Destiny2、光がすこぶる上げづらくてライトユーザーにちょっと優しくないのが玉にキズです。おじさんつらいよ…
まあ楽しいからやるんですけど!
「俺はもう逃げないぞ」
「?…急にどうした?まだ眠いのか?」
「決意表明だ」
「フーン…?」
ザナリーが首を傾げる。大げさにやりすぎて身体ごと傾いている。
同時に船が大きく傾き、衝撃が走った。元々傾いていたザナリーがバランスを崩して転がった。
「到着だ。外へ出ていいぞ」
格納庫にエリスの声が響いた。
………………………
「はぁ〜ここがタイタンかあ」
ザナリーが間の抜けた声を上げ、辺りを見渡す。
今俺達が立っているのは惑星タイタン、その海上基地だ。…ボロボロの。
エメラルドグリーンという表現が適切かは分からないが、見渡す限りの緑がかった荒れ狂う海。またそれとは対照的に、空は静かで荘厳な雰囲気を纏った木星をたたえている。…今のところ、タイタンにはそれしか見受けられない。いくつもの太く頑丈な柱が絶え間ない大波から基地を支えており、ひとまずは倒壊の危険はないだろう、というのがバンガードの見解らしい。だが…
「なあ、アレってやっぱり…アレだよな?」
騒がしい銃撃の音と、けたたましい叫び声。所々で蛍光色の魔法陣と黒い霧が生まれては消え、また他方では雄たけびとともに掲げられたブレードがライトに照らされてきらめく。
「…ああ。ハイヴとフォールンだな。戦っているらしい」
「まあ、そう…だよ、なあ…タイタンは安全なんじゃなかったのかよぉ!」
「騙したようで悪いが、我々はここが安全とは一言も言っていない。ただここにガーディアンを呼び、戦力を集めようと思っただけだ」
「!ザヴァラ…!」
「お前がタイタンであったことは報告にも上がっている。……お前が未だ誇りあるタイタンであることを願う」
「そんなことは、問われるまでもない。俺はガーディアンとして生きることを諦めてなどいない」
「ならいい…こっちだ。とりあえず、顔合わせを済まそう。ウォーロックの彼女についても、別の者が案内している」
「お、歓迎会の準備は万端なのか?」
「キャプテンとウィザードならお前達を諸手を挙げて歓迎するだろうが…残念なことに、ここには物資がない。歓迎会は遠慮してくれ」
「そうか…」
ザナリーが大げさすぎるほどに肩を落とす。ザヴァラはそれを一瞥すると踵を返して歩き出した。
………………………
「これは…また、ソーソーたるメンツで…」
案内された部屋をぐるりと見渡す。元は会議室だったのか、中々の広さだ。モニターや空調設備はほとんど壊れているが。
部屋にはザナリーと俺のほかに、先にここへ案内されたというケイとエリス、タイタンの幹部であるスロアン、ジャンプシップ技師のアマンダ、そしてバンガードの3人のリーダーが揃って立っていた。
「それだけ、お前達を重大に見てるってことさ」
濃紺を基調としたカラーに角が目立つハンターがこちらの驚きに答える。ケイド6。バンガードの、ハンターの代表者だ。
「私達がここにいるのは調査のため。申し訳ないけど、しばらくの間あなた達に行動の自由は保証されないと思ってほしい」
冷静に説明を続けるのはイコラ・レイ。ウォーロックのリーダーとしての活躍もさることながら、彼女は高名な研究者でもある。
「ここの施設を利用して、お前の身体について分析を進めることになる。覚えておいてくれ」
最後にザヴァラ。タイタンのリーダー。実直なリアリスト。ここにいる誰よりも、正義を追い求めている。かつて、俺も何度か彼と直接話したことはある。…面影もない今では、思い出すことなどできないだろうが。
「…あ、自己紹介がまだだったな。俺はザナリー3。見ての通りエクソのハンター…元。地球ではこのダンナについていってた。光はないけど、透明化はできる。こうやって…」
そう言うや否や、ザナリーが透明化を発動する。にわかに室内がざわついたが…
「そいつはすごいが、いきなりやるな。みんながビックリするだろ?ああ、もちろん、俺以外のみんなが、だ。俺はビックリしてない」
いつの間にかザナリーの後ろに回っていたケイドがハンドキャノンの柄で頭を小突く。と同時に、ザナリーの透明化が解除された。
「オイオイ初見だぜ!?いきなり見破るかよぉ!」
