アリシゼーション~アリスの恋人   作:ジーザス
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明けましておめでとうございました。遅い!と罵られそうなので言い訳を。

バイトが忙しくて書けませんでした!あとFateでキャラが当たっちゃったんで育成してました!すいませんでした!

...と言いながらもテストが近いので今月は投稿回数かなり少ないと思います。頑張りますので本年も何卒よろしくお願いします。


避難

〈世界の果て〉。

 

それは〈人界〉と〈ダークテリトリー〉を分ける〈果ての山脈〉とは真逆にある場所。文字通りその先は何も無く、唯〈虚無〉がどこまでも広がっている。

 

そんな辺境の地でも〈世界の果て〉の手前には広大な土地が見渡す限り何処までもあった。そこには古龍と呼ばれる太古の昔の姿のまま生きている彼らがいた。

 

古龍だけではなく〈アンダーワールド〉の外の世界。つまり〈現実世界〉である惑星、地球に存在した大昔の生き物に酷似した生物が生きていた。

 

その中に偶然として有り得ない存在が生まれてしまった。言えば〈システム〉が無造作(ランダム)に湧出させる有り得ない〈優先度〉と〈天命〉を持った生き物だ。

 

〈整合騎士〉が飼い慣らした〈人界〉最強の霊獣である飛竜に勝るとも劣らない存在が生まれてしまったのだ。古龍を除けば存在していいものではない。それは余程の悪運か、それとも存在しない神が作り出した異物なのか。

 

なんのために〈システム〉が排出させたのかはわからない。唯1つ言えるのは〈不朽の壁〉を壊して〈人界〉にやってきてしまえば瞬時に〈人界〉は終わるということだった。

 

 

 

生まれるはずのなかった暴君とも呼べる存在は好き放題に土地を破壊していた。破壊と言えば誰もが眉を顰めるだろうが、彼自身は決してそのようなことをしているつもりはなかった。

 

ただ若さ故に、恐れを知らぬが故に生きたいように生きているだけだった。一日中野山を駆け回り邪魔をするものすべてを破壊した。

 

岩であろうと樹木であろうと生物であろうと。その頑丈な肉体と自慢の脚力、暴力的な怪力で捩じ伏せた。彼が駆け抜けた証拠は目を疑うほどの惨状であった。

 

多くの生き物は恐れた。

 

「彼には敵わない。逃げよう彼が来ないであろう遥か辺境の地へ。そうでもしなければ我々は生きていけない」

 

そう思わなければ生きてはいけない世界だった。

 

だがどれほど遠くへ逃げても彼はやってきた。夜な夜な雄叫びを上げながら駆け巡る様子は恐怖以外の何物でもなかった。

 

雄叫びが聞こえる範囲にいる生物は見境なく殺された。もちろん一方的にやられているわけもなく果敢に反撃するものもいたが、その力と存在感には敵わず儚くもその身を〈空間リソース〉に変えて消え去って行った。

 

もはやその戦闘は戦闘とは呼べずまさに殺戮という単語の一言に尽きた。

 

雄叫びが聞こえるのではないかと不安な夜を過ごしていた彼らは目に見えて衰弱していった。〈天命〉が最大値であろうと精神的疲労がたたればその意味はない。

 

 

 

だがその暴君にも敵わない存在がいたのは確かだった。目の前に現れた〈アンダーワールド〉始まって以来生き続けていた古龍だとは知らず挑んだ彼は、呆気なく敗北しその心に2度と癒えない傷を刻み込まれた。

 

その衝撃に彼は打ちひしがれた。生まれてから今まで一度も負けなかったことで1度の敗北は死と同じに感じられた。

 

「敗北とはこのことなのか。知らぬ、知らぬ!我はこのようなものは知らぬ!」

 

負けた自分が腹立たしかった。何故このような感情を覚えなければならないのか。何故自分が負けなければならないのか。

 

彼は初めて自分を鍛えることを覚悟した。自分を負かした存在を蹴散らさなければこの体の疼きは収まらない。心の傷は癒えない。

 

彼の者を倒す力を得るまで鍛えると誓った。

 

それから長い時を経て暴君はついに古龍に勝利した。古龍の血を浴びた彼は夜空に向かって雄叫びを放った。自分の力こそが最強なのだと証明してみせた。

 

...なのに、なのに何故この胸の痛みは収まらないのだろう。何故野望を成し遂げたというのに満足できないのだろう。彼は重傷を負った自分の体を引きずりながらその悩みを抱え歩き出した。

