希望者が多かったものやネタが思いついたものをいくつかをピックアップし連載します。掲示板ネタの反応凄かったのですが、そちらは体育祭編以降までお待ちください。また蛇足編その2はいつか開催しますので、その時にでも書きます。元々本編中に書くつもりだったものも見受けられましたので、そちらは暫くお待ちを。
今回は
・ビッグ3との対面
・A組女子との日常
・ソーヤとの思い出
の3本連載となります。
第23話
日本にやって来たばかりのターニャは、大人から恐怖されるほどに戦場の気配を色濃く纏わせ生きていた。
まるでここも、退廃した戦場下であるかのように。校長が彼女の口から直接聞いた初めてのお強請りが「護身用の武器が欲しい」だ。
警戒する彼女を思わず抱き締めてしまった校長は正しくヒーローであろう。
銃刀法がどうのと言いくるめ、原則軍人・警官・プロヒーロー等の仕事で武器を使うことを法的に許可された人、またはプロになるために必要不可欠な場合のみ審査に出されるのだと懇切丁寧に説明した。
……そこで現品調達しに手っ取り早く厨房に入ったせいでターニャの味覚は大革命を迎えるのだが、そこは割愛する。
「ねぇねぇ君迷子?」
まだ初等教育を受けていたターニャに1番初めに声をかけたのは、波動ねじれだった。
もう授業はとっくの昔に終わり、完全下校間際の時間。人気の少ない校内に歩いていた赤いランドセルは酷く浮き上がって見えた。
「……保護者がここにいるので。迷子じゃありません」
「そっか!迷子なら雄英バリアで塞がれちゃうもんね!職員室?それとも保健室とか?連れてってあげよーか?」
「結構です」
初の出会いはそれだ。
そして徐々に遭遇回数を増やし、ついに自室の場所を突き止められるのに1ヶ月。その後もいい加減チラチラと現れる女子生徒に辟易していたターニャだったが、半ば無視して通り過ぎようとしたその時ふわりと宙を舞ったねじれに意識を持っていかれた。
「あっ!こっち見たね!」
「……ふん」
まんまと策略に引っかかったことに気付き不機嫌に鼻を鳴らすターニャだったが、自分と類似点のある個性に一応は会話をする気になった。
「飛ぶのか、お前も」
「ううん、私のはエネルギー波を出す個性。でもなぜか真っ直ぐ出ずにねじ曲がっちゃうの。不思議だよね?
だからちょっと工夫したら面白いんじゃないかって!それで最近飛べるようになったの、凄い?」
ふわふわと浮かぶそれは最近覚えた新技のようでまだ覚束無いが、入学からまだ数ヶ月しか経っていない中もう新しいことにチャレンジし始めるその精神はさすがヒーロー科といった所か。
「世の中不思議なこといっぱい!なんで自分の身体なのに不思議がこんなにたくさん隠れてるのかな?知るたびワクワクするよね!」
宙を舞いながら将来の不透明さに思いを馳せるねじれは、笑顔を零しながらターニャの目の前に着地する。そっと両手を取られ顔を僅かに固くするターニャだが、そんな様子はお構い無しに小首を傾げた。
「ターニャちゃんの個性、飛ぶことが出来るんでしょう?コツとか教えて欲しいな?だめ?」
「……メリットが私に無いが」
「ターニャちゃんの個性も、私もっと面白いこと出来ると思うの。ヒーロー科の授業とかって、興味無い?」
「一学生のお前が部外者である私を参加でもさせるつもりか?」
「うん!むしろ推奨されたよ!そういうの好みって」
「誰だそんな担に……ミッドナイトか」
ターニャとの関わりが多いプロヒーローは限られる。そもそも本人があまり手のかかるタイプでは無いため、数少ない女性ということで世話をするよう直接校長から頼まれたミッドナイトや性格の穏やかなセメントス、いつの間にか仲良くなっていたランチラッシュくらいだろう。
