ヒーロー『デク』   作:ジョン・スミス

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色々と二度見しました。
日刊ランキング1位記念で更新! ちょっと長め!
おまけに「ぼくのかんがえたさいつよデク」のステータスシートを公開。

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緑谷出久
緑谷'sヘアー:毛根がねじれている。
緑谷's汗:汗腺はザ普通。地味。
緑谷's涙:涙腺がブチ切れている。
緑谷'sシャツ:無地に文字プリント。シンプルイズベスト。
緑谷'sパンツ:ポケット沢山。機能美。
緑谷's靴:神のお気に入り。ゴリゴリ書き込むのが楽しいらしい。私も好き。
個性:『無個性(がくしゅう)』(
直接「知る」こと! 「考える」こと!
この二つが出来さえすれば発動型、常時発動型、異形型問わず個性を『覚える』事が出来る!! 異形型、常時発動型はオンオフが可能! 使う個性に合わせて体のつくりを変えることが出来るぞ! 変身する個性みたいだな!!(例えばヘドロと岩の異形型個性を共存させることも可能! あまりやり過ぎると元の体に戻れなくなるかもしれない!?)
しかし個性の習熟には「体験」が必要だ! センスが問われるな!! Plus Ultra!!




※尚、出久個人の見解による






第5話+α

 ―――朝6時、多古場海浜公園。

 

 ビクビクとしながら電話を待った昨夜。オールマイトからの電話におっかない想像をしながら出て。ほっと一息をつけたのは、電話越しにうけたNo.1ヒーローからのお説教の一時間後だった。

 

 認められた、と興奮が収まらず、結局寝たのは日付が変わってからという。いま現在若干、寝不足気味だ。

 

 指定された場所はここ、多古場海浜公園。早朝のゴミ山の中で、僕とオールマイトは再会して。僕はワン・フォー・オールを継ぐ意思を伝えた。

 

 ―――そして始まった。僕の修行が。

 

 

 

「ヘイヘイ、緑谷少年!! 全然進んでないぞ!! なんて座り心地の良い冷蔵庫なんだ!」

 

「ぐぬぬぬぬ!!」

 

「もう一度言っておくが個性使うのは無しだぜ! 自力で運ぶんだ!!」

 

「ふぬぬぬぬぬぬぬっ!!」

 

 冷蔵庫に括り付けられたロープを引っ張る。上にはオールマイト。

 

 無理でしょ………。

 

「んーピクリとでも動けばちょっとはラクだったんだけどなあ!」

 

 ちょっと力を抜いて小休憩だ。

 

「そりゃだってオールマイト274Kgあるんでしょ………」

 

「いやー痩せちゃって255Kg」

 

 それでも重い………!!

 

 というかマッスルフォームとトゥルーフォームで重さが違うってどういうことなんだ!? 質量保存の法則は!? いや、超人社会になって大概なくなった気がするけど!!

 

 ていうか僕、何で海浜公園でゴミ引っ張ってるんだ………。

 

 とはいえ、やらないと―――!!

 

 それに、しても。

 

「オールマイト、なんで、こんな、ことを!?」

 

「ハッハッハ!! 何故って!? そりゃ君―――器じゃないもの!!」

 

「仰ってることが前と真逆!!」

 

 思わず手をロープから放してしまい、べちゃ。という音がしそうな角度で前のめりに倒れる。泣きそう。

 

 そんな僕をオールマイトは楽しそうにスマホのカメラで撮ってた。(オールマイトスマホは確か耐久性に優れているオールマイトモデルでファン垂涎の代物。高い!)

 

「HAHAHAHAHA! 身体だよ身体!」

 

 ………?

