PHANTASY STAR ONLINE2~星霜ヲ蝕ス三重奏~   作:無銘数打

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Episode31『星霜ヲ蝕ス三重奏⑩願望切望』

工業地区に統合軍のトラックが到着した段階で、殆ど制圧は完了していると言っても過言ではなかった。入口のゲートは人形と化した者達によって開かれ、トラックは何の妨害を受ける事なく工業地区へと進む。

 進むトラックの車内から見た外の光景は悲惨だった。

人形になれなかった者達は地面に倒れ伏し、未だに抵抗しようとする者、逃げ惑う者に無数の人形達が生きる屍の様に群がり、仲間だった者に襲い掛かる。

助けを求める声すら彼等に届きはしない。無残に、無機質に転がる死体が1つ増えるだけの簡単な工程だった。

「あんなモノにはなりたくないな」

「まったくだ」

 トラックが止まり、コンテナから武装した兵士達が降り立ち、散開していく。

「警戒は怠るなよ」

「抵抗する者がいた場合はどうします?」

「各自の判断に任せる。脅威になるようならば排除しても構わん」

秘密裏にナオビに搬入されていた機甲種、スパルダンAとスパルガンの改造型も散らばり、制圧された工業地区の警備を開始する。統合軍の兵士と擬似アビスが起動している者以外に対しての行動プログラムは、非常にシンプル。

 悲鳴が木霊する。それが答えであり、兵士はその声すらも無視して作業に取り掛かる。

 工業地区の中心地、この辺り一帯の建物や工業機器の稼働に必要なエネルギーを一手に担っている場所は、アークスシップの動力炉に直結している。

 兵士は、持ち込んだ機器から動力炉にアクセスし、その機器から動力炉のエネルギーの管理が問題なく行える事を確認し、何処かに通信する。

 「工業地区の制圧、動力炉の確保を完了。これより、防衛を開始する」

 

■■■

 

 工業地区の制圧が完了した事を確認したイプシロンは、情報地区の制圧状況を確認し、溜息を吐く様な仕草をする。

 「随分と手間取っているね。やはり、アークス側への擬似アビスの浸透率は高くないという事か」

 統合軍の兵士達が情報地区を制圧する為に動いてはいるが、状況は順調とは言えなかった。最重要区画という事で、当然この場所には戦闘可能なアークスが常駐している。数はそれほど多くはないが、1人1人の戦力は統合軍の装甲歩兵よりも上。1個中隊を投入してはみたが、

 「善戦しているとは、お見事だ。それとも統合軍の連中が腑抜けているだけか……」

 如何に情報地区のシステムを制圧しているとはいえ、あくまでシステム上の話だ。此処で統合軍が押し負ければ、物理的な方法でシステムを奪い返される可能性もゼロではない。

 擬似アビスで操った者達も投入してはみるが、所詮は非戦闘員。戦力と数えるには些か心許ない。

 「やれやれ、私がでしゃばるとヘソを曲げる奴も居るから、あまり手は出したくないんだけど……処理を分断して作業効率を減らすのも良くない」

 とすれば、使える駒となる者をこちらに呼ぶしかないだろう。

 「―――やぁ、スパルタン。そっちは1人で寂しいかな?」

 臨戦地区の制圧を任された英雄に語り掛けると、

 『無駄な事を聞いている暇があったら、状況を報告しろ』

 返答はそっけなかった。

 「ある程度は予定通り進行中かな。擬似アビスの稼働率は予想よりも僅かに低いね。ナオビの人口の約67%にしか効果が確認できない」

 ダーカー襲撃の際に、ワクチンとして住民達に打ち込んだ擬似アビスだが、当初は70%前後の稼働率を予定としていたが、僅かに低い。理由としてはナオビに常備されていたワクチンが想定よりも多かった事と、擬似アビスが完璧で無かった事と推測する。

 『所詮は不完全な模造品だ。むしろ、100%の稼働率を発揮されては予定が狂う』

 「まぁ、改善の余地ありって所で、今回は大目に見るよ」

 口ではそう言いながら、イプシロンは既に擬似アビスのプログラムの更新準備を秘密裏に行っていた。ジェリコの作ったプログラムから、余計な部分を削除し、より効率良く、より容赦のないプログラムを組み上げ直している。