いつの間にかターニャの個性の話が漏れている点を見ても、ねじれは既にミッドナイトにターニャの事を相談済みのようだった。
「決まり!先生には私が話しておくから!」
「え、ちょ……」
承諾した覚えも無いが、半ば強引にターニャの授業参加の話は進行する。
ターニャにも学業があるため、結局夏休みの間に行われる少人数制の特別講習に顔を出すハメになったのだった。
*
「今日はこの6人で少人数制の実践授業をします!お手伝いにターニャちゃんに来てもらいました。ちょっと事情があってうちで預かってるの。知ってる人もいるみたいだけど、一応挨拶してくれるかしら」
「……はじめまして、よろしくお願いします。ターニャ・デグレチャフです」
夏休み。
体力、個性の強化を目的とした林間合宿を目前に控えつつ、実践形式の授業も今のうちにやってしまおうと少人数ずつ呼び出された生徒達。
ターニャはその実践授業の少女役として引っ張りだされることになった。一応安全のため、万が一ターニャに怪我の可能性がある際は現場を取り仕切るプロヒーローが救援に駆けつけるそうだ。
「今回の授業では、混乱した状況下で異なる指示を受けてしまった3人ずつ2チームのプロヒーローという設定よ。
災害現場という場所はどうしても指示が通りにくい。現場で正しい判断能力で現場を見極めることが出来るかがクリアの鍵になるわ」
いつもの災害救助というだけで無く、少し頭を使う凝った設定を常に採用しているらしい特別講習。常の授業と違い人数のわりに時間がしっかり用意されているから、特殊な状況下への応用力を試す場としているようだ。
「さて、それじゃチーム分けね。Aチームは波動さん、遠形くん、天喰くん。Bチームは残りの3人ね。それぞれスタート地点が違うから気を付けて。それぞれ私とスナイプ先生が指示を出します。さ、ターニャちゃんは台本通りセッティング始めましょ。行動開始!」
台本あるんだと目を輝かせるねじれと正反対に、ゲームじみた授業に目を腐らせる環。
やる気に差はあれど、そうして授業が始まったのだった。
「ここかな」
「うん!間違いないね」
Aチームであるねじれ達が受けた指示はこうだ。
『倒壊した建物内に取り残された女の子がいる。その子の救出をせよ』
Bチームと合流する前に問題の建物にたどり着いたため、そっと中を覗きターニャが倒れている様子を視認した。
「大丈夫かい!今助けるからね!」
ミリオが声をかける。ぴくり、と瓦礫に埋もれつつも体が動いたことから意識があるようだ。
「とりあえず瓦礫をどかそう……」
環がそう言いつつ腕をタコの吸盤を再現する。個性は強力だが大きな瓦礫を吸着することの出来る程のものを生み出せるようになったのはまだ最近だ。
個性による応用の幅が大きすぎて全てに対応仕切れていない、そんな状態。
「お昼はたこ焼きかな!ナイス!」
ミリオはグッと親指を立て地味に1つずつの瓦礫撤去に徹する。
ミリオもねじれもここは自分の個性は発揮出来る場面では無いと環のアシストに回るが、そんな中すぐにBチームの3人がやってきた。しかし顔を顰めており、様子がおかしい。
「……!?お前ら、なにやってんだ」
「え、瓦礫の撤去作業だけど……」
「早く態勢を整えろ!俺たちが受けた指示は『瀕死の敵の確保』だ!!」
「───っ!?」
敵、と意識するや否や、ターニャの身体が周りの瓦礫と共にふわりと浮き上がる。
「……、まずっ」
この場にいる6人の中で1番ターニャの個性を知っているのはねじれだ。
ターニャの個性は超攻撃特化。本気で掛かられたらこちらも相応の怪我を覚悟しないといけないほどだ。
