PHANTASY STAR ONLINE2~星霜ヲ蝕ス三重奏~   作:無銘数打

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Episode15『なら、アンタは頑張ったんだろうね』

 多目的作業艦タタラは、良い意味で職人の集まり。悪い意味で変人集団。

 「変人じゃない、職人よ」

 と、おっしゃるのは、自称タタラの誇る最高の技術屋ことカンナ班長。自称なのが重要なポイントで、要チェック。

 「アンタが邪魔しなけりゃ、あのぼんくらの頭に一発入れられたのに」

 そうならない為に止めたんだと気づいてほしいが、果たして伝わっているだろうか。

 「なぁ、お前等もそう思うよな!?」

 班長と云うのは自称ではないらしく、屈強な男達は一斉に俺に向かって、

 「「「「「姐さんを止めてくださり、ありがとうございますッ!!」」」」」

 頭を下げる。班長には尻を向けて。

 「いや、こっちも仕事なんで気にせんでくれ」

 あんた等の後ろで、姐さんが顔を真っ赤にしてプルプル震えてるぞ。

 「旦那が姐さんを止めてくれなかったら、今頃あそこは血の海でさぁ」

 「まったくです!!姐さんの手の速さは光の速さです!!でもちょっと癖になります!!」

 「……感謝」

 暑苦しい中で、更に暑苦しい3人に手汗に油まみれな手で握られる。どう見ても技術屋というよりは、ボディビルダーみたいな肉体を持っているな、この3人。いや、逆に整備員とかそういう連中は男臭いというイメージはある。あるのだが、この3人は別格だ。だってなんかポージングとか取ってるから、なんか違う。

 「俺の名はスパナ」

 「俺はペンチ!!」

 「……ソケット」

 自己紹介は求めてないのだが。

 「「「3人合わせて―――」」」

 「うるせぇし、暑苦しんだよ3馬鹿ッ!!」

 3人同時に蹴り飛ばすという器用な技を持ってるな、カンナ班長は。

 「3人合わせて、なんというんですか?」

 始末屋のお嬢さん、余計な事を聞かんでよろしい。

 なんかゴチャゴチャしてきたな、頭痛いわ。

 「―――あ~、とりあえず落ち着こうか、全員」

 閑話休題。

 真っ黒に焦げたAISの前で、何故かコーヒー片手に談笑会が始まった。

 「都市警備局?なんでそんなのが此処にいるわけ?」

 「仕事でちょっとな」

 よっぽど俺に止められたのが癪に障ったのか、カンナ班長の俺を見る眼は非常に鋭い。片手に珈琲、もう片方の手は器用に金槌を回転させている。うっかり変な事を言ったらあれが飛んできそうだ。

 「姐さん、きっとあれですよ。なんか前に廃棄エリアで殺人事件があったやつ」

 「知らないわよ、そんなの。それよりもアンタ達はさっさとAISからエンジン取り出す。破損部分はきちんと報告。データは後で私に回す事。というわけでチェックは念入りだ」

 「あいよっ!!」

 元気の良い返事の後の行動は素早い。全員が壊れたAISを分解していく光景は、素人の俺でもわかる位に素早い。

 「凄いですね……」

 「あんなもんは、凄いのに入らないわよ。むしろ、あの程度も出来ないなら、私の班には必要なしよ」

 「厳しい事を言いますね」

 「そりゃ厳しい事を言うさ。じゃないと信用できない。少なくとも、私は信用に値しない連中と仕事は出来ない。私にはそれだけの腕がある。だから、その腕に相応しい連中が必要ってわけよ」

 身内自慢とは羨ましい事で。

 傲慢ではあるが、どっかの誰かさんとは大違いだ。こっちには傲慢の隣にちゃんと信頼がいるのがわかる。

 「にしても、AISがこんなになるエンジンって、どんだけ凄いんだよ」

 「私の最高傑作よ。ちなみに次に作るのは、これを超える最高傑作。私は常に最高傑作を超え続けるのよ」

 「凄い自信ですね」

 「それが私だからね。常に最高を求めるのが私。最高を超えられないなら、それは私の求めるモノじゃないのよ」

 自信か自覚か、それとも別の何か。

 「でも意外だったわ。まさか、アンタの行きついた場所が都市警備局とはねえ」

 何の話だ?

