ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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最近、活動報告なるものがあることを知りました。ついでなのでちょっとしたアンケートもしました。よかったら答えていって下さい。




レベル13.巨人、狩人、魔術師

 

 

 

 

 

状況は絶望的だ。デヴリムが俺の脳天に向けて銃口を近づける。

 

 

「腕を頭の後ろに置いてその場に伏せろ」

 

 

デヴリムは不敵に歯を見せながら命令する。

命令に従いながら、俺は1つの記憶を思い返していた。

 

 

「…ナインのエージェントを知ってるか?」

 

 

「なんの話しだ。時間を稼いだところでフォールンの助けはこないぞ」

 

 

デヴリムが銃口を頭に押しつけてくる。ウォーロックの方は、いつの間にかベルトを後ろ手に巻かれて動けなくされていた。

 

 

「ヤツらはいつも黒いフードを被っていて、その素顔はいつも何かに邪魔されて見ることができない」

 

 

「貴重品と引き換えに、すごく珍しいアイテムを売ってくれるエージェントもいる。だが神出鬼没で、見つけた情報が回ってきて向かう頃には、もうそこからいなくなっている。つまり自力で見つけるしかない」

 

 

「黙れ。ついに頭がおかしくなったか?」

 

 

「いいから聞いてくれ。俺はかつて、そのエージェントに会うために至るところを飛び回ったことがあるんだ」

 

 

「3週間ほどして、俺は日曜日の夕方にやっとの思いでナインのエージェントを見つけ出した。そしたらヤツは俺に何と言ったと思う?」

 

 

「時間切れだ、残念だったな!」

 

 

突然、デヴリムの背後から男の声が響く。

 

 

「っ誰だ!?」

 

 

デヴリムが背後を振り向こうとする。

 

 

「おっと、おねんねしてな」

 

 

「がっ…」

 

 

瞬間、鈍い音が鳴り、デヴリムが気を失って倒れた。

 

 

「お仕事完了〜っと…これで貸し1だな。さて」

 

 

「久しぶりだな、ダンナと…アンタ誰?」

 

 

「ザナリー!」

 

 

「おお、あんまり大きい声を出すなよ。まだ仲間がいるかもしれないんだから…とにかくここからズラかろうぜ?」

 

 

「…いや、ライフを探さなければ」

 

 

「ハハ、お探しはコイツかい?」

 

 

『ゾンビさん!』

 

 

「ライフ!?何故ここに!」

 

 

『私が運ばれている途中で、ザナリー3が現れて私を助けてくれました。私は彼に事情を説明し、協力してもらいました』

 

 

「まあ、そういうわけだ。お互い積もる話はあるだろうが、それは移動しながらにしてくれ」

 

 

「ああ、そうだな…おい、お前はどうする」

 

 

彼女を縛っているベルトを解き、呆けているウォーロックの肩を叩く。

 

 

「えっ?あ、ああ…状況が飲み込めない…と、とりあえず私もついて行くよ。元々の目的を果たそう」

 

 

「そうか。好きにしろ。ザナリー、これからどこに逃げるつもりだ?」

 

 

「え?」

 

 

ザナリーが驚いたような声を上げ、周りをキョロキョロし始める。

 

 

「…お前…」

 

 

「あ、いや、違うんだ!元々考えてて、でもド忘れしたっていうか…すっげー頑張って走ったから来た道覚えてない…じゃなくて!」

 

 

「もういい!ライフ!」

 

 

『はい!逃走経路は検索済みです。私の指示に従って移動してください』

 

 

「…そういうことだ!走るぜ!」

 

 

「ああ…全く!」

 

 

………………………

 

 

日が沈むころ、やっと建物の少ない洞窟にまでたどり着いた。警戒がかなり厳しく、遠回りを余儀なくされたために時間がかかった。

 

 

「…ここからは人間の勢力圏を抜ける。少しは安全だろう…妙な話だがな」

 

 

「これで俺もアンタもお尋ね者ってワケだ。あと…そっちの姉ちゃんも。アンタ誰?」

 

 

「おっと…状況に呑まれて自己紹介の機を逸していたな。改めて、私はケイ。ケイ・サカモトだ。今後ともよろしく頼む」

 

 

「妙な名前だな。いや、こういうのがたまにいるのは知ってるんだが…」

 

 

「ゴーストが言うには、私のルーツは極東の島国だそうだ。呼びづらいのも、髪や目が真っ黒なのもそのせい」

 

 

「フーン…いや、目が黒いのはその…ヘルメットで見えないんだが、とりあえず了解だぜ。もう知ってると思うが、俺はザナリー3、エクソだ。これからよろしくな!ケイ!」

 

 

ザナリーがわざとらしい動きと表情で彼女に握手を求め、ケイが適当に応える。

どうやら彼女はこういう輩の対処法をよく知っているらしい。

 

 

「ええ、よろしく。もっとも、私の興味の対象はあなたじゃないけど」

 

 

ケイがこちらを見る。

 

 

「何もない。ライフも、俺も、研究したところで大したことは得られないだろう」

 

 

『私も自己スキャンに加えて論理的自己再定義は定期的に行っていますが、今のところ内部的な異常は見つかっておりません。損傷やエネルギー不足は別ですが…』

 

 

「大したことが見つかるかどうかは、これからの私が決めること。あなた達は普通にしてるだけでいい」

 

 

「あのー…俺は?」

 

 

「さっきも言ったけど、あなたはただのハンターでしょう?さっき使った透明化だってハンターの…1スキル…に…嘘」

 

 

「お、分かった?俺の魅力に気づいちゃった?ちなみに光は使ってないぜ〜?」

 

 

「光なしで透明化するとしたら…あなたまさか!」

 

 

