幼女のヒーロー?アカデミア   作:詩亞呂

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第22話

 

USJ襲撃事件より2日後、安静を解除された私は詳細の説明を今回の事件担当である警察官塚内へと語っていた。

授業を抜け出すことになってしまったため、午前中のほんと短い時間だけ。もう色々と情報は集まっているが、主犯格と1番長時間対戦したのが私である事から、何か新しい情報は無いかという確認だけだった。

 

 

 

「───それで、相澤先生の救助を遂行しました。本当ならば直接私が出入口まで運び、脳無らを引き付け全員で戦闘へ……という算段でしたが、予想外に脳無が強敵でしたね。見逃して貰えませんでした」

 

「その君と対戦した脳無は、オールマイトと対峙した際既にかなり疲弊していたと見える。

……昨夜取り調べの最中、血反吐を吐き死亡した」

 

「……はぁ、それで。殺すのはヒーロー的に不味いと説教でもしますか。過剰防衛だったとでも?プロヒーロー2名が瀕死の重傷を負いましたが」

「いや、直接の死因は弱っていたことに気付かず全力で応戦したオールマイトにある。そうじゃなくて……その、」

 

 

塚内は、困ったように言い淀む。

……あぁ、こいつは5年前のオールフォーワン戦でも事後担当をしていたな。取り調べされたことを覚えている。私の血なまぐさい過去を……脳無との関連性を知る人間だ。

 

「元々あれは生きてて良い生き物じゃない。あるべき所に還った。それだけです」

「……そう、かい」

 

脳無は死した。しかし親玉は依然として捕まっていない。放置してしまえば第二、第三の脳無が現れるのも時間の問題だろう。あるいは、もう。

 

 

「話はそれだけですか。こちらとしても事情を知る権利があるかと思いますが」

「それはオールマイトが君に直接話したいそうだよ。僕からは以上だ、お疲れさま。今からなら昼食に間に合うんじゃないかな」

「では失礼します」

 

オールマイトが直接、ね。

言いたいことはある程度予想がつく。

が、私の目的は変わらない。

 

───脳無及びオールフォーワンの抹殺。

私に忌々しい個性を譲渡しヒーローなんてクソみたいな職へのレールを順当に歩むことになってしまったのも、皆オールフォーワンと存在Xのせいだ。

 

死すれば個性が返還される……なんて浅はかな夢は抱かない方が良いだろうが、目には目を歯には歯を。私がこれから戦に巻き込まれるであろう未来を作った元凶にはそれなりの仕置きが必要だ。

幸い敵の目的は私では無くオールマイト。あの脳筋が雄英にいる限りチャンスは幾度もあるだろう。

 

憂鬱すぎる予感にため息を付きつつ、早足で学校に戻ろうとしたその時、制服のポケットからアラームが鳴った。

普段あまり使わないからマナーモードにするのを忘れていたなとスマホを取り出すと、筋肉ダルマと記載された暑苦しいアイコンからのメッセージに自分の眉根が歪むのが分かった。

 

 

『塚内くんとのお話は終わったかい?話したいことがあるんだ、一緒にお昼食べよ?仮眠室にいるよ』

 

「……タイミング悪すぎだろう」

 

 

 

 

 

緑谷出久side

 

 

 

USJ事件から数日後、通常授業に戻った雄英は一大イベントである雄英体育祭に向け賑わいを見せていたけれど、僕はその波に乗り切れずにいた。

 

……USJで僕はヴィランの悪意や力に翻弄されるばかりで、相澤先生や13号先生の足手まといでしかなかった。

あの悪意に対抗するためにはオールマイトから受け継いだ力ワンフォーオールをもっともっと自分のものにしなきゃいけない。時間は限られているから。受け継いだのは僕なんだから。

 

 

体育祭よりももっと遠く大きな目標ができてしまったばかりに、単なる学校行事であるそれに中々本気になれないでいた。

 

 

 

「ご、50分前後……!?」

「あぁ、それが今の私の活動限界だ。無茶が続いたせいだろう」

「そんなことに……ごめ」

「HAHAHA!謝らんでいいよ!」

 

 

 

昼休み、オールマイトに呼び出され仮眠室で向かい合って打ち明けられたことは、活動限界の更なる縮小だった。

───オールマイトのヒーローとしての終わりが、近付いてきている。

僕は、今何を1番に優先すべきなんだろう。

 

 

「それより体育祭だよ。君まだワンフォーオールの調整出来ないだろう。どうしようか」

「う……。あ、でも1回。デグレチャフさんから気を逸らそうと脳無にSMASHを打ち込んだ時、その時は反動が無かったんです」

「そういや言ってたな。何がいつもと違った?」

「違い……」

 

 

今まで僕が個性を使ったのは数回だけだ。

入学試験の対巨大ロボット戦闘。

体力測定のソフトボール投げ。

戦闘訓練での建物破壊。

 

「……僕は、この力を初めて人に使おうとした」

 