 これをスパルタンや、もう1人の協力者に話せば確実に口出しされると判断し、口にはしていない。このプログラムは今後、別の機会に試してようと画策する。だが、今はその事をどうこうするべき時ではない。

 『各地区の制圧はどうだ』

 「工業地区は制圧完了。動力炉とアクセスできるルートも確保済み。あそこに居る連中の殆どはナオビの住人だから、簡単だったよ」

 『他は?』

 「情報地区がちょっと制圧に手間取っているよ。システムは制圧しているけど、あそこは常駐のアークスもいるから、統合軍と正面切って戦闘中。流石に装甲歩兵でもアークスには手間取るみたいだから、君が手伝いに言ってくれるかな?あそこを落とせないと、こっちも困るからね」

 『わかった……船橋は』

 「あっちは統合軍が抑えているよ。タイミングを見て航行システムを起動させ、移動を始めるよ」

 その為にも情報地区の制圧は必要不可欠。

 通信しながら状況を確認すると、アークス側が押している状況だった。やはり、烏合の衆はこの程度かとイプシロンは呆れる。

 「イクサは予定通り、ナオビの周囲を警戒中。タタラは既にナオビとのドッキングを解除しておいたよ。あれは別に居ても邪魔にはならないから、問題ないでしょ―――ところで、臨戦地区の制圧は終わった?」

 『ゲートエリアは制圧完了。だが、他にもアークスはいるだろうから、そいつらの処理を先にする。情報地区はその後で問題ないな?』

 「大丈夫、それなら事前に手を打っておいたから、すぐに片が付く」

 「―――お前、また余計な事をしたようだな」

 『時間は有限だ。ショートカット出来る部分はしっかりしておかないとね』

 

■■■

 

 イプシロンがそう言うと同時に、臨戦地区に巨大な振動が生まれる。

 地震などではない、何かが爆発した音。それも1つや2つではなく、あらゆる場所で爆発が起きている様だった。

 「……勝手な事をするな、イプシロン」

 振動により天井に亀裂が走り、落下してくる。

 『これも君の為さ。なにせ、そこにはアークス達が沢山いるんだ。彼等が君のいる場所まで来れば、君は彼等の相手をしなければならない。そうすると君がこちらに来るまで時間がかかってしまうだろう?』

 「そうしない為に貴様がいるはずだ」

 予定ではシステムを乗っ取った事で臨戦地区の各転送装置の停止し、各エリアの防壁を落として移動を妨害。同時にフォトンを抑制するリミッターの設定を変更、アークス達の戦闘力を削ぎ、その間に各地区を完全に制圧する時間を稼ぐ。

防壁を突破して来たアークスはイプシロンが対処する手筈だった。

 しかし、現状はそうなってはいない。

 『だから私が対処しているじゃないか』

 振動は未だに止まない。それどころかスパルタンの居るエリアでも爆発の影響が出ている。このままでは、臨戦地区そのものが使い物にならなくなるだろう。

 『―――生温いと思わないかい、スパルタン。英雄である君なら理解してくれるはずだ。敵は少ない方が良い。沢山いるなら効率よく消す方が良いに決まってるじゃないか』

 「これは奴が思い描いた状況ではない」

 『どうして奴の思い描く様に動かないといけない?』

 「……裏切る気か?」

 『裏切ってはいない。そもそも、私達はそういう関係ではないだろ?利害が一致しているだけ。私は私の存在理由を成す為の工程として、この件に協力している。君は君の存在理由の為に奴に協力している』

 だが奴は違う、とイプシロンは言う。

 『奴がしている事は実験さ。実に下らない実験だ』

 侮蔑する様にイプシロンは言う。

 『ねぇ、相談だけどさ。実はもっと面白い事が出来るんだけど、乗らない?』

 「―――貴様と話している時間は無駄だという事が良く分かった」

 『そう?なら、さっさと情報地区まで来てくれよ』

 耳障りな通信を切り、スパルタンは周囲を見回す。

 戦闘の後に起きた爆発によって、ゲートエリアの惨状は酷いものだった。

 爆発の規模は小さいが、小さい爆発が起こった個所が多いのだろう。イプシロンが何時の間にか用意していた爆弾が破裂した場所は、想像するに臨戦地区の重要エリアばかりだろう。どれだけの被害が出て、どれだけの死傷者が出たのかは想像するまでもない。

