幼女のヒーロー?アカデミア   作:詩亞呂

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原作と以下同文になるため、ターニャの視界外にいるクラスメイトの戦闘シーンは丸々カット致しました。



第20話

 

突然現れた敵連合を名乗るヒーローの敵対組織。

そこにいた脳無という怪物に、既視感に似た嫌な予感のあった私はその主犯格に問うた。その化け物は一体何かと。

 

 

 

改造人間。

今目の前にいるこれは、かつて私の居たヒーロー研究施設で秘密裏に行われていた人体実験のなれの果てだろう。他者への個性付与の成功率が悪いからと大量の子供を人身売買で仕入れ、まるでおもちゃのように弄んで施設の隅に捨てられたかつての同士たち。

 

───あれに未練はない。墓も無き彼らは5年も前に敬意を持って弔った。

 

 

 

「死に損ないを助けてヒーロー気分かよ、クソガキ。脳無!」

 

「手負いのヒーローは正義感だけは立派で邪魔なだけだからな。平和主義の私は本当は戦闘を好まんのだが事情が変わった。

 

そこの脳無とやら、お前は本来存在してはならない存在だ。

───あの時、お前たちは私を残して全員死んだ。死んだんだよ同士諸君」

 

 

 

口も聞けない、知性も無いそれは拳を突き出して襲いかかってくる。

忌々しい存在X、そしてオールフォーワン。貴様らは本当に他人の神経を逆撫ですることが上手だな。

 

 

───私はお前らに、絶対の殺意を持って望むと誓うよ。

 

 

 

「Guten Morgen.我が同胞よ。久しく相見えたというのに全くもって情緒の欠片も感じさせない挨拶をありがとう。

───あぁ、もう言葉も分からないのだったな」

 

 

 

それでは、さようなら。

 

 

 

 

 

 

緑谷出久side

 

 

 

「デグレチャフさん……!」

「危険よ緑谷ちゃん」

「でもっ……!」

 

水難ゾーンに投げ出された僕と蛙吹さ……つ、梅雨ちゃんと峰田くん。3人で力を合わせてどうにか敵を退けた後、敵に殺られそうな相澤先生を助けに行くべきか迷っていた。

そこにいきなり現れたデグレチャフさん。

 

相澤先生をどこかへと飛ばした後、狂ったように笑った彼女は歪に笑ったまま戦闘を開始したのだった。風の音で聞こえなかったけれど、デグレチャフさんにはあの脳無という敵に過剰に反応していたように見て取れた。

 

 

「相澤先生を助けに来たのかしら」

「それにしちゃ笑いながら戦ってるぜ……狂気の沙汰かよ」

「……何か理由があるとか。それより早く加勢しなきゃ」

「範囲攻撃型のデグレチャフちゃんを邪魔しかねないわ」

「それでもだよ!分が悪すぎるっ」

 

相澤先生を瀕死の状態にしたあの脳無、とんでもないパワーファイターだ。接近戦に持ち込まれればデグレチャフさんの勝ち目はかなり薄くなる───!

 

 

 

「ははは!どうした、主の命令を聞くのでは無かったのか!!」

「ッ……チートめ……!」

 

 

しかし僕の心配をよそに繰り広げられていたのは、デグレチャフさんの圧倒的過ぎる殺戮劇だった。

石の弾丸はいまいち効きが弱いとすぐ気付いた彼女は面での攻撃に切り替える。

向かってくる脳無の頭上から、見えない空気の絨毯で圧迫。這い出て来たそれにすかさず追撃。

 

無理矢理動こうとする。足が千切れる。気にせず立ち上がる化け物に、再度追撃。

足に次いで右腕がブチブチと嫌な音を立てる。

───しかし、また生える。

 

 

「ほう、再生の個性持ちか。死ぬに死にきれない、永遠と苦しみ続けるだけの個性。今すぐ私が解放してやろう!」

 

脳無の腕が、足が宙を舞う。

ピクピクと痙攣し地面に力無く転がるそれ。

あまりに相手を傷付けることに躊躇いの無いその姿に、隣で見ていた蛙吹さんは少し気持ち悪そうに口元を抑えた。

 

