ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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お久しぶりです。ちょっと長いですが、前後編に分けるほどでもなかったのでまとめました。

例によって、感想や評価は大歓迎です。モチベーションにもなります。



レベル8.同志?

 

 

 

「腕…生身の方だよな?」

 

 

『ええ…一目瞭然とはこのことでしょうね』

 

 

「ふうん…それで?」

 

 

『それで、とは?』

 

 

「いや、血が出ないことで問題があるのかを聞いてるんだ」

 

 

『…スキャンは既に済ませました。あなたの身体の血液の一部が、エーテルに置き換わっている…いえ、エーテルを主体に融合しているようです。つまり…』

 

 

『身体の血液が果たしていた機能を、エーテルが代替…もしくは補強しています。今は血の代わりにエーテルと血液の融合体が少しずつ流出している状態です。…今後、エーテル不足で死ぬことはあっても、出血多量で死ぬことは無いでしょうね』

 

 

「なんだ、だったら大丈夫だな」

 

 

『…しかし、これでは本当に…』

 

 

「既に足を踏み入れた領域だ。一歩も十歩も大差はないだろう」

 

 

「それより、またいい素材が取れたな。フォールンのキャプテン、しかも格闘タイプ!威圧感バリバリ。昔の俺も、敵からはこんな感じに見えてたのかもな」

 

 

『あなたの元々の腕はそこに残っていますが?』

 

 

「だが、キャプテンに踏み潰されてボロボロだ。アレを繋げて、今後マトモに動くか?」

 

 

『アレ、ですか』

 

 

ライフがうつむく。

 

 

「俺は人間の身体でいたいなんて…ましてや、ガーディアンに戻りたいなんてこれっぽっちも思っちゃいない。身体がフォールンになっても…光がなくても…俺は俺として戦えればそれでいいんだ。そう考えることにした」

 

 

『あなたはいつもそうです。あなたが作る言葉は、いつだって力強い…そして脆い』

 

 

「ああ、あの時だってそうだった。…俺の心は弱い。だからこそ力強い言葉を使うんだ…ライフ!キャプテンを使って…腕を、作ってくれ」

 

 

『…ええ。あなたが望むなら…従いましょう。私はあなたのライフ。あなたの意思で動くものです』

 

 

「…頼むぞ。そろそろエーテルの残量が切れそうだ」

 

 

………………

 

 

『…もう、後戻りはできませんね』

 

 

「……ああ」

 

 

キャプテンの腕は機械ではなかった。俺は【それ】を繋いだ。つまり、俺はまさしく【フォールンの腕】を身体に繋げている。俺は、新しい、青白く強靭な三本指の右腕をまじまじと見つめた。

元々バンダルから剥ぎ取ってくっつけた左腕と見比べると、階級による体の大きさの違いがハッキリと分かる。

 

 

「…しかし、不思議なものだな」

 

 

『何がですか?』

 

 

「拒絶反応とか、神経接続とか…タイタンだった俺でも不思議に思えるくらい、そういう不都合がない」

 

 

『…本来はあるはずなのですが、これもエーテルの力でしょうか。私も確かに細心の注意を払ってやってはいますが、回数を重ねる度…あなたがエーテルと親和していくにつれて、抵抗が少なくなっているように思えます』

 

 

「エーテル…やっぱりサービターが必要だ」

 

 

パチパチパチ

 

 

「ん?」

 

 

『拍手の音です』

 

 

「いや、それは分かるが」

 

 

音の元を見る。ここから少し離れた岩場の影から、身体のラインにぴったり沿うようにしたスーツを着込み、ヘルメットの上からぶかぶかのクロークを羽織った人間がこちらを見ていた。

 

 

「ライフ。どうして教えてくれなかった」

 

 

見るに、どうやら男性のようだ。彼に敵意は無いようだが、あまり自分のこの姿を晒したくもないのが本音だった。この外見から、思わぬすれ違いを生む可能性が高いためでもある。

 

 

『…それが、レーダーに全く映りませんでした』

 

 

「なんだと?故障か?」

 

 

「ああ、いやぁ、そんなことはないだろうさ!ゴーストをあまり責めないでやってほしいね。何せ俺は…特別製だからな」

 

 

「っ!?」

 

 

またしても不意をつかれ、思わず後ずさる。この男は、少なくとも、音も気配もなく…誰にも気がつかれずに移動することができることは確かなようだった。

 

 

「お前は誰だ」

 

 

「警戒!ごもっともな反応だが少々傷つくぜ」

 