「透明化を見慣れてないハンターなんかいるのか?ま、お前より俺の方が何枚も上手だったってコトだ」
「自信なくすぜ…」
うつむくザナリーを横目に、ケイが控えめに手を挙げた。
「…もういいか?次は私だな。私はケイ・サカモト。ウォーロックだ。彼のゴーストについて研究するために同行していた。光は取り戻していないが、戦闘は可能だ。よろしく」
「あなたの論文は読んだことがある。よろしく。今度、また話しましょう」
イコラがケイに反応する。彼女達の会話に混ざるのは良くない予感がする…
「光栄だ。是非とも」
なんというか、先程に比べて穏当すぎる自己紹介が終わった。視線がこちらに集まってくる。
「…俺か。今はゾンビと名乗っている。元はタイタンだったが…生きるため、また暗黒と戦うために、フォールンの身体を取り込んだ…それ以上のことについては、また研究してくれ」
「…お前の得意な武器はなんだ?」
ザヴァラが話しかけてくる。
「質問の意図が読めんが…オートライフルだ。正面からグレネードを投げ込み、リフトで正面から高速で突撃する。そうすれば大抵の敵は倒せる」
「…クラスは何を好んだ?」
「…必要に応じて使い分けた。あらゆる戦術を取り、敵を殲滅できる者こそ真のガーディアンだ」
「…アイアンバナーに出たことはあるか?」
「……マシンガンを求めて出場したことはある。だが、あまり好まないな」
「そうか。お前はシティ成立前からガーディアンだった。そうだな?」
「……ああ。そうだ」
「…お前には…アイリーンという仲間がいたか?」
「………」
ザヴァラがこちらを見据えている。視界がゆらぐ。視野が狭まり、目の前の男に集中していくのが分かる。
「違うか?」
ザヴァラは不敵な笑みを浮かべた。もしくは、俺の目にはそう見えた。
「何のつもりだ。研究するならさっさと俺を研究室でも牢屋でも連れていけ」
身体の奥底から熱が湧き上がってくる。思考が鈍化していくのを感じた。
「答えろ。お前にはアイリーンというタイタンの仲間がいただろう」
「…何が言いたい」
右手を握りしめる。三本指が器用に噛み合って鈍い音を立てた。左腕で右手を抑えた。
「いや…他意はない。かつての同胞、そしてメリディアン・ベイの英雄に出会えて嬉しいのだ…なあ、【暴風のガンドール】」
「…俺をその名で呼ぶな…!」
言ってはならないことを口にした目の前の男を、どうやって殺してやろうかと頭が回転を始める。無理矢理押さえつけた。
「そうか。異名を持つのは名誉なことだと思ったのだが…仕方ない。では、今度は我々だな。知っての通りだが、私はバンガードの…」
そこから先は、よく覚えていない。嫌な熱のこもった感情を抑えることに必死で、人の話など到底聞こうとは思わなかった。気がつくと俺は個室に通され、設置されていた椅子にうつむいて腰掛けていた。
『【暴風のガンドール】…彼は知っていたようですね』
「黙れ…」
『……もう、乗り越えたと思っていました』
「…アレは、俺だけは絶対に忘れてはならない」
『そうですか…そうでしょうね』
「……アイリーン…」
『…今日はもう寝ていいそうです。エーテル残量も十分ですし、睡眠をとることを勧めます』
「…ああ、そうだな…」
ベッドに横になる。俺の重さに、スプリングが悲鳴をあげている。ちゃんと人間用の部屋を与えてもらったのは僥倖か。もっと実験動物のような扱いを受けると思っていた。
『…【彼】は、今も火星に眠っているのでしょうか…アイリーン。カバルの軍勢を食い止め、名誉ある死を遂げたタイタン…あの日、同じファイアチームにいた我々にかけられた枷は、未だ重いようです』
しばらくの沈黙の後、俺は意識を手放した。
ザヴァラの質問がいきなりすぎるぜ!って思われそうなので補足。本編にはちょっと入れづらかったのもありますが。
いきなりの新設定(一応プロット通り)ですが、ゾンビさんはかつて、功績を上げてガーディアンの間で有名になったことがあります。
またザヴァラは元々、ゾンビさんの正体についてある程度アタリをつけていました。元タイタンであること、戦うことを諦めず、またそのために手段を選ばないこと(自分の身体でさえも顧みない点も含めて)、またその割にメンタルが弱いことなどから、その有名になった彼によく似ていると予測を立てたというワケです。
ゾンビさんの過去についてはまた次回以降に!では!