「みんな退避だよ!一旦作戦を立てよう、このままだと連携がゴタつく!」
「あぁ!!」
ターニャはねじれらを追うつもりは無いようで、宙に浮いた状態で静止している。
その隙に6人は物陰へと隠れた。
「……それで?両チームの指示を確認しよう。俺らBチームは『瀕死の敵の確保』」
「Aチームは『倒壊した建物に取り残された女の子の救助』。なるほど……後から実はその女の子が敵だったと判明したってことかな。混乱した現場で情報が錯綜したって訳だ」
「でもでもまだわかんないよ?ターニャちゃんこっちを攻撃してこないし」
「波動、お前あの子の個性知ってるんだろう。詳しく教えて欲しい」
「うー……」
授業とはいえターニャを敵として扱うのがなんだか嫌なねじれは少しむくれたが、そう我儘を言っていられる状況でもないためすぐに諦めた。
「……個性は『飛翔』。自由に飛べて、触れたものの重力も奪える。砲弾みたいに武器にされたら厄介だよ」
「なるほど、じゃあ俺が相手をしたらいいね!」
物理攻撃は大抵かわせるミリオはニカ、と笑った。
「他のみんなはターニャちゃんが地上戦に移行するよう支援を。捕獲まで頑張ってはみるけど、さすがに空中戦は出来ないからその時は……うーん、任せた!」
「へっ!?」
環が鶏の羽根を生やせるようになったのはまだつい最近。飛行能力に乏しく本当にただ「ある」だけの見掛け倒しでしか無い。
Bチームの面々も使い勝手は良いがパワー系ばかりで、空中戦がこの中で辛うじて可能なのはねじれしかいなかった。
「ちょ、私もこの間飛べるようになったばかりだよ!戦闘とかぜんぜん……」
「プルスウルトラー!っつって!頑張るしかないだろヒーロー!」
ぱん、と肩を軽く叩かれ、ねじれは眉をひそめた。ターニャを敵として捕獲する役なんて嫌だなぁと思いながら。
「……さっき見えたターニャちゃんの顔……」
どこか助けを求めているみたいだったんだもの、と小さく呟きながら。
*
「へーい!全然こっち見てくれないのな!おーいターニャちゃーんっ!?」
「これ……なんか違くない……?」
「うーん……」
ターニャの捕獲作戦会議から数分後。地上戦に持ち込もうと飛び出したミリオだったがターニャは全く我関せず。それどころか攻撃もせずにただ宙に浮いているだけだ。
これではこちらも対応が難しい。
「本当に敵なのか……?」
そう呟く環。ターニャにも聞こえたのだろう、ぴくりと彼女の肩が動いた。
「!!くるぞ!!」
ターニャの周囲を浮遊していた瓦礫が一斉に飛来。
狙いは───環だ。
「っねじれる波動!!みんな、退避!」
ねじれは瞬時に個性のエネルギー波で瓦礫を打ち砕き、次点に備える。
ターニャは完全に環を狙っており、ミリオには全く視線を向けない。
ミリオ以外の全員が物陰に隠れると、再度静止してしまうターニャ。
「……ねぇ、やっぱり変だよ。
なんで敵なのに最初ターニャちゃん倒れてたの?なんで個性発動してからもずっと攻撃してこないの?天喰が敵って言った瞬間からいきなり攻撃して、また止まって……」
「波動、でも」
「不思議!どうしても気になるから私、ちょっと行ってくる!」
「あ、おい!」
周りの制止の声を聞かず飛び出したねじれはまだコントロールの拙い個性で空へと飛び出す。
「ターニャちゃん!」
「っ!?」
「あなた本当に敵なの!?違うんじゃないかな!」
ねじれはまだ高度が出せない。
まるで怖がるかのように上へ上へと逃げるターニャに追いつくには、まだ足りないものばかりだ。
「つらいことあったら言って欲しいの!私達、ヒーローだから!!」
「……!」
「まだひよっこだけど、でもあなたよりは少しだけお姉さんだから!!」
