ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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そういえば、時々はじめの方に書いている伝承風の文章ですが、深い意味はあったりなかったりします。今回は割と書きたかっただけです。




レベル14.亡霊

 

 

月、『ヘルマウス』での会話記録

 

 

「なあ、それはなんだ?その胸に下げてる石のペンダントのことだ」ーー新米のハンター

 

 

「これか?これは俺だ」ーーベテランのウォーロック

 

 

「いや、アンタはそこにいる。俺と話してる」

 

 

「俺はここにはいない。もっと遠く…いや俺は、もうどこにもいないのかもしれない」

 

 

「何の話だ?意味がわからない」

 

 

「俺達は死ぬが、生き返る。だがその間に何があったか知ってるか?」

 

 

「ある時、この【間】が恐ろしくなった。だから俺をここに封じこめた。俺が壊れない限り、身体が死んでも、俺はここで全てを見ていられる」

 

 

「自己暗示か?」

 

 

「そうではない。事実だ。俺はハイヴ魔術により魂を分け、ここに移動させた」

 

 

「何だと?ハイヴの忌まわしい力を使ったのか?」

 

 

「忌まわしい?ハイヴは純粋だ。純粋な死だ。そもそも…敵の技術を流用することの何が悪い?」

 

 

「このことはバンガードに報告させてもらう」

 

 

「そうか…残念だ」

 

 

「なんだと?」

 

 

「歯。先端。お前は年老いた影だ。苦痛。腫瘍。そして…」

 

 

「何をしてる?おい!やめろ!」

 

 

………………………

 

 

 

あれからまた数日が経過した。

 

 

ザナリーは俺をからかってくる以外はよく働く。ケイについても、時々俺やライフに妙な質問を投げかけてくるがそれだけだ。突っ込むザナリーや俺の援護が非常に上手く、今では作戦を考えるのも彼女の仕事だ。理屈っぽく、また考え過ぎて視野が狭くなる時もあるが、その時は俺やザナリーが意見する。

俺達はかなり安定した戦いができるようになっていた。

 

 

これなら自分達が生きるだけでなく、ほかのことにも目を向けられるだろう。

…それこそ、ガーディアンの仕事の真似事だってできるかもしれない。

 

 

…ただ1つの懸念を除けば。

 

 

『痛みますか?』

 

 

「いや、最近はもう痛みは感じない」

 

 

俺達は木製の廃屋をキャンプにして休息をとっていた。あちこち軋んでうるさいし、床には穴が空いていてよく足が抜けるが、雨風をしのぐには十分だと判断した。

ライフは俺にライトを当てるのをやめて考え込む。

 

 

『ふむ。エーテルの供給を最低限にしたからでしょうか』

 

 

「そうかもな。身体の肥大化も前ほど早くない」

 

 

『やはりエーテルの供給量が身体の肥大化に直結しているようですね。ケイはどう考えますか?』

 

 

「前例が無いことだから難しいが、私が考えるにこれはかつてのガンのようなものだ」

 

 

『ガン、ですか』

 

 

「なんだそれは」

 

 

「ああ。ガンというのは病の1種だ。黄金時代までは不治の病だったらしい。私も文献でしか知らないがな」

 

 

「それが、どう俺とつながるんだ」

 

 

「ガンの治療法が確立するまでは、患者には2つの選択肢しかなかった。すなわち、進行を弱めて死を遅らせるか、ガンに罹った部位を健康な部分ごと切除するか」

 

 

『…今のゾンビさんは前者であると?』

 

 

「そうだ。結局のところ、根本的な解決をしなければ、君は遅かれ早かれ完全なる人外と化すだろうな」

 

 

「なんだ。最初からそう言え」

 

 

「例を挙げて話した方が分かりやすいだろう?」

 

 

「どうだかな。そもそも例を知らないなら意味がないんじゃないか?」

 

 

「それは受け取り手次第だ。そもそも会話による理解というのは実際の割合にして…」

 

 

