ヒーロー『デク』   作:ジョン・スミス

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デクのステータスシート的なのはいずれ。
まだ個性の発動条件的なのももう少し先のお話で。




第3話

「うわあああああああ!?!?」

 

「あ、おい! とまれぇええええええ!!」

 

 叫ばずにはいられなかった。自分を奮い立たせるために。僕は制止の声を振り切り、かっちゃんとヘドロヴィランの元へ行く。

 

 ―――助けなきゃと思った。かっちゃんのあの目を見て。苦痛に歪む顔を見て。

 

 ヘドロヴィランの個性で本当に人を乗っ取れるのか、どうかなんて知ったこっちゃない。でも、囚われた経験のある僕から言わせてもらえば、あの個性(ちから)は強い。ああして捕まって、僕やかっちゃんのような中学生は手も足も出せなくなる。―――苦しいんだ。

 

「誰かその子供止めろおおおおお!!」

 

 かっちゃんの個性でどれだけ火力を出せるのか、僕はまだその限界を知らない。これだけのことができるんだと今日知った。昔から思ってた。僕の幼馴染は才能マンだと。―――でも助けられたがってる。

 

 こんな時に、こんなことを考えているなんて僕は馬鹿だ。………個性を使うべきかどうか。そういったことを考えるべきだと自分でも思う。

 

 でも、そんな自分本位な事、かっちゃんの顔が見えたとき綺麗さっぱり頭から抜けてて。

 

 ―――奇襲! 晒す個性は最小限に! シンリンカムイの如く!

 

 背負っていた鞄を投げつける。

 

「ぬ゛っ」

 

 投げた鞄は中に入ってたノートや教科書をまき散らしながら、ヴィランの目玉に当たる。

 

 目くらましは成功!

 

「かっちゃん!!」

 

「なんで、てめェが!」

 

「足が勝手に!! なんでって、それはわかんないけど!」

 

 

 

 色々理屈は付けられると思う。ただ、あの一瞬はなにもかも忘れて。

 

 

 

「君が救けを求める顔をしてた!!」

 

 

 

 精一杯、僕は笑って見せる。正直ビビってる。でも、この場で一番つらいのはかっちゃんだろうから。僕も君も憬れた彼のように笑ってみせる。

 

「や………め、ろ!」

 

 かっちゃん、それ無理。このヴィランは言っていた。45秒あれば意識を飛ばせると。………幾らタフネスだといってもかっちゃんにも限界がある。

 

 ―――今日、直接会えたのは幸運だった。

 

 一瞬でもいい。少しだけでもいい。あの力を、僕に貸してください!

 

 個性が発動する感覚。大丈夫だ。使える!

 

 僕は握りしめた拳を、振りかぶり一気に―――振り下ろした。

 

 

 

「このガキ、何しに来たんだ?」

 

(なにしてえんだ、クソが………!!)

 

 

 

 僕の使った個性は―――オールマイトの個性(ちから)は発動しなかった。

 

 

 

 ………あれ!? なんでだ!?

 

 考察が足りなかったのかそれとも増強系じゃなかったのかじゃあ個性抜きであのパワーなのかいやでもそんなことありえるのかそうなると無個性と変わらないというのか流石オールマイト格が違ったって思考停止だ考えろオールマイトの力は個性によるものじゃないって考えは捨てろ個性が直接あのパワーに関与してないと言う可能性ならどうd―――「もう少しなんだから邪魔するなあ!!」

 

 思考の最中、ヘドロヴィランの手が目前に迫り考察は強制的に止められる。

 

「自殺志願かよ、無駄死にだ!」

 

 加速される思考。ゆっくりと動く世界。ここ最近の経験則からして走馬燈っていうらしい。現状を打開できる最適解の個性を脳内で捜索し、母さんの個性を使えばよかったと思い至るころには頬に散ってきた生ぬるいヘドロの感触。

 

 例えるなら高さ5メートルの飛び込み台からプールに大の字で飛び込むような―――そんな衝撃を覚悟した。

 

 

 

 □-□-□

 

 

 

 結果、僕は生きていた。

 

 咄嗟に『ゴム』の個性を使って衝撃を和らげようとしたものの必要なかった。

 

 No.1ヒーローが無理を押して助けてくれたのだ。

 

 振り下ろされた拳は僕と違って天候を変えるほどの圧を伴い、ヘドロヴィランは飛散して、僕とかっちゃんは助けられた。

 

 降り出した雨によって火の勢いは落ち着き、騒動で昂っていた身体をも冷やされて、ギャラリーは自然と解散して。

 

 かっちゃんは事態が収拾した後スカウトを受けていた。納得いかない顔してたけど、満更ではなかったようだ。

 

 僕はというと………ヒーローたちに物凄く怒られた。無茶するな。大人(ヒーロー)にまかせればよかったと。………ちょっと思うところはあったけど、その通りだ。上手くやれば違ったのだろうけど………。

