ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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ちょっと浮気してました。こっちだと書けないようなことも、ネタがあれば書きたくなるもんですよね。ね?
興味があればユーザーから飛べます。多分。よろしければそっちも読んでみて下さい。(露骨な宣伝)
あ、汚いのもあるので注意して下さい。




レベル19.猪突

 

 

 

俺達は今、バンガード臨時司令部を置く衛星タイタン、その海上拠点を見渡している。

チームリーダーであるケイド6がおもむろに口を開いた。

 

 

「さて、どこから攻めるかだが…」

 

 

眼下には悲鳴を上げながら滅茶苦茶にライフルを撃つバンダルと、それに群がり噛みつく無数のスロール達。

キャプテンはそのバンダルごと殲滅しようと、そこへスコーチキャノンの砲口を向けていた。

それを尻目に、ウィザードが怪しげな呪文を唱えてまた何かを呼び出そうとしている。

…戦場は混沌としていた。

 

 

「…ま、こんだけバカみたいにひしめいてんだ。気づかれずに行くってのは諦めた方がいいな…」

 

 

「その前に自己紹介させてくれませんか?」

 

 

考え込むケイドに、バンガードからの監視役として置かれたらしいガーディアンが話しかけた。

 

 

「おお、そうだったな。俺が考えてる間によろしく」

 

 

「ええ。改めて、私はゲイル。ウォーロックです。ご存知でしょうがゾンビさん、あなたの監視役兼サポートとしてバンガードより派遣されています。こちらは…」

 

 

ゲイルと名乗った背の高い男は、隣で腕を組んでいた細身の女性に顔を向けた。

 

 

「…バーツ。タイタン」

 

 

その女性はそれきり話さなくなり、興味なさげに敵を見下ろすのを再開した。ヘルメットで表情はうかがい知ることができなかったが、何かに苛立っているようにも思えた。

 

 

「…ハハ、まあ…悪い人ではないと思います。とはいえ私も親しいわけではないのですが…」

 

 

ゲイルが曖昧に笑う。返事をする気にはならなかった。

 

 

「終わったか?」

 

 

「ああ。バッチリだ。第一印象は最高だな!」

 

 

「ハハハ、ソイツはいい」

 

 

ケイドとザナリーが話している。

 

 

「それで作戦は決まったのか?」

 

 

「ん?ああ、それなんだが…いきなり連携をとれってのも無理な話だろ?確かに俺達は各クラスが2人ずつでバランスはいいけどな」

 

 

「だから、とりあえず…いきなりだが、チームを分けようと思う。つまり俺達バンガードチームと、お前達だ」

 

 

「元々の顔見知り同士で連携を確認して、その上ですり合わせようということですね?」

 

 

「おう、まあ、そういうことだな」

 

 

「いいと思います。私は賛成です。互いの実力を知れるいい機会でもありますし」

 

 

「そりゃ良かった。えーっと…バーツか。お前はどう思う?」

 

 

「………」

 

 

「賛成か。ナイスな返事だな」

 

 

「私も賛成だが、現在我々には光がない。事故防止のためにも、いつでも互いのチームをフォローできるように片方ずつ連携を確認すべきだろうと思う」

 

 

「ケイ!確かにそれはいい考えだな。俺と名前が似てるだけある」

 

 

「恐縮だ。ああ、残りの2人は聞くだけ無駄だから気にしなくていいだろう」

 

 

「え?」

 

 

「…いつも通りだ。ザナリー、お前は俺の邪魔をするな」

 

 

「分かってるよ。あの高台から撃てばいいんだろ?」

 

 

「そうだ。合図はライフがする。あとは好きにやれ」

 

 

「それも分かってるって!」

 

 

「……やる気たっぷりってことだな!いい事だ」

 

 

ケイドは2人の扱いを少し覚えた。

 

 

「んじゃあ、先にお前ら…名前がいるな…えっと…実験体、はダメだな。ん〜…地球から来たし、地球チーム!お前らからやってみろ」

 

 

