PHANTASY STAR ONLINE2~星霜ヲ蝕ス三重奏~   作:無銘数打

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Interval『PSO2』

 今日も何処かで人が死んだ。

 長年、共に戦ってきた戦友だったかもしれない。常に共に歩いてきた兄弟だったかもしれない。ずっと一緒に添い遂げると約束した恋人だったかもしれない。成長を自分が消えるまで見守ると誓った我が子かもしれない。

 今日も何処かで死んだ誰かは、誰かにとって大切な人だったのか、自分にとって大切な人だったのか、混合する記憶と感情の波、その中で自分が立っている場所が何処かもわからない。こんな状態がずっと続き、自己すら曖昧になっていくが、それも慣れた。常に何かが混じり合い、常に何かが削られ、そして精査されていく感覚。

 戦友の顔は、自分の戦友じゃない。

 兄弟の顔は、自分の兄弟じゃない。

 恋人の顔は、自分の恋人じゃない。

 子供の顔は、自分の子供じゃない。

 誰かわからない顔だけが、自分の知っている顔だった。

 蓄積して消え、蓄積して消え、蓄積しても消せない大切なモノも消え、残った残骸が集まり生まれた英雄という体は、醜悪ながら最高の体だった。

 多くのモノを失い、多くのモノを奪い、完成された存在に刻まれた呪いは、永遠と語り続けられるのだろう。

 これはそんな呪い。

 英雄スパルタンという呪い。

 

■■■

 

 並べられた武器を前に、自分が眠っていた事に気づき、起きたと認識した瞬間に武器の手入れに戻る。今の状態では使い物にならない武器でも、こうして手入れをする事で使い物になる。性能の問題ではない。この手に相応しく、この手に馴染むかどうかの問題だった。

 手に馴染む大剣は、握れば馴染む。手に馴染む双銃も同じだ。導具も同様。長銃も、何もかも。全てが手に馴染む。そうなるように出来ている体と、そうなる知識が此処にある。

 馴染めば殺せる。

 馴染むから殺す事が出来る。

 英雄の務めとは、殺す事でしか成しえないモノだと知っているからだ。

 「それらの武器はお気に召さないかな?」

 お気に召さない声に、スパルタンは無言を通す。

 「アークスの最新鋭だ。現状では、実戦投入されている武器の中でも、それ以上のモノはないのだが、不満があれば言ってくれ」

 お前が話さなければ不満はない、と無言を通すが相手は理解しない。

 「……まったく、スパルタン。会話をするという機能がないのか、君には?」

 「―――黙って手を動かせ、イプシロン」

 会話を続ける気などない。

 イプシロンという怪人を前に、話す事など何もない。本来ならば絶対に交わらない者達が、こうして共に居る事など、在ってはならないからだ。こうして出会い、こうして共に居る事は単なる利害の一致。それもスパルタンでもイプシロンの利害ではなく、まったく違う第三者の利害により生まれた結果だった。

 「ならば、近況報告は聞くかな?」

 スパルタンは何も語らず、頷くだけにした。

 「ヴァンという男は、予定通りリリーパに向かった。向かったというよりは、逃げ込んだというのが正しいがね。乗っていた機体は相当のダメージを負っているようだが、恐らくは無事にリリーパに着陸するだろうね」

 手入れを終えると、必要最低限の武器を見繕う。必要な物だけあれば十分。それ以外は現地調達でも何でも構わない。武器は選ばない。選ばなくとも、使える物は無数にある。

 「もっとも、予定通りの場所に降りるかは不明だね。あの辺りは未だにダーカーが出没する危険な地域だ。『若人』が眠らされている場所でもあるのだから、当然と言えば当然だが……果たして、彼は生還する事が出来るのだろうか?と言った所かな」

 その事について心配はしていない。否、心配ではなく、興味がないとも言える。ヴァンという男が必要なる者の可能性はあるが、それは別に彼が特別というわけではない。あの時、あの場で生き残った事で、彼でも良いと判断されたに過ぎない。少なくとも、スパルタンにとってはどうでもいい程度の認識だ。

