【本間和哉】さんの場合
オレの名前は【
輝明学園に通う高校二年生、17歳。
これでもウィザードの端くれだ。
と言ってもウィザードとしての才能は無いんだがな。
そんなオレは今、学校で昼飯をつついていた。
「頼むカズヤ!この通りだから!」
突然オレに頼みごとをしたコイツの名前は【
涼やかで爽やかな笑顔が似合うイケメンで少々毒がある。
オレの親友だ。
立場的にはPC3だな。
オレが。
「は?」
「和哉しか頼るやつがいなくてさ!スクールコロシアムのパートナー」
「は?」
「いや、は?じゃなくて。あるよな?学内のウィザードを争わせるコロシアム」
「そりゃ、知ってるけど」
スクールコロシアムとは輝明学園で開催されている学生ウィザードの腕試しの場だ。
鍛練に鍛練を重ねると景品が貰えたりする。
「で、そのパートナーをして欲しいんだよ」
「ふ~ん……ま、いいけど。じゃあ条件がある」
「ああ、なんでも言ってくれ!」
オレは笑顔を浮かべ、右手の親指で地面を指した。
「土下座しろ」
「え?」
「聞こえなかったのか?ド・ゲ・ザ。土下座しろ」
オレの言った言葉に教室(事情を知ってるやつしかいない)の空気が凍りつく。
『お、おい、でたぞ』
『さすが、〈卑怯・姑息・鬼畜〉の三拍子揃ったド外道……親友すら足蹴にするとは』
『そこに痺れる憧れる!』
オレにウィザードの才能はない。
それでもオレの名は有名だ。
そう、人はオレのことをこう呼ぶ。
【ホンマ クズヤ】、と。
あの後、涼に土下座させて優越感に浸ったり、それを見た教室の女子の悲鳴を聞いてさらなる満足感を得たオレはスクールコロシアムに参加することになった。
今回のコロシアムはトーナメント形式。
そしてオレ達は順調に決勝まで勝ち上がった。
「ここまで長かった。ホント、色々あったよな……」
「……一回戦は相手と仲良く飯を食うフリをして下剤を飲ませ不戦勝。
二回戦は対戦相手に試合時間と重なるニセのラブレターを送って不戦勝。
準決勝は試合会場に移動中の相手チームを背後から襲って意識を刈り取り不戦勝。
……全部不戦勝だな」
「フッ、あまり誉めるな」
相手チームが“偶然”棄権続きになり決勝まで進むことが出来た。
ホントーに運が良かったぜ(棒)
「しかし、さすがに決勝ともなると相手は罠にかからないな」
「問題ねぇよ。それも想定済みだ」
「さすがクズヤさん。まあ、初めての戦闘だし、頑張ろうかな」
「やる気があるようでなにより……対戦相手が来たみたいだぜ」
そして会場の反対側から現れたのは両方とも女子のチーム。
入ってきて早々ツリ目がちの女子の方がオレに人差し指を向けて言いはなった。
「お前が本間和弥か!?」
「何?カズヤあの子と知り合い?何か睨んでるけど」
「心当たりが多すぎてワカンネ」
一々罠にかけた奴の顔とか覚えてねーよ。
「貴様!姑息な手段で勝ち上がって来たらしいな!恥ずかしいとは思わんのか!?」
あーこのタイプか。
だが、真面目ちゃんはひとつ勘違いをしているようだ。
狭い視野を広くしてやろう。
「姑息、ね」
「そうだ!戦いの構えすらしていない者を影から襲うなど許されることではない!」
「おいおい……お前、実際にエミュレイターと戦う時に同じことを言えるのか?」
「な、何?」
「エミュレイターは待ってはくれないぜ。それこそ突然襲ってくる。その時お前は“戦いの準備が出来てないから待ってくれ”なんて言えるのか?」
「そ、それは」
「言えないよな?オレよりも姑息な手を使ってくる奴等なんだぜ?」