 

 いや、あのウケるーじゃなくて。撮るのやめてください。連写も止めてください。

 

 そんな嘆願を視線にこめているとやめてくれた………。百枚くらい撮られたのでは。

 

 スマホをしまい、「いいかい」と前置きするオールマイト。

 

私の個性(ワン・フォー・オール)は言わば何人もの極まりし身体能力が一つに収束されたもの! 生半可な身体では()()()()()()()、四肢がもげ、爆散してしまうんだ!!」

 

「四肢が!?」

 

 えっと、じゃあつまり。

 

「身体をつくり上げるトレーニングのためにゴミ掃除を………?」

 

 異形型の個性を使えば継げるんじゃないかと思ったが、この姿に戻ったとき四肢が爆散しそうだ。残りの人生を異形型の個性で過ごす覚悟は流石に出来ない。

 

「YES! だが、それだけじゃないぜ!」

 

 コンと先程までオールマイトが乗っていた冷蔵庫はノックされただけで、255Kgの人間一人支えられていた側面にへこみが出来る。マジか。

 

「昨日ネットで調べたらこの海浜公園一部の沿岸じゃ何年もこの(さま)のようだね!」

 

「? ええ。なにか海流的なアレで漂着物が多くて。そこにつけ込んで不法投棄もまかり通ってて。地元の人間は寄りつかないです。………なので僕もここで個性の練習してました」

 

「OH! そいつは済まない。君の個性の実験場を奪うことになっちゃうかもしれないが―――」

 

 オールマイトは冷蔵庫の上に手を置く。

 

「ヒーローってのは本来奉仕活動! 地味だ何だと言われようとも! そこはブレちゃあいかんのさ―――!」

 

 メコ! メコ! ベコ!

 

 そんな音を立ててオールマイトにプレスされていく不法投棄された冷蔵庫。

 

 

 

「この区画一帯の水平線を蘇らせる―――それが君のヒーローへの第一歩だ―――!!」

 

 

 

 ぺっしゃんこになった冷蔵庫の先に朝焼けを見た。あるいは、僕のヒーローとしての日の出。

 

 でも。

 

「第一歩………これを掃除―――全部!?」

 

 途方もないゴミの量。中には軽トラまで。その軽トラの荷台には更に粗大ゴミが積まれている。途方に暮れながらも、オールマイトに視線を戻す。

 

「緑谷少年は雄英志望だろう?」

 

「はい!? はい!! ………雄英はオールマイトの出身校ですから。行くなら絶っっ対! 雄英だと思って、ます!」

 

「この行動派オタクめ! くー!!」

 

 くるり、と回って画風の違う顔に影を落とすオールマイト。ソーシリアス!

 

「………前にも言ったが無個性で成り立つような仕事じゃない。悲しいかな現実はそんなもんだ。………ましてや雄英はヒーロー科最難関! つまり」

 

「入試当日まで残り10ヶ月。それまでにある程度身体を作っていかないと、オールマイトほどの超パワーは途中で使い始めては変な目で見られるから、か。………いや、でも僕の個性なら有り得るんじゃないですか?」

 

 増強系の個性を掛け合わせたらワンチャン。

 

「ンンンー!! まあ身体作りをやっていって損はないさ! それにOFA(ワン・フォー・オール)の習熟は難しいだろうからね!!」

 

 早めに慣らした方が良い。そう言うオールマイトの様子は何か隠し事をしているようにも見えた。

 

 ―――でも、身体作りは確かに必要だと思う。僕自身の個性を十全に扱うためにも身体は鍛えないとダメだ。

 

 少し怪しいオールマイトの挙動は見なかったことにする。

 

「ゴホン。そこで、こいつ! 短期間でOFAを君のものにするための、私考案! 『目指せ合格アメリカンドリームプラン』!! ―――課題(ゴミそうじ)をより確実にクリアするためのトレーニングプランだ! 生活全てをこれに従って貰う!!」

 

「寝る時間まで………」

 

「ぶっちゃけ超ハードね、これ。ついてこれるかな!?」

 

