ヒーロー『デク』   作:ジョン・スミス

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もう一個書いてる奴が中々振るわないので投稿。





第13話

「出久! ティッシュ持った!?」

 

「うん」

 

「ハンカチも!? ハンカチは!? ケチーフ!」

 

「うん!! 持ったよ!」

 

 例の『回眠』で元気いっぱい。早朝の鍛錬もきっちりこなした。でも遅刻しそうだ。昼寝しなきゃよかった!!

 

「出久!」

 

「なァにィ!!?」

 

 つい、大声出してしまった。母さん、ちょっと心配性が過ぎる!!

 

「超カッコいいよ」

 

 ………! へへ。ちょっと照れくさいや。

 

「行ってきます!」

 

 体力も元気も有り余ってる。今なら何も使わなくても100メートル9秒切れそう。でも流石に電車に乗らないほど早いわけじゃない。スピード系の個性、使う訳にもいかないし。

 

 ともかく急ごう。入学式早々遅刻なんて目も当てらんない!

 

 

 

 雄英の校門をくぐり、何もかも馬鹿デカい校舎の中へ。広すぎる校内を把握するのには時間がかかりそうだ。

 

 まず、目的の教室1-Aまでが遠すぎる。校内で迷って遅刻、なんてことになりかねない。ホントに笑えないぞ。

 

 ………でも未だ夢見心地だ。自然と浮足立ってしまう。この場所に足を踏み入れ、生徒として通う事が出来るようになるなんて。憧れのオールマイトの母校―――雄英高校。

 

 推薦入試4名、一般入試の定員36名。毎年300を超える倍率を超える、その正体。校舎と同じく馬鹿デカかった校門に対して、ありえないほどの狭き門。その門戸を抜けた36名の中でも、僕が成績1位でこの場にいるなんて、ちょっと前までの僕なら夢にも思わなかった。

 

 遅咲きの『個性』には色々と思うところはあるけど。………オールマイトに出会えて、ちょっとした誤解はあったけど、その人から認められたことを考えたら………。少しはこの『無個性(がくしゅう)』にも感謝してもいいかもしれない。

 

 顔がにやけるのが止まらない。そうだよ、僕。雄英に入学できたんだ!

 

 中学のクラスメイト達には入学したこと自体信じてもらえず、不正まで疑われたけど。いやいや、天下の雄英で不正なんかできるわけないだろって話。笑ってお茶を濁したっけか。

 

 まあみんなも信じられなかったんだろう。自分と同じく。

 

 あれ以来かっちゃんも突っかかって来なくなった所為で信憑性を帯びたからか、それ以上話題に挙がることは無くなってた。

 

 

 

 1-A、1-A………っとあった。かー! やっぱりドアでっか!

 

 異形型の『個性』を持っている人もいるし、バリアフリーの為なのはわかるけど! 大きい!

 

 そっと重そうな見た目の割に軽かったドアを引き、顔だけ突っ込んで中を覗いてみる。

 

「机に脚をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

 

「おもわねーよ! てめーどこ中だよ端役が!」

 

 んんん!!! ツートップぅ!!

 

 いや外から全然聞こえなかったけど、多分結構前から言い合ってたよね二人とも。教室の遮音性高いな。

 

「ぼ、俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

 

「聡明ぃ~~~!? くそエリートじゃねえか、ブッ殺し甲斐がありそうだなあ!」

 

「君ひどいな、本当にヒーロー志望か!?」

 

 ごめんね、その人それがデフォだから。あとホントにヒーロー志望です。柄悪いけど。

 

 と、何だか申し訳なく思っていると彼と目が合う。スススとこちらに近づいてきた。

 

「俺は私立聡明中学の………」

 

「聞いてたよ! えっと。僕、緑谷。よろしく飯田君」

 

 初対面、って訳じゃないけど。むしろちょっと印象悪かった気もするし、中々話しかけ辛いと思うんだ。物怖じしないなぁ、飯田君。

 

「緑谷君………―――すまなかった!」

 

「へ?」

 

 バッと頭を下げる飯田君に思わず肩が跳ね上がった。

 

「君はあの実技試験の構造に気づいていただけでなく、試験開始の時、油断なく試験の開始を待っていたのだろう。でないと真っ先に動くことなんて出来なかったはずだ。………見誤っていたよ。俺は気づけなかった!! 悔しいが君の方が一枚も二枚も上手だったようだ! 」

 

 いや、うん。ごめん! 気づいてなかったし、実際にあの子に一言お礼言っとこうとしてた。飯田君の勘違いだ。………訂正できる気がしないな。

 

「あ、そのモサモサ頭は!」

 

 後ろから声をかけられて驚く。

 

「地味目の!」

 

 噂をすればなんとやら、振り返ると例の良い人がいた。制服姿やっべええ!! 眩しいいい!!