 

 

 

あれからどのくらいの時が経ったのだろう。何日、何ヶ月、何年?記憶さえ曖昧な状態、しかも自分の体は自分のものではない感覚。

 

『眠いな...。少しぐらいなら休んでもいいか...』

 

彼は自分と比べものにはならないほど巨大な岩に体を預け目を閉じた。

 

一時の休みだと願って。

 

...だが彼は2度と目を覚まさなかった。寿命で死んだのではなく〈天命〉の減少による死。そのことを自覚することはなく永遠の眠りに落ちる。1つの感情を抱いたまま。

 

300年の長い長い年月をかけて彼の体は変化した。ただ一振の長剣へと。

 

 

 

ある日、その岩にもたれかかるように佇んでいた剣を1人の美しき女性が手にした。その女性は宝を見つけたように歓喜に満ちた表情を浮かべ自分の住居へと持ち帰った。

 

新たなる(しもべ)へ与えようとしたがその剣は共鳴しなかった。幾人もの僕へ与えたが誰一人としてその剣の力を引き出すことはできなかった。興味をなくした女性はその剣を眠らせることにした。使用できる誰かが現れるまで2度と手にしないと。

 

それからまた数十年が過ぎた頃、2人の大罪人が女性の前にやってきた。1人は金髪の少女、もう1人は茶髪の少年。〈シンセサイズ〉してから少女はすぐに《器》を手にしたが少年はどの〈器〉ともそぐわなかった。何度試しても〈器〉はその少年を主として認めなかった。

 

主が〈器〉を選ぶのではなく〈器〉が主を選ぶのだとその女性は知っていた。だからこそこの少年がどれにも適合しないことに残念感より期待感を抱いていた。

 

〈もしかしたらこの子はあれ(・・)に認められるかもしれない〉

 

そんな期待を抱いていた。

 

いざ持たせてみるとその剣が鳴いたのだ。翼を得て大空を羽ばたくのではなく、〈力〉を得て竜へと昇華したように。

 

〈ああ、我が望んでいた感情はこれだったのだ。破壊と殺戮を繰り返してきた我が求めていたのはこれだった。背中を預けられる《信頼》という感情を〉

 

剣は眼を覚ました。いや、覚醒したと言うべきだろうか。本来あるべき場所にもどったかのような一体感を剣は感じた。

 

 

 

暴君として恐れられた彼は体色からこう呼ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翡翠鬼(ひすいき)》と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮眠を取ってから俺は地下の牢へと足を向けていた。深夜に移動した方が何かと疑われることは少ないという理由もあったが、主な理由としては監視が少ないから絶好の機会だということだった。

 

 

何はともあれまずはキリトたちと合流することが最優先だ。最悪な事態としてはキリトとユージオが〈整合騎士〉と衝突することである。今の2人が〈シンセサイズの儀〉により強化された〈整合騎士〉に勝てないとは言わないが簡単にはいかないだろう。

 

昼頃に呼び出されたエルドリエ・シンセシス・サーティツーならなんとかなるかな。だが俺やアリス以前の〈整合騎士〉には間違いなく勝てないだろう。今のままでは(・・・・・・)という注釈付きだが。

 

「どのように動けば全員を納得させることができるのでしょう」

「無理だろうな。アドミニストレータの陰謀を赤裸々に公にしなければ誰も納得しないさ。特にデュソルバートさんは頭お堅いから」

「小父様はどうでしょう」

「気まぐれだから予測不能。ファナティオさんもデュソルバートさんみたいにお堅いからこれも却下」

「…ほとんど不可能ではないのですか?」

 

背後から問いかけてくるアリス・シンセシス・サーティワンに苦笑しながら返答する。

 

仕方ないのさ。これが380年も続くアドミニストレータによる支配の病気なのだから治療はできても完治は不可能である以上根本的に解決するしか道はないのだ。

 

〈セントラル・カセドラル〉内にいるアドミニストレータを崇拝する存在を漂白する。

 

それが今の目的の一つだ。

 

会話をしているがそれなりには周囲を警戒している。今は〈セントラル・カセドラル〉から直接地下牢へと続く階段を下りているところだ。声はそれなりに反響するが完全防音の〈整合騎士〉の自室には届かない。

 

聞かれているとすれば〈セントラル・カセドラル〉全域を掌握するアドミニストレータと〈元老院〉ぐらいだ。

 

