ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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遅くなりました。なんて事ない回のハズなのにやたら難産でした。
おかしいところがあるかもですが大目に見てくれると…




レベル6.走狗

 

 

 

死とは、何だろうか。

生命に、等しく訪れるもの。黄金時代、人間の寿命は3倍にまで伸びたが…結局、逃れえなかったもの。

物理的には、細胞の活動が全て停止し、二度と動かない状態。精神的には意識を失い、それが二度と戻らない状態だろうか。共通しているのは、死が不可逆的なものだと捉えていることだ。

中には、あらゆる人々に忘れられた時に初めて人は死を迎える、と言ったロマンチストもいる。

 

 

ガーディアンは死体から生まれる…すなわち、一度死んでいるが生き返っている。この時点で、死の概念から乖離する。その上で、ガーディアンは死なない。いや、厳密にはよく死ぬが、すぐに生き返る。敵に脳天を撃ち抜かれても、踏み潰されても、ゴーストと光の力によって復活することができる。だからガーディアンは絶対に【死なない】。

 

 

であれば、ガーディアンは何をもって死ぬのか?

 

 

ウォーロックであった友人の言葉によれば、我々ガーディアンが死ぬはその役目…市民を、街を、そして何よりもトラベラーを守るという役目を果たせなくなった時。要は…光を失った時に、自らをガーディアンとして定義できなくなり、初めて本当に死ぬのだという。

 

 

それを聞いたとあるタイタンは、そんなことをしなくても、ゴーストを撃ち抜いたあとに頭を撃てば死ぬと言っていたが。

 

 

俺には、もう市民は守れない。いくらかの敵に囲まれればあっけなく死ぬだろう。復活もできない。

ゴーストがいても、光がないからだ。何度でも立ち上がれるガーディアンではないからだ。

 

 

俺というガーディアンは死んだ。

 

 

ならば、未練がましくも生きている【ガーディアンとして死んだ】俺は何者として生きればいい?

 

 

「簡単なコトだ」

 

 

目の前の【4本腕の怪物】が低くうなるようにして笑う。その姿は、以前よりもずいぶんハッキリと見えた。頭に特徴的な一対の装飾。首から背中にかけたマントには、彼の所属するハウスのマークが大きくこしらえてあった。

 

 

「お前はもうガーディアンじゃない。だが人間でもない…死んでから生き返る人間などいない」

 

 

【奴】は誇らしそうにマントを撫でた。

 

 

「お前はフォールンだ。ハウス・オブ・デビルズの装備を奪い、ハウス・オブ・キングスのエーテルを奪った。略奪者の中の略奪者。しかし同時に、自分だけは、まだ堕ちちゃいないとどこかで思っている…まさしく模範的フォールンだ。素晴らしいコトじゃないか」

 

 

【奴】は皮肉っぽく笑い声を上げたあと、下の腕で相手の胸を強く叩くと、上の腕を高く上げた。これがフォールン流の賞賛であることが、何故か分かった。

 

 

胸の腕を振り払う。【奴】は少し考える素振りをすると、俺の肩を掴んだ。

 

 

「オレはお前のことを気に入ってるんだ。誰よりもフォールンらしいお前を、な」

 

 

「どこが…!」

 

 

そう言ってもう一度腕を振り払おうとする。

 

 

「っ!?」

 

 

「【ソレ】が、何よりの証拠だ」

 

 

細長く、薄白い三本指。【奴】の腕を掴んだ自分の腕が、フォールンのものになっていた。

 

 

 

………………………

 

 

「…っは!」

 

 

『どうしました?』

 

 

ライフが不思議そうにこちらをのぞき込む。背中にはじっとりと汗がにじんでいた。

 

 

「恐怖…?いや、まさか。ありえない」

 

 

タイタンが恐怖を感じるのは、カバルのファランクスの大盾に吹き飛ばされた時だけだ。地に足がついている限り、そこから一歩も引くことのない決意と、誰よりも暗黒を憎む心があるからこそタイタンは戦うことができるのだ。

 

 

タイタンは光と勇気、そして強靭を誇り、暗黒と弱気、そして卑怯を厭うと言われている。ふと、ガーディアン達の冗談のひとつを思い出した。

 

