アリシゼーション~アリスの恋人   作:ジーザス
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戦闘シーン下手だけど早く書いてみたい。

そして早く上級修剣士になったシーンも書きたい。


休息

寮での夕食は夜7時までに食べ終えるべしという規則があるだけで、開始時間の午後6時に間に合うべしという規則はない。

 

あるとすれば、お祈りの言葉を唱えないことへの忌避にも似た視線を向けられることだ。俺たちの場合、向けられる理由はそれだけではないのだが。

 

貴族出身生徒からすれば、俺たちは〈平民出身のくせに傍付きとして働いている生意気なヤツら〉だからだ。学院では成績がすべてなので、地位ごときでなんだかんだ文句を言うのは少々大人気ない。

 

実力がすべてといえどもそれは仕方ないことだ。他者より何か秀でる能力がなければ注目してもらうことはおろか、関心さえ持ってもらうことさえできないのだから。

 

俺たちは実力以外にも魅せる何かを持っていたから選ばれたのだとも思っている。先に成績がすべてだと言ったが、それはこの学院内での話であって外に出るとそれは肩書きにしかならない。

 

学院で剣術や〈神聖術〉が誰よりも上手かったとしても、いざ戦闘となって勝てません、使えませんでは意味がない。むしろそれは自らに汚名を着せることになるのだ。

 

〈学院首席〉という肩書きが一瞬にして〈戦闘では何もできない腑抜け〉という天から地に落ちるほどの評価を下されることになる。

 

だから俺たちはそうならないように日頃の訓練を怠らないようにしている。まあ、俺は事情があって剣術においては本気を出していないが…。

 

そんなことを頭の片隅で考えていると、目の前に食堂の入り口が見えた。寮には男女合わせて120名が在籍しているが、その多さでも窮屈さを感じさせない食堂の広さに感動する。

 

〈セントラル・カセドラル〉にいた頃は人数のわりに広すぎて、逆に違和感増し増しだったから俺的にはこちらの方が性に合っている。

 

カウンターでトレイを受け取り、ちょうど3つほど連続して空いている席に滑り込む。着席と同時に午後6時を知らせる鐘が鳴ったのでほっと息を吐く。

 

〈公理教会〉に対する祈りを込めた(めんどくさい)聖句《アヴィ・アドミナ》を全員で唱えて、それから楽しみな夕食となる。メニュー的には質素と思える香草ソースをかけた白身魚とサラダ、根菜類のスープ、丸いパンが2個だ。

 

〈セントラル・カセドラル〉にいた頃は満腹になるまで口にして良いという暗黙の了解があったが、俺は1度たりとも食いきれなくなるまで口に運んだことはない。

 

テーブルには色とりどりの果物、東西南北セントリアでも料理名さえ出せば通じるというほどの有名料理がところせましと並べられていた。

 

確かに〈整合騎士〉に出す料理としてはふさわしいものだったが、俺の口には合わなかった。美味いと口にできて腹が満たされても、心までは満たされなかった。

 

どちらかと言えば飾りとして使われていた果物の方が、俺的には美味しかった。高級料理だからといって誰もが満たされるわけでもなく、食材そのものの味を知ることが何より大切だと、あのとき感じた。

 

だから学院で食べるメニューが不満ではなく、喜びあるものとして食せるのが嬉しい。

 

ソースのかかった白身を口に運ぶと、酸味と苦味が絶妙にマッチしたソースに絡んだ白身が頬を緩ませる。

 

ホロホロと噛まずとも口の中で崩れていく白身の旨味成分が、訓練での疲労を和らげてくれるような錯覚に陥りながら2口目、3口目と口に運ぶ。

 

「本当にここの料理は美味いよな。毎日似たような食事だけど味が異なるから飽きない」

「そうだね。〈ギガスシダー〉に向かって斧を振るってた頃のお昼はずっとパンだったし」

「前の日の売れ残りだけどな」

 

サラダを美味そうに咀嚼しながら、キリトは昔を懐かしむように呟く。俺もユージオが熱心に斧を振るっていた頃を思いだし、笑みが浮かんでくる。小さな体に不釣り合いな重い斧を、汗を吹き出させながら懸命に振るっているユージオは可愛かった。

 

「満足できる食事だから、それ以上に望むことはないんじゃないかな」

「まったく羨ましいことですなライオス殿!」

「「「…」」」

 