 「彼女は貴方の知り合いだったんですか?」

 「いや、俺は知らんが……」

 顔を見合わせる俺達だが、カンナが見ているのは俺ではない。

 「私、ですか?」

 「最初は誰か全然わかんなかったけど、やっぱりアンタで間違いない。名前は、名前は……あ、最初から知らなかったからわかんないわね」

 カンナの言いたい事が何なのか、当然だが俺には理解は出来ない。出来ないが、隣に座る彼女の顔から表情が消えた事だけは理解出来る。

 「私を……知ってる、の?」

 「知っているに決まってるじゃない」

 当然の事を聞くなと、カンナは呆れる。こっちはそんな余裕はないというのに。

 「まぁ、知っているっていうか、前に会ってるんだけどね。あれ?もしかして私の事は覚えてない?そっか、そっか、まぁ別にいいわよ。ところで―――」

 誰かさんとは違う傲慢ではある。

 それの本質は傲慢である事に変わりはない。

 「―――弟は元気してる?」

 空気が重いのではない。

 時間が止まるような感覚があった。

 俺の時間ではなく、彼女の時間。

 「……ジェーンドゥ」

 無理矢理に時間を動かし、絞り出した彼女の言葉にカンナは、

 「その名前はもう必要ないのよ、実験体ちゃん」

 満面の笑みを浮かべ、もう一度訪ねる。

 「それで、弟は元気?」

 

■■■

 

 カップの落ちる音、割れる音、流れ出る珈琲は、まるで血が流れる様だ。その人の古傷を、触れられたくない傷を抉り取り、傷口を無理に広げるような行為。

 「……ん?どうかしたの?」

 カンナが首を傾げ、彼女が落としたカップを拾う。割れた破片を乱暴に広い集め、近くの箱に放り投げる。

 「どうして、貴女が、此処にいるんですか……」

 「そりゃ居るよ。私達は何処にでも居る。それは個人の自由だからね」

 2人の会話に入る事は許されない。この場において、俺だけが部外者となっている。

 「いやぁ、懐かしい。虚空機関は糞みたいな所だったけど、面白い連中が沢山いたから、あれはあれで良い思い出だったわ」

 虚空機関。

 ジェーンドゥ。

 絶句した彼女は言葉を発しない。だから、代わりに俺が質問する。

 「カンナ班長。アンタは……『無銘の血統』なのか」

 「ん?そうだけど。あれ、もしかして、アンタはあそこの事を知らなかった感じ?だったら、悪い事を言っちまったかなぁ」

 頭を掻きながら、反省などしていない様に陽気に話すカンナは、とてもジョンドゥと同じ『無銘の血統』と同じには見えない。

 「だったら今のは無しだ。忘れてくれ……って言っても無理かな」

 視線を彼女には向けず、俺に向ける。

 「アンタは『無銘の血統』を何を、何処まで知ってる?」

 「……虚空機関が外部組織から入手した、何者かのクローンの集団。何者が誰なのかはクローン達も知らず、虚空機関の調査でもわからなかった。だから作者不明の無銘とラベリングし、そのクローン達を『無銘の血統』と呼んだ―――これで合っているか?」

 「概ね正解。補足するなら、虚空機関が外から入手したのではなく、無銘という私達の生みの親から押し付けられたってのが正しいのよ。どうも私達の親は、結構な糞野郎みたいでね、自分のクローンを作ってみたは良いけど、虚空機関が作るクローンに比べると汎用性が無さ過ぎてね、失敗作扱いよ」

 他人事の様に話すカンナは、横目で彼女を見る。

 「虚空機関のクローンや、実験体は出来が良いのよ。だから、別に私達みたいな失敗作を引き取る必要なんてなかったんだけど、中には物好きも居てね……クローン実験に必要な実験。それに使われたのが私達。幾ら消耗品でも、無限じゃない。だから代用品があれば、それで実験するのは常套手段なわけ……その娘は知ってるだろうけど、あそこの研究ってえぐいのよ?」

 知ってるだろう?と彼女に向けられた視線は、悪意などはない。懐かしい昔話を思い出すだけの行為。それが彼女の体を僅かに震えさせる。

 だから、その視線を向けない様に俺は2人の間に入り込む。

 「カンナ班長。アンタは随分と軽く話すんだな。他人事みたいに」

 「他人事だからよ。私はジェーンドゥではなく、カンナ。タタラのカンナ。ほら、他人でしょう?だから簡単に話せるわけよ……ちなみに知ってる?私達は汎用性には向かないけど、特殊性には向いている。特化型っていうべきね、この場合。虚空機関の様に多くの複製は出来ない上に、複製から複製を作ろうとすれば、必ず壊れる特注の欠陥品なのよ。でも、私達はクローンでありながら、既に完成していた。そういう風に出来てしまっていた。個々の能力は並列にはならず、何かが頭一つ抜け出し、何かが頭一つ下がっている」

