ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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お久しぶりです。
回想回です。




レベル20.確執

 

 

アクセスコード・ブルー…認証…研究者よ、歓迎します。

ークロビス・ブレイ機械工学部データセンターに接続…

 

…廃棄データ#3389-52 未確定コード『レーザー』

…ファイル解凍…破損データを確認。データ復元…完了。【我々は、失敗を無駄にしません】

 

…再生開始。

 

 

 

ー自分より偉大なものがあると実感したとき、人は何を思うだろうか。

 

『試験・適用コード3997 承認』

 

これは箱のいらない電子レンジだ。高度に編み上げられた指向性陽電子コイルαスプリング型射出機構により、対象を内側から超高音にまで一気に持っていく。

 

ー我々は、我々が見えている宇宙と本当に向き合っていると言えるのか?

 

『試験・適用コード 4785 承認』

 

これは刃のない医療メスだ。患部をこの先端で切り裂き、いずれ癌を切除するだろう。

 

ー暗黒が迫りつつある。これは切り札になり得るか?

 

『試験・適用コード 4791 条件付き承認』

 

これは兵器だ。敵を殺し、味方を守るためにある。

 

ー生命に対する侮辱。この言葉をここまで陳腐に感じたのは初めてだ。

 

『試験・適用コード 5742 条件付き消極的承認』

 

これは暴力だ。殺した敵から得られるものは何だ?

 

ーこれを必要とするのは誰だ?

 

『試験・補適用コード 6239 危険性の改善を要請』

 

これは神だ。我々がすべきことは、全てこれが教えてくれる。

 

ーどこからやってきた?

 

『試験・補適用コード 6656 計画の根本的見直しを要請』

 

これは毒だ。これこそが、私達を蝕んでいる。

 

ー敵などどこにいる。

 

『ブレイ・コントロールより試験の中止を要請』

 

これは何だ?

 

ーこれは何のためにある?

 

『ブレイ・コントロールより再度試験の中止を要請』

 

俺達は、何を作ったんだ?

 

ー計画を凍結しよう。試作品を破棄。終わりだ。本部に報告。これは【失敗作】だ。

 

『ブレイ・コントロールより即時に音声通信の回復および秘匿資料の公開を要請』

 

本当にそうか?

 

ー何を…

 

『ブレイ・コントロールより/

 

 

 

…アクセスレベル上昇によるコンテンツブロックを確認。 廃棄データ#3389-52 の再生を終了します。あなたのアクセス権限では、これ以上のデータを参照することはできません。ブレイ・コントロールに特別コード発行を申請するか、アクセス権限を向上させて下さい。

 

 

 

………………………

 

 

火星。激しい砂嵐の吹き荒れる中、キャンプで細身の男が端末を操作している。

 

 

『スカイバーナーはまた増援を呼んだらしい。敵は強大だ。このままでは…』

 

 

悲観的に俯く男に、勇ましそうな女が声を荒げた。

 

 

『ならば打って出よう。最後の一人になるまで戦うんだ』

 

 

それを見て、腕を組んだ気難しそうな男が制止をかけた。

 

 

『足止めが任務だ。ここを離れることはできない』

 

 

細身の男は端末をゴーストに預け、ため息をついた。

 

 

『弾薬も少ない…ここは光も届かない。戦うにしたって、どうやって?』

 

 

利発そうな女が冷ややかな声で述べる。

 

 

『方法を模索しよう。周囲の施設や機械を利用するんだ』

 

 

『………』

 

 

男が、座りこんでいるもう一人の男に目をかけた。

 

 

『…ずっと黙っているが、お前はどう思う?【ガンドール】』

 

 

『…そうだな…』

 

 

………………………

 

 

細身の男が、端末を手に目を細めた。

 

 

『カバルが迫ってきている…なあ、本当に成功すると思うか?』

 

 

気難しそうな男が片眉を上げた。

 

 

『俺の計算を疑うのか?【これ】を使うのが一番作戦成功率が高い』

 

 

利発そうな女がつぶやく。

 

 

『【これ】が見つかったのは幸運だった』

 

 

細身の男はおもむろに【それ】を見上げた。

 

 

『幸運…いや…ああ、確かにそうかもしれん』

 

 

『【黄金時代末期の試作レーザー兵器】…とんでもない破壊力だ。こんな砂嵐の中でも、減衰込でカバルの一個大隊に大きな打撃を与えられる』

 

 

『そんな兵器が名前もつけられないままに、偶然にも今までほとんど破壊されずに打ち捨てられていた。それがたまたま長続きした砂嵐で、たまたまここまで砂に乗って流されてきたわけだ。こんな偶然を幸運と呼ばず何と言えばいい?』

 

 

勇ましそうな女が駆けてくる。

 

 

『皆、設置は概ね完了した。あとはエネルギーセルの充填が必要だ』

 

 

細身の男が、何かを決意したように顔を強ばらせた。

 