背後から聞き慣れた気分をがた落ちさせてくれる声が響き、俺たち3人がげんなりした表情を浮かべる。

 

「我々が汗水垂らして掃除した食堂に、後から悠々とやってきて食べるだけとは。いや、まっこと羨ましい!」

「まあ、そう言うなウンベール。傍付きには我々に理解できないそれなりの苦労があるのだろうさ」

「それもそうですなぁ。聞くところによれば、傍付きは命じられたことをしなければならないとか」

「万が一《平民出》だの《禁令持ち》だの《変態》だのの指導生に付けられてしまった日には、何をさせられるか知れたものではないぞ」

 

これ見よがしの言葉にせっかく美味しく食べていた食材が、いきなり何もなくなったかのように味を感じなくなった。

 

飲み物であれば青汁になったと例えられたが、生憎俺の語彙力は高くないのでその程度にしか例えられない。

 

「無視しろ」と視線で2人に合図するが腹が立つのは止められない。《平民出》がユージオの指導生であるゴルゴロッソ先輩を、《禁令持ち》がキリトのソルティーナ先輩を、そして《変態》が俺のベンサム先輩を暗に意味しているのは明らかだ。

 

尊敬する先輩を年下であり腕が劣る輩に言われるのが堪らないが、彼らの嫌みは今に始まったことではない。入学当初から被害に遭っていたのでもう慣れたものだ。

 

この1年間での嫌みの回数は数えれば500を越すのではないかとある意味称賛したくなる。まあ、そんな嫌みを含んだ賛辞を送るつもりは毛頭ないが。

 

腹が立つのが収まらないので雑に白身魚へとフォークを突き刺す。そしてナイフで一口サイズに切らずにそのままかぶり付く。

 

行儀の悪さにユージオからジト眼を向けられるが、ユージオも似た心境なのだろう咎める様子はなかった。

 

それに「後から悠々と」というのがまたミソである。ギリギリになって入ってきたのが俺たち3人だけなので意図的にからかっているのは丸わかりだ。

 

こちらを意味ありげに見てくる視線を背中に感じながら食事を進める。

 

「もう少しの辛抱だよ。我慢しなって」

「それは俺よりキリトに言うべきだな。見ろ、今にも噛みつきそうな形相をしているぞ」

「え?…キリト、落ち着かないと〈神聖術〉の特別講義を行ってしまうけどいいかい?」

 

ユージオの脅しにキリトは大人しく矛先を下ろした。キリトは入学当時から〈神聖術〉が苦手なので、親友であるユージオの授業とはいえ受けたくないのだろう。

 

苦手な俺は自分を棚にあげてキリトの左肩を軽く叩いてやる。

 

後ろで今なお高らかに捲し立てる2人のうち、灰色の髪をオールバックにしているのが四等爵家出身のウンベール・ジーゼック。その隣で緩く波打つ金髪を背中まで長く伸ばしているのが、三等爵家出身のライオス・アンティノス。

 

貴族の子供がこの学院に多く通うなか、一等爵家は特別待遇で直接指導してもらえるので学院には通わない。二等爵家といえば首席のウォロ・リーバンテインなど数人しかいない。

 

となると三等爵家はこの学院で言えば位は上だ。だが何故あそこまで人の悪さを体現したような人間になれるのか疑問に思えてくる。

 

キリトの指導生ということで何度か会話をしたことのある、セルルト・ソルティーナ先輩も三等爵家だが、人間のお手本と評価を出せる女性(ひと)だ。

 

2人の発言は〈自分達は傍付きではない〉と公言しているのと同様。それはつまり彼らが初等練士上位12名に名を連ねていないということである。

 

順位が低いということは成績が悪いということなのだが果たしてそうだろうか。三等爵家や四等爵家出身の彼らは、幼い頃から剣の手解きを受けていたはずだ。

 

そんな彼らがその程度の実力で留まっているはずがない。

 

彼らはプライドが無駄に高いので上級生とはいえ、自分より下の地位の者にはあれこれ命令されたくないから、意図的に順位を下げているのではないのだろうか。

 

それを総称して〈自尊心の塊〉だとキリトは言うがまさにその通りだ。彼らほど自分たちが上であると行動で示す輩には出会ったことがない。

 

「傍付きとなって本当に腕が上がるのか気になりますなぁライオス殿!」

「まったくだウンベールよ。もしかしたら稽古とは別の何かをさせられているかもしれないぞ」

 