 

「プレゼントマイクの言ってた通り受かってたんだってね!! そりゃそうだ、パンチ凄かったもん!」

 

「いや! あの、ホント………! あなたの直談判のおかげで僕は、その」

 

「へ? 何で知ってんの?」

 

 それだけじゃなく、色々と。

 

「ホントにあの時は助けられてばかりで………」

 

「え、いやいやいや! 私だって助けてもらったもん! お互い様!」

 

「~~~!!!」

 

 かー!! 笑顔が! ま、眩しいぃ!!

 

 ただでさえまともに顔見れないのに、後光でも差してるんじゃないかな!?(差してない)

 

 パーソナルスペースが狭いのからなのか、わからないけど距離感が近い。

 

「今日って式とかガイダンスだけなんかな」

 

 ち、近い!!

 

 

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。―――ここは、ヒーロー科だぞ」

 

 

 

 冷や水を浴びせられたように、興奮も熱も一瞬で冷めてった。

 

 

 

 ―――場所を移し、運動場。

 

 雄英にしては()()の………主に普通科やサポート科の生徒達が使う運動場だ。

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間無いよ」

 

 ばっさり言い切られ、とりつく島はない………いや、当たり前だ。相手は教師、すなわちプロヒーロー。議論の余地はなかったか。恩人の彼女は期待してたらしいからちょっと残念そうだ。

 

「雄英は『自由』な校風が売り文句。そしてそれは『先生側』もまた然り」

 

 そう前置きして例を挙げていくのは中学でもあった体力テストの数々。唯一、本当の意味で無個性だったころの僕でも皆と肩を並べられていた体育の行事。

 

「中学の頃からやっているだろ? 個性禁止の学力テスト。………国は未だ画一的な記録をとって、平均を作り続けている。まあ文部科学省の怠慢だよ」

 

 超常が日常のこの世界で、日本はその治安の良さと対比して、個性に対する世間の目は厳しいからなぁ。それでも頻発する個性犯罪はやっぱり根の深いものなんだろう。

 

「おい、緑谷。緑谷出久。聞いてるのか」

 

「は、はい!? 」

 

「前へ出ろ。中学の時のソフトーボール投げ何m(メートル)だった? 」

 

「えっと………54、です」

 

 呼ばれるとは思ってなかったからビックリした。

 

 ヒーローになりたいと嘯いていた割には地力を鍛えてなかったから最後、かっちゃんには及ばなかった。確か67だったか。

 

「じゃあ『個性』を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい」

 

 先生の視線が鋭く刺さってくる。

 

「………思いっきりな」

 

 

 

 ―――と言われても。

 

「あの………個性、発動しないのですが」

 

「何やってんだ、さっさとしろクソデク!」

 

 どうしたんだ。何が起こっていますの。今日初めて会ったばかりのクラスメイト達からもそんな戸惑いの声が聞こえてくる。

 

「………。忠告が遅れた。今個性を消している。思いっきりやれとは言ったが、入試の時のような大きな力は使うな。力の使いどきがわからないわけではないと思うが一応な」

 

「個性を消した………? あのゴーグル、そうか………!?」

 

 ―――視ただけで人の個性を抹消する『個性』。僕も、間近に見れることはなかった、表舞台にはあまり出てこないアングラ系ヒーロー、イレイザーヘッド!

 

 知っている人は他にもいるようで、みんなも初対面からわからなかった先生の正体に興奮冷めやらない様子だ。

 

「調整が利くのなら、その限界までだ。お前の力は単純にして明快。強力で出来ることは多いのだろうが、木偶の坊になって助けてもらうようではヒーロー失格だ」

 

「わかり、ました!」

 

 当たり前だ。確かに、入試の最後、僕は浅慮にもやらかした。結局助けるつもりが助けられちゃったし。でも後悔は微塵もしてない。けど確かに、まだ僕はオールマイトのようにはできないんだ。

 

「以上だ。()()でやれ」

 

 ………でも、これって誤解されてないだろうか。使えるのは『ワン・フォー・オール』―――身体強化だけだと思われている?