……なんて個性、なんて胆力。

化け物を嬲りながら笑い続けるデグレチャフさんは、敵以上に敵らしく見えてしまった。

 

 

「クソ……!!おい黒霧、見てないで加勢しろ!」

「は、はい!」

「お次は参謀様か!?良いぞお前にも借りがあるんでな!」

「舐めやがって……!!」

 

 

黒霧は圧死寸前な脳無の横たわる地面にワープゲートを発動した。出口はデグレチャフさんの背後。

「ははっ上手じゃないか!」

 

 

空中でぐるりと回転したデグレチャフさんは無邪気に笑いながら空気砲を脳無に穿つ。

脳無は衝撃に耐えきれず、砂煙を上げながら地面に投げ出された。

───反応速度が桁違いだ。

小さな身体で立体的な戦闘を可能にする個性は、彼女の潜在的な身体能力・反応速度と相性が良すぎる。

 

 

脳無のパワーファイター的な動きに黒霧の立体的かつ瞬間移動じみた攻撃が加わっても、完璧に対応しきるその才能。

笑いながら攻撃を捌き、脳無の眼窩を抉った。

 

 

これは、もしかしたら勝てるかもしれない……!

ガリガリと首元を掻いている死柄木は忌々しそうに唸った。

 

 

「くそ、くそくそ……!

なんなんだよお前。オールマイト用に作った脳無をまるで玩具みたいにしやがって。ほんとチート能力は狡いよ。

……もうすぐプロヒーローも来る。今回は失敗だ。失敗なら……

 

 

───せめて平和の象徴としての矜恃を少しでもへし折って帰ろう!」

 

 

 

ギロリ。赤の瞳と目が合った。

───まずい、バレて……!!

 

 

 

「緑……っあのバカ……!」

 

死柄木の個性はおそらく手に触れたものの崩壊。先程相澤先生の肘に触れた時、ボロボロに肘が崩れ去っていたのを見た。

 

 

死柄木が迫る。僕の顔面に、奴の手が、……!

 

 

 

 

「───ぐぁっ!」

 

顔面に死柄木の手が触れるその瞬間、デグレチャフさんの空気砲が奴を吹っ飛ばした。

……助かった!

「……くは、よそ見は厳禁だよクソガキ」

 

口から血を流した死柄木は、しかし笑った。

僕らを助けたデグレチャフさんの背後には、いつの間にか急接近していた脳無。数瞬だけ生じた彼女の隙を、化け物は逃がさなかった。

 

 

「っ!」

 

───僕らは囮か!

 

 

ぐしゃ、と嫌な音を立てデグレチャフさんが吹っ飛ばされる。

「デグレチャフさん!!」

「はははは!!形勢逆転だ!やれ脳無ッ!!」

飛ばした先へ追撃しに走り出す脳無。

 

 

 

───やばいやばいやばい!

大人の相澤先生ですらあんなボロボロにした脳無、デグレチャフさんのようなまだ身体が出来上がってない子どもに直撃したら、それこそ本当に死ぬぞ!

水難ゾーンから全力で広場へと走り出す。

デグレチャフさんしか見えていない脳無、隙だらけだ!

卵が爆発しないイメージでッ!

 

 

「SMASH!!」

 

───やった、腕が折れてない!

しかし。

 

 

 

 

「……逃げろ、緑谷」

 

脳無に僕のSMASHは全く効いていなかった。

……個性は再生だけで無かった……!!?

 

 

すぐそばで倒れていたデグレチャフさんは苦しげに顔を歪めながら起き上がった。

 

「ぐ、げほ……全く余計なことをする。私1人ならどうということは無かったというに。

……目の前でクラスメイトに死なれては問題に巻き込まれかねんだろうが」

 

 

片足が変な方向にねじ曲がり、お腹から血を流すデグレチャフさんはしかしそれでも笑った。

 

 

 

「しかし私達の勝ちだ、敵よ」

 

 

 

 

 

 

「───私が、来た」

 

出入口付近で爆発が起きる。

……そこには平和の象徴、オールマイトが立っていたのだった。

 

 

 

 

*

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