…まったく気品の欠片が微塵もない貴族である。彼らは「俺たちがやましいことをしている」のではないかということを言いたいのだ。近くでは、似たような性格の貴族たちが笑いを堪えて手で口を押さえている。

 

さすがにここまでくると言い返さなければ気が済まない。せっかく最後にベンサム先輩から勝利をもぎ取ったというのに、これでは台無しではないか。

 

「…情けない」

「何か言ったかな?カイト初等練士」

「ああ、言ったさ。その程度の話でよくそこまで盛り上がれるものだな。高位貴族とは思えない行動だなって言った」

「「ぷっ!」」

 

俺が嫌みを一言に集約した意味を伝えると、キリトとユージオが噴き出すのを堪えていた。タイミングが悪ければ、キリトは口から水を噴き出していたことだろう。

 

ウンベールやライオスらに向き直って率直に告げる。

 

「学院では貴族だろうと平民だろうと扱いは平等だ。俺たちが遅れてやってきたことを馬鹿にすることは、上級修練士次席、三席、五席を侮辱することに他ならないが?いくら三等爵家と四等爵家出身でも、それはいささか礼儀がなってないのでは?それとも上級貴族の礼儀作法のなかには、年上だろうと自分が気に入らなければ、好きにしてもいいという項目があるのか?」

「貴様ぁ!上級貴族への侮辱は《禁忌目録》違反だぞ!」

「侮辱は間違ってはいないが誤解をしているようだな。《禁忌目録》第五章二節三項〈何人たりとも理由なく他人への侮辱行為は禁ずる〉これが正しい文章だ。確かに俺は上級貴族である貴方たちを侮辱したが、それは理由あってのことであり理由もなく(・・・・・)という意味合いじゃない。理解した(Do you understand )かな?」

 

ウンベールやライオスを含む上級貴族が、苦虫を噛み潰したように顔を盛大にしかめている。これ以上やれば本格的な戦闘になりかねないため、潔く矛先を収める。

 

許可のない戦闘は〈禁忌目録〉で禁止されているので気にしすぎかもしれないが、次の検定試験で偶然に見せかけた事故を起こしてくるかもしれない。怪我の程度によるが、治療期間が延びればその分あいつらに順位を上げる機会を与えてしまうことになる。

 

一度くらいならば構わないがそれが連続して起こると困る。そうなってくると教員が疑問を抱いて調査にでるかもしれない。といってもそれはまだ望み薄で期待しない方が身のためかな。

 

言いたいことを言い終えて自分の席に向き直ると、キリトが右手の親指を立ててにやっと笑った。その奥でユージオが「本音を言ってくれてありがとう。あまり無茶しないでね」という眼を俺に向けていた。

 

「俺の代わりに言ってくれて助かったぜ」

「いつかは言わないと面倒だしな。それに鍛練最後の日に言われちゃあ我慢できない」

「僕も似たような心境だったから気持ちはわかるよ。でも言い過ぎない方がいいかも?次はどんな手で揺さぶってくるかわからないし」

 

ウンベールやライオスは陰口を叩くのが趣味というより生き甲斐なので、その可能性は高いだろう。そしていつどこで何をしてくるのかわからないから余計に質が悪い。

 

ある意味TPOを考えているのだがそれは違うことに使ってほしいと思うのは俺だけだろうか。

 

その後は2人を無視して最後の修練の内容について、夕食時間が終わるまで3人で仲良く和気藹々として話した。

 

 

 

時間は流れ消灯時間前。俺、ユージオ、カイトの3人は初等練士寮の206号室で駄弁っていた。

 

消灯時間まで残り30分となった今、同じ部屋にいる7人はすでに布団に潜り込んでいる。布団に入ったからといってすぐに眠るわけではなく、同じようにもぐりこんでいる近くの友人と話をしている。

 

どちらかが眠気に抗えなくなると、自然に会話は途絶えて眠りに落ちるという流れができている。それがこの1年でずっと続いてきた恒例行事だ。

 

別室の練士たちはどのように過ごしているかは別にして。

 

「こうやって話できるのも今日で最後か。早かったよな1年って」

「集中していたら時間なんてあっという間だからね。授業のあとに先輩たちとの稽古が、安息日を除いて毎日あったから」

「授業で疲れていても稽古となれば疲労はなかった」

「「確かに」」

 

