お久しぶりです。ストーリーはできているとか言いながら超難産でした。ほかの小説に逃げたりもしました。おかげで今回はおすすめ装備解説紹介もナシです。
あ、セイント14が帰ってきますね。やったぜ!
赤朽葉に灼ける砂漠を、異形の男がいかにもな旧式のスパローで、盛大に後塵を巻き上げながら滑走する。
『本当に一人で行くつもりですか?』
彼のゴーストがポケットから顔を出し、未練がましく尋ねる。
「そうだ」
『彼らに何も告げずに?』
置いてきた…というより散り散りになった同行者達を考える。すぐに合流すべきだとライフは言った。だが、にべもなくそれを却下した。
「ああ」
『何故かと聞けば答えてもらえますか?』
ふん、と鼻を鳴らす。
「それが俺の義務だからだ」
『過去を乗り越えるため?』
逡巡の後、かぶりを振って余計な考えを吹き飛ばした。
「違う。過去を……忌々しい俺の過去を、完膚なきまでに破壊するんだ。今日、ここで…誰の邪魔もなく」
『私もいますがね。…惑星タイタンでスパローを借りられたのは幸運でした。おかげで歩かずに済みました』
「ポンコツ号のコンテナが生きてたのもな。船自体はデブリに衝突してバラバラになりながら不時着したが」
高所から落ちるのは慣れていた。奇襲に突入、その場からの離脱…思い返せば、色々な作戦に従事してきた。
今はもう、その実績も意味は無い。ただ、蓄積した経験だけが彼を生かし続けるのみだ。
『ポンコツ号ではなくシルバー・フレイム号です…でした。散り散りになった二人が心配です。じきに騒ぎを聞きつけたカバルが偵察隊を出すでしょう。やはり引き返して今からでも合流をはかるべきでは?』
「そうかもしれないな」
適当にあしらう。
『…彼らは仲間では無かったのですか?』
訝しげにライフが尋ねる。
「何が言いたい」
『ご存知の通り、ガーディアンはチームです』
スパローのスピードを上げる。急速に流れて行く景色に目を細めた。
「俺はガーディアンじゃない」
『ガーディアンの本質は光ではありません。光があっても、それだけでガーディアンとは呼べません』
「そうだろうな。光はあって当然…あと装備がいる。フォールンじゃない腕と足も」
『………あと数分で到着します。この山を越えれば見えます』
諦めたようだ。ライフがうつむく。
「…ああ。懐かしい、あの戦場だ。カバルは…なんだ、なにか掘ってたのか?そこら中穴だらけだ」
丘を越え、急激に拡がった景色を見渡してため息をついた。記憶を手繰り寄せ、あの過酷を極めた戦いを脳内で再現した。拳に力がこもる。
『周囲に敵性反応なし』
「用済みになったんだろう」
『………見えました。アレです。半分以上砂と岩石に埋もれています』
「色褪せたか?いや、元々あの色か」
『…ブレイ研究所の遺産のひとつ。名前は分かりませんでしたが…かつて、あなたのファイアチームの仲間の光を燃料に、カバルを退けたレーザー砲。確かに、あの時のままです』
「もう少し近づこう」
『危険では?カバルが残っていないとは限りません』
「行ってみなければ分からん。それに、ここまで来て帰れと言うのか?」
『…センサーの出力を上げます。なるべく慎重に行きましょう』
「そうだな」
スパローを降り、忌まわしき記憶の根源へと足を踏み進めた。
………………………
『中は真っ暗です。ライト点灯』
ライフの前方が青白く照らされる。そのままライフは右肩に移動し、その視界を共有した。
「あの頃はまだ電源も生きていたんだがな」
『そうでなければ…使えませんでした』
「それもそうだ」
内部を見渡す。ほとんどの機器が破壊され、もはや使い物にはならないだろう…機械工学は門外漢だが、そう思った。
『カバルの足跡があります。きっと散々荒らされた後です。何かに期待するのはやめておきましょう』
「………」
前に進む。
