ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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調査編として、各キャラクターについて今までのおさらいと深掘りをしていこうと思います。ストーリーには直接影響しませんが、良かったら読んでみて下さい。

とりあえず最初は彼から。



調査編
その1.ザナリー3


 

 

 

ーーー0530、聴取試験開始。被検体02『ザナリー3』

 

 

よう、はじめましてだな。報告は行ってるだろうが改めて、俺はザナリー3…ってことになってる。こんな言い方なのはなんでかっていうと、俺のホントの名前を誰も知らないからだ。ザナリー3って名前は俺のゴーストがつけたんだ。俺が生き返った時にな。

 

 

ーーー元のクラスは?

 

 

ん?ああ、俺はハンターだった。ハンターらしくクルーシブルがお気に入りだったし、もちろん暗黒と戦うために太陽系中を飛び回った。ああ、スパローレースにも出たな。俺、けっこういい所まで行ったんだぜ?スポンサーもつきかけたんだ。まあつかなかったんだけど…

 

 

ーーーファイアチームのメンバーは覚えているか?

 

 

…仲間?あー…そうだな…………ああ、お察しの通りさ…お恥ずかしながら、ってやつだな。…俺は決まった仲間を持つことがなかった。いや、まあ…その、組んでもらえなかった、の方が的確だな…。何故かって言えばそれは、ソリが合わないヤツがいたこともあったし、いやまあこれが大半なんだが…あとは、その…俺は…臆病者だったからだ。

 

 

ーーー『臆病者』?

 

 

『臆病者』…それが俺のあだ名だった。本来のハンターは、作戦のために敵のど真ん中を走り抜けることだってある。恐れ知らずの冒険…未知との遭遇。危険な、死ぬ寸前のスリルを楽しむヤツらばっかりだ。

…そんな中で俺は、戦いの中では仲間の後ろで隠れてばっかりだった。

 

 

ーーーPTSDか?その理由は?

 

 

なんでかは俺にも分からない。暗黒との戦いになると、途端に足がすくむ。視界にノイズが走る…ああ、めまいのことだ。あとは身体が金縛りにあったみたいに動かなくなっちまう。…ただ、ショットガンとグレネードしか持ってないのに、敵がうじゃうじゃいる所に1人で突っ込め、なんてそんな作戦、信じられるか!?俺が悪いんじゃない!そんな作戦立てるヤツが…ああ、いや、忘れてくれ…他のハンターならできるって言葉は何度も言われてきたんだ…

 

 

ーーーザナリー3、もう少し明確な話し方はできないのか?

 

 

うん?喋り方が気になるのか?俺はだいぶ気に入ってるし変えるつもりもないんだが…何?脈絡がなくてわかりづらい?おお、そいつは悪いな、考えとくよ…

 

 

ーーーチェック。意思の疎通に軽度の問題あり

 

 

………それで、まあ、話を戻すが…とにかく、俺はマトモに戦えない役立たずで有名だったんだ。だからチームを組んでくれる仲間なんかいなかったし、いたとしてもそれは数合わせや荷物持ちとしてだった。

もちろんハンドキャノンの練習を欠かしたことは無かったし、戦えるようになるためにできることは全部やった。まあ全部ムダだったけどな。

 

 

そんなことをしながら過ごしてた時に、アイツらがやってきた。そうだ。アンタらもよく知ってるだろ?カバルのレッドリージョン。あのデブのサディスト達。アイツらが俺達から光を奪った日、俺達はなすすべもなく散り散りに逃げた。たくさん死んだし、見殺しにした。俺もそのうちの1人になりかけたが、運良く助かった。…俺に名前をくれた、唯一の親友を失って。

 

 

ーーーゴーストはレッドリージョン襲来の際に失ったと

 

 

ああ。…正直に言おう。カバルが来た時、俺はこう思った。【助かった】!

元々俺は暗黒と戦うことなんかできないんだ。これからだって、今までのようにずっと逃げ回ってりゃいい。それに元々仲間なんかいないから仲間の死に悲しむこともない。誰も俺に文句なんか言えない!こいつは天恵だ!そう思った。

 

 

ーーーそれは、バンガードおよびシティに翻意があると受け取ることもできるが?