「無意識にブレーキをかけることに成功した……ってとこかな。なんにせよ進展だね、良かった」

 

茶柱の立ったお茶が湯気を上げる。

 

「ぶっちゃけ私が平和の象徴として立っていられる時間って後そんなに長くない。

悪意を蓄えている奴の中にそれに気づき始めている者がいる」

「……はい」

 

死柄木弔と名乗る主犯格が言っていた、弱体化の噂がどうとか。オールマイトの活動限界的にどうしても活躍機会が全盛期よりも減りつつあるから、そういう話が出るのも必然かもしれない。

 

「君に力を授けたのは私を受け継いでほしいからだ。あの時の君の思いは今も紡がれているはずだ。それを世に示そう。

雄英体育祭、プロヒーローが……いや、全国が注目しているビッグイベント。

 

今こうして話しているのは他でもない!

次世代のオールマイト、平和の象徴の卵、緑谷出久が───君が来た!ってことを世の中に知らしめてほしいんだよ」

「僕が、きたって……」

 

 

正直モチベーションがない中個性の制御もままならない状況で世間に僕を知らしめるどころか目立てるか……と独り言を零すとオールマイトは「ナンセンス!」とひっくり返った。

 

「ナンセンス界じゃ他の追随を許さないな君は!

常にトップを狙う者とそうでない者、その僅かな気持ちの差は社会に出てから大きく響くぞ。

まぁ気持ちはわかるし私の都合だ、強制はしない。ただ、海浜公園でのあの気持ちを忘れないでくれよな」

 

───常にトップを狙うものと、そうでないもの。

オールマイトに師事出来ている今の現状に、僕は半分満足してしまっていた?最高のヒーローを目指すためには、どんなことですら吸収しなければならない。

 

 

僕は、目の前の行事に集中出来ないからなんて贅沢言ってられるほど強くない。

 

「……はい」

「頑張ってくれよ。……っと」

 

 

 

コンコンコン。

仮眠室の外からノックが聞こえた。ここは仮眠室、わざわざノックして入って立ち入るような人は殆どいない。

「私が呼んだんだ。……フンっ」

 

マッスルフォームになったオールマイトはドアの外の人物に入りなさいと声を掛けた。

……オールマイトのトゥルーフォームは、教師陣全員知っているはずだ。なら今オールマイトがわざわざマッスルフォームになったのなら、それを知らない生徒となる。

 

 

「……なぜ緑谷、お前もいるんだ」

 

そこには、怪我でお休みしていたはずのデグレチャフさんが立っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「デグレチャフさん……!身体は大丈夫なの!?」

「平気だ。元々午後の授業から復帰する予定だった。そこの筋肉に呼ばれてな」

 

警察署から帰宅後、呼ばれた仮眠室に立ち寄ればそこにはオールマイトと緑谷が居た。

テーブルにはポットと飲みかけのお茶が置いてあり、湯気が出ていないことからかなり話し込んでいたことが窺える。

……私的な話?オールマイトと緑谷が?

随分と親しいらしい。

 

 

「……ごめんなさい。僕のせいで大怪我を……」

「気にするな、あれは私の注意不足が原因だ。それよりオールマイト、話をするのでしたね。緑谷、席を……」

「いや、緑谷少年も居てくれ」

「?は、はい」

 

ソファに促され、素直に座る。お茶をそっと差し出されるが、無視してじっとオールマイトを見つめた。

塚内の言っていた通りなら、これからするのは事件の詳細説明だろう。それに緑谷も同席させる意味が分からない。

というかオールフォーワンについて口外禁止なため、それを知らない緑谷もいるこの空間は酷く気を使うのだが。

 

 

 

「……まず、デグレチャフ少女に謝罪を。申し訳なかった」

 

向かい合って座ったオールマイトは、ぐっと頭を下げた。

「それは、なんの謝罪ですか」

「君をまた、危険な目に合わせた。君に嫌な記憶を思い起こさせてしまった。かつての私が、今の私が至らなかったせいだ。申し訳なかった」

「……」

 

 

「脳無については、君の予想通りの捜査結果だった。君が嫌悪感を持つのも当たり前だ。

……あれを生み出してしまった原因の一端は、私達にもある。申し訳、なかった」

 

それだけ聞ければ充分だ。

あれは私の成れの果て。オールフォーワンが生きていて、敵連合なんてふざけた組織を興したのも確定だ。

私がやることはなにも変わらない。

脳無と同じくオールフォーワン、あれも5年前死すべき命だったものだ。還るべきところに還す。それだけだ。

 

 

「起きてしまったことは仕方ありません。嫌悪はあれどヒーローに対して怒りの感情は抱いてませんよ。

それだけですか?緑谷が同席した意味が分かりませんが」

「緑谷少年に、君の過去を話した」

「……っ!?」

 

「無論、話しても差し支えない部分だけだよ。それも謝りたくてね。勝手に話してしまった」

「……理由は」

 

