ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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レベル31.戦場

 

 

 

「作戦は頭に叩き込んだか?特に最後まで寝ていたそこのポンコツ」

 

 

作戦の説明が終わり、通信が終了した。近くで作戦を聞いていたケイと、横になって眠りこけていたザナリー3に向き直る。

 

 

「ああ」

 

 

「いつでも行けるぜ?」

 

 

一方は淡々と、また一方は白々しく答える。

 

 

「色々と言われたが、要はシティの外縁で暴れればいい。戦い方も各々が得意なやり方でいい」

 

 

おおまかに言えば、シティの中に主力が突入する間、騒ぎを聞きつけて集まってきた余計な敵を押しとどめるのが任務だ。

 

 

「覚えることが少なくてありがたいけど、そんな適当でいいのか?」

 

 

ザナリー3が首をかしげる。大きな作戦に参加するにしては、適当すぎると思ったのだろうか。

 

 

「明確なタブーに触れない前提なら、色々縛りつけるより自由にやった方が敵を倒しやすいだろう。そもそも俺達は即席のファイアチームだ。今まで細かく決めないやり方でやってきた以上、今更やり方を弄って態勢が崩れることの方が危険だ」

 

 

「フーン…?なんか頭よくなった?まあ、ダンナそう言うならそれに従うぜ」

 

 

「頭が…馬鹿にしてるのか?」

 

 

ザナリー3に身体ごと向き直る。ザナリー3が身構えたところで、ケイが口を挟んだ。

 

 

「やはり光を失ったことが、ずっとストレスや焦りを生んでいたのだろう。それが解消されて、難しく考える余裕ができたのかもしれないな。もし詳しく知りたいなら、この戦いが終わった後、彼を連れて医者か科学者をあたってみるといい」

 

 

「あ、それは遠慮しとくぜ…」

 

 

場の雰囲気が少しリラックスしたところで、ひとつ息をつく。作戦開始を前にして、肩に力が入っていたようだ。

 

 

「とにかく、もう本隊は配置についた頃だ。俺達も始めるぞ。向こうを見ろ」

 

 

そう言って目を向けた先には、遠方からシティを遠巻きに見つめるフォールンの部隊が見えた。そこから離れた所には、ハイヴの特徴的な緑がかった炎も認められた。

 

 

「うえ…いつの間に」

 

 

ザナリー3が心底嫌そうにつぶやく。

 

 

「アレを死んでも止めるのが俺達の仕事だ。作戦が早めに終わるのを祈るんだな」

 

 

両の手足をぐるぐると動かす。動作にはなんの問題もなく、違和感も皆無…見た目はともかく、これから長い付き合いになるだろう手足だ。なるべく大切にしたい。

 

 

「フフ。数え切れない敵というのも、長く見ていなかったからな…久々に、戦争の中に身を置いている感覚だ…腕が鳴る。ゴースト、記録の準備を。仮に私が死んでも、いいデータを残そう」

 

 

『了解しました』

 

 

ケイとそのゴーストも、気合十分といった感じだった。

 

 

「ダンナ、俺はどうすればいい?」

 

 

「いつも通りだ。邪魔をするな、好きにやれ。何も分からないなら、高い所から撃ってろ」

 

 

「じゃあ、高い所から撃つぜ!あの辺かな〜…」

 

 

そう言うと、ザナリー3は適当な岩場をよじ登り始めた。

 

 

「私は…うん。君の考えを聞いてから考えよう」

 

 

ケイは動かず、試すように薄い笑みを見せている。

 

 

「なんだそれは…守るのは久しぶりだが、俺は前進して、線を引き、それを越えさせない。それだけだ」

 

 

「そうだろうな。ならば、私は遊撃に徹しよう。君がラインを守ってくれ」

 

 

「言われなくとも、始めからそのつもりだ」

 

 

「フフ。そうだろうとも」

 

 

結局、作戦はいつも通りだった。これ以外に思いつかないのだから仕方がないのだが、ケイの妙な態度が気に食わなかった。

 

 

「なんだ、気色悪い」

 

 

「いやなに、気を悪くしたなら謝罪しよう。ただ嬉しくてね。君がガーディアンらしく振る舞っていると、ライフ君が嬉しそうなんだ」

 

 

