NSCI kai   作:草浪

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NSCI #02 再始動

オフィスは以前と同じく、捜査局建物内の小さな部屋ですが、以前よりも殺風景になりました。足柄さんが溜め込んだ書類の山も、野分が書いてきた書類も全て処分された棚は当分は手荷物置きになりそうです。そしてなによりも七係の重鎮がいません。

 

「足柄捜査官。この間違いだらけの書類はなんですか?」

 

それまで日向さんが座っていた席に座るのは、黒いパンツスーツを着込んだ不機嫌そうな矢矧さん。そして、その前に立つのはこれまた不機嫌そうな足柄さん。

 

「間違い? その書類に書いてあることは全て事実よ」

 

足柄さんは片眉を吊り上げ、挑発するように言いました。矢矧さんは足柄さんじゃらちがあかないと思ったのか、野分の方を見ました。

足柄さんが矢矧さんに提出した書類の作成には野分も関わっています。ですが、その報告書は内々に済ますものでは無く、矢矧さんが非公式に義務付けた大和さんに提出する書類です。

 

「野分もその内容で間違いないと思います」

 

野分はそこにあったクリアファイルで顔を隠しながらそう言いました。

ですが、クリアということは透明です。少しだけ視界がボケますが、矢矧さんが不機嫌極まりない顔をしているのがはっきりとわかります。

 

「私もあの現場にいたのよ? これが事実ではないことはわかっているわ」

 

「ならあなたが書けばいいじゃない。私達は大事なお昼休憩を潰してまでそれを書いたのよ」

 

書類の作成の指示は今朝言い渡されました。先日の廃倉庫の捜査に関するものです。

それを昼までに仕上げろと言われた足柄さんと野分は大急ぎで仕上げました。書類の作成自体は一時間もあれば終わるものですが、何を書くか。それを選ぶのに時間がかかりました。

 

「中に突入したのはあなた達よ。あなた達の名前が必要なの」

 

矢矧さんも食い下がりません。

 

「私は大和に事の詳細を報告する義務があるの。あなた達が今こうして捜査出来るのも大和のおかげだということを……」

 

「私は日向に言われたから仕方なくここに戻ってきたの。のわっちもそうでしょ?」

 

「話の流れはそうなっていますね」

 

正直に言うと、野分も矢矧さんのことは信用していません。

矢矧さんは規則に則った当たり前のことを言うだけで本心が読めません。野分は青葉さんの下でジャーナリストとして様々な人と話をしてきましたが、矢矧さんは基本的にこちらの言うことを聞こうとはしません。腹を割って話すということを極端に嫌う人です。

 

「今の七係は私の指揮下にあります」

 

「だから何よ?」

 

「私の命令に従いなさい。別にあなた達を悪いようにはしないわ」

 

矢矧さんがそう言うと、足柄さんは鼻で笑いました。

それもそのはずです。日向さんの時も足柄さんは好き勝手やってましたし、野分も自由にやらせて貰いました。それに日向さんには有無を言わさない迫力がありました。それに慣れすぎたのでしょう。

 

「日向があなたを選んだ理由がわからないわ」

 

足柄さんはそう言うと、踵を返し部屋から出て行きました。

野分と矢矧さんだけが取り残された部屋で、矢矧さんは疲れ切ったため息をつきました。

 

「あなたも私じゃ駄目だと思っているの?」

 

「別にそうは……」

 

思っていないわけじゃありません。そもそも野分は矢矧さんのことをよく知りません。

 

「正直に……」

 

「のわっち! ご飯に行くわよ!」

 

部屋に戻ってきたの足柄さんはハンカチで手を拭きながら野分にそう言いました。

チラッと矢矧さんを見ると、矢矧さんは黙って頷きました。

 

「わかりました。行きましょう」

 

矢矧さんに一礼し、部屋を出ようとした時、矢矧さんの何度目かわからないため息が聞こえました。

 

ーーーー

 

足柄さんにご飯と言われて連れてこられた場所。それは野分達がお昼休憩と称し、いろいろ仕事の話を日向さんと足柄さんと気兼ねなく話していた気軽な会議室、行きつけのファミレスでした。

