ゾンビが人間を守って何が悪い   作:セイント14.5

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レベル4.脳筋は銃で殴る

フォールンの援軍。まさしくピンチだ。正直に言うと、勝てる気がしない。

 

 

「フォールン…!詳しく分かるか?」

 

 

『ドレッグ5、バンダル3!それと…キャプテンがいます!サービターを連れています!』

 

 

「一部隊丸々来てんじゃねえか!一体何したんだ!?」

 

 

『何かしたのはあなたでしょう!?バンダルを取り逃したなら、仲間を呼んでくるのは当たり前です!』

 

 

「…確かにそうだが!ワイヤーライフルで全部倒すのは無理が…」

 

 

『ああ!もう来ます!構えて!』

 

 

「っ!」

 

 

キャプテンの雄叫びが洞窟内を反響する。どうやら怒っているらしい。同調したのか、他のフォールン達もそれぞれに声を上げる。

 

 

「…まさか、フォールンの大声に恐怖する日が来るとはな」

 

 

今までは、煩わしいとしか思っていなかった。慣れた頃には、もう意に介さなかった。自らの無力がどこまでも恨めしい。

 

 

「………ライフ。考えがある」

 

 

ドレッグから剥ぎ取った電磁ナイフを見つめる。エーテルも補給した今、身体は動く。

状況は、さっきとは違う。絶望ではない。むしろ…

 

 

 

……………

 

 

 

「いいぞ…そのまま来い…」

 

 

身をかがめ、フォールンを待つ。

 

 

『フォールン、曲がり角の向こう側に到達』

 

 

『…本当にやるのですか?あなたは元タイタンなのに…』

 

 

「だが、今はタイタンじゃない。なら、やることだって変わる」

 

 

『慣れの話をしているんですよ』

 

 

「やらなきゃ死ぬのは変わらんだろう」

 

 

『そうですか……来ますよ』

 

 

「よし…そのままだ…」

 

 

ドレッグが部屋に入ってくる。キョロキョロと辺りを見回す。

 

 

『…気づかないものですね』

 

 

「生き物は上下の動きに弱いのさ。フォールンもそうかは知らんが…」

 

 

俺は、柱を伝って天井の梁に登っていた。ハンターのマネだ。かつての俺はタイタンだったが、一度としてこんな卑怯なマネはしなかった。今回は仕方なく…だ。そうやって勝手に納得して、作戦通りワイヤーライフルを構える。

 

 

「ドレッグは後だ。次…」

 

 

続いて入ってきたバンダルに狙いを定める。

呼吸を整え、引き金を握る。エーテルを補給したおかげで、支えが無くても持ち上げられるようになっていた。

 

 

「…ふっ!」

 

 

特徴的な発砲音。何度聞いても慣れないな、なんてのんきなことを考えながら、リロードする。

弾丸はうまくバンダルの頭を撃ち抜いたようだ。プシュー、という音を立ててバンダルが倒れる。

 

 

「アレは、パイプからエーテルが漏れる音だったんだな」

 

 

続けてバンダルを撃つ。今度は肩に命中した。ドレッグの一体がこちらを指して叫んでいる。場所がハッキリとバレたようだ。

 

 

「やれると思うか?」

 

 

電磁ナイフを取り出し、強く握る。刀身はバチバチと音を立てている。

 

 

『やるしかありません。それに、これはあなたが考えたんです…残りはドレッグ5、バンダル1、キャプテンとサービターです』

 

 

部屋にキャプテンが入ってくる。榴弾ランチャーを構えている。アレはワイヤーライフルより痛い。いや、今は痛いじゃ済まないだろう。当たればどこかは確実に吹っ飛ぶ。

 

 

「行くぞ…行くぞ、クソ…行くぞ!」

 

 

ワイヤーライフルを適当に投げつけると、踏ん切りのつかない足を殴りつけ、不格好にジャンプしてキャプテンの頭に飛びかかった。

頭の装飾を掴んで張り付くと、キャプテンのやたら大きい叫び声が頭に響いた。

 

 

「ぅわあああああああああ!!」

 

 

ナイフをむちゃくちゃにキャプテンに向かって突き立てる。傍目に見れば、大人に駄々をこねる子供にも見える体格差だった。

 

 

「ぐっ…クソ!死ね!死ね!死んでくれ!死ねぇぇえ!!」

 

 

ナイフがひときわ深く突き刺さる。キャプテンが榴弾ランチャーを天井に向けて撃ち込む。金属片や氷が砕け落ち、俺の頭に当たる。

 

 

「づっ…このっ!」

 

 

「グオ…オ…ォ…!」

 

 

キャプテンのエーテル供給パイプが千切れる。首元から吹き出る血が顔にかかる。

 

 

「っーーー!ぐ、わ…!」

 

 

瞬間。背中に衝撃。

 

 

『バンダル!』

 

 

混乱から回復したバンダルが、俺に殴りかかってきていた。

 

 

「く、このやろ…!」

 

 

ナイフを振り回す。バンダルは身体を後ろに逸らして回避する。

 

 

「クソ!あともう少しなのに…!」

 

 

俺と電磁ナイフによる涙ぐましい努力により、キャプテンはもう死に体だ。だが、その周りがこれで終わらせることを許さなかった。

 

 

『【ガーディアン】!これを!』

 

 

「っ!【ゴースト】!」

 