寝間着に着替えてソファーで会話している俺たちの雰囲気は似ている。性格は違えど体格や纏っている雰囲気が似ているため、三つ子と呼ばれてもなんとなく頷いてしまいそうだ。

 

カイトがしっかり者の長男、ユージオが臆病でありながら優しい次男、そしてやんちゃな俺が三男といったところか。

 

カイトが悪乗りすればカイトとユージオの立ち位置が逆になるかもしれない。俺とカイトは悪戯をするときや考え付いたときの表情や言動、行動がそっくりなのである。俺からすればそれも誉め言葉なのだ。

 

「入学当時、傍付きとして選ばれたときには驚いたけど一番驚いたのはカイトに再会したことだね」

「何も言わずに来て済まなかったな」

「怒ってないよ。そりゃ会えたことには驚いたけどそれより会えた嬉しさの方が大きかったよ」

 

微笑み合う2人を俺は苦笑しながら見ていた。親友というものはどれだけ離れていても、心の何処かで繋がっている。そしてそれは決してなくしてはいけないものだとユージオから改めて学んだ。

 

カイトという名が俺はルーリッドにいた頃から引っ掛かっていた。何故彼が禁忌を犯したのか。そして何故〈公理教会〉に連行されたはずなのに、剣術院へ入学できたのか不思議に思っていた。

 

ユージオによれば「禁忌を犯した者は尋問の後処刑される」ということだった。その〈処刑〉がどんなものなのかは誰も知らないからなんとも言えないが、字面からして生半可な罰を下されるはずがない。

 

それなりの罰があるはずなのに彼には何もなかったかのように見える。彼が隠すのが上手いのかもしれないが、俺的に隠しているようには見えないのだ。

 

アスナのように人の中を見る眼を持たない俺が言っても説得力は皆無だが。

 

なんにせよ幼馴染と再会できたユージオの喜ぶ顔が見れただけでも、本心からよかったと思える。あとはもう1人とユージオが出会えば任務完了に近づく。

 

俺は絶対に出会えると信じている。いや、会わせるのだ。無邪気に遊んでいた頃の3人に戻れるように力を貸す。

 

それが右も左もわからなかった俺に、衣食住を与えてくれた相棒への感謝の印だ。これだけですべての恩を返せるとは思っていない。

 

きっとユージオはそれで十分だと言うだろう。でも俺はそれだけで足りると思っていないから〈アンダーワールド〉から出るまで恩を返し続ける。

 

それが今の俺が最優先でしなければならないことだ。

 

「寝る前に最後。1ついいか?」

「なんだい?キリト」

「明日ちょっと一緒に来てほしいんだ」

「安息日だよね。いいけどどうして?」

あれ(・・)が完成するからじゃないか?明日は三の月七日だから」

 

するとユージオはポンっと手を叩いて思い出した。

 

「そうだったねすっかり忘れてた。キリトがソワソワしてた理由がわかったよ」

「そ、そんなに露骨に出てたか?」

「「バッチリと」」

「そんなぁ~…」

 

キラキラさせていた眼が光を失って、少し長めの前髪の奥に消えていく。先程までの態度のギャップに2人は笑い声をあげた。

 

「まあ、キリトだし」

「キリトだもんね」

「そこまで言わなくてもさぁ」

 

キリトの文句をどこ吹く風とばかりに無視する。すると部屋のドアをノックする音が聞こえ3人が背筋を伸ばして飛び上がった。

 

「やべ!」

「過ぎてたよ!」

「ではお先に!」

「「ずるいぞ(よ)!」」

 

消灯時間を過ぎても起きていることを、寮官のアズリカ先生が注意しに来たのだ。一目散に寝室へと逃げ込んだカイトに2人が怒りを投げつける。

 

カイトを追いかけて2人が部屋に入ろうとしたがタイミング悪く、最凶の笑みを浮かべたアズリカ先生に見つかってしまった。

 

その後、先に寝室へと逃げ込んだカイトを2人して連れ出した。

 

嫌々言う自分の両手をガッチリとホールドした2人に気持ちが伝わらないことを理解したのか、カイトは脱力して2人に引きずられる形でアズリカ先生の前に立たされた。

 

それから数分後、エントランスからアズリカ先生の雷の音が初等練士寮全体に響いたとさ。

 

これがノーランガルス帝立修剣学院に残る一種の歴史になるとは、3人とも思いもしなかった。




楽しいね~アリシゼーション。


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