 自分の場合はこれだと、カンナは床に落ちていた工具を取る。

 「戦闘能力は低いし、フォトンとの相性も悪い。ついでに頭もそんな良くはない。でも、これの扱いだけは異常に巧いわけ。そしてこれに関する知識の習得も同様にね。だから私はそっち方面に固執した。『無銘の血統』は何かに固執する習性を持っている。まるで何もないからこそ、自分だけしか出来ない事、自分の世界を見つける事に異常に固執するのよ」

 「それは普通の奴等と何が違うんだ?」

 俺には同じに思える。誰だって何かに固執する。自分だけにしか出来ない事、自分だから出来る事、やれる事を探そうとする。それが特別な習性ではない。生まれながらに持っている承認欲求というものだ。

 「それは持っている連中の言葉よ」

 僅かに、カンナの眼に怒気が宿る。

 「普通、普通とアンタ達は言うけど、その普通っていうのは個人がある事が前提条件。言うならば名前よ。個人を個人として認識するのは、名前という記号。名前は大事。それがあれば必ず誰かが個人を認識する。記憶じゃなくて記録が必要とされるのよ、私達は。アンタにも名前があるでしょう?名前、教えてくれる?」

 ヴァン、と俺は俺を表す記号を口にする。

 「なら、ヴァン。アンタは既に記号を得ている。個人を個人と認識されている。データ上でも記録されているでしょうよ。なら、私達はどうかと言えば、知っての通り全員に名前はない。ジョンドゥ、ジェーンドゥという名前、記号があっても、それは個人を表すモノには程遠い」

 「名前がない事がコンプレックスっていうなら、自分で名前を付ければいい。自分で記号を作り出す事くらいは出来るはずだ」

 「残念な事に、自分で作り出した記号なんて、糞の役にも立たない。ましてや取り合えず付けたような名前なんて尚の事。例え、他人が真心込めて私達に名をくれたとしても、私達はそれを受け取る事は出来ない。どうしてか、そういう風に出来ているの。そうね、きっと恩恵で手に入れた結果は、過程にすらならないように出来ているのよ」

 「そいつは……面倒なもんだな」

 「えぇ、面倒よ。非常に面倒臭い。だけど、そういう風になっているの。私達は過程を大事にしてしまう。過程を抜かした結果では自己を確定できない。確定できないから、固執するの。自分にしか出来ないモノを手に入れる事で、初めて私達は自己を確定できる」

 だとすれば、カンナは手に入れたのだろう。

 「私はカンナ。もうジェーンドゥじゃない。カンナと名乗るにはね、結果が必要だった。虚空機関が消え、行き場を無くした私はタタラに来た。そこで私は結果を手に入れた。だから私はカンナと名乗る事が出来た」

 「理想が高いんだな、アンタ達は」

 「これが呪いよ。『無銘の血統』に流れる呪い。どうしてこんな呪いをシステムとして組み込んだかは知らないけど、生き残った連中は未だに呪われ続けているでしょうね」

 自分が納得しない限り、名を持てない呪いは在り続ける。ならば、俺が出会ったジョンドゥは未だに納得した結果を得ていないのだろう。奴が納得する結果は、果たしてどんなものになるのか、それは別に興味はない。なにせ、俺は奴が大嫌いだからだ。

 「……はぁ、これは私の悪い癖ね」

 話し終わると、カンナは申し訳なさそうに彼女を見る。ずっと黙ったままの彼女。未だに名を知らないジェーンドゥへ、本当のジェーンドゥだったカンナが語り掛ける。

 「『無銘の血統』はね、劣等感の塊なのよ。呪いから解放されれば、その劣等感も消える。でも、消えた事で過去の事なんてどうでも良いと思ってしまう。私なんて、まさにそれ。ジェーンドゥで、劣等感の塊だった頃の事を、こんな風に話せるようになっているけど……それを他人に当て嵌めるのは、非情だね」