店員さんも野分達のことを覚えていてくれたのでしょうか。他の席から目のつきにくいいつものボックス席に案内されました。適当に注文を済ませると、足柄さんはお冷を飲み干し、足を組み替えると腕を組みました。足柄さんが苛々している時にする動作の一つです。

 

「のわっちは今の環境、どう思っているの?」

 

足柄さんは野分と顔を合わせようとはせず、ジッと窓の外を、野分達の海軍特別犯罪捜査局の立派な建物を見ていました。

 

「やりにくい、ですね。日向さんの考えていたことはわかりませんでしたけど、目指す場所は明確でしたから。まぁ、あの時の野分は日向さんと足柄さんについて行くのが精一杯でしたから偉そうなことは言えませんけど」

 

「私はやり方が気にくわないわ。日向は日向の信じる正義の為にやっていた。けど矢矧は違う。大和の理想の世界を作り上げる為に私たちを利用しているようにしか思えないわ。人に利用されるのは構わないけれど、信じろと言われるのと、やれと言われるのであれば断然前者がいいわ」

 

店員さんが足柄さんのカツカレーとおかわり自由の珈琲を持ってきました。

いつものごとく、足柄さんはスプーンで器用にカツを一口サイズに切り分け、ご飯とカレー、そしてカツとバランスよく食べます。

 

「その点に関しては野分も同感です。日向さんは野分や足柄さんがやりことに関して、日向さんの立場が悪くなるかもしれないのを承知してやらせてくれましたからね」

 

別に好き勝手やっていたわけではありません。

足柄さんも野分も、日向さんならどうするか、それを考えて行動をしていたような気がします。無口で無愛想。けど、それは頭の中で野分が解けない問題を解こうと必死に考えていたのではないでしょうか。

 

「あの頃は日向の言うことを聞いていればよかった……そういう言い方は癪だけど、良くも悪くも、日向は私やのわっちのことをよく知っていた気がするわ。だから私、足柄という一員を動かすことに長けていたし、私も不満は感じたけどやりやすいように仕事をさせてくれている実感もあったわ」

 

それにしても、いつもここは野分のパスタを出すのが遅いですね。しばらく来ないうちに野分が好きだったナポリタンが値上がりしていたことには驚きましたけど、提供するまでの時間の遅さは変わりませんね。

 

「けど、野分達を矢矧さんの七係に配属を決めたのも日向さんです。きっとそのうち戻ってきそうな気もしますけどね」

 

「だといいけど……そういえば、この前の強制家宅捜索の矢矧が書いた報告書、あれ読んだ?」

 

「いえ、野分はまだ……というより、あれは矢矧さんが考えたプレス向けのカバーストーリーでしょう?」

 

「読んでるじゃないの」

 

「ざっくりと読んだだけで、熟読はしてません」

 

確か、矢矧さんは海軍関係者向けの覚せい剤の密造工場を検挙したと書いていたはずです。野分と足柄さんに命じられたのは反抗する容疑者の無力化だけでした。その後の捜査からは外され、矢矧さんが指揮していた捜査班と入れ替わり、足柄さんの車で家に帰ったのは覚えています。

 

「捜査対象のブツ、私の昔の上司曰く結構厄介なものらしいのよね」

 

「ただの覚せい剤ではないと?」

 

「そうみたいね。私も詳しい話は知らないわ。けど、いずれそれが欲しいが為に犯罪を犯す子が出てきてもおかしくない、と言っていたわ」

 

足柄さんは犯罪を犯す子、と言いました。

野分にはそれが妙に引っかかりました。足柄さんの昔の上司というのは恐らく陸奥さんのことでしょう。もし仮に陸奥さんがそう言い、足柄さんも聞いたセリフをそのまま言ったのであれば、子という表現は若い人のことを指しているのかもしれません。

やっと運ばれきたナポリタンを一口食べて、スプーンの上で麺を絡ませたフォークを回す。綺麗な一口サイズになるように整える。

 

