なんか閲覧数がめちゃくちゃ増えてると思ったら、この作品がランキングに載ってたんだそうです。…ふーん…ランキング…ランキングぅ!?
ということで、日刊ランキングの20ちょい位ぐらいになってました!
Destinyが好きなだけで始めたこの小説がまだ続けられているのも、ひとえに皆さんの応援のおかげです。本当にありがとうございます。
これからもお付き合いいただければ幸いです!
…明晰夢だ。最近は見なかったのだが…
「立派な右腕だな…同志よ」
目の前に佇むソイツは、マントを愛おしそうに撫でながら俺に語りかける。
「………」
「オマエは、自分がフォールンじゃないという」
「ああ。そうだ」
「だが、ガーディアンでもない」
「…そうだ」
「だったら、オマエは【何】だ?」
「…中途半端なのは百も承知だ。だが俺は何者でもない」
「本当に、ソレが許されると?」
「オマエは…オマエ達は…いや、【オレ達】は、孤独ではいられない」
「生まれた瞬間から…必ず、何かのグループに属することになる…それは、ハウス、バンガード…人間、エクソ、ハイヴ…エリクスニー…カバル…なんでもだ」
「種族…社会…何でもいい。自分達の枠組みに属さない存在は、【俺達じゃないもの】は…【敵】になりうる。そう、みなされる」
「………」
「オマエは、もはや人間かどうかも疑わしいオマエは、それでも人間を守るために戦うのか?光を失い、今や人間よりフォールンに近い…今のオマエは必ず排斥される。オマエの背中には、もはやオマエを信じ、守られる市民はいない」
「それは違う」
ガーディアンがガーディアン足るために必要なのは光と強い決意だ。市民とトラベラーを守るための力…そこに、市民の支持は関係ない。
「ガーディアンは市民を守る存在だ。それは市民に望まれるからじゃない…力があるからだ。トラベラーの力により、力を得たからだ。力には責任が伴う…その力を向ける方を間違えないために」
「グ…ハハ…グハハハハ!ハハハハハァ!」
何が面白いのかヤツは目を細め、口元をゆがめる。
「ハハハ…チカラ、セキニン…?…そんなものどこにある」
「一体、誰に言われた?『オマエにはチカラがある』だと?『チカラにはセキニンがともなう』だと?実に…バカバカしい!」
ヤツは地面を強く踏みつけた。ガシャン、と装飾品が揺れ、ぶつかる音が響く。
「弱者はなぜ弱者であるのか!強者はなぜ強者と呼ばれるのか!」
「そんなものはダレも知らない!強い、弱い…そんなものは下らないと、皆知っているからだ!強弱の定義などという曖昧なものを知る意味など無いからだ!」
「…フォールンはいつでも純粋だ…力とは相手を打ち倒すもののことだと、誰もが信じている。銃でうち抜けば、バロンも、アルコンも…ケルも、ガーディアンでさえも!皆カンタンに死ぬ。そのことを知らないフォールンなどいない…そこに、強いも弱いもない」
「いい加減にしろ…話が読めない。一体、俺に何を伝えたいんだ」
「…今のオマエには分かるまい…オレはオマエだが、オマエはオレじゃない…だが、オレ達になりつつある」
「また会おう。同志よ…今度はオマエが【何】になるのか、楽しみにしている」
「…何だってんだ…」
ヤツは背を向け、俺の意識は覚醒していく…
………………
「風が強くなってきた…雲行きも怪しい。朝は雲ひとつなく晴れていたんだがな…おい、いい加減荷物整理は済んだか?さっさと行くぞ」
あの洞窟でフォールンのキャンプをめちゃくちゃに(主にアイツのせいで)した後、俺とザナリー3は数日かけてヨーロッパ・デッドゾーンを回り、十分に戦えるだけの資材をかき集めていた。
「もうちょっと待ってくれ!くそ、片付けってのはどうしてこう…うーんこれ以上手には持てないな。もう弾薬はバックパックに全部入れちまうか!まあ敵を倒せば、その残骸からライフ君が精製してくれるワケだし、弾薬についてはそこまで気にしなくていいのか?」
「…俺達は別行動することもある。お前のそばに常にライフがいるとは限らないぞ」
