ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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構成上、今回ちょっと短めです。なおかつ、説明回です。




レベル18.懸念

 

 

「それで?」

 

 

曰く、フォールンの身体を取り込んだという人間離れした大男が部屋から出ていったのを見送ると、ケイド6がザヴァラに問いかけた。

 

 

「何がだ」

 

 

「オイオイとぼけるなよ。なんであんな、神経を逆撫でするようなこと言ったんだ?」

 

 

「……かつて、彼は英雄だった」

 

 

「それは俺も知ってる。メリディアン・ベイの砂嵐の中の撤退戦で、最後まで残ってカバルの精鋭部隊を1週間も食い止めた伝説のファイアチームの生き残りだ」

 

 

「少なからず、私は彼を尊敬していた」

 

 

「勲章を贈って、伝承に残そうと言い出したのはお前だったもんな。ガーディアンの間では、【暴風のガンドール】と呼ばれて有名人だった。で、それがどうしたっていうんだ?」

 

 

「彼はそれを頑なに拒んだ。何故かと聞けば、『俺にはその資格がない』の一点張りだった」

 

 

「…ザヴァラ?」

 

 

「事実を知る必要があると感じ、私は調査を命じた。彼にもいくつか質問をした…あの1週間に何があったのか、どうして彼は戦士としての誇りを、心構えを全く失い、まさに死んだような目をしていたのかを知るために」

 

 

「………」

 

 

「結果、戦場跡で見つかったのは何名かのガーディアンの死体と、ボロボロで使い物にならないような装備や物資の残骸…分かったのは、彼があのファイアチームの唯一の生き残りであったことと…彼の証言によれば、【彼自身の手で仲間を殺していた】という事実だった」

 

 

「…それは過去にバンガードで1度議論した。戦略上必要で、仕方のないことだったと結論も出ている」

 

 

イコラが口を挟む。

 

 

「ああ。確かにそうだ。あの時は物資もなく、彼が殺したのはもはや戦えなくなったガーディアンのみ。戦うために必要な犠牲だった」

 

 

「…たとえその犠牲の中に、彼の親友がいたとしても」

 

 

「私は冷酷な人間だ。必要とあれば、トラベラーや市民のためにバンガードに所属するガーディアンを…まるで捨て石のように扱う判断を下すだろう」

 

 

「だが、私は同じファイアチームとして長年共に戦った仲間を、必要だからと言って切り捨てられるのか?自らの手で、息の根を止められるのか?調査結果を見たとき、私は自問した…結局、答えは出なかった」

 

 

「私は知りたかった。彼は何故その判断を下せたのか。彼がその時どのような感情を得たのか、彼が廃人のようになったのは何故か…だが、彼の口からそれが語られることはついぞ無かった」

 

 

「そのために、まるでからかうようにあんな質問をしたのか?」

 

 

「…それもある。だが、最も大きな理由は、彼が我々に仇なすのではないかと疑っているからだ」

 

 

「なんだって?お前はデヴリムが正しいと思うのか?」

 

 

「そうではない。私はリスクを想定したのだ。つまり…彼が極端に衝動的であったり、危険な思想を持った人間であった場合をな」

 

 

「戦いが始まると誰彼構わず襲いかかるだろうって?それとも必要なら仲間を殺すことに躊躇しないような、危険なヤツってことか?」

 

 

「そのような傾向がないことは後に行った彼についての調査でも分かっている。だが、調査だけでは分からないこともある…実際、例のガーディアン達の直接の死因は未だ明らかではないのだ。理由についても、彼の言葉や当時の状況から我々が予測したに過ぎないのだから」

 

 

「考えすぎじゃないのか?アイツはお前にからかわれても冷静だった。少なくとも表面上は…」

 

 

「我々は常に最悪を想定して動くべきだ。彼が獅子身中の虫となってはならない……とにかく、私は完全に彼を信用すべきではないと考えている。彼を挑発したのは、衝動的な人物ではないか確かめるためだ。…話は終わりだ。持ち場に戻れ」

 

 

そう言って、ザヴァラは部屋を後にした。

それに続いてイコラも部屋を出、残ったのはケイド6だけとなった。

 

 

「……行ったか…」

 

 

ケイドはぐるりと部屋を見渡すと、ため息をついてパイプイスに勢いよく座り込んだ。

 

 

「…だ、そうだ。ちゃんと覚えたか?」

 

 

ケイドが何もないように見える空間に話しかけると、周辺の景色が歪み、細身の男がばつの悪そうな態度で現れた。

 

 

「アンタには敵わないな〜…物音だって立ててないんだぜ?」

 

 

「盗み聞きとは感心しないぞザナリー3。あと、お前は自分の透明化に自信を持ちすぎだ。透明人間だって無敵じゃないんだぞ?そう、例えば俺みたいな熟練者には簡単にバレるんだからな」

 

 

「それがなんでか分からないんだよなあ〜!」

 

 

「経験と、あとは俺の野性的シックス・センスだな」

 

 

「………」

 

 

「……冗談だ。…半分…いや、6割ぐらいは……ゴホンッ!…それで?お前はこの話を聞いてどうするんだ?」

 

 

「…そうだな…俺はダンナがどんな人かちっとも知らなかった…それに、ザヴァラの考えをダンナに伝えたところで、火に油を注ぐだけだろうし……覚えとくだけにするよ」

 

 

「そうか。英断だな…フー…」

 

 

大きく息をつくと、ケイド6はザナリー3の目を見て再び話し始めた。

 

 

「ザナリー3…俺はお前のことも知ってる。…【臆病者のザナリー】」

 

 

「…ああ、俺は確かにハンター達の中では有名だったかもな」

 

 

「お前のことについてのグチも聞いたことがある…やれ、戦いになるとどこかに隠れて出てこない。やれ、作戦を伝えても『無理だ』としか言わない…」

 

 

「………」

 

 

「お前にどういう理由があって、いまさら戦うようになったのか俺には分からん。彼のおかげなのか、それとも…お前のそばにいないゴーストのおかげか…」

 

 

「とにかく、お前も監視対象らしい。せいぜい気をつけるこった」

 

 

「…ご忠告痛み入るぜ」

 

 

「おう。全力で痛み入れ…ほら、もう行け。俺はこれから上手にサボるんだ」

 

 

「分かった…俺が隠れてたことを黙っていてくれたことには感謝するよ」

 

 

ザナリーが退室する。1人部屋に残されたケイドは、おもむろに両手を頭の後ろに回し、天井を見上げた。

 

 

「さて、言い訳を考えないとな……サボりがバレた時の…」

 

 

「これから彼らの調査が始まる。直接関わることは無いだろうが、俺もきっと忙しくなる…こうやってサボるのも、あと何回できるか…」

 

 

基地の外で、今日何回目か分からないドレッグの叫び声が響いた。足を踏み外したアコライトが海に呑まれ、甲高いシュリーカーの駆動音が遠くから聞こえてくる。

 

 

「…まあ、退屈はしなさそうだな」

 

 

ケイドはそんな状況を横目に、退屈そうにつぶやいた。

 

 

 






主人公不在問題

次回は出します。
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