「イエス!ちょっとセクハラじみてるけど、俺の腹に秘密があるんだぜ!見る?どうだ?研究する?」

 

 

「え、ええ、そうね。あなたも十分研究対象になりうる。また今度、ゆっくりお話しましょう…」

 

 

「おっ、動揺してる?話し方変わってるぜ?」

 

 

「っ…今後、あなたが静かになるプログラムの開発も並行して行う。覚悟しておけ」

 

 

「おお、そいつはいい。是非協力させてくれ」

 

 

「おいおい〜!せっかくの再会なのにこんなに冷たいのか?アンタ達を助けたのは俺だぜ!?」

 

 

「…ああ、そうだった。ザナリー3。俺達を何故助けた?」

 

 

「おおっと、いきなりシリアス…ハハ、まあ…大したことじゃない。ただ、俺はアンタとライフ君に借りがあることを思い出しただけだ」

 

 

「借りだと?」

 

 

「弾薬とか、あと安全とか…えっと、あと…あ〜…やっぱりこういうのは性にあわないな。…要するに、借りってのは俺の言い訳だよ。俺は1人になるのが恐くなった。だから恥をさらしながらアンタのとこに戻った。それだけだ」

 

 

『ザナリー3の同行に対して私は賛成です』

 

 

「ライフ、静かだと思ったら…全く。良いだろう。お前は多少戦力になることは知ってる。これからはチームだ。それと…忘れ物だ」

 

 

ずっと背負っていたカバンを投げ渡す。身体がずいぶん軽くなったような感じだ。

 

 

「これは…おお!まさか持ってきてくれてるとは!やったぜ!ハンドキャノンの弾薬が無くなって、もう透明化してナイフ振るしかなかったんだ!」

 

 

「タイタン、ハンター、ウォーロック…ファイアチームとしてはバランスがいいな」

 

 

ケイが感慨深そうにつぶやく。

 

 

「フン。それは皮肉か?光がなければクラスなど、あってないようなものだ」

 

 

「フフ。ガーディアンは光だけじゃない。あなたも知っているだろう?」

 

 

「…いや、光なくしてガーディアンはガーディアン足りえない」

 

 

「…何かあったのか?」

 

 

「何も無かった。何もできなかったからこうなっている…この話は終わりだ。ケイ、お前がここに来るまでに、何か情報は得ていないのか?」

 

 

「そうか、今は触れないでおく。…それで、情報か。私も光を失ったガーディアンの1人だ。ついこの前までは必死に逃げるしかなかった…」

 

 

「つまり、何も知らないってことか?」

 

 

「ザナリー、静かにしてろ。お前が入ると話がおかしくなる」

 

 

「へいへい…隅の方でライフ君と遊んでるぜ」

 

 

『えっ、私もですか?』

 

 

「…ライフ、行け。お前は多少離れても会話は聞こえるだろう」

 

 

『…分かりました』

 

 

「…続けるぞ。私のゴーストは常に仲間の発信する電波を受信し続けていた。例えば、ザヴァラが率いるチームは今惑星タイタンにいる。フォールンとハイヴに押されていたらしいが、とあるガーディアンの増援で持ち直したらしい」

 

 

「とあるガーディアン?」

 

 

「ああ。噂程度の情報だが、最近起こったヨーロッパ・デッドゾーンの情報網の復元や、地下の敵の撃破に一役買ったらしい」

 

 

「…一説には、光を取り戻したんじゃないかとも言われてる」

 

 

「何だと!?」

 

 

思わず立ち上がり、声を荒らげる。

 

 

「落ち着いてくれ。まだ確証は得られていないし、皆がそういうヒーローを求めるのは自然なことだ。それが真っ赤な嘘であったとしても」

 

 

「だが、もし本当に光を取り戻していたとしたら」

 

 

光を取り戻す方法があるということだ。つまり…

 

 

「俺は…光を捨て、敵の力を利用し、ガーディアンの姿まで失った俺が、光を取り戻したガーディアンに敵わなかったとしたら…俺は何をしてきたことになる?俺は一体どうなる…」

 

 

「…残酷なようだが、過去は変わらないし、君は君なりのベストを尽くした。そう思うしかないだろうね」

 

 

「ああ。お前にとっては他人事だ。まさしくな…」

 

 

「タイタンは、ガーディアンはこの程度で打ち負かされるほど軟弱ではないはずだ」

 

 

「俺はガーディアンではない!研究だか何だか知らんが、俺をガーディアンと呼ぶなら協力はしない」

 

 

「わ、分かった。すまなかった…」

 

 

「…いや、謝るのはこっちだ。何も知らないのに当たり散らしてしまった。研究は好きにしてくれ…」

 

 

「ライフ。俺は少し眠る。彼女の相手をしてやってくれ」

 

 

『今度はウォーロックの会話相手ですか?全く人使いが荒いんだから…まあ、ハンターの遊び相手よりはマシですが』

 

 

「ひでえ!」

 

 

「やかましい!外の警戒でもしてろ!しばらくしたら交代してやる…」

 

 

「おお、そりゃいい暇つぶしだな。警戒中何もなければもっと暇になるけどな!」

 

 

「………」

 

 

「じゃあ、行ってくるぜ。ケイ、こんな気難しいオッサンだが、別れるなら早めがいいぞ。こんなんでも愛着ってのは湧くもんだ…」

 

 

「ああ、考えておくよ」

 

 

「聞こえてるぞ!」

 

 

「ハハハ、聞こえるように言ったんだよ!」

 

 

「全く…」

 

 

夜は更けていく…






ということで、どこかにいるPC君について少しだけ触れました。今はタイタンの問題を解決したあたりかな。
光はもうないと諦めた末の結果であるゾンビ君にとってはアイデンティティの危機です。どうなることやら。


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