「ネーミングセンス最悪だな!俺ならもっとカッコイイ名前つけるぜ!」

 

 

「うるせえ!リーダーの決定に逆らうな!」

 

 

………………………

 

 

「ケイ、何か考えはあるか」

 

 

「そうだな。決定力のあるお前は指揮官を狙うべきだろう。露払いは私達がする」

 

 

「そうか。どっちだ?」

 

 

「フォールンが先だ。ウィザードの詠唱には時間がかかるが、スコーチキャノンは引き金を引くだけだ」

 

 

スコーチキャノン。人間の身長ほどもある金属製の大筒で、一部のキャプテン以上しか持つことができない。射出される火砲の威力は絶大で、条件が揃えば戦車砲にも匹敵する。

要は非常に危険なのだ。

 

 

「分かった。ザナリー」

 

 

()()()()()も終わったしいつでも行けるぜ」

 

 

「…ライフ」

 

 

『突入タイミングは計算してあります。今より15.7秒後です』

 

 

「…フー…」

 

 

「ダンナでも緊張するか?」

 

 

「黙ってろ」

 

 

『突入まで3、2…』

 

 

3人が横並びに司令部出口から走り出す。

 

 

『1、0』

 

 

合図と同時に敵地へと飛び降りた。

 

 

「うわーーーーやっぱりいっぱいいるーーーー!!」

 

 

着地に合わせてザナリーが悲鳴を上げる。

 

 

「いいから走れ!ここからは何も言わんぞ!」

 

 

早速飛びかかってきたスロールの首を引きちぎりながら叫んだ。

 

 

「チクショーーー!」

 

 

ザナリーは情けない声を上げながら、追いすがるスロールやバンダルの狙撃を器用にかわしてどこかへと走っていった。

 

 

「ライフ!」

 

 

『増援、4時の方向』

 

 

「ケイ、投げるぞ!」

 

 

「了解。一旦離脱する」

 

 

ライフの示した方向へ向けてフラッシュグレネードを投擲。近くにいたケイは既に場所を変え、混乱した敵へ向けて追撃している。

 

 

『効果を確認。行けます』

 

 

「オオオオオ!!」

 

 

もはや咆哮のようになった声を響かせ、指揮官であるキャプテンまで突進する。

キャプテンが素早くこちらへスコーチキャノンを向けた。

 

 

『シールド展開。ですが、長くは持ちません』

 

 

「分かってる!」

 

 

スコーチキャノンは強力だ。マトモに喰らえば戦車砲のような爆発とともに四肢ぐらいは簡単に千切れるだろう。

であれば、エネルギーでできたシールドで防ぐにも限度がある。そして、その限度は限りなく近い。

 

 

キャプテンから噴気音とともにキャノンが放たれる。砲弾は足元で爆発し、足場とシールドを盛大に削った。

殺しきれなかった衝撃を受けて転倒しかけるが、地につけた右腕を軸に再度加速。一気にキャプテンまで詰め寄る。肥大化し、強靭になった肉体でそのままタックルで押し倒し、力ずくでスコーチキャノンを奪い取った。

 

 

「ウオオオオオ!!」

 

 

『相変わらず蛮族のような戦いですね』

 

 

「やかましい!」

 

 

素早く立ち上がり、バックステップと同時にキャプテンの顔面へ向けてキャノンを放つ。

轟音。シールドで衝撃は防いでいるとはいえ、光と音はそのまま通る。視界がホワイトアウトし、強い耳鳴りに顔をしかめた。

 

 

「どうだ!?」

 

 

『確認中…ええ、おめでとうございます』

 

 

「よし!なら次だ!」

 

 

至近距離からソーラーの大爆発を受けたキャプテンは全身を焼かれ、皮膚を泡立てながら痙攣して動かなくなった。

喜んでいる暇はない。フォールンの群れを離脱し、今度はウィザードだ。

 

 

『高所からスコーチキャノンを撃つのがいいと思います』

 

 

「そうか…っぐ!?」

 

 