話しても差し支えない部分、つまりオールフォーワンについては避け敵に軟禁されていた過去があることを話したのだろう。

何故。

別に話されて困る内容では無いが、わざわざ話す意味もあるまい?なぜわざわざ無駄な同情を誘うような身の上話をするのだ、この脳筋は。

 

 

「緑谷少年には、私の意志を継ぐ存在になって貰いたいと思っている。

───私の光の部分だけで無く、闇の部分も知っていかねばならない」

「私が闇、ですか」

「違う。私が作り出してしまった君の暗い記憶を、私の過ちを次世代である彼に断ち切って貰いたいと、私はっ……!」

「教師失格ですね、オールマイト」

 

 

なるほど、後継ね。

緑谷出久の強い意志を感じる瞳には何か既視感があると常々思ってはいたが、オールマイトと似たものがある。

師弟関係にある緑谷にオールマイトは、自分の恥部である私の過去を晒すことで辛く苦しい道であることを教えようとしたのだろうが、甘い。

私が過去に対して嫌悪感はあれどトラウマになっている訳では無い姿を見て大丈夫だと判断したのだろうが。師匠も教師も本当に向いていないな。

 

 

「私があなたを『先生』と呼ばないのはそこですよ。師弟関係において師匠の不始末をどうにかするのが弟子ではありません。授業に遅刻し、ヒーロー業務との区切りが付いていなくどちらも中途半端。

挙句に後継。緑谷の度重なる怪我にろくな指導もせず、大事な部分は隠したまま何が意志を継いで欲しいですか。甘いんですよ」

 

 

ぐ、と言葉に詰まるオールマイト。

そして隣で黙り込む緑谷。

「別に私の身の上話を勝手に言いふらそうが構いませんが、私を弟子への教材にしないで頂きたい。私の過去は私が断ち切る。それ以上は余計なお世話と言うものです。手出しは無用。話は以上ですか?では」

 

 

一切手をつけなかったお茶をテーブルの脇に追いやり、さっさと席を立つ。

全く、未熟もいい所だこの脳筋は。後継を探す前に教員免許を取り直したほうが有意義な時間になるだろうよ。

 

 

 

「デグレチャフさんっ!!」

 

がしっとずっと黙っていた緑谷が私の手を掴む。

瞳は爛々としていて、その理解出来ない輝きに身体の奥が一瞬震えた。

 

 

「勝手に昔の話を聞いちゃったのは……ごめんなさい。けどオールマイトから言われたからじゃない、僕は僕の意志で君を救いたいと思う」

「……余計なお世話だと言ったはずだが」

「それでもだよ!」

 

 

ゾッとした。

緑谷出久という底知れない存在に。

やつは決して私に同情して言っているのではない、『自分のなりたいヒーローならこうするはず』だから行動している。

こちらの都合などお構い無しにどこまでも自己満足的に人を助けようとするそれはまるで、他人の救済が生理的欲求と同義だと言うかのようで。

 

 

 

……心底理解し難い、気持ち悪い存在。

 

 

「……勝手にしろ」

 

緑谷の手を振り払い、仮眠室を後にする。

オールマイトに緑谷出久。あの2人が師弟ねぇ。お似合いだよお前らは。

 

 

 

雄英体育祭が始まる。

問題は何1つ解決しないまま、物語の幕が上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

敵連合アジトにて。

怪我をした死柄木は暫く安静にしていたが、オールフォーワンから来た連絡に頭が沸騰するのがわかった。

脳無をおもちゃのように扱ったターニャについて悪態を吐きまくった結果、それに興味を持った巨悪は別ルートより情報を得たようだ。

 

 

「……は?あのガキが?」

『いやぁ驚いたよ!弔があそこまで言う女の子って一体どんな子なのかと思ってちょっと調べてみたんだよ。

───ターニャ・デグレチャフ。私が個性を与えた脳無の実験体だ。生きてヒーローに保護されたのは知っていたけれど、まさか高校生になっていたとは!まだ幼いからと可能性から除外していたよ、いやはや1本取られた!』

「んで、どうすんだよ先生」

『あの子は個性共々本来私の所持物だよ。私が買い、飼った。個性を与え、また彼女もそれを受け入れた。

持ち物は、返してもらわないと』

「ッチ……」

 

 

 

それじゃあぶっ殺せねぇじゃねぇかと不機嫌に顔を歪ませる死柄木。

闇もまた、次なる計画へと乗り出すのだった。

 

 

 

 

*

 

 




こんにちは、ターニャ・デグレチャフです!
まだ小さいので色々と失敗はありますが、1つずつ頑張っています!
最近身体測定をしたら身長が2センチ伸びていました。体力も着実に付いてきていて、本格的なトレーニング許可ももう少しで降りそうです。
……もう良いか?自分の声に吐き気を催す不思議な体験をありがとう。
次回、幕間・蛇足編。
では、また戦場で。
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