ありふれた勇者と正義の味方   作:海・海

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更新遅れてすみません。

今回は文字数少なめです。


疑惑

 「ハァッッ!」

 

 「グァァァァアアアア!!!」

 

 俺はべヒモスの懐に入り双剣を振るう。干将・莫邪はべヒモスの体に傷をつけ、そのべヒモスは苦悶(くもん)の声を上げている。俺がエミヤさんの力を借りずに放てる最高の一撃、神威を受けても傷一つ付かなかったあの怪物が。

 

 道具が良いといえばそうなのだろう。贋作とはいえCランクの宝具だ。切れ味が悪いはずがない。だが、それを扱う技量も物凄い。腕を振るたびに自覚するこの動きの無駄のなさ。とても合理的な動きだ。

 けど、本当に驚くべきところは、この剣技が誰でも振れる可能性があること。

 

 自慢じゃないが俺は天才だ。剣の才能だけなら雫にだって負けていないと思う。そんな俺や雫が振るう剣と今俺がエミヤさんの技術で振るう剣は次元が違うのだ。

 今俺が振るう剣は八重樫剣術道場であまり結果を残せていない一門下生が振るう剣、その延長線上にあるものだ。

 

 エミヤさんが自分のことを二流だといっていた理由がようやくわかった。そして、その二流の剣技をこの怪物に立ち向かえるほどに鍛えるためにしてきた努力を想像すると身震いしてしまう。だけど、そんなことで震えていたら英雄になんてなれはしない。

 

 俺は英雄になりたい。勇者になりたい。正義の味方になりたい。そして、助けを求めている多くの人を救いたい。努力して、強くなって、憧れの人(エミヤさん)に近づきたい。そのためには前に進まなくちゃいけない。だから……

 

 「お前なんかに立ち止まっている場合じゃないんだ!」

 

 「グルァァァァァアアアアア」

 

 莫邪による突きとべヒモスの頭突きが衝突する。それによって生じた衝撃波が俺とべヒモスを中心にクレーターを作った。そして、俺はその衝撃波に抗わず、意図的に吹き飛ばされることで距離をとった。

 

 「雫に任せたとはいえ他の皆のことも心配だからな。これで終わらせる」

 

 俺は干将莫邪を消して、左手に黒弓を投影する。そして、右手には螺旋状に改良した剣を投影する。そして、剣をつがえ、思いっきり引く。

 

 「これで終わりだ!(カラド)・―――」

 

 そして、矢を放とうとした瞬間、背後に急激な魔力の高まりを感じた。

 

 後ろを見ると、クラスメイト達が攻撃魔法を放とうとしていた。

 

 「まずい!急いで離脱しないと!」

 

 さすがにあの人数で放たれた魔法は危険すぎる。俺は投影した弓矢を消して、急いでべヒモスから離れた。遅れて南雲も離脱し始めた。あのペースなら巻き添えを食うことはないだろう。

 

 べヒモスとはなるべく自分の手で決着をつけたかったが、俺の目的はみんなを助けること。どんな方法だろうが何の犠牲もなくべヒモスを倒せたのならそれでいい。

 

 だが、そう思っていた俺の視界に驚くべき光景が目に映った。

 

 べヒモスに向かっていった魔法のうちの一つが、途中で方向転換して南雲に向かっていったのだ。

 

 何とか避けた南雲だが、そこからさらに災難が降りかかる。復活したべヒモスが南雲に向かって頭突きしたのだ。あの魔法の雨は足止めにしかなっていなかった。

 

 「うぉぉぉおおおお!」

 

 渾身の力でべヒモスの頭突きをかわす南雲。だが、その努力は報われない。度重なる強大な攻撃にさらされた石橋が限界を迎え、崩壊したからだ。

 

 南雲が奈落に向かって落下していく。このままでは死ぬだろう。だが、俺は助けようとはしなかった。いや、できなかった。それ以上に衝撃的なものが俺の視界に入ったからだ。それが俺の足と思考を止めた。

 

 それは上に向かって手を伸ばす南雲の姿でも、悲鳴を上げて落下していくべヒモスでもなく、南雲を助けようととび出す香織を雫が羽交い絞めしている光景でもない。

 

 

 

 

 

 俺の足と思考を停止させたのは、奈落に落ちる南雲を見て邪悪に嗤う檜山の顔だった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 ~檜山Side~

 

 

 天之河が俺達から離れてべヒモスに向かっていったときは恐怖を感じた。俺を守る奴がいないから。そして、天之河がべヒモスにやられて死ぬことを想像すると、これからどうすればいいのか不安になった。

 

 だが、それは杞憂だった。パワーアップした天之河は、あのべヒモスを圧倒するだけの力を持っていたからだ。

 

 安心して心に余裕ができた俺はふと、香織のほうを見た。俺が好意を持っている相手を。そして、その香織が視線を向けている相手は今圧倒的な力でべヒモスと戦っている天之河ではなく、その近くで呆然としている南雲だった。

 

 昨日、香織が突然南雲の部屋に行ったときから分かっていた。香織は南雲が好きだと。

 

 

 

 

 ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!

 

 天之河みたいな完璧超人なら諦めもつく。誰だって惚れるだろうあんな天才。俺なんかじゃ勝てるはずない。

 

 だけど……だけどなんで南雲なんだ!?あんなキモオタより、俺のほうがいいに決まってる!なのに何で俺に振り向いてくれないんだ!?

 

 心が南雲への憎悪に塗りつぶされたとき、一つの案が浮かんだ。それは、南雲を殺す方法だ。

 

 「皆、このままでいいのか?」

 

 俺はクラスメイトに呼び掛ける。

 

 「このままでいいって何が?」

 

 「このまま天之河に任せっぱなしでいいのかよ!?俺達もあの化け物に一泡吹かせてやろうぜ!」

 

 「でもどうやって?」

 

 「今余裕のあるやつ全員で魔法を打つんだよ!全員でやれば威力は相当なはずだ!あんなでか物イチコロだぜ」

 

 俺の言葉に周りのやつらはやる気を出した。こいつらの魔法に紛れて南雲を攻撃してやる。

 

 「ちょっと、勝手な行動は……」

 

 「無理だ雫。皆すっかり舞い上がっちまって収集が付かなくなってる。今はとにかく向かってくる魔物を止めるぞ」

 

 「……はい!」

 

 止めようとした八重樫はメルド団長に抑えられた。順調だ。死ね!南雲ぉぉぉぉおおおお!!!

 

 

 

 

 

 南雲が奈落に落ちたとき、俺は思わず嗤ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 檜山の邪悪な笑顔は、光輝に疑念を抱かせた。人間に悪い奴はいない。きっと誰かの悪行には理由があって、もしかしたら被害者のほうにも原因がある。今までそう思っていた光輝が、初めて人の善性を疑った。

 

 

 

 

 

 




改めて自分の戦闘シーンの描写の下手さが実感させられる。かといってそれ以外はいいってわけでもないけど。

他の人の文才が妬ましい。
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