「ああ。もういい。その話はまた俺の墓ができた時にしてくれ。それで、結局俺はどうしたらいいんだ?」

 

 

「言っただろう。根本的な解決だ。つまり原因の究明、解決策の模索。ガンのように、解決策さえ確立してしまえば、不治の病はほんの少しの損失に変わる」

 

 

「何も分からんということか?」

 

 

「そうとも言える」

 

 

『では、我々はゾンビさんの変化を抑えながら研究し、解決を目指す…つまり今まで通りというわけですね』

 

 

「…なあ…お話中失礼するんだが…」

 

 

「どうしたザナリー、敵がいたか?」

 

 

「いや、ちょっと話を…いやほとんど全部聞いてたんだが…なあ、つまり、アンタ達は【よくわかんないから現状維持で】って言うためだけにそんだけの時間を費やしたのか?」

 

 

「………」

 

 

「…はあ、ザナリー…あなたは本当に…」

 

 

「あー、いや、俺の勘違いならいいんだ!ただ、その話に弾丸の1発分以上の価値はあったのか気になったんだ!」

 

 

「…物事の本質は結論にだけある訳じゃない。複数の事実。複数の意見。そして複数の分析…結論はその先にあるからこそ価値がある。結論や結果が同じであっても、そこに明確な根拠があることに意味がある。説得力が増す」

 

 

「…なるほどな!ハハ…今度からアンタ達の話は立ち聞きしないようにするぜ」

 

 

『理解を諦めるのも1つの選択ですね』

 

 

「そういう事だ。ライフ君は優しいなぁ感動しちゃうぜ」

 

 

『では、私をボールにして遊ぶのを控えてくれると嬉しいのですが』

 

 

「そりゃムリだ。今ある娯楽の中で1番楽しいんだからな!」

 

 

『ああ…助けて…イヤだ…』

 

 

「ザナリー」

 

 

『ゾンビさん!』

 

 

「…ほどほどにしておけ」

 

 

「了解!流石ダンナだ話が分かるぜ!」

 

 

『………』

 

 

ライフは静かになった。

 

 

………………………

 

 

「ケイ、お前に師匠はいるのか?」

 

 

「師匠はいなかった。あえて言うならゴーストが私の師匠だ」

 

 

『質問に答えていただけです』

 

 

ケイのゴーストはライフに比べて寡黙だ。必要とされたり、ケイの話の補足程度にしか話さない。

 

 

「ウォーロックの素質が高かったということだな」

 

 

「そうかもしれない。師匠はいなかったが、仲間はいた。チームを組んで研究に打ち込んだりもした。今は…どこにいるか分からない」

 

 

「そうか。死ぬ前に見つかるといいがな」

 

 

「ああ。…あっ」

 

 

「どうした」

 

 

「1つ、忘れていたことがあった…お前より先に、敵と融合したガーディアンがいたんだ」

 

 

「融合…という言い方は引っかかるが」

 

 

「…あの人も、お前と同じだ。そうせざるを得なかったから、そうなった」

 

 

「気が合いそうだな。タイタンならもっと良かった。それで、名前は?」

 

 

「エリス。エリス・モーン。アウォークンの女性で、行方不明だったファイアチームの生き残り。かつてシティに迫るハイヴの脅威を伝えた」

 

 

「彼女はハイヴだらけの中で身を隠し、生き残るためにハイヴの目を手に入れた。彼女は…私達には聞こえない声が聞こえていたようだった」

 

 

「ハイヴか。あまり参考にはならなさそうだが、話してみる価値はあるな。それで、居場所は分かっているのか?」

 

 

「分からない。そもそも、今生きているのか…」

 

 

「彼女はシティにいたのか?」

 

 

「ああ。ハイヴの脅威がガーディアン達によって退けられた後は、シティの広場の端、影になっているところで景色を眺めていた」

 

 

「あの日、シティから逃げること自体は難しいことではなかった。ましてハイヴの巣から生還する能力があればな…生き残っている可能性は高いだろう」

 