「何?」

 

 

言われてライフを見ると、どうもそわそわして落ち着かないようだった。あるのか分からないが、感情が昂っているのだろうか。

 

 

『…いけませんか?』

 

 

「まだ何も言っていないだろう」

 

 

『いえ、言いました。あなたの目が今不満を述べました』

 

 

「…ハア…もういい。好きにしろ」

 

 

『ええ。【ガーディアン】』

 

 

「………」

 

 

様子を眺めていたケイが一瞬だけ深い笑みを見せると、身を翻して自分のポジションを探しに行った。

 

 

『行きましょう、ガーディアン。暗黒が迫っています』

 

 

「……ああ」

 

 

見ると、フォールンが進行を開始していた。ハイヴもそれに続く形だった。

ひとつ、身を震わせる。戦いが始まる…

 

 

………………………

 

 

これは絶望的な戦いになる…分かってはいたことだった。敵の攻撃は止むこともなく、我々はたった3人でそれをせき止める。まさに多勢に無勢…今、敵の侵攻は我々の前で少しの間止まっている。この時点で奇跡なのだと。

 

 

「…ッ!」

 

 

「ケイ!」

 

 

一発、また一発と被弾がかさむ。何度目かの被弾を肩に受け、ケイが姿勢を崩した。

 

 

「私に構わなくていい!まだ来るぞ!ザナリー!」

 

 

「見えてる!フォールンも、ハイヴもたくさん来てる!チクショー!」

 

 

ザナリー3が敵の頭を撃ち抜き、またひとつ屍を作る。だがどれだけ正確な銃撃も、どれだけ緻密な連携も、数というあまりにも有効な戦略にとって、有効打にはなり得ない。

 

 

「チッ…!うおおおおおおお!!」

 

 

フォールンの攻勢が弱まったかと思えば、別方向から騒ぎを聞きつけたハイヴが集まってくる。

 

 

「ライフ!」

 

 

『ザヴァラから応答ありません!やはりジャミングを受けています!これでは増援を求めることも…!』

 

 

作戦が終わるまで、増援も望めない。これも分かっていたことだった。

 

 

「シティの様子を見るに、作戦が終わったようには感じないな!」

 

 

「増援でも作戦でもいいから早くしてくれ!」

 

 

「クソー!ダンナ!弾がもうもたねえ!」

 

 

ザナリー3が悲鳴をあげる。

 

 

「ライフ!持って行ってやれ!」

 

 

『ガーディアン、しかしそれではあなたの分が…』

 

 

「しばらくは保つ!」

 

 

『…分かりました。なるべく早く戻ります!』

 

 

「クソッ…いつ終わるんだ…!」

 

 

戦いは続く…

 

 

………………………

 

 

しばらく戦闘を続けると、キャプテンの大きな声が響いた。それを聞いたフォールン達は、こちらに恨みがましい視線を向けながら、素早く後退していった。

少しして、ハイヴもそれに続く形をとった。

 

 

「やっと…少しだけ、敵の勢いが緩んだな」

 

 

「第一ウェーブクリアってとこか?」

 

 

「我々の存在が脅威として司令部に報告されたのだろう。体制を整えて、次はもっと激しい攻撃が来る」

 

 

「そうだろうな」

 

 

「げえ…」

 

 

『ガーディアン、バンガードから連絡です。どうやら通信は回復したようですね』

 

 

「繋げ」

 

 

『ガンドール隊へ、こちらバンガード』

 

 

「ザヴァラ!…いや違うな。ザヴァラはどうした」

 

 

『彼は作戦中負傷したため、急遽私が代わりに連絡を担当しています』

 

 

「そうか。作戦はどうなった?こちらもそう長くは保たん。増援は来るのか?」

 

 

『作戦は…【彼】がこれからガウルの元へたどり着きます。作戦完了まで、あと少しです』

 

 

「………!まだ終わらないのか」

 

 

『…では、作戦本部からですが…先程、あなた方のすぐ西側のブロックの部隊が壊滅的被害を受けたと報告がありました。ですが、今そこを抜かれるわけにはいきません』

 

 

「何…?……まさか」

 

 

『隣接したブロックで、今すぐそこへ行けるのはあなた方だけです。幸いと言っていいのか、敵もかなりの被害を受け、あとひと押しで撤退まで追い込めるはずです。どうか…救援をお願いしたい』