 そして自身の手で奪った命は、既に動かぬ物体となった数を数えるだけで十分理解する。

 「所詮、同じ穴の狢という事か」

 そう呟き、スパルタンは剣を握って歩き出す。その先に倒れているアークスが1人、僅かだが息はある様だが、致命傷を与えたと理解しているからこそ、命の灯は消えかかっている。

 剣を振り上げ、狙いを定める。

 僅かな慈悲の念を抱き、その頭部へと振り下ろす―――はずだった剣が、止まる。

 「言ったはずだぞ、お嬢さん。動くな、と」

 小動物の様に震え、脅え、それでも両手を広げて倒れたアークスを庇う少女を、スパルタンは冷たい瞳で見つめる。

 「も、もう……いい、いいじゃない、ですか……」

 殺せないわけではない。この程度の事で殺せない様な心など、既にない。だからこそ、自身の瞳に宿る冷酷な念は、それを見るだけで他人を恐怖させると知っている。しかし、そんな瞳を見返す彼女の瞳は、涙に濡れながらも、しっかりとスパルタンを見返している。

 「この、この人は、う、動けないんです……もう、戦えない、んです」

 「だが死ぬ。確実に」

 誰が見ても致命傷な傷。仮にこの場に医療班が来たとしても、治療する事の無意味さを痛感するだろう。

 「……助かるかも、知れない……まだ、助かるかも」

 内に潜む何かが囁く。

この愚かな小娘を切り伏せろと。

 戦場を知らぬ、戦いを知らぬ小娘を殺せと。

 「いいや、助からない。断言する。そいつは死ぬ。必ず死ぬ。このままでは死ぬのではなく、どう足掻いても死ぬ」

 居ないはずの、目にも見えない者達が囁き続ける。

 殺せ、殺せ、殺せ、と。

 「無駄な事をして命を散らすな。抵抗しなければ俺は君を殺さない。俺が殺すのは―――」

 殺せ、殺せ、殺せ、と

 「なんで勝手に決めるんですか!?」

 内の囀る声を吹き飛ばす様に、スパルタンの言葉を遮り、力無き少女は叫ぶ。

 「人の命を、この人の命を、どうして貴方が決めるんです!?」

 「俺が立ち、そいつが倒れているからだ。戦場では生殺与奪の権利は常に平等だ。勝者が生き残り、敗者は奪われる。君には理解できないようだが、それが戦場のルールだ」

 「そんなの、知りません……此処は、戦場なんかじゃなかった。戦場を勝手に持ってきたのは、貴方です!」

 その戦場を運んできたのは君だ―――そう口にしようとしたが、口は意思に反して動かない。

 どうした?

 どうして殺さない?

 お前は英雄なのだろう?

 俺達は英雄なのだろう?

 英雄である俺達がするべき事は、遠い昔から変わっていない。

 「どうしてこんな、酷い事が出来るんですか……」

 涙に濡れた声に対する言葉は、心ではなく体が知っている。

 「英雄だからだ」

 果たして何度この言葉を口にしただろうか。

 英雄という言葉、自身を表す言葉、そうなってしまった自分を蔑むような言葉。何度も何度も、聞かれれば簡単に答える事が出来てしまう言葉。

 「えいゆう?」

 「そうだ。俺は英雄だ。英雄は常に戦場に生まれ、戦場に立ち、戦場で命を奪う」

用意された台詞を呼んでいる気分になる。

こんなやり取りを何度も行ってきたからこそ、同じような台本ばかり演じてきたからこそ、考えるよりも言葉が先に出てくる。それは相手が次に何を言うかも知っている。知っているから先に言葉が漏れ出す。

「人を救う者を英雄と呼ぶ者がいるが、俺はそうは思わない。命を救う者は英雄じゃない。命を奪う者が英雄と呼ばれる」

 「違う……そんなの、英雄なんかじゃありません」

 「君にとってはそうだろう。だが、俺にとってはそうだ。俺達にとってはそうだった。人が望むのは救いだ。そして戦場で人を救う者は、救われる者以外の命を刈り取る事で、願いを成就し続けてきた……」

