ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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また過去編というか、補足回というか。話進みません。
考えてるうちにどんどん話が延びていきます。なぜだ。




レベル21.歳月

 

 

 

数年前

シティ/『タワー』の一角

 

 

「…『メリディアン・ベイの撤退戦』?そんなの聞いてどうするんだ」

 

 

「真実が知りたい」

 

 

「真実だって!?おいやめてくれ!俺は哲学と集合体がどうしてもダメなんだ!鳥肌が立つからな…それ以上話をややこしくするな!」

 

 

「…では、メリディアン・ベイで何があったのか、かの戦いから帰還した『彼』の第一発見者であるあなたから詳しい話を伺いたい」

 

 

「その喋り方にも少々寒気を感じるが、ギリギリOKだ…それで、『メリディアン・ベイの撤退戦』か…聞いてもそこまで面白い話じゃないと思うんだがね」

 

 

「面白いかどうかは問題ではない。私は知りたいだけだ」

 

 

「そうかよ。まあいい…あの日、俺は火星にいた。まあ、当たり前だが。簡単に言えば、カバルのスカイバーナーが大部隊をよこして、俺達は負けた。負けたから逃げた…」

 

 

「だが逃げきれなかった。ヤツらの方が足が早かったんだな…そうなると、『トカゲのしっぽ』が必要だ」

 

 

「部隊の殿として、敵の追撃を食い止める部隊を選出したと」

 

 

「まあ、そういうことだ…それで、しっぽには、敵が無視できないぐらいの強さが必要だった。そこで選ばれたのが『エイリーク』!」

 

 

「……エイリーク…優秀なウォーロックだった。いつも藍色のバンドを腕に巻いていた」

 

 

「なんだ、知り合いか?…とにかく彼はファイアチームを編成…といっても昔から連れ添った固定メンバーだったらしいんだが、そいつらと共にカバルを食い止めた!」

 

 

「そこから先は俺にもよく分かってない…ああ、俺がビビって逃げ道しか見えてなかったわけじゃないぞ?スカイバーナーとエイリーク達が戦った所は、光も通さないくらいのすごい砂嵐だったんだ」

 

 

「2週間が経って、全ての部隊が撤退を終えて、再編成の準備が始まった日の朝だ。今までずっと渦巻いていた砂嵐が突然嘘のように止んだ。急遽調査に出た俺達が見たのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…それが…『暴風のガンドール』」

 

 

「よく知ってるじゃないか。そう、そいつこそがあの有名な『暴風のガンドール』だ。ファイアチームが自分以外全滅した中で戦い抜き、一人でカバルを撤退にまで追い込んだタイタンの英雄!お前もタイタンなら憧れるだろ?」

 

 

「…続きを話してくれ」

 

 

「…俺の知るタイタンはこの辺で叫んだり拳を振り上げるんだが…珍しいな…」

 

 

「それで、続きか…『ガンドール』はバンガードに事の詳細を伝えた。とはいえその内容のほとんどは秘匿されたらしいんだが、彼は帰還して一言目に…何て言ったと思う?」

 

 

「………」

 

 

「…何か言ってほしいんだが…ゴホン!えー…『俺が殺した』だ。なんて勇ましいんだろうな!」

 

 

「本当にそう思っているのか?」

 

 

「勿論だとも」

 

 

「………()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「……どこに疑う理由がある」

 

 

「………」

 

 

「…なあ、そんな目で見ないでくれないか」

 

 

「………」

 

 

「……あーー!分かった!分かったよ!全部正直に話す!だからそれ聞いたらさっさとどっか行ってくれ!」

 

 

「恩に着る」

 

 

「そんなもん着るな!二度とこの話を持ちかけないでくれればそれでいい!」

 

 

「はあ、全く…もう知ってるんだろうが、『俺が殺した』の話には続きがある…まあ、これもいい機会だ。詳しく話してやろう」

 

 

「少し遠回りに話すが、『暴風のガンドール』という二つ名…妙だとは思わないか?」

 

 

「妙、とは?」

 

 

「タイタンの二つ名がつけられるのは、大抵の場合本人が大きな功績を残した時だ…つまり、敵の大将を撃破すれば『クロタの最期』と名付けようとしたり…まあ、例外もあるが…」