「私、何か変なこと言ったかしら?」

 

「いえ、何も……どうしてですか?」

 

「もう十分一口で食べられる量が巻きついてるじゃない。いつまで回してるのよ?」

 

「……最近、口が開けられなくなりまして」

 

「考え事をすると、手を動かす癖は昔と変わらないみたいね」

 

まさか足柄さんにそんなことを言われるとは思いもしませんでした。

苦笑いを浮かべ、フォークに巻きついたパスタを口に運びます。

 

「もしそうだとすれば、日向が私たちをここに戻した理由はそれに関わることなのかもしれにないわね」

 

足柄さんはそう言うと最後の一口を食べ、店員さんにコーヒーのおかわりを貰いました。

よくカレーをコーヒーで食べれますね。野分には考えられませんが、カフェインで動く足柄さんにとってはそれが重要なのかもしれません。

 

「別に急かすわけじゃないけれど、あの厳しい矢矧さんのことだからあんまりゆっくり食べてるとお小言いわれるかもしれないわ」

 

足柄さんの言葉にハッとした野分は慌ててパスタを食べ始めました。

そんな野分を足柄さんは懐かしそうに見ていました。

 

ーーーー

 

デスクに戻り書類作成の仕事をしていると、携帯の着信音が二つ鳴り響きました。

一つは野分の、もう一つは足柄さんのものです。足柄さんは携帯のディスプレイを見ると、心底嫌そうな顔になり、ひとつ大きなため息を吐くと携帯を持って部屋から出ていきました。

 

「もしもし?」

 

『日向だ。急を要する事件が起きた。足柄と二人で急行してほしい』

 

野分はチラッと矢矧さんを見ました。矢矧さんは野分のことを不思議そうに見ています。矢矧さんから顔を背け、携帯のマイクを手で隠し小声になりました。

 

「日向さんの命令でも、さすがに矢矧さんの指示も出ないまま出動するのはマズイかと……」

 

『連絡系統に遅れが生じているんだ。直に矢矧の耳にも入る。だが、それでも矢矧は動かん。先にお前たちが行動を起こせ。動ける手配は既にしてある』

 

「わかりました……矢矧さんにはなんと?」

 

『特に何も言う必要はない。お前たちが手柄を立てれば矢矧の評価はあがるだろうし、失敗すれば独断専行でお前らが罰せられる。うまくやれよ』

 

「了解しました……万が一の時はよろしくお願いします」

 

『私は出来ないことを押し付けない主義でな』

 

日向さんはそう言いのこし電話を切りました。そのタイミングで足柄さんも部屋に戻ってきました。

 

「…………ねぇ、のわっち。気分転換にドライブにでもいかない?」

足柄さんのあからさまな嘘に矢矧さんは目を細め、訝しげに足柄さんを見ました。

 

「……そうですね。とりあえずこっちも一区切り着きましたし……お腹も空きましたし、出かけましょうか」

 

野分にしてはうまくやったと思っています。

矢矧さんの野分達に対する不信感は拭い去るどころか、ますます強いものになった気がしますが。

 

「野分はともかく、足柄。あなた一区切りどころか手もつけてないんじゃないの?」

 

「失礼ね……少しはやってるわよ。ただのわっちが大変そうだからここは先輩として面倒を見てあげなきゃいけないでしょ?」

 

「却下です。二人とも席に……」

 

座りなさいと言いかけた時、矢矧さんの電話が鳴りました。矢矧さんが電話に気を取られた一瞬の隙をつき、足柄さんと野分はすばやく部屋から退出しました。

 

ーーーー

 

「のわっちの方は日向からかしら?」

 

駐車場のあるフロアまで階段を全力で駆け下りながら足柄さんは普通に話しました。

 

「そう……ですね……日向……さん……から……です!」

 

それに対して野分の息は切れ切れです。

もし矢矧さんに勝手に出動することを知られたらエレベーターを止めかねない。という判断です。

いくらなんでも、そんなことはしないだろう。そうお思いでしょうが、先ほど放送でトラブルの為にエレベーターが全て止まっているというアナウンスが流れました。

これが偶然というのなら、矢矧さんは余程の幸運の持ち主でしょう。

 