 もしも生きているならば、それはそれで問題ない。もしも死んでいるとするならば、その内に別の誰かが彼の役割を果たすだろう。

 これは、そういう風に出来ているのだから。

 「それにしても、ジョンドゥも随分と面倒な事をしてるね。彼の行動には無駄が多い。まぁ、野心などという不要な感情を抱いているのだから、仕方がないんだろうけど、もうちょっとスマートに事を運んで欲しいね。誰も統合軍を引き入れろだの、都市警備局に圧力を掛けろだのと、頼んだ覚えはないのに」

 それは仕方がない事だとスパルタンは黙認している。イプシロンからすれば、あの男の行動など無駄な行動が多い様に思えるだろう。だが、感情がそこにある以上、イプシロンが理解しない行動をするのは当然の事だと認識している。

 人である以上、ジョンドゥがジョンドゥである以上は、そうなってしまう。

 「彼、邪魔じゃないかな?」

 「―――余計な事はするな」

 此処で釘を刺しておかねば、この怪人は必ず余計な事をする。スマートに事が進み、完璧に全てを終わらせるには必要な事だと、イプシロンは回答するだろうが、システムとして動いている怪人の行動は、逆にシステムを壊す事になってしまうかもしれない。

 「アレは必要な男だ。どんな思惑があり、どんな結果を望んでいようとも、奴を外して事を起こせば、予定が狂う。わかっているはずだ。既に止まらない場所まで来ているから、途中で変える事など出来ない」

 リリーパで生死不明の男は替えがきくが、ジョンドゥの替えを探すのは面倒になる。

 「それとも、お前は自分1人いれば全てを行えると思っているのか?」

 「思っているが、何か問題でもあるかな?」

 平然と吐き捨てる。

 「実を言えば、何度か申告はしてるんだ。私1人いれば十分だと。君も本当なら必要ない。私がいるだけで事を成せるのだと何度も言っているのだが……まったく、中々に強情だよ」

 「当然だろうな」

 自分だけを頼らないという事は、自分を過小評価しているのではないか、そうイプシロンは思っているのだろう。人に感情がどうとか言っている割に、そんな部分がある事をスパルタンは、この短い間に学習している。

 感情を理解しないが、感情に左右されているシステム。

 実に滑稽だった。

 「つまらない事を不満に思う暇があるなら、さっさと準備を進めろ」

 「そんな事なら君のこんな会話をしている間も、きちんとしているさ」

 背後を振り返れば、そこに怪人の姿はない。

 あるのは、怪人ではなく、怪物の姿。

 無数の機械の集合体にして、機械の怪物。

 この空間の殆どに接続された無数のコードの先にある端末は、画面に映る文字コードが濁流の様に流れている。その数は1つや2つではなく、数えきれない程の量だった。1つ1つは最新の機器から、旧型までと性能の違いはあるだろう。だが、その繋がれたコードの先にある巨大な球体の演算能力が、時代が生み出す性能など関係ないと主張する

 「どうだい?これだけのパーツを揃えるのは、中々苦労したよ。だが、これなら処理能力は以前の数倍。今なら、マザーシップを乗っ取る事だって出来るよ」

 「だから余計な事を考えるな」

 「そうは言ってもねぇ……」

 球体の中から這い出す機械の体。今までの継ぎ接ぎで歪な体ではなく、生体パーツを捨て、全てを機械によりデザインされた体。集めたジャンクから作り出した体はキャストにも見えるが、その形状は人に近い。だが、それを人と思えないのは、あまりにも無駄を失くした事による個の消滅。

 白い影、それがイプシロンの今の姿だった。

 最早、人の声帯を奪い会話する事もない。寄せ集めの体で不便な行動をする必要もない。

 この白い影の様な、無機質な体こそが完成された体だと主張する。

 「私も少しは褒められたいんだよ、君に。君は私の事を嫌っているようだが、君の様に珍しい存在は私にとって興味深いんだ。出来れば、事が終わった後に君の事を調べさせて欲しいくらいにね」