「くっ……確かに」
「和弥の方が姑息な気がするけどね」
「黙れ涼。……それにこのコロシアムは試合外での行動を何も禁止してないぜ。正面から戦うのが苦手な奴も正面から戦わなきゃいけないのか?違うだろ、なあ?」
「……その通りかもしれない。私が悪かった、本間和弥。許してくれ」
「あ、今ので納得しちゃうんだ……」
涼の呟きが聞こえた気がする。
コイツ……チョロいぞ。
「だが、腐っても決勝だ。最後くらいは正々堂々戦ってやるよ」
涼が隣で『え?』って顔でこっちを見るがスルーだ。
決勝まで(まともに)勝ち上がって来た奴等だ。
油断は出来ない。
オレは気を引き締め構える。
「そうか。ならば私達も全力で相手をしよう」
「ああ。そうしてくれ」
「ちょ、ちょっとカズヤ、勝算はあるのか?」
「ある。いいか……」
涼に作戦を伝える。
「……いや、カズヤらしいというかなんと言うか」
ヒジョーにビミョーな顔をされた。
「よろしいですか?」
審判が最後に現れ、両チームに確認をとる。
勿論、頷いた。
「それでは、スクールコロシアム決勝戦。【本間和弥・伊東涼】チーム対【御剣樹・涼風鈴】チーム、試合……開始!!」
開始の合図と同時に動いたのは相手チーム。
二人揃ってオレ達の方へ向かってくる。
走る速度も申し分ない。
さすがに決勝まで来ただけのことはある。
【
もうひとりの【
よく決勝まで来たな。
だが……
「《バインド》!」
「なっ!?」
「ちょっ!?はぅ…く……!」
《バインド》は相手の移動を制限する魔法だ。
オレの手元から魔法の帯がこっちに向かう二人の元へ伸びる。
残念ながら御剣樹には避けられたが涼風鈴の足を完全に止めた。
ならばやることはひとつ。
「公衆の面前で触手プレイとは……さすが和哉」
「うるせぇ!動きが止まったぞ!今のうちに撃てぇ!」
「あんまり気乗りしないなぁ~……仕方ない。ごめんね」
涼の手元に巨大な銃型の箒『ガンナーズブルーム』が出現する。
そのまま装備させたミサイルポッドを展開。
そしてトリガーを押し込み、ミサイルが全弾発射された。
狙いは……足を止めた涼風鈴。
「えっ、ちょっ、まっ…!?」
十数発に及ぶミサイルの直撃を受けた涼風鈴は黒こげになる。
そして、目を回してる彼女の顔面へオレは……ドロップキックをブチ込んだ。
「もう、なにへぶぅっ!」
「うっわ~……」
涼風鈴は目を回して吹っ飛んでいく。
さすがポンコツの名は伊達じゃないな。
これで一人退場だ。
「涼風!おのれ、女相手になんと卑怯な!正々堂々戦うのではないのか!?」
「あん?足止めは戦術の基本だろうが。動けない的に集中攻撃もな。現にお前は避けたんだから避けれない奴が悪い。それにこっちは接近戦は苦手なんだから当たり前だろ?」
「むっ……確かにそうだが…女相手にドロップキックなど、しかも顔面だぞ!恥を知れ!」
「これが真の男女平等主義だ!」
「まあ、姑息ではあるよね」
「黙れ涼」
そもそも御剣樹には当てるつもりはなかった。
どうせ避けられるのは分かりきっているんだ。
全て予定通りだ。
「だが……この距離なら私の攻撃も届く!」
近距離まで近より地面を蹴る。
そのまま圧倒的な速度で長剣を振り降ろしてきた。
御剣樹は素晴らしい戦士だろう。
オレには大した才能がないから羨ましい。
「はああああ!!」
「《アースシールド》」
魔法で土の壁を生み出し、防御する。
すぐにヒビが入り破られるが即座に退避するから問題はない。
やはり防御はすぐ破られるか。
だったら……攻めるだけだ!
