PHANTASY STAR ONLINE2~星霜ヲ蝕ス三重奏~   作:無銘数打

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Interval『汝は何者か』

 さて、此処を城と仮定しよう。

 城でなくても要塞でも構わない。牢獄と称しても問題ないが、捉え方によっては金庫としてもいい。見る者が見れば宝箱かもしれないし、見る物が見れば聖域かもしれない。色々な表現が可能かもしれないが、今回はあえて城と仮定する。難攻不落の城、侵入も脱出も困難な城。

 これが今回の舞台と設定する。

 難攻不落の城に挑むのはたった一人、もしくは一つの者か物。故にモノ。そのモノは城を見上げてゆっくりと歩みを進める。厳重な警備を我が物顔で歩き、巨大な門を歩いただけで突破する。そのモノが門を抜けた事に気づくまで、僅か数秒だが、その数秒の間にそのモノは城の中核にまで到達した。そのモノにとっては何と言う事のない動作で、あっさりと目的の場所に到達する。しかし、気づかれれば最後、そのモノを除去しようと兵士達が集まりだす。兵士達を見据え、そのモノは考えるという行動すらせずに、黙って進行を再開する。目的のモノなどないが、手に入れられるモノは何でも手に入れる。そのモノにとっては目的などその程度のものなのだから。

 

 「口惜しいわね」

 「まったくだ」

 そのモノの記録に残る二人の会話。

 男と女、白衣と白衣、色々な物がごちゃごちゃとしてはいるが、必要なもの以外は置かないという点から見れば、あまりにも人間味がない。

「この子が『アレ』に到達する可能性が、どれだけあるか観測することも出来ずに終わってしまうなんて……」

 「仕方がない事さ。我等はあんなモノを生み出す事が可能であっても、それ故にどうにもならない事だってある。私達は神ではない。小さな一つの存在でしかないのに、いい気になって開けてはならない箱を開けてしまった報いなんだよ」

 「その尻拭いの結果すら見れずに、私は終わるのね。そしてあなたも」

 そのモノは黙って見続ける。

 「だが、我等は終わらない……終わるのは、僕達二人だけ」

 「私達二人以外も死ぬのよ?」

 「僕達以外の者達が心配なのかい?驚いた、君がそんな事を言うなんて」

 「そうじゃないわ……私が心配しているのは、この子が消える事だけ。まだこの子は生まれたばかりで、何も知らない。それが口惜しいの」

 「大丈夫さ、この子はまだナニモノでもない。そうさ、生きてすらない。生きるという意味すら知らず、自身が生まれた事すら知らない……だから、まだこの子は大丈夫」

 そのモノを見つめる二人は、そっとそのモノに手を差し出す。その意味も知らず、その二人が何を思うかも知らず、そのモノは黙って見続ける―――否、観察する。

 そう、観察。

 そう、知ろうとする。

 そう、これが意味であり、これが機能であり、これがそのモノの存在意義。

 「―――見て、この子が私達を観察しているわ」

 「あぁ、見られている。僕達を知ろうとしている……素晴らしい、なんて素晴らしいんだ。この最後の瞬間、僕達はこの子の可能性の始まりを見る事が出来たんだ」

 「えぇ、そうね……なら、もういいわ」

 「あぁ、もういい……」

 二人の背後に光が差す。神々しい光ではなく、悪意に満ちた禍々しい極光。それが何かそのモノは知らない。恐怖すら抱かない。だが疑問は抱く。その行為こそが正しい機能。その光を見つめる二人は、互いに手を取り見つめ合い。ゆっくりとそのモノへと視線を移す。二人の名は知らない。今も昔も、この先も知らない。だが、遠い未来に得た知識で、自身を生み出した二人は『親』という二つで一つの個体だと知った。

その『親』は光に包まれる。

そのモノは二人の手で光から守られた。

それが最初の記録―――まだ自身の名すら知らなかった頃の記録。

 

 城内は混乱する。

 あり得ない事態に混乱しながらも、侵入者を撃退する為の手段を用意する。一つでもなく、十でもなく、百でも足りなければ千を用意する。しかし、そのモノはその全てを、悉くを凌駕していく。何故ならば、知っているからだ。一から千まで、自身を破壊しようとする策、手段の全てを熟知し、その対応も熟知し、その裏をかく手段すら熟知する。全知には及ばなくとも、この程度の妨害などそのモノにとっては相手にならない。その城は強大で強固かもしれない。だが、真の意味で難攻不落ではない。完全な無個性であるならば、完璧な存在であるならば、相手にすらならない。そのモノとて全知全能の神を相手取って戦などしようとはしない。そのような無謀な知識は英雄譚でしか知らない。そして英雄譚など愚の骨頂だと知っている。だが、相手はそうではない。この城はそんな完全な存在ではない。完全を捨て、不完全を取り込んだが故に。

 そのモノは到達する。

 無限の海にも似た膨大な知識という宝。

 そのモノの知らない宝ばかりで、感じる事のないそのモノですら、興奮にも似た何かを錯覚する。手に取る宝の一つ一つを吟味する必要などない。手を出せば何かに宝が手に絡みつく。必要な宝も不必要な宝も、全てが此処にはある。背後から襲い掛かる兵士を一息で蹴散らし、宝の強奪に勤しむ中で、そのモノは見つけた。見つけたが故に落胆する。もっと多くの宝を欲してはいるが、目的のモノを見つけてしまった。それ故に此処を離れなければならない。誠に遺憾ではあるが、これも仕方がない事だと自身の存在しない欲求を抑え込む。帰り道は既に確保している。単純明快、来た道を戻ればいい。その道に如何なる障害があろうとも、そのモノの敵ではない。

少なくとも、ごく一部の存在を抜かせばだが。

 その例外たるモノが問う―――汝は何者か。

 その例外にそのモノは答える―――我が名は『イプシロン』

 

これは『あなた』がいない物語

 

 

 

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