幼女のヒーロー?アカデミア   作:詩亞呂

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映画幼女戦記見てきました。あの爆裂音超良かったですね。今日もばっくれっつ〜
詳しい感想とか雑談を活動報告に書いてたりするので、気になる方はそちらより。




第28話

 

 

「───はい。ですので今年の第1種目は障害物競走。ロボ・インフェルノ、ザ・フォール、地雷原を考えています」

書類を配り終えた相澤がそう淡々と報告をすると、会議室には反対派の教師が次々に声を上げた。

 

 

「本気ですか?特定の生徒……いえ、もうはっきり言います。その内容はターニャさんに分が良すぎる。あまりに不公平ではないですか?」

「彼女に重りでも付けますか。1人にだけハンデを強要するのはそれこそ不公平では」

 

遡ること数週間前。

体育祭の競技決めに教師達は難航していた。

 

 

「けど、ターニャさんは事情があるとはいえ雄英がバックに付いています。それは公言してはいませんが生徒達には周知の事実でしょう。

あまりに彼女に有利な競技内容だと、八百長を疑われる可能性が……」

「ただの生徒なら運が良かったで済ませられる所が、身内ゆえに疑惑の目に晒されてしまうのも可哀想だ」

 

問題はターニャ・デグレチャフについて。

グラウンドで行う雄英体育祭において、彼女のアドバンテージは計り知れない。

室内戦ならまた話は変わっただろうが、それでは体育祭の趣旨とは異なってくる。

 

 

「ではどうしろと。どんな競技にしろ得意不得意は個性により存在していきます。全員に平等で勝ち目のある競技内容なんてこの個性社会じゃ実現不可能です」

「入試もウチはそういうスタンスだしなぁ……仕方が無いか」

 

とりあえずターニャに情報漏洩があった等と足を引っ張るようなデマが流れないようにガッチリと対処することを決め、煮え切らないまま会議は終了した。

 

「……デグレチャフは、いつも目立たないように平均値を狙って過ごすきらいがある。きっと今回もそうでしょう。トップを取れる力があるのに頑張らないのは、頑張っている生徒達への侮辱に等しい」

「相澤……」

「圧倒的有利な状況。少しでも手を抜けばバレバレ。やるしかない。そこまで追い詰めてようやく奴はやる気になるんですよ」

 

たった数ヶ月過ごしただけの相澤だが、オールマイトからの断片的な話とを繋ぎ合わせターニャのプロファイリングは大方済ませた。

 

 

施設での虐待という辛い過去により雄英に引き取られ、ヒーローとして育てられた哀れな子供。

本人にその意志は無くともここはヒーローを育成するための学校だ。唯一の保護者から期待されヒーロー科に放り込まれれば最大限頑張るか思いっきりグレるのが常……だが、彼女は強すぎて、賢すぎた。

自分の有用性と自分の意志との間で揺れ動いているのだろう『間を取る』選択。実に中途半端で舐め腐っている。

目立つことに過去のトラウマが関係しているのかもしれないが、知ったことか。

 

やるなら本気で。やらないなら出ていけ。

それが相澤の教育方針だ。

 

 

 

 

*

 

 

 

やられた。

やられた、クソが……!

 

「どうしてこうなった……っ!」

 

人波に流されたことにしつつ、やや後方からスタートした私が見た光景は目を疑うものだった。

 

巨大ロボットだと!?入試で私が無双したのを忘れたのかここの教員共は!

既に早い一部の生徒は第2関門へと進んでいるようで、流れてくる解説もテレビに映っているだろう映像も先頭集団ばかりだ。

予定通り……といきたいところだが。

 

「第2関門がただの綱渡り……なんなんだこの出来レースは」

 

あまりにも私にとって有利すぎる。まるで1位を取れと言わんばかりのヌルゲーだ。

敵が襲撃して来て頭までやられたか、ここの教員は。

 

 

 

───そこまで考え、ふと代表挨拶を頼まれた際の相澤の様子が脳裏に過ぎった。

 

『デグレチャフ。お前、……いや。分かっているだろうし、いいさ』

『……失礼します』

 

あの一瞬の間、相澤はヒントを出していたのだ。

私は手を抜くなという忠告だろうと、ヒーロー科が多くゴールする中間ラインを目標順位としていた。本来それですら全体からしたら良い順位、次へと確実に進める素晴らしい成績なのだ。

それならば他のヒーロー科の生徒もいる中で「手を抜くな」とは言えまいと。

 

 

しかし、しかしだ。

手を抜きたくてもどうせ抜けないだろうから、言葉での忠告をするのを止めたのだとしたら。

 

───ここまでお膳立てして貰って、トップを取らなかったら。

私の個性は生徒間にもバレている。こんな好条件で中途半端な順位を取れば、教員どころか生徒にさえ手抜きがバレバレな事態に陥るだろう。

 

「あんの策士めっ……!」

 

手を抜いたら除籍。

言い訳を与える隙は一切無し。トップを狙っていない私を、他の生徒と同じ土俵に立たせるためにわざとこの競技内容にしたのだ、あいつは。

 

「どいつもこいつも1位1位と……!」

 

2位じゃ駄目なんでしょうかっ!!

某政治家の二番煎じを呟きながら、最大出力で個性を発動させる。

先頭集団はもうかなり先、もう少しで最終関門に届く程らしい。

ギリギリだな……!

 

「……主よ、我に金の翼を授け給え。この大空の元、その御力を顕現せんッ」

 

 

良いだろう、乗ってみせよう!

例年通りなら第2種目は団体戦かそれに近しい何か!ワンマンでの活躍など出来はしないのだからそこで実力が発揮出来なくとも不思議では無い。

表彰台に登らないようにする方法などいくらでもあるのだッッ!!

残念だったな、相澤!

 

 

*




人はこれをフラグと言う。

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