本編には出てこなかった敵をオリジナル展開として出します。とりあえずまだ特に目立つことはありませんが、苦手な方はお気をつけ下さい。
浅い眠りから目を覚ます。金属製の無機質な天井と電灯を眺め、自分の状況を思い出した。
『おはようございます。本日は恐らく快晴。ただ波浪には十分ご注意下さい』
「そうか」
『先日からバンガードの研究の協力者として、いくつかの実験を行いましたが、今日は会議だそうなのでそれもお休みです』
『私はこれから少しだけケイの研究の補助を行うことになっています。ご用があれば通信で呼んでください』
「ああ、分かった」
ゴーストがドアを開けて廊下に出て行く。ひとりになって沈黙が場を支配した。
右腕を動かす。バキバキと固まっていた関節が音を立て、アンバランスに肥大化した筋肉が収縮する。
「また大きくなったか?」
フォールンの身体だっただけあり、この右腕はエーテルの影響を真っ先に受ける。親和性が高いのだろう。
そして、この右腕が大きくなったことが意味するのは…
「…また装備の作り直しだな…」
採寸から装甲の延伸、場合によっては一からやり直し。今度はどれだけかかるだろうか。身体の急速な肥大化に伴い、頻繁に必要となる身につけるものの更新に頭を痛める。
「…チッ」
更につけ加えるとすれば、この関節の内側から圧力をかけられるような断続的な痛みだ。
顔をしかめながら立ち上がる。このままここにいても仕方ないので、とりあえず外に出ることにした。
と、その時、首元につけた通信機がベルを鳴らした。
誰かからの個別通信だ。
『お、ダンナ起きた?俺より一時間遅れだな!』
「…お前か…」
相手はザナリー3だった。誰から聞いたのか、俺が目を覚ましたことを知ったらしい。
俺は通信を拒否しなかったことを盛大に後悔した。
寝起き、更にエーテルに悩まされて苛立っていたところにコイツと話すだけの根性はない。
『ああ、俺だぜ!なあ、ダンナ今日暇なんだろ?ちょっと外に行かないか?』
「断る」
『まあそんなつれないこと言うなよ!外には暗黒がいっぱいいるんだぜ?少し減らして人類に貢献!ついでにストレス発散で一石二鳥だ!』
「………」
『…ダメか?うーん…あとは俺がダンナの部屋に行って最近作ったジョークでも語りに行くぐらいしかないんだけど…』
「…分かった。行こう…許可は取ってあるのか?」
流石にコイツの長話を聞かされるよりは、暗黒と戦っている方が何倍もマシだ。
『よっしゃ!許可?ああもちろんだぜ。ちゃんとケイドに伝えてある』
「そうか…」
そこはかとない不安を感じたが、流石にバンガードのトップに話が通っているなら間違いも起こらないだろう。
『それじゃ、俺は西側出口で待ってるから、早めに来てくれよ!』
適当に返事をしてから通信を切った。まあ、戦闘すること自体には異論はない。ザナリーに誘われなくとも、今日することが見つからなければ自分から外に行っていた可能性が高い。
ただ、ザナリーに誘われてというのが少し気に食わないというか、引っかかるところだった。
『臆病者』…研究者に聞かされた話によれば、ザナリー3はかつて原因不明のPTSDのような症状を患っていたらしい。
だのに、突然今になって、アイツはむしろ自分から戦いに身を投じるようになった。
その原因は、今のところ分かっていない。
「会った時にでも聞いてみるか…?」
そこまで考えて、らしくないと思考を振り払う。とりあえず、外出の準備を進めることにした。
………………………
準備を済ませて、ザナリー3の言葉の通り西側出口に向かった。
到着すると、1人の男がこちらに片手を軽く上げているのが見えた。
「よう」
「ケイド6?なぜここにいる」
「なんだよ、そう構えるなって。コイツから何も聞いてないのか?」
そう言って、ケイド6は親指でザナリー3を指し示す。