 

「味方でないなら敵と思え…タイタンの教えか?」

 

 

「…お前も元ガーディアンなのか?…ハンターか」

 

 

「ご明察…タイタンじゃなくて残念だったかな。確かに、俺はバンガードの元メンバーさ。ケイド6のもとで、中々楽しくやらせてもらっていた」

 

 

「ここに来たのは全くの偶然だったんだが…まさしく幸運だったと言わざるを得ない。まさかここで同志に出会えるとは!」

 

 

「…同志だと?」

 

 

「そりゃあそうさ!お前も俺も、光を失った…残念なことに。あのカバルのデブに全部奪われた!だが…」

 

 

「戦うことを諦めていない!」

 

 

目の前の男は大げさに拳を握りしめたのち、仰々しく両手を上に挙げた。妙に演技くさいところが鼻につく。

 

 

「…放っておいてくれ」

 

 

ヘルメット越しに睨む。

 

 

「ハハ…見りゃあ分かるさ。お前は光の代わりにフォールンの力を手にしたんだろう?戦うために…」

 

 

「さっきの拍手はそのためさ。お前のその気高き精神と…ゴーストの技術を賞賛したのさ」

 

 

「自己紹介といこう。俺はザナリー3。名前から分かるとは思うがエクソだ」

 

 

「…ゾンビだ」

 

 

『私はライフです』

 

 

「フーン、ゾンビ…それとライフね。偽名にしてももう少しマシなのはなかったのか?夢見がちなローティーンが考えたみたいだ」

 

 

「俺はガーディアンじゃない。俺というガーディアンは死んだ…そう決めた時にガーディアンとしての名前も捨てた。適当な名前も考えるのが面倒だから生ける屍を名乗っているだけだ」

 

 

「笑えるな、ハハ…」

 

 

…そろそろ限界だ。コイツと俺は絶望的に合わない。それだけが分かればいいと思うまでに…

 

 

「ああ、そうかよ。ライフ、パルスキャノンのクールダウンは終わってるよな?」

 

 

左腕のガントレットを強く握りこんだ。

 

 

『ええ。ですが…まさか撃つつもりですか?』

 

 

「こいつは俺を放っておいてくれないらしい。協力者になるならとも思ったが、無理だ。コイツと関わることに俺が耐えきれないな。だったら…」

 

 

「おっと!待ってくれよ…悪かった。アンタ達を貶めたりするつもりは無かった」

 

 

「お詫びの印といってはなんだが…俺がどうしてアンタ達に、気づかれずに接近できたと思う?その物騒なものをしまってくれれば今すぐ教えてやるよ」

 

 

「話し方が気に食わん」

 

 

「…生来のもんで、変えるのは難しい。悪いな」

 

 

「そうか」

 

 

パルスキャノンを構える。

 

 

『待ってください』

 

 

ライフが構えた左腕とザナリー3との間に割り込んだ。

 

 

「ライフ…邪魔をするな」

 

 

『話を聞いてください。彼は我々にとって有益な情報を持っているかもしれません。彼の【透明化】…心当たりがありますよね?』

 

 

「カラクリに気づいてたのか?優秀なゴーストだな」

 

 

『…あまり私をゴーストと呼ばないでください』

 

 

「理由があるみたいだな。分かった。悪かったよ」

 

 

「【透明化】はハンターの能力だ…まさかとは思うが…」

 

 

透明化は、ハンターの特殊能力のうちメジャーなものの1つだった。実際、奇襲作戦には、レーダーにも視覚にもほとんど映らなくなるこの能力が欠かせなかったのだ。しかし、もちろんこれは【ガーディアンの能力だ】。つまり…

 

 

「ご名答!…と、言えれば良かったんだが…」

 

 

「残念だが、俺は光を取り戻したワケじゃないんだ。…コイツを見てくれ」

 

 

そう言うと、彼は自らの腹部を露わにした。そこには、ダークグリーンの金属板に食い込むようにして、青白い光を放つ球形の機械が埋め込まれていた。

 

 

『これは…まさか』

 

 

「俺が君達を【同志】と言った理由はもう1つあった、ということさ。お察しの通り、コイツは俺が生まれ持ったパーツじゃない…フォールン由来だ」

 

 

「お前…」

 

 

「…おいおい、アンタ自分のこと鏡で見たことあるのか?俺なんかよりよっぽど改造されてるじゃないか。人のこと言える立場じゃないだろう」

 

 