「しかし……よく……矢矧……さんが……そんな……ことを……」

 

「のわっち、無理して話せば余計に辛くなるだけよ。矢矧は保守的だけどなんとなく日向に似てるのよ。だからやりかねないと思ったの。それに、むかし髪が白い腹黒空母に自分が制御出来ない物よりも自分の手足を頼れって教わったのよ」

 

髪が白い空母の方で腹黒い方なんていましたでしょうか。翔鶴さんは優しそうですし……てことは雲龍さんのことを言っているのでしょうか。

 

「あなたは知らなくていい世界のことよ」

 

足柄さんはどこか遠い目をしていました。

 

「しかし……よく……そんな……走れますね……」

 

「これは性悪戦艦のおかげよ。もう少しだから頑張って」

 

ーーーー

 

なんとか駐車場までたどり着くと、それまで七係の捜査車両が置いてあった場所に置かれていたのは大きなスポーツカーでした。

 

「あの性悪戦艦め……」

 

足柄さんはそう悪態をつきましたが、口元が緩んでいました。

足柄さんの後に着いていくと、足柄さんはスポーツカーの後ろに回り込んで下を覗き込むと、テープで底に貼られていた何かを剥がしました。

 

「あえて、3000GT……それもVR−4を選ぶとはあれがやりそうなことね」

 

足柄さんはそう言うとテープから車のキーを剥がしてボタンを押しました。

キュッキュッという解除音とがし、この3000GTという車はハザードを二回点灯させました。

足柄さんはそのままトランクを開けると、中には野分達が昔よく見ていたハードケースが二つ。丁寧に名前まで書いてありました。

のわき、とひらがなでかかれたケースを足柄さんから受け取り、中身を改めるとそこには野分の想像していたものと同じものが入っていました。

 

「小銃と……シグですね」

 

小銃の方はわかりませんが、拳銃は野分が昔使っていたシグっぽいものが入っていました。けど、握り心地は野分が使っていたシグで間違いありません。スライドにイカリのマークなんて入っていたでしょうか。

 

「のわっちのはE2をベースに変えてあるのね。グリップも細身だし、日向がくれたシグと同じだから握りやすいでしょ」

 

「よくわかりませんけど、この感じは野分のシグですね」

 

そう言って足柄さんの方を見ると、足柄さんは長い小銃を入念にチェックしていました。

 

「足柄さんのと野分のは形が全然違いますね」

 

「私のは16の銃身を切り詰めたものだから。やっぱりこれよ……まぁ、あの性悪戦艦のセンスがいいのが気にくわないけど」

 

足柄さんは何度か構えたりして具合を確かめているようでした。野分も小銃の方を手に取ると、ずっしりと重たいそれを落としそうになりました。

 

「のわっちのと私のでは使う弾が違うから共有は出来ないわね。けど、扱いに慣れていないのわっちにとっては丁度いいかもね」

 

足柄さんはそう言うと、野分の小銃を興味深そうに見ていました。

 

「これは何ですか?」

 

「MASADAのAKMよ。私も実物は初めて見たけど、西側諸国が作ったAK程度に覚えておけばいいんじゃない?」

 

「マサダさんのえーけーえむで、ニシさんのえーけーなんですか」

 

足柄さんの言っている意味が全然わかりません。

足柄さんは苦笑いをもらすと真面目な顔になりました。

 

「いい? 貫通力が高いからボディアーマーも貫くことができるわ。けれど、だからと言って無闇矢鱈に撃っちゃだめよ。しっかり狙って、引き金を引く。これは拳銃と変わらないわ。あの性悪戦艦、のわっちに過保護すぎたわね」

 

「よくわかりませんけど、これは指示があるまで使わないようにしておきます。足柄さんのは何となく見たことがある気がしますが……」

 

野分がそう言うと、足柄さんは野分に足柄さんのを持たせてくれました。

 