 

 学校に提出する個性届には『無個性(がくしゅう)』とだけ書いて提出した。自分の個性に不思議な読み方を付ける人も居る、と役所に提出するときも受理されたけど。個性にキラキラネーム的な名付けをする風潮は今も残っているし。

 

 まあ、でもとにかく。………やるからには僕の全力を。オールマイトには「人に向かって使っちゃいけない」と言われてるけど、別に人に向けて使うわけじゃないし。

 

 ―――弾は計測用のソフトボール。耐久性は不明だけど、多分かっちゃんの爆撃にも耐える。大丈夫。砲身は『ヘドロ』………だけじゃ駄目かな。一応『ゴム』も付与して衝撃を一点に集中させて念の為爆発が直接当たらないようこの前とは形状を変更砲尾を丸形に理科で使うフラスコみたいにして丸の部分に弁『多湿多汗』で汗の精製ただえさえ乾きやすい運動場の空気がカラカラに―――

 

「あいつ、何して―――なにやってんだ………?」

 

「腕が………」

 

 ―――よし。充填完了。これは計測だ。威力は必要ない。ダメ押しに新しく使えるようになった個性で、ボールにかかる()()()()()()

 

「Victor Canon!!」

 

 またの名をかっちゃん砲・改!

 

 Booooom―――Baaaan!!

 

 手元の二回りは大きく膨れ上がった爆破の音を置き去りにして弾は射出。計測用のソフトボールは音速を超えて、雲を破り、空の遙か彼方へ。

 

 顔に当たらないよう腕から熱を排出し、元の自分の手に戻す。いつか人の姿に戻れなくなるんじゃないかと考えたことはあるけど、不思議と不安自体はない。色々と考察は重ねてきたけど、僕のこれは変身の個性ではないんだと思う。円から出るとみんなポカンとした表情で空を見上げてる。

 

 少し驚いたように、唯一イレイザーヘッド―――相澤先生だけは手元の計器を見る。

 

「(PiPi―――)………測定不能、ね。壊れたか、電波から外れてしまったか。………まあいい。お前の個性について聞きたいことが出来た。差し当たって今この場では聞かないが、後ほど説明をするように」

 

「はい、わかりました。一応、あれが僕の今出せる()()です」

 

「………列に戻れ」

 

 咄嗟のことだけど思うようにできた。少し誇らしくして列に戻ろうとすると、クラスメイト達の放心状態が解けたようだ。

 

「うおお! すっっげええええ!! なんだあれ! なんだあれ!?」

 

「ど、どういう『個性』ですの!? 私の『創造』とは違うようですけど! 今、あの方は何をされたんですの!?」

 

「す、すごい! すごい! あんなことも出来たんだ、緑谷君!」

 

 どういう『個性』なのか、はたまた、何が起きたのか。怒号のように、みんなが口々に言い始める。急に体力テストになってしまって自己紹介のできなかった、制服姿の眩しいあの良い人も驚いていた。

 

 事情を知るかっちゃんの方を見ると、間抜け面晒していたようで、目が合ったら滅茶苦茶険しい顔になってあ、唾吐いた! いくらグランドだからって汚いなぁかっちゃん。

 

「………おかしいな。入試の時に使っていたのは明らかに違う『個性』じゃないか。まるでオールマイトのような超パワーで0Pヴィランを倒していたのに」

 

「………それどういうこった」

 

「あ、私も見てたよ! こう、跳びあがって、バコーンって! いやぁ、アレもすごかったけど、今日のも凄いよね!」

 

「あ!? おい、クソデクゥ! てめェ、やっぱし手ェ抜いてやがったな!?」

 

「ひっ、かっちゃん怪我しちゃうから使わなかったんだよ! そんな怒んないでよ!」

 

「怒っとらんわ!」

 

 わいわい、きゃいきゃい。皆の緊張が解れたようで、ちょっとは頑張ってみた意味があったのかもしれないと安堵する。やり過ぎたかとちょっと心配でもあった。

 

「にっしても()()()()()()()! 個性思いっきり使えるなんて! 流石ヒーロー科!!」

 

「面白そう、か―――ヒーローになる三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

『!?!?』

 

 誰もが思い、誰かが言ったその言葉に、近づいてきていた相澤先生が言ったその一言で、シンと静まり返る。緊張が走る。

 

 

 

「よし、トータル成績最下位のものは見込み無しと判断し―――除籍処分としよう」

 

 

 

 なんだ、それは。

 

 

『はあああ!?』

 

「生徒の如何(いかん)先生(おれたち)()()―――ようこそ、これが」

 

 ―――雄英高校ヒーロー科だ。

 

 

 

 ……狭き門は、潜り抜けただけでは終わらない。

 

 入学初日の大試練は、容赦なく僕たちを(ふるい)にかけてきた。

 

 

 

 

 

 




一年経ちそう。めっちゃお久しぶりです。難産でした。


感想レス
前回はミッドナイトも大歓喜間違いなしだったようで、一安心。
いい加減草葉の陰の物間君が窒息死しかけてますが、うん。何も問題はなさそうなので続行です。もう死んでるじゃんとか言わない。
今更ですが、『学習』したOFAが使えなかったのは、どうして? というご質問をいただきました。
そういや物間君、原作『No.214 ぼくらの大乱戦』で使えなかったよね、君。まあ、明言は避けます。
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