そして自分が逃げ出した時の悲しいそうな顔を思い返す。

周りのことだけを考えていたが董香の恋人は自分だけだ。

 

「君はどうしたい?」

 

その一言に絋輝の心の中で想いが固まる。

 

「もう答えは出たようだね」

 

「……ああ、ありがとうな。やっぱり相談してよかった」

 

そう言って絋輝は立ち上がり、学校とは真逆の方に向かって行く。

 

「学校は?」

 

「サボる!後は頼んだ!」

 

絋輝はそう言って去って行った。

それを見て吉桐は仕方ない、と言った風に一息つく。

そこに吉桐に気づいた依子がやってきた。

 

「おはよう新田君。こんな所でどうしたの?」

 

「おはよう。いや、ちょっと絋輝と話をしていてね」

 

「えっ!?篠原君、来てたの!?もっと早くに来たらよかった〜。董香ちゃんのことも聞きたかったのに」

 

「やっぱり連絡取れないの?」

 

依子は携帯を見つめて、寂しそうにうなづく。

 

「うん……篠原君なら何か知っていると思って」

 

「ふーん……まぁ、もう大丈夫だろうね。後は気長に待っていよう」

 

「気楽だなぁ、新田君は」

 

2人は学校に向かうが、途中吉桐は公園のほうを振り向くとさっきまで公園にいなかった大柄な男性が絋輝と同じ道を進んでいくのが見えた。

しかし、吉桐は何も言わずに学校への道を進んだ。

 

 

ーーーーー

絋輝はあんていくへの道を走っていた。

董香に自分の思いを伝えるために必死で走る。

すると絋輝の目の前に人影が降り立ち、突然現れた人影に絋輝はたたらを踏んで止まる。

絋輝の前に現れたのは彼を昨日から監視していた四方だった。

突然現れた四方に驚く絋輝だが、四方はそんなの関係ないと言わんばかりに話し始める。

 

「制服で来るのはまずい。服を着替えてからまたここに来い。それからあんていくに向かう」

 

若干睨んでくる四方に警戒を解かない絋輝は硬直して動かないが、四方が道を開けた。

取り敢えず、あんていくの関係者だとわかったため信用できないが指示に従うことにした。

服を私服に着替え、四方と共にあんていくに向かう。

あんていくに着き、扉の前に立つ絋輝はドアノブに手をかける。

この先に董香が待っているだろうが、今はとにかく自分の思いを董香に伝える。

そう決心してドアを開ける。

 

「あっ……」

 

中には芳村、入見、古間、董香が待っており、絋輝が来たことに気づいた董香の目元は赤く腫れていた。

 

(董香……)

 

悲しませてしまったのか、悩ませてしまったのかはわからないが今の董香の姿を見ていると心が苦しくなる。

今はとにかく自分の気持ちを伝えたかった。

 

「とう……!」

 

「お前はこっちだ」

 

董香に話しかけようとしたが四方が絋輝の襟首を捕まえ、引きずる。

 

「はぁ!?いや、ちょっ……!」

 

「もう下で待っている」

 

引きずられる絋輝は董香に手を伸ばすが部屋の奥へと消えて行った。

その様子を董香は不安そうに見ていた。

 

「絋輝……」

 

「さあ、我々も向かおう」

 

芳村は絋輝が決心を決めたことに気づいたのか、朗らかな微笑みを浮かべて董香達に振り返った。

 

 

ーーーーー

絋輝はあんていくの地下に広がる地下空間に放り投げられた。

 

「いだっ!?アンタさっきから俺の扱いが雑だぞ!!」

 

尻から落ちた絋輝は若干涙目になりながら四方を睨む。

それに対して四方は見下ろす形で睨む。

 

「………」

 

「うっ……」

 

無愛想な四方の睨みに絋輝は少したじろいでしまう。

その後に董香達がやってきた。

 

「董香っ……!」

 

「よぉ、お前が新しい亜人か?」

 

絋輝が董香に近づこうとしたが背後から男の声が聞こえた。

振り返ると黒い革ジャンを着た男が地下空間にいくつも存在している穴から徐々に光に当てられ出てくる。

その男からは絋輝と同じように灰黒い粒子が溢れ出ている。

 

「よろしくな」

 

男は獰猛な笑みを浮かべた。

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