ナイトウィザードオリキャラ短編集   作:volrent

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裏切り者

「本当に……裏切ったのか」

 

「……」

 

「答えろ……答えてくれ……本間和弥!」

 

「……ああ。オレは」

 

――お前らを裏切った。

 

 

 

 

ことの起こりは少し前。

新たな魔王が出現し、またも世界滅亡の危機が訪れた。

ウィザードは必死で抵抗していた。

だが、交戦の最中、オレを含んだ何人かのウィザードが敵に捕まってしまったのだ。

 

「くっ……世界の危機なんていつものことだから油断してたぜ……」

 

「ああ、いつも通りの世界の危機だと甘く見てた」

 

「世界の危機も魔王も、いつも過ぎて舐めてたんだろうな……」

 

「お、お前達!私をなんだと思ってるのよ!?」

 

「「「経験点」」」

 

「こ、コイツら……」

 

このままでは殺されてしまうだろう。

というわけで、オレは一計を案じることにした。

 

「魔王……本当にオレ達がただ捕まっただけだと思ってるのか?」

 

「な、なん…だと…?」

 

「別の目的があるに決まっているだろう?でなければ他の奴らと一緒に撤退している」

 

「なら……なにが目的だと言うの!?」

 

「決まっている……」

 

これでもかと勿体ぶる。

魔王が雰囲気に飲まれ、ゴクリ、と喉を鳴らす音がする。

そして…ゆっくりと口を開いた。

 

 

「オレ達は魔王様の元で戦うために参りました。是非ともお仲間に加えてください!」

 

 

こうしてオレは保身のためにウィザードを裏切ったのだった。

 

 

 

 

 

裏切ったオレは様々な計略を魔王様に授けた。

まず、最初の作戦は…

 

「オレ達を磔にして下さい」

 

「「「え?」」」

 

「ちょ、ちょっと待って。そういう性癖はもっと隠れた所で楽しむべきだと思うの。少しオープン過ぎるんじゃ」

 

「話は最後まで聞いて下さい。オレ達を人質としてアイツらに見せつけるんですよ」

 

「あ、成る程…それで?」

 

「そのまま無茶な要求でもすればいいんです。『攻撃したらコイツらを殺すぞ』とか」

 

「いいわ。いいわよその作戦!中々やるわね」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

こうして人質のフリ作戦が決行に移された。

オレ達は順に磔にされていくが勿論痛くない。

ついでにまるで拷問されたかの様に格好を偽装する。

 

「ウィザード共!お前達の仲間を捕まえたわ!!これ以上痛め付けられたく無かったら攻撃するんじゃないわよ?」

 

ウィザード達は人質に動揺する。

まず最初の作戦は上々の様だ。

 

ウィザードの中には樹と涼の姿もある。

樹は人質(フリ)を取られたことに動揺していた様だが、涼と他にも数人は疑わしそうにオレを見ている。

その視線に冷や汗が流れたがつとめて人質のフリをする。

 

「……ねぇ、ちょっと大丈夫かしら?なんかすっごい疑わしそうにこっち見てる奴いるんですけど」

 

「魔王様、魔王様。人質に話しかけては余計にバレてしまいますよ」

 

「ハッ!そ、そうね。気を付けるわ…」

 

…大丈夫なんだろうか。この魔王。

 

「コホン。さて、手が出せるかしら?全員攻撃開始!」

 

魔王様の合図と共に配下のエミュレイターの攻撃が始まる。

人質を取られたウィザードは防戦一方だ。

 

「くっ…卑怯者め!まるで和弥の如き姑息さだっ!!」

 

樹の叫びにさらに何人かがオレを疑わしそうに見始める。

……冷や汗が止まらない。

 

「あら、以外と抵抗するわね。そうね…一人ずつお前達の前で痛め付けてやるわ」

 

その言葉と共にオレの近くにいた魔王が痛め付けるための道具をとる。

勿論、これも痛くない。

ただ、バレるといけないので少し血をつけたりなど、見た目だけはリアルに…

……あの、リアル過ぎやしませんかね

 

「まずは…コイツよ!」

 

「グハァッ!?」

 

痛ぇ!マジで痛ぇ!

え、ニセモノじゃないの!?

なんでホンモノなんだよ!!

 

「演技の筈なのにマジで痛そうだ…」

 

周りの配下が感心してるがそんな演技とかじゃないから。

これマジだから

あまりの仕打ちに涙が止まらない。

 

「和弥!おのれ魔王!」

 

樹がオレの様子に声を上げるが、そんなこと気にしてらんない。

ものっすごい痛い!

しばらくすると魔王様がオレを痛め付けるのを止めた。

どうもウィザードが撤退したらしい。

 

「最初の作戦は成功ね…。悪いわね。演技だと見破られるんじゃないかと思ったのよ」

 

「イ、イエ、キニシテマセンヨ……」

 

オレの作戦と犠牲によってウィザードの部隊に大打撃を与えることが出来たらしい。

オレに疑惑の視線を向けていた奴らをも騙し通せたから撤退したんだろう。

次の作戦へと移らなければ。

が、全身の痛みと疲労でそんなこと考えてる余裕は正直ないのだった。

 

オレがある程度回復したところで次々と作戦を発動していく。

落とし穴を初めとした数々の落とし穴に嵌めたり、嵌めたり、魔王様すら若干引く程の落とし穴にウィザード達を叩き込んだ。

 

「落とし穴しかやってないんだけど……」

 