 さらには朝4時に起床して、トレーニング。それから学校、ゴミ掃除とみっちりとスケジュールが組まれている。ざっと見ただけでもこれだ。

 

「そりゃあ、もう!! 他の人よりも倍は頑張らないと、僕はダメなんだ!!」

 

 ………でも個性を使いこなすための時間がない。いや、オールマイトがこうまでしてトレーニングプランを作ってくれたんだから、守らないわけにはいかない。いや、でもなあ………。

 

 

 

 ―――当日から早速開始されたトレーニングは、ちょっと鍛えていたぐらいの僕では中々にハードで。

 

 流石に夜更かしをして個性の練習は出来なかった。

 

 

 

 □-□-□

 

 

 

 ―――覚えた個性は脳じゃなく、身体が覚えている。

 

 勿論何を使えるかは憶えてなきゃ使えない。でもノートにまとめさえすれば、ヒーローにまつわることなら自分でもびっくりするくらいの記憶力を発揮する僕だ。そこは大丈夫。

 

 それに覚えた個性は鍛えれば鍛えるだけ。使わなくても衰えることはない。

 

 ただ、使うときの感覚は忘れそうになる。

 

 特にかっちゃんの『爆破』の個性で飛ぶときなんか最たるもので、身体制御のあの感覚を忘れたら、もう飛ぶことなんてできない。

 

 僕の個性は強い。でも個性が使()()()のと、使()()()()()のは別だ。

 

 ………このままじゃあ器用貧乏で終わってしまいかねない。

 

 考え事をしながら、夜の住宅街を走る。自警行為はもう止めなさいとオールマイトにお説教されちゃったし。こうして寝る前に走り込むぐらいだ。

 

 自警行為と言っても、大したことはして無かった。

 

 でも、オールマイトに言われたように今後自分の持っている個性(ちから)で対処できないヴィランと遭遇してしまうかもしれない。

 

 じゃあ、個性を実践するには如何するか。

 

 考え事をしているうちに―――僕は自然と個性の練習場にしてた海浜公園に足を運んでいた。馬鹿だなぁ僕。何だかんだであの雑多なゴミ山に愛着が湧いていたらしい。………ちょっとさみしい気持ちになってる。

 

 ゴミ掃除を始めて少し見通しがきくようになった海岸では、もう派手な個性は使えない。………海岸では?

 

 ―――どうして気付かなかったんだ僕は! 海まで出てしまえば? いけるんじゃないか!?

 

「よしっ!」

 

 波打ち際から気合いを入れて発動させるのは『水の上を歩く』個性。

 

 名前の知らない去年の3年生の先輩が使ってた個性。

 

 プールで同級生たちとはしゃいでいたのが目に入って、どこかで使えるだろうと覚えた。

 

 だけど、これが中々難しい。発動中は足が水面から『落ちない』というべきか。波打つ水面に立っていると船に乗ってないのに船酔いしそうになるし、使いどころが限られる個性だ。海面で転けてしまえば足首から上の身体は海の中だ。

 

 この個性の持ち主のやんちゃな先輩は仲間に『水流操作』の個性を持ってる人がいたのか、これでノーボードサーフィンしてたけど、中々の才能だったんだと今更だけど感心してしまう。

 

 取り敢えずはこれで海岸から少し離れて、海の上で『爆破』を始めとした派手な個性の練習。

 

 その後は海岸に戻って、地味だけど強い個性の練習をしよう。ヘドロ事件のあのヴィランの能力は、滅多に使うことは無いかもしれないけど、こと防御においてかなり使えるし、練習しておきたい。

 

 海面を歩きながら考える。………同情するわけじゃないけど、あの個性(ヘドロ)だ。あのヴィランはあれでかなり苦労したんじゃないかなと、想像をめぐらせた。

 

 人型を保つのは中々に難しく、精密な動きは中々出来やしない。見た目は悪いし、服はあまり意味をなさない。………きっと―――

 

 ううん。今は自分のことに集中。あの異形型ヴィランに同情して感傷に浸ってる時間は惜しい。

 

 オールマイトのような最高のヒーローに―――そしてオールマイトを()()()()()()()()()()()()

 

 ヴィランに同情するのは自分のこと、他人(ひと)のことを助けられるようになってからだ。彼についてはしっかりと更生して出てきてくれることを願うだけにしておこう。

 

 だから今は個性の練習あるのみ!