『どこで、どうやってこれを手に入れたのですか?』

 

 

「…いいだろう。隠し事はナシだ。だが、長くなるぞ」

 

 

「俺はあの時…シティが落ち、光を失ったあの日、俺達ガーディアンは生きるべきだと…何があっても生き残るべきだと、そう確信した」

 

 

「俺のゴーストも同じ意見だった。いつかまた、ガーディアンの役目を果たすため、どんなにみっともなくても生き残ると、そう決めた」

 

 

「問題はここからだ。俺達は雨の山中を、カバルのクソ犬達に追われながら走っていた。だが…運悪く俺達は、逃げた先でフォールンの哨戒部隊にも出会ってしまった」

 

 

「そこからはもうめちゃくちゃだ。フォールンに襲われ、犬に追い立てられ、雨と土砂に身を隠してなんとか逃げおおせたが…フォールンはバカじゃなかった」

 

 

「バンダルの1体が、めざとく俺に発信機をつけていやがった。そいつは功績を独り占めしたかったんだろうな…1体だけで、隠れていた俺達に襲いかかり…俺のどてっ腹を、ご自慢のブレードで貫きやがった」

 

 

「だが、そのブレードが俺の下にあった木の根まで切り裂いたのが、ヤツの運の尽きだった!支えを失った木がヤツに向かって倒れ、ドロドロになった土砂の中でアイツは息絶えた…」

 

 

「俺のゴーストはそいつをスキャンして、こう言った。『透明化できるようになる』…もちろん俺はそのうまい話に飛びついた!身を隠すにも、攻撃するにも透明化はこれ以上ないくらい最適だったんだ」

 

 

「俺はゴーストに頼まれてしばらくスリープ状態に入り、目が覚めると、俺の腹の傷にはすっぽりとこの…妙な機械が埋め込まれていた」

 

 

「そして俺は腕に刻まれたメモを見つけた。それはこの機械の使い方と、『いつでも一緒』のメッセージ。送り元はハッキリしている。つまりはそういうことだ」

 

 

『それは…つまり、あなたのゴーストが、あなたの腹部にフォールンの透明化する機械を接続し、自身さえもそのパーツとして組み込んだ、と…』

 

 

「そういうことだ。どうやらこの機械は、俺と相性が悪かったらしい。拒否反応を示したもんで、慌てて自分をバイパスに使って安定させたんだとよ…情報は、頭に流れてくるんだ」

 

 

『………』

 

 

ライフがうつむく。少しの静寂が流れた。

 

 

「話は終わりか…事情は分かった。その透明化能力の由来も、俺達には使えそうにないことも」

 

 

「ああ。提案があるんだ…俺を仲間として連れて行ってくれないか?」

 

 

「断る」

 

 

『ですが!』

 

 

「これが軍隊ならいい。強力な指導者と規律のもとで、大多数のうちの1人としてコイツと共に動くなら、俺は何の疑問も抱かなかった…だが、ペアになるなら話は別だ」

 

 

「ここには規則もない。指導者もいない。俺にコイツのお守りをしろって言うのか?」

 

 

「何言ってる。俺はアンタとペアになるつもりは無いぞ!単なる協力者として…」

 

 

「二人ならペアも協力者も同義だ。二人いるということは、俺達は単独行動の利点を失うことにもなる」

 

 

『ゾンビさん…私は彼の同行に賛成です』

 

 

「…お前はいつも俺の意見には反対するんだ」

 

 

『いつも最後はあなたの意見になるじゃないですか!私はいつでもあなたのためを思って言っているのに…言い方は悪いですが、彼は私にとっても貴重な資料です。それに、あなただって…フォールンの装備を身体の一部としたことで、今後どんな影響が出るか分かりません。私は戦えませんが、彼ならば…』

 

 

「ハンドキャノンの扱いは得意だ。ハンターらしいだろ?それともクルーシブルが好きなら、ごろごろ転がってショットガンを撃ってる方がイメージが強いか?」

 

 

「お前をショルダータックルで潰してやりたいよ。…ハァ…分かった。とりあえず、同行ならいいだろう」

 

 

「おお、やったぜ!」

 

 

「だが、あくまで同行者だ。お互いに過度な干渉はしない。俺が話しかけるなと言ったら話しかけないでくれ。俺からは話しかけないだろうが」

 

 

「おう、了解した。過度な干渉はナシだ」

 

 

「…分かっているのか?」

 

 

「もちろん!」

 

 

不安だ。

 

 

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