背中に衝撃。ブレードで切られたらしい。

ブシューという音が聞こえてくる。背骨に沿って通したパイプからエーテルが漏れているようだ。

 

 

『背後にバンダル!レーダーに反応無し、透明化個体です!』

 

 

「チッ、とにかく離脱だ!」

 

 

その時、バンダルの頭が弾けた。

 

 

「…ザナリー!」

 

 

「ダンナ、そのキャノン貸してくれ!俺が当てる!」

 

 

ザナリー3がアンテナ台のへりからこちらを見下ろしていた。

 

 

「ああ!」

 

 

スコーチキャノンを右腕に乗せ、投擲の構えを取る。

元々キャプテンが肩に乗せて使うような武器だ。あまりの重さに右腕がミシミシと音を立てる。

 

 

「っぐ…」

 

 

「届くか!?いや俺が取りに行くか!?」

 

 

「…なめるな!」

 

 

助走をつけ思い切り身体をねじり、最大限の勢いをつけ、身体全体をバリスタのように。砲弾を射出することに全神経を傾け、スコーチキャノンを大振りに放り投げた。

 

 

「おお、すげえ!で…」

 

 

「ダンナ、これ俺が受け取ること考えた!?」

 

 

ザナリーは絶望した。目前には質量と速度に裏打ちされたエネルギーの暴力。それが自分に向かって一直線に飛んでくる。彼にあったのは恐怖。それのみであった。思わずその場に頭を抱えてしゃがみこんでしまうほどに。

 

 

「クソ、チクショーーー!死にたくねえーーー!」

 

 

「やかましい!そのくらい分かってる!」

 

 

「…へ?」

 

 

「…だが、これは流石に無茶ではないか?」

 

 

ザナリーが顔を上げると、そこではいつの間にか駆けつけていたケイがキャノンを受け止めていた。

 

 

「…ウソだろ!?どうやって!!」

 

 

「スコーチキャノンには反重力装置がついている。重すぎて地面を抜けたりしないようにな。持ち手から一定時間離れると自動で起動する仕組みだ」

 

 

「私や彼はお前が座り込むのを予測していた。キャノンがそのまま吹っ飛んでしまわないように、もう一度『持ち手』が必要だったわけだ」

 

 

ケイが早口に説明した。ザナリーは思いっきり顔を曇らせた。

 

 

「…つまり、俺は役立たずってことか?」

 

 

「何を言う。ほら」

 

 

「え?おっ…とっと」

 

 

ケイがザナリーにスコーチキャノンを手渡す。

 

 

「ここからはお前の仕事だろう。狙撃の腕は彼も認めてるんだ」

 

 

「…おお!そうか!」

 

 

「ダンナ!俺がんばるぜ!」

 

 

「いいから早く撃て!!」

 

 

「了解〜!っと重いなやっぱ……風は弱いしこのくらいか?」

 

 

ザナリーが腕を前に出し、狙いをつける。適当にやっているように見えて、その実かなり正確だ。

 

 

「よし行くぞ……どおりゃああ!」

 

 

バシュン、という噴気音とともにキャノンが砲弾を撃ち出す。ソーラーエネルギーを纏った一撃はウィザードのシールドをいとも簡単に破壊して爆発。魔法陣ごと辺り一面を燃やし尽くした。

 

 

「…うっわ自分で撃っといてなんだけどすごい威力…」

 

 

「よし、後は雑魚を片付けるだけだ」

 

 

「ああ。パイプの修理は?」

 

 

『もう少しです。ここには()()がたくさんありますからね』

 

 

「そうか、では…」

 

 

「おっと待った待った、待った!ストップ!もういいから帰ってこい!!」

 

 

ケイドが基地からこちらへ向けて、突然大声をかけた。

 

 

「どうした!?」

 

 

「いや……俺達がやる分がなくなるだろうが!!」

 

 

「…あー…」

 

 

『………戻りましょう』

 

 

「……そうだな」

 

 

どうやら俺達はやりすぎたらしかった。

 

 






以上です。
今回もお付き合い下さりありがとうございました。

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