『ザヴァラから全ガーディアンへ向けた通信です』
ゴーストはそう言うと、目の前にアウォークンの男性の顔を投影した。よく見知った顔だ。
『全ガーディアンへ告ぐ。こちらタイタンバンガードのリーダー、ザヴァラだ』
『先程、ついに我々はカバル…レッドリージョンのリーダーであるガウルを討ち、シティを、タワーを…そして何よりもトラベラーを取り戻すことに成功した』
『作戦は成功した。作戦に参加してくれたガーディアン、そして協力者達に心から感謝する。本当に、よくやってくれた』
『シティからカバルの脅威は去るだろう。我々も多大なる犠牲を払った…我々はこの戦いを忘れない。そして、二度とトラベラーを奪わせないと誓う』
『以上だ。太陽系に散らばっていたガーディアンのうち動ける者は、是非タワーの再建とシティの復興に協力して欲しい。我々はいつでも人手を歓迎する』
淡々と同じペースで、元々用意された文章を朗読したようにザヴァラは作戦の成功と終了を告げた。
『…通信、終了しました』
「…お、終わった…のか?」
ザナリー3がへたりこむ。
「そのようだ」
ケイも、敵が退いていくのを遠目に、たまらずその場で尻もちをついた。
「…俺達は勝ったのか?」
「ああ、そのようだな」
「…フォールンやハイヴ達が退いていく…」
「………」
ザナリー3は作戦の成功に喜ぶ様子もなく、じっと俯いていた。
「どうした?」
ケイが話しかけると、ザナリー3はゆっくりと顔を上げた。
「…なあ、やっぱり、ダンナは死んだんだな」
「………」
ケイは黙っている。ザナリー3はそのまま続けた。
「…俺さ…ダンナと一緒に戦ってるうち、少しずつ分かったことがあって…」
「俺はダンナと、ケイと一緒に何度も戦ったよな。戦って戦って…でも、いくら敵を倒しても、ただ戦うことに慣れていくだけで、一向に俺の中の恐怖は無くならなかった。ずっと戦いが恐かった…でもそれは俺が臆病者だからじゃなくて、皆そうなんだ。皆恐いけど、それでも戦ってたんだ」
「たぶん、ダンナだって戦いが好きじゃなかったんだ。強かったけどな。…生きるために必要だから。トラベラーのためだから。ガーディアンだから…義務感で恐怖を抑えて、ずっと戦ってた」
「ダンナだって戦いは嫌なことで、恐かったんだ…ダンナだけじゃない。ガーディアンはみんな…。それで、その恐怖の誤魔化し方が、みんな違っただけなんだ」
「…で、それが分かった時、ダンナがあの時嘘ついた理由も、ダンナが一人で戦った理由も……ここで死んだってのが嘘じゃないことも、なんか分かっちまった」
「ダンナは必要だから、で恐怖を押し殺してた。作戦のため、トラベラーのため…最後は俺達と、これからのために、ダンナは死の恐怖に立ち向かったんだ」
「ダンナは俺達を守ってくれたんだ。命をかけてまで」
「それが分かって…うん。もう少しここに居させてくれ」
夜が明けて、空が白みがかってきた。ザナリー3はそれを見上げて、また動かなくなった。
「…そうか。分かった…ザヴァラへの報告は、私からしておこう」
ケイが立ち上がり、ゴーストを呼び出すと、何やら話しながらその場を離れていった。
「ああ。頼むよ」
「………」
つい先ほどまでの喧騒が嘘のように、ここには敵の死体しか残っていない。静寂があたりを支配する。
「…ああ、みんな優しいなあ…」
ザナリー3は、あともう少しだけここにいることにした。