もしくは時たまに内部を徘徊する初老の〈整合騎士〉や手に余る双子に見える〈整合騎士見習い〉ぐらいかな。聞かれたところで事実を言っているだけだから文句を言われる筋合いはない。

 

まあ、面倒なことにしかならないので本人の前で口にすることはないが。

 

数分かけて螺旋階段を下り終えた先には黒々とした重々しい鉄の扉が待ち構えている。普通に生活していれば通ることのない場所にあるため眼にする機会など有り得ない。

 

だが俺とアリスはこれで「3度目」だ。

 

1度目はここに連行された8年前。2度目はキリトとユージオを連れてきた9時間前。3度目が救出へ向かう今だ。

 

〈セントラル・カセドラル〉側からは自由に入ることができるが地下牢からはそうもいかない。この扉は地下牢側から開ける際に〈セントラル・カセドラル〉側と同時に互いが反対にハンドルを回さなければ解錠されない設定になっている。

 

何故このように面倒な造りにしたのか疑問だ。そもそも罪人が来ることさえ類を見ない出来事であるのに脱獄しようと考える罪人がいるはずもないのだ。

 

…約1名しそうな人間はいるがそれは純粋な〈アンダーワールド人〉ではないから頭数に数えることは間違っている。

 

今回は特に両方から回す必要はないので2人揃って中へと入る。地下牢への入り口は2つあり1つは今通った扉と2人を連れて入った地上から繋がっている入り口。キリトたちが最初に向かうのは必ずそちらである。

 

こっちは入り組んだ迷路のような通路の先にありながら開かない扉なのだから。

 

「いてくれたらいいんだけどなぁ」

「カイトが心配するほどの腕白者なのですか?そのキリトとユージオというのは」

「ユージオはともかくキリトは禁止事項の抜け道を見つけ出すのが病的に上手い」

「…カイトに苦労をかけさせるとは助けた暁にはどう料理させてもらいましょうか」

「物騒なこと簡単に口に出さないで」

 

そんなことになればキリトの〈天命〉がいくらあっても足りない。ユージオが卒倒するかもしれないから気をつけないとな。

 

不安を飲み込み2人を投獄した部屋へと駆け足で向かう。いくら深夜で人通りがないとはいえもたもたしてバレてしまっては意味がないので少しばかり急ぐ。

 

角を曲がり叫んだ。

 

「やっぱりかぁぁ!」

「そこまで大声を出さなくてもいいのでは?鎖を引きちぎって脱獄したのであれば反逆行為をするという意思表示でもあります」

「なら早く合流しないとな。アリスは覚悟できてるか?」

「愚問ですね。貴方に出会ってから私の生きる道は決まっていますから。貴方が〈整合騎士〉として生きていくのであれば同じように。〈公理教会〉に反逆するのであれば私も。優柔不断と言われるかもしれませんが私の生きる理由は貴方なので」

「…毎回毎回済まないな。苦労ばっかかけて何も返せていないのに」

 

俺はまだアリスに恩返しを何一つできていない。アリスの明るさと心の強さのおかげで今まで生きて来れたのに恩返しをしていないなど笑えてくる。でもアリスは反対の意見のようだ。

 

「恩を返していないと思っているのは貴方だけです。私は貴方からたくさんの知識と考えそして愛をもらいました。それに比べたら私のこの思いなど秤にかける価値もありません。重要なのは結果より過程です。戦争で勝利しても味方の犠牲が多ければそれを勝利とは言いません。戦争で負けても犠牲を最小限に留めて惜敗になる方が評価されるように今の貴方に必要なのは過程を重要視することです。その貴方を護るのが私の役目なのであしからず。そうでもしなければもう1人のアリスに示しがつきませんから」

「お見それしました。では参りましょうか?姫」

「ええ、行きましょう私の殿方」

 

アリスの声に背中を押されるように俺は2人が通った階段を駆け上がった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

脱獄して〈公理教会〉に反逆する覚悟を決めたというのにあれほどの強さを見せつけられては揺らいでしまう。《武装完全支配術》とは一体何だ?鞭の形状が変化したことと何か意味があるのだろうか。俺にはその手の知識がない以上余計な推測はやめておくべきだろう。

 

的外れな予測にすがりそれでユージオに被害が出るのは俺の望むところではない。ならば自分の不安を消して目の前の敵に集中するべきだろう。〈整合騎士〉エルドリエ・シンセシス・サーティツーという強敵に。

 

