幼女のヒーロー?アカデミア   作:詩亞呂

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幼女戦記映画の放映がスタートしましたね。
公開日ダッシュする予定が卒試だったので断念しました。無念。閣下の大暴れを見るのが非常に楽しみです。



第27話

 

 

例年は3年のステージと違って少々盛り上がりに欠ける1、2年ステージ。注目するのは良い個性持ちが居たら声をかけてみよう程度の心づもりのプロヒーロー達と身内、将来仮免試験で競い合うことになるであろう彼らの偵察をする全国のヒーローの卵達。一般人からしたらそこまで興味の対象にならないのが常だ。

しかし、今年の盛り上がりはどうだ。

 

『刮目しろオーディエンス、群がれマスメディア!1年ステージ生徒の入場だ!』

 

 

 わああ!と歓声のシャワーを浴び、その異様と言って良い程の盛り上がりっぷりに一瞬混乱するが、歓声から聞こえた会話に納得がいった。

 

「ラストチャンスに懸ける熱と経験値から成る戦略とかで例年メインは3年ステージだけど今年に限っちゃ1年ステージ大注目だな!」

「敵と入学早々戦ってるの、A組だっけ?」

「ねえ知ってる?今年の1年の中にエンデヴァーの息子がいるって」

「うっそマジで!?」

 

……なるほどな。

ただでさえ有名ヒーローのご子息様がいることで注目度が元々高かった上に、先日の敵連合襲撃事件を死人なしで切り抜けた金の卵達。

そういった箔が一般人の興味関心を誘ったのだろう。

まだ未熟な子供達が強大な敵に立ち向かう……。昔からこの国の連中はそういった手の苦労話が大好物だな、くだらない。

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に1度の大バトル!

どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?敵の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!

ヒーロー科1年!!A組だろぉぉ!!?』

 

プレゼントマイクの煽りを受け、観客のボルテージは上がりっぱなしだ。

 

「ひひひ人がすんごい……」

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか……これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」

「めっちゃ持ち上げられてんな……なんか緊張すんな爆豪!」

「しねぇよ。ただただアガるわ」

「頑張ろーねデグちゃん!」

「ああ」

「負けませんわ!」

 

『話題性では遅れを取っちゃいるがこっちも実力派揃いだ!ヒーロー科1年B組!

続いて普通科CDE組も出揃った!』

 

サポート科、経営科と次々生徒らが入場するが、正直ヒーロー科より個性も肉体も1歩及ばない人間ばかりなためあまりやる気は感じられない。

毎年最終種目まで残るヒーロー科以外の生徒は1割か良くて2割。大抵が転科を望み個々に努力している人材ばかりだ。

体育祭に価値を見出していない人種にとってモチベーションが上がらないのも道理だろう。私もだが。

 

 

 

「選手宣誓!選手代表1-A、爆豪勝己!」

 

主審のミッドナイトが現れたことにより、ざわつきが多少収まる。

……が、普段1年生とはあまり関わりの無いミッドナイトを初めて見た人も多いらしく、あまりの過激なコスチュームに男性諸君が些か目のやり場に困っているようだった。

肌をみだりに晒すものでは無いのは当たり前だが、彼女の露出は個性を効率的に使うためのもの。八百万の理由と同じだ。

 

ミッドナイトに促され不機嫌そうに登壇した爆豪は、A組近辺───特に私や緑谷、そして先程啖呵をきった轟をギロリと睨み付け

「センセー。俺が1位になる」

と言い放った。

 

凄まじいまでのプライド、自尊心。

ヒーローになりたいとか世のため人のためとか、そんな気色悪い御託は一切無し。

自分が勝ちたいから、絶対に勝つ。

 

……良いね、良いよ爆豪。

己の欲望になんて忠実なんだ。

そして何より入学当初あった見下したような目を一切していない。きちんとこちらを敵として、ライバルとして認識した上での発言だ。

良いじゃないか15歳。若く青いが成長も早ければ向上心も強い。真に結構なことだ。

 

大ブーイングが巻き起こる中、1人拍手を贈ってやる。

……あまりに騒がしかったせいで、こちらを睨んでいた爆豪と隣の緑谷くらいしか気付いた様子も無かったが。

 

「で、デグレチャフさん?」

「なんだ緑谷。実に結構じゃないか。皆がトップを狙っているんだろう?君も言っていたろう。それを言葉に出しただけだ、彼は」

「た、確かにかっちゃんは自分を追い込んでる……んだと思うけど、僕らを巻き込んでるのがかっちゃんぽいっていうか……。非難の目がA組全体に……」

「元々注目度が高いのに変わりはないよ」

「……そうだね、頑張ろう!」

 

 

「第一種目はいわゆる予選!毎年ここで多くの者がティアドリンク、涙を飲むわ!

───さて運命の第一種目、今年は障害物競走!

計11クラス全員参加のレースよ。コースはこのスタジアムの外周約4km。

我が校は自由さが売り文句!コースを守れば何をしたって構わないわ」

 

 

毎年一気に数を減らす第1種目。

その数は毎年若干の誤差はあれど大抵40位程度まで絞られる。そのため実質ヒーロー科以外のふるい落としに他ならない。

第2種目からは危険度が段違いに上がるため、下手な温情は大怪我を生むからだ。

 

───さて。

 

「……20位程度で良いか」

 

 

 

「さぁさぁ!位置につきまくりなさい」

 

スタートゲートは非常に狭い。

最初の位置取りが悪いと命取りになるな、これは。

 

「用意は良いかしら!?

それじゃ……スタート!!」

 

ふむ。適度に頑張ってやるとしようか?

 

 

 

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