『エーテルは予備タンク含め、いくつかストックもできました。最大出力のパルスキャノンをやたらに撃ったりしなければ、エーテル切れはあまり心配になりません』
「ついでにプラスチール材から作った新しい防具もバッチリ!…まあ、光はないけどな」
『…ああ、それと、フォールン・キャプテンの装備をサルベージしたものから、アークエネルギーのシールドを発生させることに成功しました。腰ベルトの右側に発生スイッチがあります』
「これか。いいな」
カチッという音が鳴ったかと思えば、俺の身体は淡い水色のエネルギーで覆われていた。キャプテンやバロン達がこぞって愛用するシールドとほぼ同じものだ。
『エーテルの消費はダメージに比例して増えていきます。また、短時間にキャパシティを超えるようなダメージを受ければシールドは消失します。その場合、リチャージにはしばらく時間が必要です』
「さらっとすごいことをしてるな!なあライフ君、俺にもソレ装備できないか?」
『身体中にエーテルを通せば可能です』
「残念。遠慮しとくぜ」
「エーテルも悪くないものだぞ。頭が冴えるし身体もすこぶる調子がいい…いや、最近背骨が痛むか」
『背骨、ですか?』
「ああ。…いい機会だ。ライフ、俺の身体をスキャンしてみてくれ。寝て起きた時に特に痛むんだ」
『了解しました。じっとしていて下さい…』
「何だってんだ?スキャン?ゴーストにそんな機能あったか…?」
『ゴーストは、ガーディアンを常にすぐそばでバックアップするためにあります。そのための機能のひとつです…スキャン終了。これは…?』
「どうした?」
『ゾンビさんの身体が…以前に比べ肥大化しています。いや、これは…まさか成長?』
「オイオイどういうことだ?ガーディアンは死体が光で動いてるだけなんだろ?死体が成長なんかするかよ!それとも何か?ライフ君。君のカメラアイには…まさかコイツが、まだ背が伸びるような健全な青少年に見えるってのか!?」
「カメラのホコリを払ってよく見てみろ!顔だっていっつも難しい顔してるからこんなにシワが寄って固まっ…」
「………」
「…顔が変なマスクでよく見えねえ!前から気になってたけど一体何だコレ!?」
「いい加減に黙れ。このポンコツめが…このマスクはエーテルを身体に供給してるだけだ」
「そうだったのか…ん?」
『どうしましたか?』
「エーテル…肥大化…これは…つまり…もしかして、俺は素晴らしくアタマがいいんじゃないか…?」
「何の話だ。さっさと言え」
「おうおう、求めに応じて不肖ながら答えて差し上げてやろう…この現象の原因はズバリ、アンタがフォールンのキャプテンになったということだ!!」
「………」
「……えっ…と、つまりだな。身体が、大きくなっただろ?フォールンの中で身体が大きいのは…その、キャプテンだから…」
「………」
「…うん、そういうことなんだ。つまりアンタはキャプテンなんだよ!」
「バカにしているんだな?そういうことだな…?…覚悟は出来てるんだろうな!」
ザナリー3の胸ぐらを掴み、引っ張り上げる。ザナリーの足は宙に浮いてバタバタと動いている。
「ちょちょちょ、待ってくれ!頼むよ待ってくれぇ!おいライフ君、見てないで助けてくれ!」
ザナリーの口腔がパカパカと開閉し、ライムグリーンの光が点滅している。エクソの中には喋ると口元が光るタイプがいるのだが、今かなり焦っている彼もその1人だったようだ。
『…ゾンビさん、折檻は少し待ってください』
「おお、ありがとう助かるぜ〜!…ん?…少し…?」
「なぜ止めた。今の俺ならなんの問題もなくコイツをぐしゃぐしゃにしてやれる」
『あなたがフォールン・キャプテンになった…という話は全く見当違いと言わざるを得ませんが、彼の着眼点は私の仮説にかなり近いです』
「つまり?」
『これは…いえ、これもエーテルの影響だと思います』
張り切って書いたら長くなったので前後編です。
一度に読むには長すぎたので分けたのですが、分けたら分けたでちょっと短い微妙な文字数になってしまったので、また加筆することになりました。なんだか本末転倒感。