『…発射装置…砲台と、その手前が我々の最終生存圏でした』
「思い出話は後だ」
またしばらく進み、あたりを見渡す。なるべく隅々まで、見落としのないように。
『何を探しているのですか?』
ライフが尋ねる。
「分からないか?」
『あまり見当がつきません。ここにはもう何も…残っては…ああ…』
メンテナンスルーム手前で、ライフが嘆息した。
「カバル…奴らの図体じゃここまで入れないかと思ったが…いや、手下のサイオンの仕業か」
その狭い入口は、人間が背中を屈めてやっと入れる大きさだった。それが今扉を破壊され、心臓部が今まで見てきたものと同様に破壊され尽くしていた。
サイオン。カバルの侵略を受け、服従を誓った種族とも言われる。矮躯ながら高い知性と器用な手先で、カバルの手の届かないところをサポートする…その姿を思い浮かべる。恐らく、ここに侵入したのはサイオンだ。
『まさかエネルギー装置が基幹部まで全て破壊されているとは…』
「俺達の戦術はよほど奴らを苛立たせたらしい」
普通、カバルは敵の施設を必要以上に破壊しない。使い物にならなくする程度の破壊はすれど、弾の無駄遣いはしないのだ。
今回は例外だ。恐らく現場の判断で、フラストレーションの解消のため行われたものだろう。つまるところ…八つ当たりだ。
『そのようですね…うわ、所々溶解しています。ナパーム弾まで放り込んだのでしょうか』
「無駄弾を使ったんだ。撃ち込んだ奴はたっぷり絞られただろうな」
『ともかく、ここにはもう何も無いでしょう…そろそろあなたの計画を聞かせてもらえませんか?』
ライフがこちらを向く。まぶしいので目を細めると、ライフは申し訳なさそうに光量を絞った。
「…だがアイツは、ブラックホールに吸い込まれても壊れないと言っていたんだ。ナパーム弾ぐらい…」
顎に手を当て思案する。【彼】の言葉を必死に思い出す…
『音声データ照合中…記録にありません。【アイツ】の詳細をお願いします』
「エイリークだ」
『エイリーク!我々が所属していたファイアチームのリーダーだった人物…先日あなたを…攻撃した、彼女の師でもあったウォーロック…』
「ヤツほど頭のいい男を俺は知らない」
それは、嘘や冗談を含まない心からの言葉。
『彼には論文や学術的実績は特になかったはずですが』
「そういう話をしていないことは分かっているだろう。冗談も程々にしておけよ」
ライフを咎める。ライフは軽く身体をゆすった。もしライフに人の身体があれば、肩をすくめるような動きをしていただろう。
「エイリーク。今でもヤツの言葉や姿は鮮明に思い出せる…戦場においては誰よりも冷静で、柔軟だった…アイツの声とライフルの音が聞こえる限り、勝利は手の内にある。チームの誰もがそう感じていた」
実際、その評価は誇張ではない。彼は常に小隊長として抜きん出た才覚を遺憾無く発揮し、敗北と目された戦いを幾度もひっくり返してきた。
「だが俺が最も評価していたのは…その器用さだ」
『確かに彼は多くの発明品を残しました。しかし、そのほとんどが興味本位のもので、実用性に欠けたものでした』
「ああ。エイリークは発明者としては何の役にも立たなかったな」
笑いながら彼の発明を酷評する、かつての仲間達を思い浮かべる。
『アーク放電機能を備えたゴーストシェル(ゴーストまで感電するためお蔵入り)、10km先のぼそぼそ会話まで聞こえるレーダー(最悪の燃費と使用条件の厳しさでお蔵入り)、ヘルメットに内蔵して撃てるハンドキャノン(首が折れる上リロードできないのでお蔵入り)…極めつけは自走式グレネードホイールでした。あの自分の所に帰ってきて危うく死者が出るところだったアレです』
『…まさか、あのゴーストシェルを探して私に装備させるつもりですか?まさか…本当に?ありえない…考え直して下さい』