「え?俺ちゃんと言ったろ?ケイド6に話は通したって」
「それはそうだ。だから俺はお前の誘いに乗った。しかし…」
辺りを見渡す。そこには、見覚えのある元ガーディアン達3人が、それぞれ俺を見ていた。
「…あ、そうか、俺ホントにそれだけしか言ってないんだった」
「オイオイ…報告・連絡・相談はガーディアンの基本だぜ?」
「お前がそれを言うのか、ケイド」
俺を見ていたガーディアンのうちのひとりがケイドを厳しい目で見ながら割り込んだ。
「ケイ、説明してくれ。これはどういうことなんだ。どうしてガーディアンが集まってる」
「本当に何も聞いていないらしいな。とりあえず、まずは謝罪しよう。騙したようになってしまってすまなかった。…経緯はこうだ。まずザナリー3がケイド6に外出を申請した際、理由を『暗黒との実地での戦闘訓練』とした」
「ケイド6はそれにかこつけて、1人では危険だからと付き添いを申し出た。もちろん仕事から抜け出して暗黒と戦闘するためだ」
「ただそれがザヴァラの耳に入り、スロアンの助言によって暗黒の殲滅作戦に置き換えられた。そのために選出されたファイアチームがケイド、ザナリー、私、お前、そしてこの2人ということになった」
「ケイドはザヴァラには黙ってこっそり行くつもりだったらしいがな…」
ケイが再度咎めるように細目でケイドを見つめる。
「これじゃ仕事と変わりないぜ。ま、外で戦闘できるなら何でもいいんだがな」
ケイドはその視線を意に介さず腕組みをして軽口を叩いた。
「ちなみにこれら全て、俺の知らないところで起こってた!俺もさっき聞かされた!ケイドはウソつきだ!」
ザナリーが弁明する。
「ウソつきって…ひどくないか?」
「…それで、この2人はどうやって選出されたんだ」
ファイアチームは基本3人か6人チームで動く。作戦規模によって異なるが、この枠から外れることは基本的にないので数合わせと言えば疑問はない。
「バンガードから派遣されたガーディアンだ。忠誠心というか、正義感が強い。まあ…お前達の監視役だな」
あっけらかんとした態度でケイドが話す。
「監視役…か」
「ま、そういうことだ。色々調査はしたが戦闘は今回が初めてだしな。研究も兼ねてるんだろ。気に食わないだろうがまあ許してやってくれ」
「俺はバンガードに反逆などするつもりは無い…それを今回で証明してやろう」
「そりゃ頼もしいな!いいぞ、楽しくなってきた」
ケイド6が足踏みをする。今にも飛び出したくてうずうずしているようだ。
「待て。作戦となったからには目標がある。今回は近隣のフォールンの漸減…可能ならば殲滅と、最近降り立った新たなアルコンプリーストの調査だ」
「アルコンプリースト!フォールンの司祭か!手応えありそうだ」
ザナリーがハンドキャノンを手でくるくると回している。しきりに透明装置をもう片方の手で確認しているのは見なかったことにした。
「もちろん生存が最優先だ。フォールン拠点に到達して観測するだけで、撃破は狙わなくていい。お前達は戦力としては能力があっても、何分急造のファイアチームだからな」
「まあ、そもそも光もないしな。キャプテンにも勝てるか怪しい」
「以上だ。作戦指揮および撤退の判断はリーダーであるケイド6が行う。作戦中は彼の指示に従ってくれ」
「テキトーなこと言って混乱させないでくれよ?」
「大丈夫だって。俺が信じられないのか?」
「ソーセージをくれたら信じるかもな」
「お前は食えないだろ?まあ俺もだが」
「スロールどもにやるんだよ!アイツら痩せてるからかわいそうだろ?ハハハ!」
「………ああ、そうだ。お前からライフを借りていたんだった。研究の参考になった。ありがとう」
『…ああ、よく寝ました。…あれ、ここはどこですか?』
「……地獄の入り口だ……」
俺はこれから作戦中、延々とこのハンター達の会話を聞き続けることになるのだろうか。
ああ、憂鬱だ。