「ふむ、《禁忌目録》に違反し投獄された身でありながら脱獄し、あまつさえ〈人界〉を守護する〈整合騎士〉に矛先を向けるとは。愚かと言うべきか能無しと言うべきか」

「悪いが討論している暇は無いんでな。無理にでも通させてもらうぜ」

「最高司祭様直々の命令をこの誉れある〈整合騎士〉のエルドリエ・シンセシス・サーティツーがここを通すと思うかい?」

「無理矢理にでも通してもらうぜ!」

「無理無茶無謀の三拍子が揃っているキリトでも簡単じゃないと思うけどな」

 

ユージオが仕掛けている間に攻撃しようと地面を蹴る瞬間、知った声が耳に届き踏み出すのを堪える。左奥に眼を向ければ深い群青色の俺が着ている制服と同じ服装の少年。そしてその傍らに寄り添う金色の髪に淡い草原色の上着、亜麻色のズボンを履いた女性が薔薇の茂みの奥に立っている。

 

「カイト…アリス?」

「アリス様?我が師よ一体どうされたというのですか?」

「剣を退けエルドリエ。お前にはキリトとユージオを傷つけさせない」

「な、何を仰いますか師よ!反逆者ですぞ彼等は!《禁忌目録》に抵触し〈公理教会〉に反逆した大罪人を庇うなどいくら〈整合騎士〉であっても許されませんぞ!」

〈公理教会〉だの最高司祭だの(・・・・・・・・・・・・・・)知ったことか。俺にとって大切な人を傷つける存在は決して許さねぇ!」

「師よ!」

 

カイトが翡翠色の剣を抜刀するとエルドリエが後退った。あれほど俺たちをコテンパンにした彼が怖じ気づくなんて予想だにしなかった。確かに今カイトから感じる圧力は生半可なもんじゃないのは俺にだってわかる。

 

でも何故エルドリエはそこまで怯えているのだろう。

 

「気は確かですか!?反逆するなど愚劣にも程がありますぞ!」

「正気だろうと狂気だろうとどっちだっていい。大切な誰かを失うぐらいなら全てを敵に回してでも護るそれが俺の決めた道だ。思い出せエルドリエ・ウールスブルーグ(・・・・・・・・・・・・・・)!」

「「なっ!」」

 

その名前を聞いて俺は思い出した。今年のノーランガルス北帝国第一代表剣士。そして四帝国統一大会の優勝者である《エルドリエ・ウールスブルーグ》だ。なのに何故彼はそこまで怯えているのだろうか。先とは違い頭を抱えて苦痛に耐えるようにしているのは何故か。

 

次の瞬間エルドリエの額から水晶のように三角柱の何かが迫り出してくる。

 

「思い出せお前が忘れさせられた記憶(・・・・・・・・)を!お前が失った記憶は母親だ!その名前はアルメラ!」

「ア…ルメ…ラ。かあ…さん…」

 

カイトが意味不明なことを言う間にも紫色をした三角柱の物体はもう少しでエルドリエから抜けそうだ。だがそれより前にカイトとエルドリエの間に矢が突き刺さっていた。それと同時にカイトがアリスを抱えて俺の方へと飛び去ってくる。

 

カイトが足をついて方向転換した場所を見れば同じような矢が何本も突き刺さっている。

 

恐るべき精密狙撃だと関心しながらもそれが来たであろう上空に眼を向ける。エルドリエが着ているのとよく似た銀色の鎧を纏った〈整合騎士〉が赤銅の弓をつがえて見下ろしていた。

 

「罪人よエルドリエ・シンセシス・サーティツーから離れろ!光輝ある〈整合騎士〉に堕落の誘いを試みた罪最早許せぬ!四肢を射貫いてから牢に叩き返してくれるわ!」

 

俺ではないんですけど!と言い返したいが罪人の言葉を大人しく〈整合騎士〉が聞き入れるはずもないし、何より今飛竜にまたがりホバリングしている〈整合騎士〉の意識はカイトとアリスに向いている。今口を挟んでも無視されるか矢で射貫かれるかのどちらかなので何も言わず上空を仰ぐ。

 

「カイト・シンセシス・サーティそしてアリス・シンセシス・サーティワン、何故(なにゆえ)罪人とともにいる!?返答によっては貴様らもこの矢の餌食にしてくれる!」

「答えるまでもないんじゃないか?デュソルバートさん。ここにいて罪人と横に並んでいる以上手を組んだと思ってくれていい」

「…墜ちるところまで墜ちたというわけか若人よ。ならば余計に許せぬ!栄誉ある〈整合騎士〉としてあるまじき行為であることを自覚せんとは最早愛想尽きた。故にここが貴様らの死に場所だ!」