ターニャは上昇をやめる。
地上では固唾を呑んで見守る生徒達。
俯いていたターニャは泣く寸前のような、そして怒ってるかのような複雑な表情を浮かべていた。
「……た」
「ん?」
「……た、すけて……!」
「勿論!私達がきたよ、ターニャちゃん!!」
ねじれが全く躊躇すること無くターニャを抱き締めた時、授業終了のアラームが辺りに鳴り響いたのだった。
*
「はーいお疲れ様。それじゃ講評ね。まずターニャちゃんの正体を分かって行動したのかしら、波動さん?」
「ううん!なんかおかしいなーって思ったから!」
「それじゃあ減点ね。ただでさえ混乱した現場、場の一体感を崩すような行動は慎みなさい」
「……はぁ〜い」
ねじれに抱き締められたままだったターニャは拘束を逃れ、ミッドナイトの側へと。
キリッとした表情は先程浮かべていた年相応の幼子と同一人物とは思えないほど理性的で、生徒の面々は目を白黒させた。
「いやぁ演技派だったわね、ターニャちゃん。とりあえずあなたの配役を教えて欲しいのだけど」
「まだまだ稚拙なものですよ。
私の本当の配役は『個性制御の出来ない幼子』。瓦礫に埋もれるだけの無力な子供でも敵でもありません。
両チームとも間違った情報を与えられた状態で、いかに正解に近い行動が出来るか否かを見たかったそうですが……」
「まさかなんとなく、で正解を引き当てちゃうなんてねぇ」
実際、勘も大切な要素の1つではある。しかしそれに頼り切ってしまうのはあまりに不安要素が多い。
「与えられた情報が全てじゃない。常に自分の頭で考え、予測し、仲間と共有・行動しなさい。トップヒーローは身体能力と個性が優秀なだけでは務まらないわよ」
「「はいっ」」
「よし、今日の授業はここまで!」
「「ありがとうございました!」」
授業が終わると、今日のMVPであるターニャに生徒らがわっと近寄る。
「凄い演技力だったよ、騙されたな!」
「個性も凄いね」
「へい!なんでずっと俺を無視してたんだい!」
「……テンションが、ちょっと苦手だったので」
「アチャーー!!」
うへぁ、と嫌そうな顔をするターニャと何故か嬉しそうですらあるミリオ。
そっとターニャの後ろからねじれは声をかけた。
「ねぇねぇ、メリット。あった?」
「ん?」
「授業参加してみて楽しかったー!とか、ターニャちゃんなりのメリット!」
「……まぁ、無いわけでは無かったな」
「そっか!それなら良いんだ〜」
「……」
敵役かもしれないターニャに迷わず突っ込んできたねじれ。あっけらかんとして笑っているが、実際の現場だったら生き死にを左右する程の大胆な策だ。
それでも「なにかがおかしい」という理由だけでそこまでしてしまうのは、何事にも興味を持つ彼女だからこそ。全くもって理解不能だ、とターニャは小さく呟く。……その口角がやや上がっていたのには、誰も気付かなかった。
「それとな、違うぞ」
「ん?」
「私の方がお姉さんだ」
「……んんん……??」
おわり。
更新1ヶ月もサボってごめんなさいでした!
違うんだ、入院してたんだ、なんなら今もしてるんだ!
入院しつつ卒試の勉強しつつ今紅白見ながらギリギリの中慌てて書いております。今日だけ夜中のテレビを許してくれた夜勤さんに感謝!
こちらの短編はアニメ版ヒロアカの愛は地球を救ったり救わなかったりする回のオマージュです。ねじれちゃんめいっぱい出せて楽しかったですが時間に追われて書いたので粗が凄い。後に色々修正します。
それでは、2019年も良いお年をお過ごしください!
今年も幼女ヒロアカちまちま書いてゆきますので応援何卒宜しくお願い致します!
新春イラスト。新コスじゃなくただの制服改変。
【挿絵表示】