 

 

おお、いや、そんなつもりはない…もっと個人的な話さ。…そこから先は、まあ、知っての通りだ。しばらく暗黒に怯えて、隠れながらのんびりと生きのびてた俺だったが、その中で1人の男に出会った。ああ、そうさ。ダンナのことだ。ダンナは1人でフォールンの小隊と戦ってた。いや、ゴーストはいたが…とにかく、俺の目にはバカで無謀な戦いにしか見えなかった。

 

 

ーーー被検体01、『ガンドール』との邂逅。

 

 

結局、ダンナはボロボロになりながらも、フォールンに勝った!ありえないと思った…光をなくして、それでも戦おうってヤツはもうみんな死んだと思ってたしな。

 

 

ーーーザナリー3。お前は戦わなかったのか?

 

 

さっきも言ったろ?俺は戦えないんだ。その時だって、これから先どうやって生き延びようかしか考えてなかった。でも、どうやらダンナはそうじゃなかったらしい。人間かフォールンか分からないゴチャゴチャになってフォールンを倒して、フォールンから奪って生き残る。でもそれだけじゃなかった。ダンナはガーディアンの役目を忘れてなかったんだ!

 

 

ーーー『ガンドール』はガーディアンとしての務めを果たそうとしていたと?

 

 

光を失って、ボロボロで、でもどうしたって戦うことをやめようとはちっとも思ってないらしいとんでもないバカを見て、俺はどうしようもなく希望を見た。だからついてくことにしたんだ。…まあ、あんなに気むずかしいヤツとは思わなかったけどな。

 

 

ーーー『ガンドール』の性格に難があることは聞いている。

 

 

ああ、そうそう。さっきもちょっと言ったが、ダンナはその戦いが終わったあとに腕を失っちまって、フォールンの腕を取り付けてたんだ。ほかにも元から腕や足を機械化してた。

正直、その頃の俺は、俺のゴーストを奪ったこの腹の機械をなんとかしてぶっ壊してやりたい気持ちでいっぱいだったんだが、それについても考え直すいい機会になったよ。

 

 

ーーー腹の機械。フォールン技術による、透明化機能。ゴーストと引き換えに手に入れたものか

 

 

ああ。…そんで、まあ、ムリヤリついてくことにしたもんだからダンナはそりゃもう俺のことを邪魔者扱いするんだ!ことあるごとに俺の首根っこをつかんで放り投げようとするし、ライフ君が止めてくれなけりゃ死んでたかも…うう、いまさら寒気がしてきたぜ…

 

 

ーーーザナリー3がとめどなく冗談を言うことが耐えられなかったと、彼から報告されている。

 

 

冗談?ああ、そりゃ言ったぜ!渾身のやつを、ずっと溜め込んどいたんだ!誰も聞いてくれなかったからな…クールなやつからホットなやつ、ちょっとウェットなやつまでなんでも取り揃えてやった!

全部言い終わる頃にはダンナも何も言わなくなってたな。感動したのかな?

 

 

ーーー言葉も出ない。それで、『ガンドール』からはお前も戦力として戦っていたと聞いているが。

 

 

ああ。ダンナがいっつも一番矢面にいたんだ。俺には『好きにやれ』『やるなら後始末までやれ』の2つしか言われなかった。

ダンナが敵の気を引いて、正面から打ち倒す。その隙に俺が遠くからハンドキャノンを撃ったり、何か罠を仕掛けたりした。…ああ、そういやなんでか視界にノイズも走らなかったな…なんでだ?

 

 

ーーーこの会話は記録されている。検討はこちらでする

 

 

おお、そいつは…ありがたいのか?

 

 

ーーー0600。時間だ。本日の被検体02に対する聴取試験は終了。すぐに退室するように。お疲れ様。

 

 

終わったのか?まだまだ話せるんだが…

 

 

ーーー勘弁してくれ。明日は別の者が対応する。

 

 

そうか。おつかれさん。じゃあな!

 

 

………………………

 

 

「…どう見る?」

 

 

「どうもこうも、精神性も多少のコミュニケーション障害はあっても一般的。戦闘能力試験も、機動力および狙撃についてはトップクラス…戦力としては十分だ」

 

 

「では、何故彼はガーディアン時代に戦えなかった?」

 

 

「軽度のPTSDだろう。治療する機会が無かっただけだ…奇しくも、敵から逃げ回っていた期間がその治療に充てられたのだろう」

 

 

「…そんなに簡単なものか?」

 

 

「どちらにせよ、今は確信が持てない。更なる調査が必要だな」

 

 

「…まあ、そうなるか…先は長いな…」

 

 

「次の会話役は誰だ?」

 

 

「……俺だ…」

 

 

「そうか…頑張れよ。話は全部聞かなくてもいい。どうせ記録されている。お前は指定された質問をすればいい」

 

 

「ああ…」






ザナリー3は言いたいことを一方的にまくし立ててくるせいで会話しづらいタイプです(多分)


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