 

嘘でしょ!?と言いたくなるがぐっと堪える。何故なら矢筒から同時に5本の矢を取り出して長弓にまとめてつがえる。これは避けるというより逃げるべきだとは思うがユージオを置いてはいけない。エルドリエの攻撃を喰らって背後の噴水に落水したままのユージオを放っておけない。

 

「2人とも今すぐ光素を唱えてください」

「今?」

「ええ、今すぐ即座に!」

「はい!」

「「「〈システムコール。ジェネレート・ルミナス・エレメント〉」」」

 

アリスに怒られながら俺は〈神聖術〉の式句を唱える。俺は片手の指に3つ、カイトは5つ、アリスに至っては両手の7つだ。ここで技量の差を見せつけられるが落ち込んでいる暇は無い。

 

「何をするかは予測不能だが笑止!貴様ら程度の〈神聖術〉で我が矢を防げるものか!」

「防御が目的ではありません。2人とも背後に光素を投げて最後の言葉を告げなさい。投げた瞬間に全力疾走します!」

「了解!キリト、ユージオの回収を頼むぞ」

「わかった」

「射ねぃ!」

「今!」

「「「〈バースト・エレメント〉!」」」

 

背後に投げられた合計15個の光素が破裂し背後から膨大な光の奔流が押し寄せる。

 

「ぬう!」

 

俺たちにとっては背後だったから視界を奪われずに済んだがおそらくデュソルバートと呼ばれた〈整合騎士〉は光を眼にしたはずだ。あれほどの光量を眼で捉えてしまえば恐るべき精密狙撃はできない。ならばこのまま何処かに逃げる時間を稼ぐのだ。

 

陽動と攻撃の二重の作戦を即座に考えつくなど俺には不可能だ。攻撃といっても目をくらます程度だが人間は情報の大部分を視覚から得ている以上、視界以外からの即座の情報収集は容易ではないはずだ。

 

「おのれ姑息な真似を!」

「うそん!」

 

ついに俺は堪えきれなくなったので叫んでしまった。何故なら矢筒から全ての矢を抜き出し俺たちに発射してきたからだ。数本で個々を撃ち抜くのではなく数多で範囲を広げて攻撃するという作戦を考えたらしい。こちらも侮れない頭の回転速度だと敵ながらあっぱれと思ってしまう。

 

全速力で足を回転させ噴水に浮かんでいたユージオを抱えてカイトとアリスの後を追う。右に左に幾度も曲がり来た道など忘れた頃、何度目かの分岐点を左に曲がったカイトを追い掛けるとそこは行き止まりだった。万事休すではないか!と内心叫びながら追い掛ける。

 

「行き止まりだぁ!」

「そのままついてこい!」

 

それでも走れと言うカイトの背中を追い掛ける。飛竜から一定の距離を保ててはいるが行き止まりに来ている時点で詰みなのだが!

 

「嘘だろ!?」

「いいから飛び込め!」

「ひぃ!」

 

カイトが何の躊躇もなく目の前の薔薇の生け垣に飛び込みアリスも迷わず飛び込んだ。走っている間に目を覚まして隣を並走しているユージオと眼を合わせる。ユージオの眼にも不安が映っていたが俺も似た感情を抱いているので文句は言えない。

 

「どうとでもなれ!」

「やけくそだぁ!」

 

ユージオとやぶれかぶれの気合いを発しながら生け垣へと飛び込んだ。薔薇の棘が刺さると思い身構えるが痛みはいつまで経ってもやってこない。

 

「ん?え…う、嘘だろぉぉぉ!」

「え?う、わぁぁぁ!」

 

眼を開けて見れば周囲には何もない。と確認したところで体が落下を開始した。

 

「うげ!いててててて、なんだよ今のは?」

「むぎゅっ!うううううう、腰が痛い」

「ようこそ我らがアジト《カーディナル(・・・・・・)》へ」

 

眼を開ければそこには大量の書籍に囲まれた〈大図書室〉と呼べそうな巨大な空間の真ん中にカイトとアリスが立っていた。




長かった...。登校中の1時間で3000文字弱。帰宅してからの5時間で5000文字はハードでした。久々に書くと疲労が溜まりますね。

また頑張って書いていきます。


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