 

「あの日死んだのは勇敢な者達ばかりだった」

 

 

「………」

 

 

「おい!大変だ!」

 

 

ザナリーの声が響く。柱のひびが大きくなった気がした。

 

 

「ザナリー、あまり大きな声を出すな」

 

 

「大変なんだ!今ラジオのオープンチャンネルで話してる!いいから聞いてくれ!」

 

 

《…ザヴァラだ。経緯は先程スロアンが伝えた通りだ。我々は衛星タイタンに集結し、反攻の時を待った。そして…ガーディアンがやってきた》

 

 

「ガーディアンだと…?」

 

 

《彼は我々の懸念をことごとく打ち破った。驚くべきことに…彼は、1度は奪われた光を取り戻していた!》

 

 

「…!」

 

 

思わず顔が歪む。

 

 

《これは福音だ。我々はまだ戦うことができる。希望は残されている!我々はバンガードを再度結成し、リーダーを召集して、反攻作戦を練る…これを聞いているガーディアンがいたならば、我々の発する情報を常に気にかけてほしい。そして覚えておいてほしい…我々はまだ負けてはいないことを!》

 

 

「………」

 

 

「…どうだ?すごい事だぞこれは!」

 

 

「…ザヴァラ…いやほかのバンガードは生きていたのか…」

 

 

「………」

 

 

「どうした?ダンナ、具合でも悪いのか?」

 

 

「…おおおっ!」

 

 

衝動のままに醜く膨れ上がった右腕を振りぬき、地面に穴を開ける。

 

 

「い、一体何だってんだ、落ち着けよ!」

 

 

「……っ!」

 

 

腕を引き抜き、立ち上がる。

 

 

「どこへ行く?外は危険だ」

 

 

「すぐに戻る…1人にしてくれ」

 

 

そう言って、俺はほとんど外れかけの扉を開いた。

 

 

………………………

 

 

『ショックでしたか?』

 

 

「ライフ、黙れ」

 

 

『あなたはその身をフォールンに似せてまで生き残り、力を得た』

 

 

「黙れ」

 

 

『これで戦うことができる。姿は変わっても、光がなくても、また人を守れる…また、ガーディアンの仕事ができる…そう思った』

 

 

「………」

 

 

『でも問題が起きた。あなたは守るべき人間に拒絶された…それが、彼らにとって正しい判断だったとしても、あなたにとっては理不尽にも感じた』

 

 

『……それでも、あなたを保っていたのは諦念。光などない…取り戻した者などいないのだから、こうするしかなかった…状況が悪かった。そう考えることで、自分を正当化していた』

 

 

「黙れ!握りつぶしてやってもいいんだぞ!」

 

 

ライフを掴む。だが、ライフは話すことをやめない。

 

 

『…私はあなたのライフ!あなたの命を預かると決めた!ならば、これは自衛です!私は今、あなたが私から奪おうとするあなたの命を守っている!』

 

 

『光が取り戻せると知ったから何ですか!?あなたはもう取り返しのつかない所まで来ているというのに!フォールンのような身体の何がいけないのですか!?』

 

 

『センチメンタルにふけるのもいい加減にして下さい!あなたが過去にタイタンとして働いたことを、私があなたのゴーストであったことを、今更後悔させないで下さい!』

 

 

「…っ!」

 

 

『…あなたはもう、ガーディアンではない。自分でそう決めた。ならば、今更光など気にしないで下さい。あなたはあなたの戦い方で戦えばいい…光を取り戻したガーディアンがいたことはプラスです。憎たらしい暗黒に痛い目を見せられるチャンスです』

 

 

「……少しの間でいい…静かにしててくれ。頼む」

 

 

『いいでしょう。私はまだ、あなたのゴーストです』

 

 

「…ゴースト…ガーディアン…俺は…」

 

 






ゴーストはガーディアンの乗り換えができるそうです。ラストワードの伝承にもそういった描写がありますね。
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