 英雄とはシステムなのかもしれない。

 望まれ、生まれ、結果を出すシステム。

 「それじゃ、貴方は誰を救ってるんですか?」

 「この現状を望む者を、だ。君達からすれば許しがたい相手である事は確かだろう。そして、それに与する俺もそうだ」

 いつしか、彼女の背後に倒れた者から、生の気配が消えた。

 この場において、スパルタンに敵対する者はいなくなった。

 「許さなくても構わない。そうやって俺は機能し続けてきたんだからな」

 目の前に居る、モニカを除けば。

 剣先は目標を変える。

 自身の行動を邪魔する者、すなわち自身の敵となるのは彼女だけ。

 「……私を、殺すのも……英雄だからですか……」

 「そうだ」

 「私を殺したら……また誰か、別の誰かを殺すんですか……」

 「そうだ」

 こんな状況など、何度も経験した。力無き者を殺し、その望みを打ち砕いた事など数える事が出来ない程、やってきてしまった。その行為を後悔してきたのかと問われれば、答えは否。後悔している事があるとすれば、

 「―――貴方は、英雄なんかじゃない」

 「―――そうだな。俺も英雄になどに与せず、死ねば良かったんだよ」

 

■■■

 

 順調に進んでいるナオビの制圧を確認していたイプシロンは、次の段階に進めていた。情報地区の制圧は完了していないが、未だにシステムは自分の手にある。そのシステムが万が一にも奪還される事はないが、念には念を入れて事を進める。

 先程、スパルタンに言ったようにナオビの航行システムを動かし、そこに新たな命令を加える。

 オラクル船団は100隻以上のアークスシップが、マザーシップを中心に航海をする魚の群れの様なもの。

 イプシロンが出した命令はその群れから抜け出す事。その際、他の船に激突するような失策は許されない。近くを移動する船の航路を確認し、自然な流れで船団を抜け出すルートを作成する。

 命令は出され、巨大な船舶はゆっくりと航路を変更し、船団から抜け出す。

 此処までは予定通り。次に行うのは抜け出した後のナオビの航路だ。しかし、イプシロンもこの後の航路が順調に、予定通りに進む事とは思ってはいない。思ってはいないが、順調に事が進んだ先にある光景を思い浮かべると、知性ある生き物の様に笑うのを抑える事が出来なかった。

 「―――ん?」

 一瞬だけ笑みは止まる。

 ナオビの移動に処理を回しすぎたせいか、街の監視が疎かになっていた。先程まで混乱していた市街では、未だに擬似アビスによって人形と化した住民がいる。それは問題ない。問題なのは、それ以外の住人の姿が見えないという事だ。

 理由は監視カメラの映像を見る事で、すぐに判明した。

 混沌の街で、混沌に染まらぬ者達が居る。

 その者達は人形とならなかった市民達を誘導していた。

 彼等は、

 「都市警備局……へぇ、想像以上に良い動きをするじゃないか」

 

■■■

 

 死を与える刃は、確実にモニカへと到達する。到達し、力無き彼女は何の抵抗も出来ずに死に至るだろう。この場において、死と終わりが蔓延する空間では彼女を救う者は誰もない。誰も立ち上がらず、誰も声を上げない―――はずだった。

 英雄として、多くの戦場を渡り歩き、死をばらまく病原菌だったからこそ、スパルタンは反応した。反応する事が出来たからこそ、その場から動く事はなかった。

 頭上から獲物に向かって襲い掛かる死神は、白刃の大剣を禍々しくも神々しい刃によって切断した。

 床に落ちる大剣の破片、そして地に降り立つ死神。

 英雄の前に立塞がり、力無き少女を守る死神が、其処に立つ。

 「―――なるほど、その能力は確かに脅威になるな。直前までお前が居る事に気づかなかったとは……恐れ入るよ」

 そう言うが、スパルタンは表情を崩さない。折れた大剣は放り投げ、双銃を出現させ、銃口を死神へと向ける。

 「シアさん?」

 偽りの名を呼ばれた死神は答えない。答える余裕がない。目の前にいる英雄から僅かでも意識を逸らせば、一瞬で命を持って行かれると理解しているからだろう。無言で刃を構え、スパルタンと対峙する。

 「お前が始末屋か。イプシロンが言うような弱者には思えんが……ふん、所詮は学習装置。それを理解するには遠い存在という事か」

 「随分と派手に暴れているようですね、貴方達は」

 「そういう筋書きだからな。お前がどれだけ事態を把握しているかは知らないが、このナオビは既にアークスシップとしての機能は期待しない方が良い。此処は既に1個の爆弾になった。残された時間はそれほど長くはない」