 

『エネルギー…』

 

 

『…これだけの大出力だ。その辺の発電機じゃものの足しにもなりゃしない、んだよな』

 

 

勇ましそうな女は強気に言い返す。

 

 

『覚悟はしている…いや、いつでも覚悟していた』

 

 

気難しそうな男が機械のチェックをゴーストに指示する。

 

 

『…【光をエネルギーに変換する】…理論は単純だが、誰もやろうとしない』

 

 

『こんなトラベラーの光の届かない所でガーディアンから光を抜き取れば、皆ガーディアンとしての力を失ってしまうだろう』

 

 

『こんな所で力を失えば、待っているのは死だ…リスクが大きすぎる』

 

 

『…しかし、今はそれ以外に方法がない』

 

 

細身の男が、壁にもたれかかった自分を見た。

 

 

『そうだ。やるしかない…【ガンドール】』

 

 

『…頼む…待ってくれ』

 

 

『…ここに至れば、もはや一秒が惜しい…我々は残された僅かな光を使い、このレーザー兵器の弾薬となる。だが…1人。1人だけは、ここに残さなければならない』

 

 

『カバルは狡猾だ。一射目でさえも感知し、回避行動をとる可能性もある』

 

 

『残念ながら、この砂嵐ではレーザー兵器の自動照準は機能しない。だから、原始的な方法をとらざるを得ない…すなわち』

 

 

『君は最前線で戦ったために一番消耗し、エネルギーに変換できる光が最も少ない。だからガンドール…君が砲手だ』

 

 

『…しかし…1人残された俺はどうすればいい?』

 

 

『もちろん光を失っても銃は撃てる。我々で最大限足止めはする…その間に、君は本隊に合流して状況を伝えてきてほしい』

 

 

『そういうことでは…』

 

 

『…分かっているとも。我々…俺が、何年お前と一緒に戦ってきたと思ってる。だが分かっていたハズだ。戦いとは…戦争とは、こういうものだと。明日誰が死ぬとも分からない、クソのような血と鉄でできた汚泥の底に俺達はいるということを』

 

 

『だから謝ろう…ガンドール。一緒に死なせてやれなくてすまない。お前は生きて、俺達の死を犬死にさせないでくれ』

 

 

『………』

 

 

『…さあ、時間がない。セルにエネルギーを充填するぞ…始めてくれ』

 

 

『…俺は、お前達を…そして何よりも俺自身を一生怨むだろうな』

 

 

『………さあ、早く』

 

 

………………………

 

 

「よっしゃー!殲滅完了〜!」

 

 

「お見事!隊長!お大臣!ところで、お大臣って何だ?」

 

 

「細かいこと気にするな!それよりも…」

 

 

「これでお互いの連携は確認できたハズだ。あとは今後の役割分担だが…ガン…えーとゾンビ。お前の意見を聞きたい」

 

 

「………」

 

 

「どうした?」

 

 

「………」

 

 

「ダンナ?いくらケイドのことが嫌いでも無視はヤバいんじゃないか?」

 

 

「お前が一番失礼だな?」

 

 

「………ああ、すまない。少し考え事をしていただけだ」

 

 

『嘘です。彼は浅い眠りの状態でした。ちなみに夢まで見ていました』

 

 

「お前…!俺の活躍を見ていなかったのか!?」

 

 

「ケイドの活躍なんか皆見飽きてるだろ」

 

 

「良いものってのは何回見ても良いんだよ!」

 

 

「あー…」

 

 

『お互いの連携について、意見を聞きたいそうです』

 

 

「…タイタンが前線、ハンターが遊撃、ウォーロックは…好きにやらせればいいんじゃないか?」

 

 

「……それは…そうだが…」

 

 

『ガーディアン成立時代より変わらないイメージですね』

 

 

「…まあ、それについては俺としても異論はない。とりあえずそれで様子を見よう」

 

 

「じゃあ、クラスごとにペアを作ってカバーさせよう…俺は不本意だがこのバカとだ。ゲイル、お前はケイと協力して作戦にあたれ。バーツ、お前はゾンビのペアだ」

 

 

ケイドがそう言ってバーツ…もう一人のタイタンの方を向いた。

 

 

「断る」

 

 

「…何?」

 

 

「断ると言った」

 

 

「…上司に敬語を使わないお前にナイフを投げるのは後だ。理由を聞こう」

 

 

「…私はコイツを監視するために来た。協力するために来たのではない」

 

 

「監視は任務のひとつに過ぎん。本来の作戦を果たせ。それとも…何か別の理由があるのか?」

 

 

「…私は、『暴風のガンドール』を許さない。ハッキリ言おう。今すぐ殺してやりたい。だから組めない。いつコイツの背中を撃つか分からんからな」

 

 

「………」

 

 

「…集合〜!ちょっ…集合!作戦会議やり直し!!」

 

 

ケイドが悲痛に叫んだ。

 

 






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