「同じ罠に何度も引っ掛かる奴らが間抜けということですよ、魔王様」

 

「それもそうね!」

 

そして…少数となったウィザード達との最終決戦が始まったのだ。

 

 

 

 

 

「ここでひとつ、こちらから攻めましょう」

 

オレは魔王様にそう提案を行った。

 

「あら?受け身の作戦を取っていたあなたがそんなことを言うなんて」

 

「ウィザードは現在少数です。少数ならばこちらの拠点に姿を隠しながら攻撃することも可能でしょう。ですから、そんな段ボールの人みたいなことをされる前に大部隊で一気に叩くのです」

 

「成る程。お前を配下につけて正解だったわ!人間にしておくのが惜しいくらいよ!」

 

「恐縮です」

 

そうしてエミュレイターの大部隊が傷付いたウィザードの元へ進軍を開始した。

そこでオレは魔王様へと進言した。

 

「どうせですから魔王様の姿を最後に拝ませてやりましょう」

 

この言葉に気をよくした魔王様は決戦直前にウィザード達の前へとその姿を見せたのだ。

 

「フフフ、ウィザード共。最早我々の勝利は揺るがないわ。だから最後に拝ませてやろう。私の姿を」

 

「くっ……」

 

ウィザード側の大半は悔しそうな顔を見せる。

 

「そしてお前達に紹介しよう。これまで数々の作戦によって我等の勝利を揺るがぬものとした軍師を!」

 

その宣言と共にスッと前へと出る。

 

「何……?和弥…?」

 

「……」

 

「本当に……裏切ったのか」

 

「……」

 

「答えろ……答えてくれ……本間和弥!」

 

「……ああ。オレは…お前らを裏切った」

 

「な、和弥…嘘なんだろう?また敵の懐から不意討ちするつもりなんだろう?」

 

お前の中のオレはどういうイメージなんだ。だいたいあってる。

 

「……残念だが樹。オレはこの……最強の魔王『アール=ヴァリドゥール』様の軍師となった」

 

樹の顔が驚愕に染まる。

…そういや魔王様の名前はじめて呼んだな。

 

「むふー最強か。むふー」

 

……そっとしとこう。

 

「最強なんていると思っているのか!」

 

「いるだろう。ウィザードとエミュレイター、相反する力を手にするアール様が最強じゃないと思っているのか?相反する力だぞ?闇と光を同時に操るくらいスゴイんだぞ?」

 

「た、確かにそれは…最強かもしれない」

 

「相反する力…むふふー」

 

コイツら……いや、何も言うまい。

 

「むふふ…そう言うこと。私達の勝ちは揺るがないわ。我が軍師よ…私の武器を」

 

「ハッ」

 

「か、和弥……」

 

オレはアール様に近付いていく。

そして、その手に武器…の代わりに手錠をかけた。

 

「え?」

 

何がなんだか分からないという顔をするアール様。

 

「今だ!」

 

オレの叫びと共に爆発が置き、後方にいたエミュレイターの大部隊の大半が巻き込まれる。

 

「え、ちょ?」

 

「もういいよ~!かくれんぼはしまいだぜ!」

 

地面からウィザードがエミュレイター部隊の真っ只中に出現し次々と討ち取っていく。

 

「オラァ!」

 

「調子乗ってんじゃねぇぞ!」

 

「死に腐れ!」

 

味方にはチンピラしかいねえのか。

その中から涼が樹を連れてこちらに来る。

 

「ハハハ、上手くいったな涼!」

 

「ホント、相変わらず姑息だよな」

 

「ぬかせ!」

 

「ど、どういうことだ!」

 

アール様がオレに問い質す。

樹と何人かのウィザードは今だ状況が飲み込めてないらしい。

 

「オレの落とし穴作戦あったろ?あの時落とし穴に仲間のウィザードを隠したんだよ。で、合図に応じて奇襲をかけたわけ」

 

「どうやってウィザードと連絡を…」

 

「磔の時にね。“安直魔法”《かくかくしかじか》ってので作戦を伝えたのさ」

 

《かくかくしかじか》とは相手と自分の精神を繋げ直接相手の脳内に情報をブチ込む、という何とも安直な魔法である。

ちなみに世界の守護者が作った魔法である。

それでいいのか、守護者さん。

 

「フン。でもこの程度じゃ私のことは止められないわ!」

 

アール様が魔法を放つ。

だが、オレはそれをアッサリ弾いた。

 

「へ?」

 

「いや~その手錠ね?“世界の守護者”特製で着けた奴の力を封じるんだよ。ま、ウィザード用だから弱体化が精々だろうが」

 

「な、何?」

 

「オレを近くに置くほど信用してくれる様に頑張ったんだぜ?タイミングが難しいからよ。下手にやるとあんたの配下にフルボッコだ」

 

そんなことをしてると突然樹に胸ぐらを捕まれた。

 

「か、和弥!つまり、お前は裏切ったフリをしてたのか!?」

 

「ああ。どうやって一網打尽にしてやろうかなと」

 

「なら、もっといい方法とか、素早く終わる方法とかあったろうが!せめて私にも教えてくれたっていいじゃないか!」

 

「おいおい……お前に教えたとして隠し通せたのか?すぐにボロが出て終わっちまうだろ」

 

「お前は私をなんだと思ってるんだ!」

 

「その事についてはお互い話し合うことがありそうだが……いいか?オレはな」

 

――上げて下げるのが大好きなんだ。

 

オレの言葉に樹はガックリと膝をついたのだった。

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