ありふれた勇者と正義の味方   作:海・海

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UA一万突破、お気に入り百人越え。

エミヤメインの話めっちゃ人気ある気がする。


光輝の罪

 目覚めは最悪だった。心臓の鼓動がうるさい。頭が重く感じる。体がだるい。何もする気が起きない。

 

 「人生最大の悪夢だ」

 

 清廉な騎士の王の在り方を見た。優雅たれと己を律する気高き魔術師の在り方を見た。自分を犠牲にして他者を助ける正義の味方の在り方を見た。それらは本当に美しいものだった。

 だが、それ以上に醜いものを見た。

 神を信仰する絶対悪。大勢の人間の死。仕方のない犠牲。その人達の嘆き、苦しみ、それらはまるで呪いだった。

 悪ではなかった。だが害ではあった。いない方がよかった。だから殺された。殺した側も苦しんだ。だって殺した側が本当に救いたかったのは自分が殺した人々なのだから。

 

 ……そして、歪な正義の最後を知った。

 

 あまりにも悲しい。あまりにも報われない愚かな正義の在り方を。

 

 そして、自分の正義が幻想だと思い知らされた。

 

 

 

 (とりあえず、食堂へ行こう)

 

 

 

 今日は静かに一人で食べよう。正直今は誰かと話す気にはなれない。

 それを察してか、エミヤさんは今朝は話しかけてこなかった。

 

 

 

 

 

 ~食堂~

 

 

 

 

 

 南雲の事件の影響か、食堂は異様に静かだった。

 まあ、俺としては都合がいい。俺が喋りたくないのは南雲の件は関係……なくはないが、昨日の夢に比べれば些細なことだ。皆と理由は違うが、俺も皆とワイワイお喋りという気分ではなかった。

 

 

 

 「光輝、大丈夫?」

 

 それでも、話しかける存在はいた。最後の一口のスープを飲み込み、顔を合わせる。

 

 「雫か。まあ、正直に言うと大丈夫じゃない。けど、雫こそ大丈夫なのか?」

 

 「まあ、大丈夫って程でもないけど、香織の苦しみに比べればなんでことはないわ」

 

 「そういえば、香織は何かと南雲に構っていたからな。それに、人一倍優しい香織のことだ。きっと誰かの死は香織にとってとてつもなく重いものに違いない」

 

 「いや、それもあるけど、そうじゃないって言うか……はぁ」

 

 香織が南雲のことで取り乱したのはただ優しいからだけではなく、南雲のことが異性として好きだからということもあるのだが、それに気付かないあたり、まだまだ天之河光輝は健在である。

 

 「皆、南雲君のことについて意図的に話題を避けてる。あの魔法の誤射。もし自分だったらと思うと、恐ろしくて口が出せないんでしょうね」

 

 「…………」

 

 「光輝?」

 

 

 

 誰が撃ったか?そんなものもうわかってる。しかも誤射ではなく意図的なものということも。だが、それは今雫に言っていい事じゃないだろう。雫だって今は自分のことでいっぱいいっぱいなんだ。これ以上負担を与えるべきじゃない。

 

 ……いや、違うな。俺もまだ心の整理がついてないんだ。本当に檜山がやったのか。そもそもあの魔法は意図的なものなのか。あの笑顔は見間違いじゃないのか。思考が都合のいい方向にばかり逃げていく。だが、昨日の夢が、現実が、逃げることを許してくれない。

 

 

 

 「……うき、……光輝?……光輝!!」

 

 「ん?ごめん雫。考え事してた。何の話だっけ?」

 

 「あんた、今日は休んだほうがいいんじゃないの?皆より辛そうよ。リーダーとしての責任感ってやつなの?」

 

 「いや、これは南雲の件とは別だよ」

 

 「……話しては、くれないのね?」

 

 「……ごめん。俺も、何をどうすればいいのかわからないんだ。だから、少し考えさせてくれないか?」

 

 「……わかった。答えが出たら話してね」

 

 

 