 カンナは彼女の前に立ち、頭を下げる。

 「すまなかった。配慮が無さ過ぎた」

 周囲からどよめきが起こる。どうやら、彼女が頭を下げる事など、滅多にない事らしい。

 「私にとって虚空機関はもうどうでもいい存在で、簡単に話せる過去だ。でも、きっとそうじゃない連中だっている。その事を忘れてた。だから、すまなかった」

 頭を下げたままのカンナを見つめる彼女は、静かに口を開いた。

 「……貴女は、傲慢ですね」

 「あぁ、知ってる」

 「でも……私の知っている傲慢な連中よりも、ずっとマシです」

 「それは、褒めてるの?」

 「褒めてはいません。マシってだけです」

 固まった空気が少しずつ、凍った物が溶け出すように動き出す。

 「私にとって、虚空機関の記憶は簡単に割り切れるモノじゃありません。あの場所は、あってはいけない場所だったから……」

 「そうかも……いや、きっとそうだったんだね。あそこが消えて、あそこに居たアンタとこうして出会ったから、少しだけ嬉しくなっちまったんだな」

 「お互い、こうして生きて出会えたのは幸運なんでしょうね」

 それでも、会えなかった誰かはきっといるのだろう。

 俺は知らない。

 彼女達だけが知る、大切な傷痕。

 「―――あの子は、ハドレッドは……もういません」

 「そうか……なら、」

 カンナの手が彼女の頭に載せられる。そして、まるで子供を褒める様に、少し乱暴に頭を撫でる。その光景は、まるで姉が妹を褒める様に見えたのは、気のせいだろうか。

 「なら、アンタは頑張ったんだろうね。頑張ったから、こうして出会えた」

 子供扱いしているように見えるかもしれないが、彼女は黙ってカンナに頭を撫でさせる。

 「そう、でしょう、か……」

 「あぁ、そうさ」

 顔を伏せた彼女がどんな顔をしているのだろうか。

 見ようとするのは、無粋だろう。仮に笑っていても、仮に泣いていたとしても、それは俺の知った事ではない。そう思う事が今は大事な事の様に思えている。出会って数日の彼女、始末屋の彼女は僅かな事しか知らない。だがカンナという女性は俺の知らない彼女を知っている。その時から始末屋だったのか、それとも―――いや、これこそ無粋というものだ。

 無粋な想いを抱かない様に、俺は外に出ている事にしよう。少しの時間は必要だ。彼女達2人の時間。

 あぁ、それとこれも無粋な事ではあるが、周囲から野郎のすすり泣く様な音が聞こえたのは、きっと気のせいだという事にしておこう。

 

■■■

 

 無駄な時間だったとは口が裂けても言えんが、時間を結構使ってしまったのは事実。空を見ればもう夕焼け。この辺りで事件現場でもと思ったが、周囲から機械の稼働音は徐々に消えていく。どうやら、本日の営業は終了しました、な状況らしい。

 「まぁ、今日は諦めて、また明日来るか……」

 紫煙を吐きながら、明日の動きを考える。今日の成果はあまりないが、此処でタタラの人間に出会えたのは、幸運とも言える。協力してくれる可能性は低いが、カンナを含めた連中は明日以降も工業地区に居ると思われるので、色々と探ってもらうというのも良いかもしれない。

 「だが一応は部外者だから、あんまり無理強いも出来ないだろうな」

 「別に手伝っても私は構わないけど」

 気づけば、煙草を咥えたカンナが俺の隣に立つ。

 「お嬢さんは?」

 「うちの連中に囲まれてる。まぁ、変な事はしないから安心しな」

 変な事をされて、一番被害に遭うのはきっとアンタの部下なんだが。

 「事件の調査だろ?手伝ってやるよ」

 「……こっちとしては助かるが、急にどうして」

 まさか、先程のお詫びとか言うなら、お門違いだ。あれは事件とは関係ないカンナと、彼女の事情だ。それを今回の件に利用するのは、あまり良い気にはなれない。

 「この件、ジョンドゥが絡んでるんだろ?蜥蜴顔の」

 「……それが理由か」

 「同族としてのケジメって奴さ。あれが色々と無茶してるのは知っている。そんでもって、その無茶はちょいとやり過ぎてるのは、私だってわかるさ」

 「あの野郎の傲慢ぶりは、昔からなのか?」

 「どうだろうねぇ」

 カンナは苦笑している。

 「あの腰抜けが傲慢を気取ってるなら、そいつは仮面さ。昔から一番度胸も腕っぷしもない奴だったが、こんな事をしでかすなんて妙だと思ってな。多分、それをするだけの理由があるのか。それとも、手助けしている奴がいるのか……」