 白い影が歪んだ笑みを浮かべる。

 「英雄、英雄、英雄……実に興味深い。どうして君の様な存在を生み出したいと願うのか、必要とされているのか、私は知りたい」

 「学習装置ごときにはわからんよ」

 そう言って、スパルタンは影に背を向ける。

 「酷い事を言うね。君の為にレイシリーズを調達してあげたというのに」

 「武器は武器でしかない。俺は別にその辺に落ちている鉄パイプでもあれば十分に戦える」

 「へぇ……試してみるかい?」

 体から生やしたワイヤーが蛇の様に蠢き、スパルタンへ矛先を向ける。それでもスパルタンは無関心に歩を進める。

 「―――やれやれ、君のそういう部分は、今の私では理解できないようだ」

 その瞬間、ワイヤーが千切れた糸の様に地面に落ちていく。

 背を向けたスパルタンは何もしていない。その手にも何も持っていない。それでもこうして結果が目の前にあるのは、イプシロンも認識できない速度で何かが行われたという事だろう。

 「やっぱり、事が終われば、私は君を解剖してでも君を理解するよ」

 「やってみろ。それまでは壊さないでおいてやる」

 同じ場所に居て、同じ目的の為に行動しているが、決して味方ではない。

それを証明するようにスパルタンはイプシロンへ鋭い眼光を向ける。イプシロンもそれを受け、尚も笑みを浮かべる。

 

 

 

■■■

 

 

 

 サーバ12 カフェエリアブロック

 

 あーさん「緊急、お疲れ~」

 ジャンバラヤ「お疲れ様です」

 あーさん「なんかでた?」

 ジャンバラヤ「何も出なかった。でもキューブは美味いです」

 あーさん「同感」

 あーさん「やっぱりパーティ組まなかったのが、駄目だったのかな?」

 あーさん「パーティーメーカー張ったけど、誰も入ってれなかった(涙)」

 ジャンバラヤ「他の人はみんな四人で組んでたから」

 ジャンバラヤ「しょうがないと思いますよ」

 あーさん「残りの人も組んでたから、しょうがないのかな~」

 あーさん「レアドロ焚いても、やっぱり出ないものは出ないんだね」

 あーさん「ユニットくらいは落ちて欲しかったかな」

 あーさん「残念無念……あ、ちょっとリアルで所用が出来たので、離席します」

 ジャンバラヤ「了解です。私はおすすめ回してきます」

 あーさん「私も戻ったら行きますよ」

 ジャンバラヤ「それじゃ、一緒にいきましょう。待ってますよ」

 あーさん「あいよ。すぐに戻ってくるぜ、バニー」

 あーさん「間違えた。ハニー」

 ジャンバラヤ「いってらっしゃい」

 

 数分後

 サーバ12 カフェエリアブロック

 

 ジェミニ「こんばんは~」

 ジャンバラヤ「こんばんは」

 ジェミニ「あれ?あーさんが居ない。珍しいね」

 ジャンバラヤ「リアルで所用があるので、離席するそうです」

 ジャンバラヤ「すぐに戻るとは言ってましたよ」

 ジェミニ「そうなんだ。それじゃ、ちょっと銀行行ってきますか」

 ジャンバラヤ「いってらっしゃい」

 あーさん「ただいま」

 ジャンバラヤ「おかえりなさい」

 ジェミニ「やぁ、あーさん」

 あーさん「あ、ジェミニちゃんじゃない。こんばんは~」

 ジェミニ「こんばんは」

 

 数分後

 サーバ12 カフェエリアブロック

 

 ジェミニ「そういえば、今日はドミちゃんは来てないのかな?」

 あーさん「来てないみたいだね」

 ジャンバラヤ「最近、リアルが忙しいって言ってました」

 あーさん「リアルが忙しい……リア充か!?」

 あーさん「これだからリア充は困るね」

 ジェミニ「あーさん、ヒモ野郎のニートだからね」

 あーさん「ヒモ野郎でもニートでもないよ!」

 あーさん「同居人のお手伝いとかしてるもん!」

 ジャンバラヤ「あーさんは、お付き合いしている方がいるのですか?」

 ジェミニ「違うよ」

 あーさん「お前が言うなし」

 ジェミニ「こりゃ失敬」

 あーさん「でもさ、最近は同居人の目が厳しくて、中々ログインできないんだよね」

 ジェミニ「え?いつもいるじゃない」

 ジェミニ「いつもいるから、ヒモニートだと」

 あーさん「だから違うってば」

 あーさん「今だって、横で厳しい視線が阿古djsp府:あいうぃrjヴぁえjぱ」

 ジェミニ「どうした!?」

 あーさん「こpぢふぃおぷいうぇjf;いヴq58ぐj:q9jbioqo;:g」

 ジャンバラヤ「何かあったんでしょうか?」

 ジェミニ「大方、同居人に何かされてるとか……エッチな事とか?」

 あーさん「だから、勝手な事を言うなし」

 あーさん「そろそろ寝るからゲーム止めろってさ」

 あーさん「こんな早い時間で寝るなんて、お子様だね、あの子も」

 ジェミニ「もう深夜なんだけど」

 ジャンバラヤ「wwww」

 