 数秒、迷ってしまった。これは俺の問題だ。俺自身が解決すべきだ。ああ、だけど、誰かに頼るのは別に悪い事じゃないはずだ。

 雫に全てを、檜山のことも、英霊のことも、夢のことも何もかも話せば、いい答えが得られるかもしれない。

 それはとても魅力的な考えで、つい縋り付いてしまいそうになって、だけど、心の奥ではそれはただの現実逃避だと、雫に半分自分の問題を背負わせて自分が楽になりたいだけだと分かっていて……どうすればいいのかわからないのは変わらなくて。

 

 

 

 俺は、逃げるように自分の部屋に戻った。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 「エミヤさん、俺は、どうすればいいんでしょうか?」

 

 『……勇者などやめて、一般の高校生に戻るべきだ。ただの学生の君達に、戦争など荷が重すぎる』

 

 ああ、その通りだ。俺たちには荷が重い。だけど……

 

 「それを、この世界の人達が許してくれますか?」

 

 『……無理だろうな。君は世界を救うと宣言してしまった。強引にやらされていたのならともかく、同意の上での行動なら撤回するのは難しい』

 

 「そんな……俺が、俺が勇者になるなんて言わなければ。こんなことには……」

 

 俺があの時、愛子先生の意見に賛同していれば、悪夢を見ることも、檜山があんな凶行に走ることも、南雲が奈落に落ちることもなかった。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 「あれ?」

 

 

 

 

 

 俺が言わなければ、全てなかったことなのか?夢のことも、檜山のこともも、南雲のことも?それってつまり……?

 

 

 

 

 

 「俺のせいなのか?なにもかも?檜山があんなことしたのも、南雲が死んだのも?全部、俺が……?…………クッ、ククッ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

 

 

 なんだ!何もかも自業自得じゃないか!南雲が死んだのが俺のせいなら、俺は間接的に人を殺したことになるな!

 召喚されたばかりの頃の俺が今の俺を見たらなんて言うか、きっとあの時は誰かが死ぬなんて思ってなかった。知らなかった。過ちは誰にでもある。反省して次に活かすべきだなんて綺麗ごとを言うに違いない。

 

 けど、向こうは戦争に参加してもらうとちゃんと伝えたぞ。戦いならなんで自分たちが傷つかないと思ったんだ?知らなかった?過ちは誰にでもある?そんなチープな言葉で人が一人死んだことの免罪符になるものか!次に活かす?そもそも人が死ぬなんて一度でもあっていいことじゃないんだよ!次なんてあったらいけないんだ!

 

 何が勇者だ英雄だ。仲間が死ぬ可能性を考えず、皆より強いだけで想い上がって、結局守れなかったじゃないか。それどころか、自分のせいで危機にさらしているじゃないか。

 まあ、そうしないとこの世界の人たちが危ないんだから、俺達や南雲はそのための犠牲ってことじゃないか!?夢で見て俺が最初に否定した正義じゃないか!皮肉だな、俺が最初否定した正義を、知らず知らずのうちに俺が実行していたなんて。

 

 善意で勇者になると言った。その言葉のせいでクラスメイトに犠牲を強いた。犠牲になった命を背負う覚悟もなく。

 本当にすべてを救う手段はないんだな。誰かを救うということは、誰かを助けないという事、まさにその通りじゃないか。

 人に犠牲を強いた俺は、とんでもないエゴイストだな。何が俺は正しいだ。最初から最後まで全て間違えてるじゃないか。

 

 

 

 

 「アハハハハハハハハ、アーーッハッハッハ…………」

 

 

 

 

 

 俺はその後も、狂ったように、壊れたように、それしかできないかのように、泣きながら笑い続けた。泣いて泣いて、結局疲れて寝るまで泣いた。

 

 

 

 (…………)

 

 

 

 エミヤは声をかけれなかった。言葉が見つからなかった。下手なことを言えばかえって傷つくことになる。ここは黙っておくが吉だ。

 

 

 ……だが、それでも何もできないことはもどかしく、辛く、悔しかった。

 結局自分は、一番近くにいる子供すら救えないのかと自嘲した。

 

 

 

 

 




夜舞桜火さんから台本形式は見づらいとの要望がありましたので、今回はそれをなくしました。

もし他にも見づらい、それとも台本形式のほうがいいと思う人は感想欄に送ってください。

読者の反応次第でどっちにするか決めようと思います。

できれば見づらい見やすいだけでなく、面白かったとか、ここはこうしたほうがいい、などの意見も送ってくれるとうれしいです。
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