 「手助けしている奴か……心当たりはあるかもしれないな」

 「だったら、アンタはその心当たりって奴を探ってみればいいさ。こっちの件はこっちで調べておいてやる。なぁに、これでもタタラってだけで技術屋の連中には顔が利くのさ」

 あれだけ騒ぎを起こしておいて、その言葉には素直に驚く。なんだかんだ言っても、彼女も立派に傲慢なのだろう。

 「ところで、これは事件とは関係ない話なんだけどさ。私の作ったエンジンをどうにかして連中に認めさせたいんだが……何か良い手はあるかい?」

 「素人の俺にそれを聞くなよ」

 「素人の意見を聞くのも、私達には必要な事さ」

 そう言われても困るのだが、

 「そうだな……昼間のアレは、エンジンの出力が強すぎて、AISが耐えられなかったんだよな」

 「そうだね。自慢だがあの出力は、並みの機体なんかじゃ、パワーに負けて操縦なんて不可能だ」

 「だったら、AISに錘でもつけてみればどうだ?パワーを抑え込める重さがあれば、釣り合いは取れるだろうよ」

 「なるほど、錘ね……まぁ、案の1つとして受け取っておくよ」

 仮にそんな安直な案を受け入れたとして、どうするつもりなのか。まさか馬鹿正直に錘でもつけるわけでもないし……可能性としてはAISに必要以上の武装でも積み込むとか。

 「どっちにしても、採用はされないだろうな」

 「それを何とかするのが技術屋ってもんよ」

 色々と勝手にしてくれ。さて、それじゃ俺達はそろそろ―――と、その前に、

 「カンナ班長」

 「あん?まだ何か―――」

 彼女も気づいた。だから、俺は彼女に耳打ちする。その内容に彼女は僅かに怒りを感じている様だが、無言で頼むと伝えると、彼女は不満を飲み込み、部下の方へ戻っていく。

 やれやれ、これは後が怖いな。

 「―――さて、と」

 それじゃ、俺はお客さんの相手をするとしよう。

 「都市警備局のヴァンだな」

 高圧的な言葉を発するのは、昼間車内から見た連中。その身を強固な装備で固めた統合軍、装甲歩兵部隊、その数は凡そ10。これから戦争でもする気なのかと尋ねたいが、奴等の目的は俺らしい。

 「そうだが、統合軍が俺に何か用事でも?」

 「大人しく我々について来てもらおうか」

 お誘いは嬉しいが、そんな武器を構えられると怖いじゃないか。

 「拒否権は、なさそうだな。なんだ、ジョンドゥの命令か?」

 予想以上に早かったな。

 「質問に答える権限は我々にはない……お前の連れの女は何処だ?」

 「先に帰らせたよ」

 そう言っても連中は俺の言葉を信用していないのか、俺を見張る者を残し、カンナ達の方へ向かっていく。あのガタイ連中は装甲歩兵と同じだが、流石に軍隊と技術屋では相手が悪い。因縁をつけられて黙っていられる連中ではないが、そこをカンナが押し留めている。

 「女は何処に居る?」

 「カンナ班長なら、そこにいるだろ」

 「タタラの者ではない。貴様が今日1日行動を共にした女だ」

 なるほど、しっかり監視されていたってわけね。

 「だから帰らせたよ」

 言うよりも手が早いのは、軍人も同じらしい。固い金属が頬を殴る感触は、結構な衝撃だった。口の中で鉄の味が広がる。

 「―――隊長、何処にもいません」

 「逃げたか……まぁ、いいさ。この男だけでも構わないとの命令だ。連れていけ」

 両手を拘束され、有無を言わさず連中の装甲車に乗せられる。ドアが閉まる寸前、俺を見る技術屋の中に先程までいなかったツナギ姿の女が見える。彼女は今にも飛び出しそうな勢いだったが、カンナが腕を掴んで引き留めている……実にありがたい。

 「スイートルームはあるかい?」

 「黙っていろ」

 さてさて、こりゃアンジュを別行動にしておいて正解だったな。

 俺が連れていかれる先は想像できる。

 護衛艦イクサ之5番艦か……こりゃ、面倒な事になりそうだ。

 

 

 

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