ファイアチームのひとりが、強大な敵に恐怖したことを仲間に伝えた。まず仲間のタイタンが『なんて軟弱なやつだ』と笑う。次にハンターがそれを見て『恐怖がわかる分、お前より賢いな』と笑う。最後にウォーロックが大笑いした。

『なぜお前が恐怖を感じたか推測したんだ。お前にも教えてやろう。まず…』

みんな静かになった。

 

 

…これは、バカで石頭なタイタンと、人を嘲笑うことばかりなハンター、話が長くてつまらないウォーロックをまとめて揶揄するものだったはずだ。

 

 

「…いや、もう俺はタイタンでもない」

 

 

下らないことを思い出した。

タイタンはガーディアンの職業だ。今の俺には関係ない。

 

 

「しかし、もう寝る気も起きないな。ライフ、外はまだ暗いか?」

 

 

『いえ。今ちょうど起こそうと思っていたところでした。太陽は既にのぼっています』

 

 

「そうか。なら、今日はここから移動しよう」

 

 

『どこへ行くのですか?』

 

 

「ずいぶん遅れたが、当初の予定をなぞる。つまり…」

 

 

『ヨーロッパ・デッドゾーンですか?』

 

 

「ああ。だが、目的は違う」

 

 

「元々は光を取り戻すための手がかりを探るためだったが…それはもうなしだ。…ヨーロッパ・デッドゾーンは、確かフォールンの拠点だったよな?」

 

 

『ええ。元々はフォールンのハウスのひとつが拠点を置いていました。しかし、彼らが去ってからは様々な勢力が争う場となっています』

 

 

『まさか、突っ込むつもりですか?』

 

 

「いや。まさか」

 

 

『では、何をするつもりですか?』

 

 

「助けてもらうのさ」

 

 

『…今、なんと?』

 

 

「フォールンに助けてもらう。もはや半分フォールンの形をしてるんだ。仲間だと思ってハウスに入れてくれるかもしれない」

 

 

『ありえません。馬鹿げてます!フォールンは我々よりよほど社会的に統制された存在です!』

 

 

「…だろうな。冗談だ」

 

 

実のところ、冗談を言ったつもりは無かった。かといえば、ヤケになったわけでもない。このままいけば、何かのきっかけで俺はフォールンに近しい存在にもなりうる。昨日の夢の影響なのか、そんな気…いや、確信が、俺の中にあった。

 

 

「だが、人はいるかもしれない」

 

 

『…可能性は低いです』

 

 

「なら他の方法を考えてくれ」

 

 

『…ヨーロッパ・デッドゾーン…いえ、そこにほど近いところにガーディアンのキャンプがあったという記録があります。そこへ行きましょう』

 

 

「そうか。ならそこだな」

 

 

バランスの取りづらくなった身体を持ち上げ、洞窟の外を見据えた。

 

 

…………………

 

 

「ハァ…ハァ…フー…」

 

 

『大丈夫ですか?』

 

 

「…大丈夫に…見えるか?」

 

 

『…少し』

 

 

何とかワイヤーとドリルやナイフを使ってクレバスを登った。しかし、ガーディアンでないということは、疲労や小さなケガを無視できなくなるということでもある。

俺の身体は指先一つ動かすのも億劫なほど疲れ果て、身体のところどころに傷ができていた。

 

 

「初めからそういう模様だったみたいだ」

 

 

キズを見てつぶやく。

 

 

『冗談はよして下さい。このまま夜を迎える訳にはいきません。移動しましょう』

 

 

「ああ。そうだな」

 

 

重い腰を何とか上げる。太陽は既に西に傾き始めていた。

 

 

…………………

 

 

『…見えました。アレです』

 

 

「本当か?」

 

 

前方に目をこらす。確かに、米粒ほどの大きさのテントのようなものがいくつか見えた。

 

 

『…記録が正しければ、確かにここのはずです』

 

 

「そうか…じゃあ」

 

 

『…そうですね…残念ですが…』

 

 

「ああ。失敗だったな」

 

 

キャンプには、動くものが何ひとつなかった。

 

 

その事実は、しかし何よりも雄弁に、俺達にそのキャンプの全滅を伝えていた。

 

 

 





はい。例のキャンプです。
タカはいません。
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