 

 幸運なことに、眠ったら体力を全回復できる『回眠』の個性を覚えた。先日小学校の時の僕と同じいじめられっ子に再会して、こっそりと憶えさせて貰った。

 

 傷は治らないようだけど、寝ている間の自然治癒は少し早まる。1日で傷ついた筋肉の組織が再生するくらいには。

 

 まだ習得しきってないせいか、1日一回の制限付きだけど、翌日に疲労を持ち越さないのは大きい。

 

 

 

「頑張れ、僕」

 

 船酔いにならないように歩いてきた。このぐらいの距離で丁度よさそう。

 

 ものは試しだ。この前ヒーローに捕まっていたヴィランの『大量に汗を出す』個性でかっちゃんの『爆破』の個性にブーストをかけてみよう。―――かっちゃんの個性は反動で肩や腕に負担がかかる。念のため『剛肩』と『ゴム』の個性で負担を軽減して。

 

 危なっかしくて中々海岸で使えなかったから。この機会に。今まで海まで出ることなんてなかったし。

 

 

 

 思った以上に手の平から、どばばっと大量に放出されてしまったニトログリセリンのような汗は―――ロケットの如く僕を雲付近まで連れて行った。

 

 ………オイオイ、死んだわ僕。

 

 

 

「………死ぬかと思った―――」

 

 上空の冷えた空気に凍えながら、何とか海面まで戻ってきたものの、自業自得な臨死体験に精神的にやられてしまい、早々と家に帰って寝た。

 

 

 

 雄英入試当日まであと6ヶ月。

 

 

 




感想、評価、ありがとうございます!
びっくりした。お気に入り件数も凄い勢いで増えて………恐いからあんまり見ないようにしよう。
誤字報告も感謝してます。反映させていただきました。

コメントレス
ニードレス多いなぁと。私も好き。




自分の知らないキャラクターを想い起こされてる方もいらっしゃったので、それとなく紹介してくれたら嬉しいです(小声

個性紹介コーナー
水の上を歩く個性(仮)(???)
そのまんま。去年一つ上だったちょっとチャラ男系の先輩から覚えた。エアーウォークなんて個性があるから多分ウォーターウォークなんて名前の個性。
力場作って立ってるのか、それともアメンボみたく浮かんでいるのかは謎。デクの考察によればアメンボ説。裸足でなかったので、もしかしたら力場も有り得る。
足の裏だけなので、転けそうになっても手をつけられない。水の上から落ちるなんて貴重な体験が出来る。

大量の汗を出す個性(仮)(???)
ヒーローに負けたヴィランから覚えた。体内の水を使っているわけでは無いため干上がることはない。周囲にある水分を自分の汗として放出している。周囲に無い場合は身体の水分を排出。ヴィランの決め台詞「これは水ではない―――汗だ」は対峙していたヒーローを震撼させた。詳しくは汗の主成分を検索。

『爆破』
おなじみかっちゃんの個性。詳しくは原作参照。手から汗の代わりにニトロのようなのものが排出される。前述の個性と掛け合わされて、デクは未確認飛行物体になった。観測者からは『打ち上がる流星』と称された。

『剛肩』
めっちゃ強い肩。砲丸投げの砲丸でソフトボール投げできるくらいには堅く、そして柔らかい。肩が抜けることは無く、まず故障はしない野球選手垂涎の個性。
これをデクは怪我をしないためだけに使った。

『ゴム』
第3話参照。ルフィ。以上。

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