 

 オールマイトにお礼を言わなきゃと思ったけども、マスコミに囲まれてて断念した。

 

 

 

 そんなことがあって。あのままあの場所に居ても晒し者でしかない。

 

「デクっ!!」

 

「………かっちゃん」

 

 落ち込みながら帰ろうとしていたところへかっちゃんが追いかけてきた。

 

「俺は………てめェに救けを求めてなんかねえぞ!! 助けられてもねえ!! あ? なぁ!? 一人でやれたんだ、無個性の出来損ないが見下すんじゃねえぞ………恩売ろうってか? 見下すなよ! 俺を!!」

 

 クソナードが! と吐き捨ててかっちゃんは反転。来た方向へと去って行った。

 

 その後姿を見てタフネスだなぁと思うのと。かっちゃんの言う通り、自分が何かできたかといえば、何もできなくて。

 

 何もできなかったから、オールマイトに無理をさせてしまった。

 

 もっと個性を使いこなせるようにならないと。もっともっと頑張らないと。

 

 僕は誰よりもスタートが遅れて―――

 

 

 

「私が来た!!」

 

「わ!?」

 

 路地から急に現れたオールマイトに目を剥く。

 

「オールマイト!? なんでここに………さっきまで取材陣に囲まれて………」

 

「抜けるくらい、わけないさ! 何故なら私はオールマ―――ゲッボォ!!」

 

「わ―――!?」

 

 喀血と同時にオールマイトは痩せぎすの姿、トゥルーフォームに変わってしまう。

 

 実際にしっかりと目の当たりにしてしまうと、本人なんだと実感してしまう。慣れないけど。

 

「少年。礼と訂正………そして提案をしに来たんだ」

 

「へ?」

 

 はて、なんの話だろうと内心首を傾げる。

 

「君が居なければ………君の身の上を聞いてなければ、口先だけのニセ筋となるところだった!! ありがとう!!」

 

 ニセ筋って。

 

 テレビでよく見るオールマイト………マッスルフォームはプールとかで常に力んでる人みたいなものって言ってたけど。別人って言われたら信じるくらいに違うその姿は、いっそ変身と言ってもいいくらいで。

 

 ニセ筋とは言い得て妙だ、なんてつい思ってしまった。

 

「そんな、お礼なんて! ………そもそも僕が悪いんです。仕事の邪魔して。何もできなかったくせに、生意気なこと言って」

 

「そうさ!! あの場の誰でもない、小心者で無個性の君だったから! 私は動かされた!!」

 

 心臓が早鐘を打った。

 

「トップヒーローは学生時から逸話を残している………彼らの多くが話をこう結ぶ!『考えるより体が先に動いていた』と!!」

 

 胸に去来するもので僕はいっぱいいっぱいで。

 

 長く個性が無かった。無個性だからと蔑まれ。無個性だからと、誰もが夢見るものに憧れることさえ許されなくて。

 

『ごめんねえ出久、ごめんねえ………!!』

 

 ―――母さえ、諦めてしまって。

 

「君も、そうだったんだろう!?」

 

「………ッ!!」

 

 違うんだ。母さん。あの時言って欲しかった言葉は―――。

 

 こんな強個性が発現しても、誰にも言えず。言ってもらうことなんて無かった。

 

 

 

「―――君はヒーローになれる」

 

 

 

 誰かに認めて貰いたかった。

 

 他の誰でも無い、No.1ヒーローにそう言われ。

 

 ろくに個性も使えない、僕が。ヒーローになれると。なっても良いんだと。

 

「―――っあぁ………ッ!!」

 

 声を殺した慟哭。僕は情けないくらい泣いて、喜んだ。

 

 

 

 この日、夢は目標に。

 

 言い忘れてたけど―――これは僕が最高のヒーローになる物語。

 

 




感想そして評価ありがとうございます。
まだ2話しかなかったのに10点を二つもいただけて感謝感激です!
感想は読んでますよーってアクションだけでも返したいので少し素っ気ないかもしれませんが、ご容赦いただければ。ユーモアがあればなあ。アイニードユーモア。
やっとコミック一話分ですが、毎週木曜日までには更新しますのでどうぞよろしくお願いします!ああああ!!

個性紹介
『ゴム』
全身ゴムの個性! 使用者は一介のヒーロー! 緑谷少年が目をつけてるヒーローの一人だ! 攻撃、防御、拘束と汎用性が高いぞ!
出来ることは大体皆さんが想像してるそれ。デメリット無いので強い。
尚デクは使い熟せてないので実際弱い。今後割と出るかもしれない。

オールマイトの個性(仮)(ワン・フォー・オール)
拳一つで天候が変わっちゃう!
でも単純な超パワー個性じゃない。デクが唯一覚えてその一端すら出せなかった個性。
聖火の如く引き継がれてきた力は、認められてこそ、授けられてこそ。覚えたものとはその本質から違う。
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