ライフが今まで見たことがないほど震える。
「早とちりするな。お前には何もしない」
『では何を?』
「エイリークならここに残しているハズなんだ。ヤツを知る誰かがここにたどり着いた時、光がなくても戦う力を与えるもの…」
「思い出せ…考えろ…アイツならどこに隠す…?カバルに見つからないことは大前提だ。しかし…」
「……ダメだ、わからん…ライフ、ヤツは何か手がかりになりそうなものを残していなかったか?」
頭を抱える。歯をきつく噛み合せる。
『検索中……いえ、特には。というより、検索条件が曖昧なため対象とするデータが膨大すぎます。時間をかければ多少はマシな結果が出るかもしれませんが、アテにしないで下さい』
「……クソッ!」
感情に任せ、壁を殴りつけた。ガシャアン、と中空の金属音が響く。
勢い余って壁に穴が空き、中の電子回路に拳が当たった。
電力が生きていたようで、バチッという音とともに身体を鋭い痛みが走った。
「ッ…いや、かすり傷か…ん、何だ…?ここだけ電力が残っているのか?」
手に当たった機械を取り出す。周囲との接続が少なかったのか、驚くほど簡単にそれは取り外せた。
『解析します。…これは……特定の電気信号を発しています。それも、同じパターンで繰り返しているようです』
「電気信号?」
『オンとオフを繰り返す、非常にシンプルなものです…何かのパーツとして役割があったのでしょうか。今となってはもう…』
「単なるパーツをここまで隠すのか?補助電力までつけて…?いや、まさか…!ライフ、その機械の裏側を見せろ!」
『裏側ですか?カバーしか………いえ、これは…!』
何かを確信したように、ライフの声色が明るくなる。
「エイリークのサインだ!この機械はヤツがいじったんだ!」
機械の裏側、電子回路のカバーには、草書体とも少し異なる特徴的な彼のサインが見て取れた。
『重要な手がかりです。あらゆる方面から解析を再試行します』
ライフがスキャンのため機械に光を当てる。
『形状…何とも一致しません。塗装も材質もありふれたもの…電気信号のパターンは……データに一致なし…?あ、いえ一つだけ…W.O.A暗号…?不明なデータです。いつ導入されたのか…5分前ですって!?一体どこから…!?』
キョロキョロとライフが周囲を見渡す。先刻から何一つ変化のない光景に解決の手がかりは無いと断じたライフは、とりあえず目の前の機械に集中することにした。
『……どうやら送信元はこの機械のようです…それも…うん?いるはずのないエイリークのゴーストから送られてきている…?』
『…いえ、気にするのは後にしましょう。とにかく今はこの信号を…えーと…記憶カテゴリの中の…【言葉】【前】【戦い】…?』
「記憶カテゴリ…思い出せ?ヤツの言葉…戦いの前…」
『…あとはこれが繰り返されているだけです』
ライフがこちらを見る。ライトがまぶしいので目を細める。二度目なのでライフを軽く叩いた。
「…繰り返し……ああ、十分だエイリーク…これなら俺でも分かる…!」
機械仕掛けのマスクの中で、口は三日月に歪む。今までにないほど興奮していた。
「エイリークは【戦い】が始まる【前】、いつも同じ【言葉】を【繰り返し】ていた…」
「俺達を鼓舞する言葉だった。同時に…ヤツの最後のパスワードでもあったワケか…」
「『……【俺達の戦いをトラベラーが見ている】」』
顔を見合わせ、同じ言葉を。記憶に焼き付いた、彼の言葉を…彼は、一体どこまで未来が見えていたのか?その想像は後に回すことにした。
「…付近でトラベラーからよく見えて、トラベラーに最も近い場所だ」
『…でしたらこのレーザー砲施設の頂上を目指しましょう』
上を見た。天井に空いた穴から、カバルに捕らえられたトラベラーが見えた気がした。
間が空いたし、そろそろキャラ紹介も更新しないとですね。
いやあ忙しい。