 

放り投げられたドレッグのピストルを右手で掴む。

倒れていくキャプテンから飛び降り、そのままの勢いでドレッグをピストルの柄で殴りつけた。

 

 

『銃なんですから撃ってください!』

 

 

「うるさい!こっちの方が早い!」

 

 

飛びかかってくるドレッグを足で払うと、そのまま脳天に向けてピストルを撃つ。

 

 

「ほら!撃っただろ!」

 

 

『後ろ!』

 

 

「っぐお…!」

 

 

背後に鋭い痛みと温かい感触がする。バンダルが背中を切りつけたようだった。出血もしている。

 

 

『このままでは…!』

 

 

「先にこっちだ!」

 

 

バンダルを正面から蹴りつけ、姿勢を崩す。そのままナイフを肩に突き立てて倒し、今度は首を切りつける。吹き出る血で、視界が塞がれる。

 

 

「次!どこだ!ライフ!」

 

 

血を拭いながら叫ぶ。

 

 

『右手!三時の方向です!』

 

 

「こっちか!」

 

 

ピストルを撃つ。

 

 

『違います!そっちは九時です!』

 

 

「九時か!こっちだな!」

 

 

後ろ蹴り。ドレッグの腹に当たったらしい。

 

 

『違っ……納得いきません!』

 

 

「倒したんだからいいだろう!」

 

 

血が落ちてだんだん視界がクリアになる。残るは…

 

 

「ドレッグが2体。それと…」

 

 

『サービターです。今頃入ってきました』

 

 

ドレッグに対して応戦する。光も装備がないとはいえ、身体が動くなら遅れはとらない。1体は頭を殴りつけ、2体目はナイフを投げつけて殺す。

 

 

「さて…」

 

 

大きな黒の球体に、蛍光色の紫で縁どりされた円状の機械がいくつか埋め込まれた…一言で例えるならば目玉のような形をしたサービターがゆらゆらと浮いたまま移動している。こちらを見ているようにも見える。

 

 

「できればそのまま撃たないで欲しいんだが…」

 

 

サービターが動きを止め、機械的な甲高い音を立てる。装備されている砲を構えた合図だ。

 

 

『来ます!』

 

 

「やっぱりダメか!」

 

 

サービターはフォールンの中では一際装甲が厚い。ドレッグのピストルでは歯が立たないだろう。

 

 

「何か、何かあったか…」

 

 

ボイド…宇宙的な(実のところ俺にはよく分かっていない)…エネルギーを纏ったサービターの砲弾を転がってかわし、周りを見渡す。

 

 

『これを!』

 

 

ライフが、キャプテンの持っていた榴弾ランチャーを投げる。確かにこれなら十分なダメージが望めるだろう。

 

 

「くっ…重い!」

 

 

何とかランチャーを持ち上げ、サービターに向けて撃つ。一発撃つごとに身体がきしみ、後ろに吹っ飛びそうになる。

 

 

5発も撃つ頃には、俺の肩が外れかかる代わりにサービターは小さなクレーターだらけになっていた。

 

 

「これで…終わりだ!」

 

 

爆発音。榴弾ランチャーがサービターの中心に命中すると、サービターが高速で回転しはじめる。サービターは一定以上のダメージを追うと、形を保てなくなって自壊するようになっている…そう俺は思っている。

とにかくしばらく撃っているとサービターはみんなこうなるので、あながち間違いではない…ハズだ。

 

 

ひときわ甲高い音を立てると、サービターは爆発した。辺り一面に破片が飛び散る。

 

 

『終わり…ました。生きてます!』

 

 

「ハァ…ハァ…フー…」

 

 

ランチャーを床に落として息を整える。そういえば…

 

 

「お前…さっき俺のこと、ガーディアンって呼ばなかったか?」

 

 

『…いえ、気のせいでは?』

 

 

「………」

 

 

ライフを見つめる。

 

 

『………』

 

 

『…呼びました。いけませんか?それにあなたも私のことをゴーストと呼びました』

 

 

観念して白状したが、開き直るつもりのようだ。

 

 

『ガーディアン。やはりあなたはガーディアンとして動いた時の方が…』

 

 

「それ以上言うな。握りつぶすぞ」

 

 

『そんな力もないくせに。私がいなければあなたはここで凍死していました』

 

 

「それとこれとは話が別だ」

 

 

『…そうですか。では今は、とりあえずゾンビとライフ。それでいいでしょう』

 

 

「とりあえずじゃない。これからずっとだ」

 

 

『………』

 

 

『…とりあえず、エーテルを集めましょう。首尾よくサービターも倒せました。上手くいけばエーテルを生産する方法も見つかるかも…』

 

 

「ああ…後は頼む。俺は疲れたよ…少し眠る。何かあったら起こしてくれ」

 

 

『ええ。ええ。わかりました…【ゾンビさん】』

 

 

硬い地面に横になる。天井の氷壁は太陽の光を少しも通さないほど分厚いようだ。今後のことを何となく想像しているうちに、意識は薄らいでいった。

 

 




あとがき


Destinyをプレイしている、もしくは知っている方には説明ばかりでストレスのないように。未プレイの方(読んでるか分からないけど)には置いてけぼりにならないように…両方やらなくちゃあいけないのが難しいですね。


分かりにくい所とかは教えて下さるとモチベーションにもなります。感想下さい(直球)

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