 数十分後

 サーバ12 エクストラハードブロック

 

 ドミニオンがログインしました

 

 ジェミニ「こんばんは」

 ドミニオン「こんちゃ」

 ジェミニ「こんな時間にログインなんて珍しいね」

 ドミニオン「こっちも色々面倒でね~」

 ドミニオン「リアルの面倒事をこっちに持ってきたくないけど、仕方なしやね」

 ジェミニ「これから一緒にどう?」

 ジェミニ「トリガーやろうと思うけど、人がいなくて困ってるんだよ」

 ドミニオン「お、いいですね」

 ドミニオン→ジェミニ

 「と、言いたい所なのでが、ちょっと問題が発生しています」

 ドミニオン→ジェミニ

 「できれば、情報屋のお力を貸してもらいたいのです」

 ジェミニ→ドミニオン

 「それってナオビの事?なんか、凄い事になってるみたいだね」

 ジェミニ→ドミニオン

 「アークスと統合軍がバチバチだよ。でも、統合軍側も結構焦ってるみたい。なんか、情報部が関係しているみたいだけど、どうなの?」

 ドミニオン→ジェミニ

 「私も全てを把握しているわけではありません。そちらの情報をこちらにも回していただけると幸いです」

 ジェミニ→ドミニオン

 「おk、おk」

 ジェミニ→ドミニオン

 「あれ?なんかそっちの連絡用アカウントが凍結されてるみたいだけど」

 ジェミニ→ドミニオン

 「これって、そっちで起きてる問題に関係ありって感じ?」

 ドミニオン→ジェミニ

 「そこまで手が回っていましたか。わかりました。人形庭園のネットワークを使用しますので、こちらからメールを送りますね」

 ジェミニ→ドミニオン

 「ちょっと待ってね。念の為に別サーバーを経由するようにするから」

 ジェミニ→ドミニオン

 「おk、送って」

 ジェミニ→ドミニオン

 「おk、届いたよ。それじゃ、こっちからも送るね」

 ドミニオン→ジェミニ

 「お願いします」

 

 

 ドミニオン→あーさん

 「お時間よろしいでしょうか?」

 あーさん→ドミニオン

 「あら?珍しい。こっちでお話するって事は、重要な事かしら?」

 ドミニオン→あーさん

 「はい。緊急を要する事態なので、貴女のお力を貸してもらいたいのです」

 あーさん→ドミニオン

 「私にってのが珍しい。てっきり彼女に手伝って欲しい事があるのだと思ったわ」

 ドミニオン→あーさん

 「どちらにも協力して欲しいのです。2人とも今もあそこに滞在中ですか?」

 あーさん→ドミニオン

 「一応はね。あの子も心配性だから、ずっと張り付いているわ。まぁ、弟君もそれに付き合ってるから、あの子としても嬉しいんだと思うけど」

 ドミニオン→あーさん

 「それは幸運です。お話というのは、そちらでしか出来ない事なので」

 ドミニオン→あーさん

 「そちらにお邪魔していると思う方を、保護して欲しいのです」

 ドミニオン→あーさん

 「出来れば、他のアークスにも知られずに」

 あーさん→ドミニオン

 「保護って言っても、私達はそんなに権限強くないわよ?」

 あーさん→ドミニオン

 「匿うのも難しいと思うわ」

 ドミニオン→あーさん

 「その場合、採掘基地に居る199部隊の隊長さんに協力を仰いてください。あの方なら、きっと力になってくれると思います」

 あーさん→ドミニオン

 「十三かぁ……わかった。なんとかしてみるわ」

 あーさん→ドミニオン

 「それで、その保護して匿って欲しい人って誰?」

 

 

 

 これは『あなた』のいない物語

 

 抗う者は未だ集らず―――今は、まだ

 




多分、ここら辺から後半。
サスペンス映画みたいにしたいと言いながら、基本はアクション映画になってるわ

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