「バディに使っている武器のことを知っておいて貰うのはオペレーションがしやすくなるから説明するわ」

 

足柄さんのは野分のと違って派手な装飾品はついていませんでした。とれもスマートな仕上がりに見えます。

 

「私のは弾をばら撒くというものでは無く、確実に必要な場所に弾を送り込む仕様になっているわ。のわっちのはドットサイトがついていたけど、私のにはスコープがマウントされているし、バレルものわっちのCQB仕様よりも長い16インチになっているわ」

 

「つまり狙撃手、ということですか?」

 

野分がそう言うと、足柄さんは自信たっぷりに首を横に振りました。

 

「これでも、スピードシューティングに関しては性悪戦艦よりも、腹黒空母よりも早いのよ。スコア勝負では負けるかもしれないけど、速さなら負けないわ」

 

足柄さんのは言っていることがよくわかりません。

野分が首を傾げて足柄さんを見ていると、足柄さんは困ったような苦笑いを浮かべました。

 

「そうね……私のはよくあるM4のカスタムだと思ってくれていいわ」

 

「よくわかりませんが、覚えておきます」

 

新しく配備されていた車両にはその他必要なもの、ボディアーマーであったり、戦闘服であったり、予備の弾倉であったりと必要なものは全て積み込まれていました。あらかたの点検を終え、足柄さんが乗ってと言うので、助手席側に回ろうとすると、何故か足柄さんとドアの前でかち合いました。

 

「これ、日本車だけど輸入車だから左ハンドルなのよ。のわっちは右側に座って」

 

「すいません。何と無くいつもの癖でこっちに来てしまいました」

 

見ればわかるものも、それまでの認識で確認せずに動く。

これは日向さんがいたら怒られていたでしょうね。

 

「ベルトを締めて……じゃあ行くわ……よ!?」

 

ガンッ!

足柄さんがエンジンをかけた途端、この車のボンネットを叩いた一人の重武装の兵士。

銃を肩肘で下げ、ヘルメットを被り、戦闘服を着込んでこちらを睨む女性。

 

「「矢矧ッ(さんッ)!?」」

 

矢矧さんは肩で息をしていて、慌ててここに来たということはすぐにわかりました。

足柄さんが窓を開け、顔だけ出すと矢矧さんに怒鳴りました。

 

「ちょっとッ! 危ないじゃない! それにその格好は何なのよッ!?」

 

「さきほど……捜査局長官から……直々に出動命令が下りました……あなた達だけを現場に向かわせるわけには行かないわ」

 

「そうなの? じゃあ装備を取ってこないと」

 

足柄さんがそう言うということは、恐らくトランクの装備は非公式に配備されたものなのでしょう。足柄さんと野分も降りると、足柄さんは車の鍵を締めました。トランクの中身は外から見えないように蓋がされています。

 

「ついでに日向からも……連絡がありました……二人の装備は既に手配してあるからお前は早急に現場に迎えと……処理は上手いようにやれと言われました」

 

少しずつ呼吸を整えた矢矧さんは凛とした態度で野分達にそう言いました。

 

「そうなの? じゃあ……」

 

「私はこの命令を無視します。私はあなた達と一緒に現場に突入します」

 

野分と足柄さんは顔を見合わせてしまいました。

しかし、矢矧さんの顔と服装を見る限り、それが冗談ではないことはすぐにわかりました。

 

「私だってやればできる。そういうところを見せないといけないようだから」

 

「……艦娘時代の戦闘とは何もかもが違うわ。それを承知で私たちと行動を共にするというのね?」

 

「そんなことわかってるわよ」

 

妙に強気な矢矧さんに足柄さんはため息を吐くと、車の鍵をあけました。

 

「そんな格好をしている女性を助手席に乗せる趣味はないわ。狭いだろうけど後ろに乗って頂戴」

 

「わかったわ」

 

少しだけ嬉しそうな矢矧さん、それを横目にまたため息をつく足柄さん。

昔はよく嬉しそうな足柄さんに日向さんがため息をついていましたけど、足柄さんも日向さんに少し似てきた。ということでしょうか。

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