幼女のヒーロー?アカデミア   作:詩亞呂

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『 』……英語
としてください。


第3話

 

研究室を出た先では、有象無象の大混乱が起こっていた。

 

「なんで居場所が」

「日本からだと!?人数は」

「機材は壊せ、研究成果は死守しろ!」

「子どもは!」

「殺せ!」

「うぁぁ!」

 

酷い剣幕で走り回る大人達に恐怖を覚えたのか、泣き出す子ども達。

……大方、こことは別の場所にも支部のようなものがあるのだろう。嫌に行動が素早く逃亡慣れしている。

しかし子どもは殺せとは。本当にただ殺して捨て置くためだけに集められたのだな、私達は。

 

 

「うるせーんだよ糞ガキ共!!」

ガン!

「下手に保護されちゃこっちの情報がバレるんでね、死ね!!」

ガン!

 

先程まで先生を名乗っていた職員は、手のひらを反したように拳銃を突きつけてくる。

泣き叫び逃げようとする子どもから血飛沫が上がる様はまさに地獄だ。

 

「「いやぁあああ”ッッ!!」」

 

「こらこら、君たち」

 

 

 

そこでようやくオールフォーワンと名乗る先程の男が場違いな程にゆったりと現れた。

とっさに物陰に身を隠す。くそ、先程の警報で庭に続く通路が閉鎖されてしまっている。

奴らだってこれから逃げるはずだ、裏口はどこにある!?

 

「殺してしまうのは勿体無いだろう?子ども達、こちらへおいで」

「きゃあああっ」

「わぁああああ!!」

 

まるで磁石に引き寄せられたかのように子どもらが一斉に男の体にへばりつく。自由が効かないのか、子ども達は必死にもがいている。

個性が、3つだと……!?

 

「殺す前に君たちの個性、全部頂くよ。実験材料は多い方がいいからね」

 

 

至極穏やかに最低なことを囁き、男はものの数秒で部屋にいた子ども全員を無力化してしまった。なんて奴だ。

まるで魂が抜けたようにその場に崩れ落ちる子ども達に愕然とする。

 

……一体このオールフォーワンという男はなんなんだ。

他の職員とはオーラも個性も一線を画する。外にゴロゴロいた小物じみた敵とは根本的に違う何か。

 

分かったことはただ1つ、奴の個性だ。最初私は付与の個性と私に与えた飛翔の個性の2つ持ちだと思っていたが、それは違う。

今の「個性を頂く」という発言、恐らく人の個性を奪い私に付与したように与えることの出来る個性なのだろう。そして奪った個性は奴の個性としても使える。

……なんて反則級のチート個性だ。

 

 

 

「さぁ、研究成果は持ったね?ドクターにデータは?」

「送りました!」

「やれやれ、せっかく来たのに日本にトンボ帰りか。黒霧に連絡を」

 

崩れ落ちる子どもを足蹴にし、部下に指示を出し始める男。

……私は、本当にこの男から逃げられるのか?奴の個性ストックがいくつあるのか分からない今、慣れない個性を持て余す子どもと万能の魔法使いとが鬼ごっこをするようなものだ。余りにも分が悪い。

 

 

 

「ターニャちゃん、こっち」

突然くいっと服を引っ張られ、驚き振り返る。

「……ソーヤ」

「警報がなってから物騒なものが見えたから隠れてたんだ。ターニャちゃんは医務室に居たから無事だったんだね。みんなは?」

「……わからない」

 

魂無きマネキンのように床に転がる子どもらをそっと指差すと、ソーヤは小さく息を飲み込んだ。

「……僕らだけでも逃げ出そう。捕まったらきっと僕らもああなる」

「一体どこへ?庭への通路は閉鎖されてしまったが」

「こっち。普段は存在しないはずの扉みたいなものが壁紙から浮いてた。緊急用の部屋なんだと思う」

「……さすがだな」

 

どうやら運はまだ私に味方しているらしい。

存在X、私はまだ死んではやらない。歯を食いしばって見ていろ!

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁっ……」

 

ソーヤに手を引かれるがまま隠し通路に飛び込むと、そこは地下へと続く長い長い階段だった。

「大丈夫?ターニャちゃん」

「だ、いじょうぶだ」

 

ろくに栄養の取れていない幼女の身体は、日常的な怪我と合間り酷く体力が少ない。どうしても筋肉の成長よりも怪我の修復に僅かなエネルギーを消費しがちなため、私の身体は普通よりもかなり小さいのだろう。

……弱音を吐いて救われるのなら、恥も外見も気にせず泣き叫ぶのだがな。そんな訳にもいくまい。

 

「それよりソーヤ、ここはどこだ」

「水の匂いがする。地下に川……?とりあえず外には繋がってるはず」

「川……下水道か。地理感覚が全く掴めんな」

 

下水道、と言っても知識の無いソーヤは首を傾げるだけだ。せっかくの個性もこの施設の杜撰な教育体制のせいで存分に発揮出来ていないのが惜しい。

「……まって、靴の跡がある。新しい」

そっと声のボリュームを落とすソーヤ。

 

 

「良く見えるな、明かりも無いのに」

「そういう個性だから。……下がりきった所に人がいっぱいいる。敵……?」

「人……?」

 

 

こんな地下の下水道に身を隠す奴なんて、戦時中迫害を受けていた人種か何かやましい事がある奴くらいだろう。

少なくともこの騒動に無関係とは思えない。

 

「……今更引き返すことも出来まい。進むぞ」

「で、でも」

「戻っても死ぬだけだ。全神経を集中させろ、この暗闇じゃお前の……ソーヤの目が頼りだ」

「……わ、かった……」

 

 

 

 

 

 

それから数分後。

無事階段を抜け切った私達は瞬間、訳もわからず拘束されていた。

 

「なっ……子供……!?」

 

電気など通っていない暗闇だ。足音を聞きとりあえず捕らえたが、その相手が子供なことには拘束した後気付いたようだった。

 

「施設の子供が逃げ出したのでしょうか」

「いや、しかしここの出入口には隠蔽工作を施したのだろう……?それをこんな年端もいかない子らが?」

 

パッと懐中電灯で辺りを照らされ、眩しさに目を顰める。

そこには奇妙なコスチュームを纏った大人の集団が緊張状態でこちらを見ていた。

 

 

 

「君達、いきなり拘束してごめんよ。こちらも切迫していてね……って、日本語分かるかな。English OK?」

「オールマイトさん、ここ英語圏ですら無いですから」

「……oh。まいったな」

 

腕の拘束を解かれ、そう日本語で問いかけて来たのは画風がアメリカンコミックみたいな風貌の厳つい金髪男だった。

……切迫した状況、日本語、普段着とは到底言えない服装。

 

 

 

───……せっかくバレにくいよう拠点を海外に置いたというに、ヒーローも優秀だねぇ

またあのヤーパンの奴らですわ!───

 

 

 

 

……ツイてる!!

彼らは十中八九ヒーローだ。中に突入する機会を今か今かと待ち構えている、日本のヒーロー!

 

日本語も英語も全く分からず警戒心むき出しのソーヤに目配せし、前世とった杵柄とは言え日本語がペラペラ話せる外人幼女はおかしかろうとわざと拙い英語を披露してやる。

 

 

『……あなたはヒーローですか?』

『!!あぁ、そうだよ、私らはヒーローだ!』

『私達、施設から逃げてきました。子供、みんな生きてないかもしれません。助けて欲しい』

『中でそんな事が……!もう大丈夫、私が来た!!』

 

 

 

力強く頭を撫でられるそれは、今世で初めて与えられた暖かさだった。

 

 

 

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