 

 

「俺が言いたいのは、本人の功績から来ている以上、二つ名は勇ましく、格好よく、そして…ポジティブだということだ」

 

 

「『暴風』」

 

 

「そう。『暴風のガンドール』…確かに、彼はメリディアン・ベイの大砂嵐の中からカバルを退け、生き残った…これだけ見れば何とも勇ましく、力強い二つ名だろう」

 

 

「だが、真相はもう少し複雑だった。…バンガードは皆に伝えていないんだが…誰にも言うなよ?…彼はあの時『俺が殺した』と言った後に、こう付け加えた」

 

 

「…『仲間も全員』」

 

 

「…仲間を、殺したのか?」

 

 

「『彼』が言うにはな。『暴風』は、それが通った道の上にあるもの全てを傷つけ、破壊し、そして何事もなかったかのように通り過ぎていく…()()()()()()()()()

 

 

「バンガードは『暴風』という二つ名を大々的に喧伝した。一般のガーディアンには単なる英雄として…そして真実を知り、バンガードに忠誠を誓った者には…『危険人物』の暗号として」

 

 

「昔の話だ。今では『暴風』の本当の意味を知らないガーディアンの方が当たり前になった」

 

 

「『彼』はその後、何か功績を上げたりしたのか?」

 

 

「それが全く。役職も、勲章も拒否した。その後もちっともやる気を出さないで、他のタイタンと見分けがつかないぐらいの戦いしかしなかった」

 

 

「っ…何か…理由があったのか?」

 

 

「さあね。誰が聞いても答えなかったし、あんまりしつこいと怒りだすから誰も触れなくなったんだよ…ま、あの戦いで怖くなって、すっかりやる気を無くしちまったんじゃないかね」

 

 

「…『彼』は…『暴風のガンドール』は、仲間を…師匠を殺して…英雄になり…その上、大した理由もなく、英雄として生きる責任さえ拒んだと…?」

 

 

「…師匠?エイリークのことか」

 

 

「エイリーク先生…私の師匠だった…ガーディアンとなり、何も分からないまま死にかけた私を救い、導いてくれた…」

 

 

「そりゃ…災難だったな」

 

 

「彼は私の憧れだった…!常に毅然として立派な人だった…あんな所で死ぬべき人では決してなかった…!」

 

 

「…英雄としての実力を持ちながら、責任から逃れ…まるで惰性のように生き続けるあんな男のために死んだのでは…一体、師匠は何のためにっ!!」

 

 

「………」

 

 

「…ああ、もう十分だ。話してくれてありがとう…私はやることがある。ここで失礼する」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

 

………………………

 

 

 

「…バーツ、だったな」

 

 

ケイドが慎重に話を進める。

 

 

「………」

 

 

「お前が何を考えてるか知らないが、今、俺達はチームだ。チームなら協力し合う。しなけりゃ失敗する。ひどけりゃ死ぬ。死んだら終わりだ。お前もガーディアンなら分かってるだろう」

 

 

「…勿論だ」

 

 

「だったら…」

 

 

「だから、私は言ったハズだ。コイツとはチームを組めないと」

 

 

「どういうことだ?要領を得ない話をしないでくれ」

 

 

今度はケイが口を挟んだ。少し不機嫌そうだ。

 

 

「『暴風のガンドール』。その二つ名の真の意味を知らない者はこの場にはいないだろう」

 

 

「…真の、意味?」

 

 

「何、お前、コイツとここまで行動していて知らないとでも?」

 

 

「…ケイはガーディアンになって日が浅い。…あの日より後だ。知らなくて当然だ」

 

 

目を細め、つとめて冷静に補足した。

 

 

「何故それを…」

 

 

「俺がお前にライフを貸す間、お前のゴーストから少しだけ聞いた」

 

 

バーツが俺を指差した。その指は、震えているようにも見えた。

 

 

「…なら、後で本人からでも聞くがいい。コイツが…この男が、いや…この、バケモノが!仲間殺しの裏切り者だということを!!」

 

 

「…は!?」

 

 

ザナリーが乗っていた物資箱から転げ落ちた。

 

 

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