 互いに己の武器を向け合うが、動きはない。

 すぐにでも戦闘が始まってもおかしくない状況だが、この場で余裕をもっているのは1人だけ。英雄が故に慢心ではない余裕を見せつけている。それが腹立たしく、相手が如何に強大な存在かを見せつけられる。

 『スパルタン、早くして欲しいんだけど』

 不快な声に諭されるのは不愉快だが、この状況では間違った事は言っていない。

 スパルタンは双銃の銃口を下ろし、2人に背を向ける。

 「逃げるんですか……」

 「見逃してやるって事だ。此処でお前とやり合うのも構わんが、それでは戦力の差が生まれてしまう」

 何時でも斬りかかる事は可能だ。だが、始末屋の脳裏に浮かぶイメージに勝利の映像が出てこない。それが躊躇を生み出す。その間も無防備な背を見せ、優々と歩き出すスパルタンは言う。

 「お前達が足掻くのは、この先だ。これはあくまで開演のベルが鳴っただけに過ぎない。本番はこの後も続く。その為に役者を減らしては劇にならないだろ?」

 まだ始まったばかり。

 これだけの事が起こったというのに、まだ先があるのだと宣言する。

 「心配するな―――次は殺してやる」

 そう言い放ち、スパルタンは姿を消した。

 英雄が姿を消しても静寂は訪れない。鳴り響く警報と爆音、僅かに遠くから聞こえる助けを求める声、そして小さな呟き。

 「……どうなるんですか、私達は」

 モニカの問いに答える事は出来ない。

答えを未だに持っていない。

「すみません。止める事が、出来ませんでした……」

口から漏れ出すのは、自分達の力が及ばなかった事への謝罪。

誰に対するわけでもない謝罪だけが漏れ出す。

 

■■■

 

 情報地区、船橋の制圧完了。

 他アークスシップとのネットワーク遮断完了。

 アークスシップ内外の防衛システムの起動を起動完了。

市街地区及び各エリアの防壁及び自動銃座の起動完了。

各地区と連結する橋は防壁により移動不能を確認。

航行システムの更新は完了し、予定通りの航路を航行中。

防衛に必要な装甲歩兵部隊、改造機甲種の配備完了。

 工業地区の制圧完了。且つ、動力炉のアクセスを確保済み。

臨戦地区のアークスの戦力の大幅減を確認、各設備の破壊完了。

他地区の防衛は重要性が低い故、擬似アビスにて操作している市民にて代用済み。

 僅かだが抵抗勢力の存在を確認。

 排除を提案―――却下。

 排除を提案―――却下。

 排除を提案―――却下。

 了承。

 これより第2フェーズへと移行する。

 10時間後にナオビを旋回させ、マザーシップに向けて航行開始予定。

 マザーシップ到達予定時刻は24時間。

 24時間後、ナオビとマザーシップの衝突の可能性を計算中。

 「計算するまでもないだろう」

 静寂に包まれた部屋の中で、3人目は言う。

 「アークスが取る手段は1つしかない。たった一隻に住まう100万の命よりも重要すべきはマザーシップ。あれがある限り、アークスは存在し続ける。それ以外の答えはない」

 3人目は言う。

 「だが、彼女はそれを選択するだろうか?選択はせざるを得ないが、それなりに抵抗をするだろう。どんな抵抗をするかは見ものだが、それをしてくれなければ意味がない」

 3人目は言う。

 「それを証明してくれなければ意味がない。この事態を解決するほどの力が無ければ、アークスなど存在する意味がない」

 3人目は言う。

 「やり直しをしなければ、何かを救えないアークスなど、何の意味もない」

 3人目は言う。

 「さぁ、この挑戦を受けてくれよ、アークス。相手は用意してやった。過去の英雄、過去の遺物。この2つは君達の存在証明を確立するには十分な存在だ」

 3人目は言う。

 「ダークファルスだけが敵じゃない。それ以外の敵を前にして、またやり直しをするようなら君達に未来を守る権利などない」

 3人目は言う。

 「見せてくれ。失望させないでくれ。信じさせてくれ」

 3人目は言う―――願う。

 「この星霜が正しいものだという事を……」

 




一ヵ月近くサボると、色々と忘れてるもんだと気づく、今日この頃
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