「くっ……前が…」
壊れた土の壁から土煙が上がり視界が遮られる。
それは向こうも同じなことは声でわかった。
その刹那を狙い、身体があると思われる位置に
「《サイコブレード》!」
魔法で形作った剣を突き出した。
長剣を振りおろした体勢からはすぐには動けまい。
やったか!?
「まだだ!」
「何!?」
煙が晴れるとそこには長剣の腹でオレの《サイコブレード》を受け止める御剣樹の姿があった。
バカな。
あの一瞬で剣を引き戻したのか!
「……この土煙に紛れて何かしてくるだろうことは予測がついていた。残念だったな」
「チッ……」
「今度こそ……逃がさんぞ!」
言葉と共に長剣による猛攻が始まる。
様々な角度からくる攻撃にオレは防戦一方だ。
「ほう……中々やる。だが、ここまでだ!」
「ぐおっ……」
御剣樹の剣がオレの魔法の剣を弾く。
そして、長剣を水平に構えた。
「くらえ、《魔器……解放》!!」
凄まじいまでの魔力が彼女の長剣から解放されていく。
アレは喰らったらマズい。
オレは全力で……彼女に向かって抱きついた。
「え?」
「もらったぜ!ピンチだと思ったか?この瞬間を待っていた!!」
崩れた体勢を無理矢理彼女の方へと向ける。
ぶつかるように抱きついた瞬間
「《ポータル》!」
「え?え?」
彼女と一緒にステージ外まで転移した。
「御剣樹、本間和弥、場外!よって【本間和弥・伊東涼】チームの勝利です!」
審判の声が響き渡る。
オレはそれを感嘆の気持ちで聞いていた。
腕の間にある温もりと柔らかさを噛みしめ、オレは叫ぶ。
「優勝だ!」
「い、いいから離せっ!」
「おっとすまん。いい匂いがしたもんでつい」
御剣樹は耳を赤くさせ肩を震わせている。
からかい過ぎたか。
魅惑的な感触だったのは認めるが。
ついでに下心満載だったのも認めるが。
「いや~ホントに勝っちゃったね」
「……私は釈然としないぞ。あんな姑息な勝ち方」
「姑息ではない!小賢しいと言うのだ!」
「どっちも変わんないでしょ」
「最後まで残った方が勝ちなんだからいいんだよアレで。こんなのと正面から戦うなんてアホか」
「こ、こんなの!?」
「確かに。こんなのと正面から戦う気はしないね」
「こ、こんなの……」
「しかし、さすが決勝まで進んだだけのことはあるな御剣樹」
「な、なに?」
「確かに。カズヤがいつ殺られるかヒヤヒヤしてたよ」
「なんか語弊がないか?」
「そ、そうか?」
「おう。危うくやられるところだった。御剣樹。お前は自分を誇っていいと思うぜ?」
「……樹だ」
「あん?」
「……樹でいい」
その言葉にオレは涼と顔を見合せ、苦笑した。
「そ、そうだ。お前達は優勝の報酬を何にしたんだ?」
「オレはでかいトランクだな」
「……何に使うんだそんなもの」
「色々」
人がひとり入るくらいのトランクもらっただけだ(意味深)
「で?涼の目的の景品ってなんだ?」
「ああ……これだよ」
そう言って涼が袋から取り出したのは……オレの卒業許可証。
「な、な…」
「優勝したら下さいって言ったら案外簡単に許可くれたんだよね。……どうして欲しい?」
「あんた、ほんまクズや!!」
オレは即座に土下座していたのだった……
一方その頃。
「グスン。どうせわたしのことなんて皆忘れてたんでしょ」
「す、すまん涼風。すぐ行くつもりだったんだ」
「……別にいいわ。気にしてないし。ドロップキックを顔に喰らったのも……スン…ズズ」
相方のポンコツは膝を抱えて拗ねていたという。
名前付きのキャラクターは一人を除き、プレイヤーキャラクターです。