 

 

「……!」

 

 

「ダンナ!バンガードはなんて言ってる?増援くれるのか!?」

 

 

『無茶なこととは百も承知です。作戦が終われば、バンガードは最大限の補償を…』

 

 

「………」

 

 

「ダンナ?」

 

 

「……作戦は順調だ!もうじきここにガーディアンの増援が来る!俺の事情も知ってる奴らだ…ここは俺とその増援で抑えるから、お前達は今すぐ西側のブロックへ向かえ!」

 

 

「本当か!?作戦はうまく行ってるんだな!?」

 

 

「ああ!さっさと終わらせるぞ!」

 

 

「了解!じゃあここは任せたぜダンナ!よっしゃ、ケイ!行こうぜ!!」

 

 

「………」

 

 

「ケイ!ほら早く!」

 

 

「ケイ、行け」

 

 

「…しかし」

 

 

「行け!大丈夫だ、光がある限り死にはしない」

 

 

「…私は…いや、こんな時に弱気はよそう。ザナリー!そこから降りてきてくれ!道は私がナビゲートする!」

 

 

「ああ、それでいい…頼んだぞ」

 

 

………………………

 

 

「…ライフ、敵の数は」

 

 

『何度聞かれても同じです。多すぎて数え切れません…不気味なほど静かですが、常にこちらを伺っています。今にも侵攻は再開されるでしょう』

 

 

「そうだな」

 

 

『…どうしてこんなことを?あなた一人で抑えきれる数ではありません。これでは…』

 

 

「ああ。自分の身を守りながら抑えるのは難しいだろうな」

 

 

『まさか死ぬつもりですか?』

 

 

「元々、一度死んだ身だ…心も、身体も。…あのクレバスに落ちた日のことじゃない。火星で…仲間を喪ったあの日。俺は…ガンドールというガーディアンは、とっくに死んでいたんだ」

 

 

「長いロスタイムが終わる。正しい形に戻るだけだ」

 

 

『ですが、私が蘇生します。あなたが死ぬことはありません』

 

 

「駄目だ」

 

 

『ガーディアン?何を…』

 

 

「お前はザナリーの元へ行け」

 

 

『……何ですって?』

 

 

「何度も言わせるなよ。ライフ…いやゴースト。お前との関係もここで終わりだ。これからは、あのエクソのガーディアンのゴーストになれ」

 

 

『何の冗談ですか?ありえない。ガーディアンが死んでもいないのに?』

 

 

「これからそのガーディアンが死ぬからだ」

 

 

『ですから、それは私が…』

 

 

「無理だ」

 

 

「ライフ。お前は俺より頭がいい。もう分かっているだろう…ゴーストだって死ぬ時はある。ゴーストの死因はガーディアンのダウン中に暗黒に捕まるか、流れ弾に当たるか、もしくはその両方か…お前はこの砲火の中、俺が死んでもずっと敵の手から逃れ続けられるのか?」

 

 

「ゴーストがガーディアンを蘇生するのだって簡単じゃない。蘇生中、ゴーストはその身を晒すことになるし、何より戦場の中でやるには時間がかかりすぎる。…普通はその隙をチームがカバーするんだがな。お前は単独で、その全てのリスクを回避する手だてでも考えついているのか?」

 

 

『それは…ですが』

 

 

「…厳しい言葉をかけるようだがな。最後だから言わせてもらう。……お前はいいゴーストだ。それは他の誰よりも俺が知っている……だからこそ、俺はお前がここで死ぬのが惜しい」

 

 

「ゴースト…いやライフ。お前に、もう一度この命を託す。前のような自棄じゃない。俺が最後まで、ガーディアンとして死んだことを覚えていてほしいからだ」

 

 

『ガーディアン』

 

 

「ああ。そうだ。俺はトラベラーの守護者、ガーディアンだ。これから先何が起ころうとも」

 

 

『………』

 

 

「フォールンの動きが変わった。これ以上は敵も待ってくれないだろう…ライフ。世話になった。すまん。……頼む」

 

 

『………分かりました。…どうか、どうか死なないで』

 

 

「…フン。当然だ。言われるまでもない」

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