アリシゼーション~アリスの恋人   作:ジーザス

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FGOの育成に時間を割いていたから遅れたわけではないぞ…。

正直言うとそれもありますが今回の話を書くことが非常に困難だったのも大きな理由の1つです。原作と自分の設定をごちゃ混ぜにして辻褄を合わせるのは至難の技ですね。




救援

〈カーディナル〉。

 

俺が知る範囲でその名称には3つの意味がある。

 

1つ目は、〈現実世界〉のカトリック教会組織における高位の役職。日本では枢機卿と呼ばれる。2つ目は、アトリ科の鳥の名前。日本語では猩猩紅冠鳥(しょうじょうこうかんちょう)、全身に枢機卿が着る法衣と同じ緋色の羽毛が生えていることから名付けられた。3つ目は、茅場晶彦によって開発されたVRMMOゲーム運営用の高機能自律プログラム《カーディナル・システム》。

 

それなのにカイトは、ここのことを〈カーディナル〉と言った。そしてアジト(・・・)とも。〈整合騎士〉が助ける必要は無いはずだ。そもそも俺たちは反逆者なのだから、手助けすることは〈整合騎士〉としてマズい行為だ。なのにカイトとアリスは罪悪感など微塵も見せず、俺たちを助けてくれた。もしかしたらそこに理由があるのかもしれない。

 

「ほら、こんなところで立ち止まらずに歩きなさい。このバックドアは廃棄だから」

「え?ああ、はい」

 

ほのかに緋色の混ざった白色のワンピースを着た妙齢の女性(・・・・・)が、俺とユージオの後ろに立っていることに今気付いた。てかそもそもいたのか?存在感をまったく感じなかったんだが。いや、でもここにいてカイトがまったく警戒していないということは、味方であると考えて良いはずだ。なら言うことを聞いて利益になるよう動くことが、今の俺にとって最善の策だと思う。

 

「えっと、助けてくれてありがとう。取り敢えず〈カーディナル〉ってのとここについて教えてもらいたいんだけど」

「それを含めて話したいことがあるからついてきてくれるかしら?」

「わかりました」

 

〈大図書室〉と呼べるような空間でテーブルを囲んで座る。周囲を見渡せば、膨大な量の本が棚に押し込まれているのが見えた。種類によっては、俺の前腕と同じぐらいの分厚さを持ったものまである。手に取って読む気にもなれない分厚さなので視線を3人に戻した。

 

「クシュン!」

 

突如ユージオがくしゃみをする。無理もないかな。びしょ濡れのままここまで逃げてきたから乾燥させる暇も無かったし。

 

「貴方は先に体を温めた方がいいでしょうね。あの先に風呂場があるから好きなだけ入っていなさい。それから貴方が興味ありそうな本が近くにあるから読んでも構わないわ」

「それではお言葉に甘えて失礼します」

 

走り去るユージオを見送り残された俺は、その女性を少し警戒しながら見る。女性が羨むプロポーションではあるが、俺は何故かその女性から言い知れぬ圧迫感を感じていた。デュソールバートと呼ばれたあの弓使いとは違った圧迫感を。まるでこの世ならざる何かである(・・・・・・・・・・・・)ように。

 

「何から聞きたい?」

「ここのことについて。そして〈カーディナル〉という意味合いについてかな」

「いいわ。ここはあなたの推測通り〈大図書室〉と呼ばれる場所。〈セントラル・カセドラル〉の内部にありながら、そうでもない場所にある空間。〈現実世界〉の言葉を使えば、《亜空間》と言えるかしら」

「《亜空間》ね。存在していながら存在していないと認識される場所とは予想外だな」

 

どうやら俺が生粋の〈アンダーワールド人〉ではないことは承知の上らしい。その方が話は進むし話しやすいから問題ない。

 

「〈カーディナル〉ってのはどういう意味なんだ?」

「まず〈カーディナル〉とはどんな存在かは知ってる?」

「〈人間によるメンテナンスを必要とせず、長期間に渡って稼働できるプログラム〉… だったはずだ」

「そう。〈カーディナル・システム〉はメインとサブプロセスの2つによって運営されているわ。メインプロセスがバランス制御を行っている間に、サブプロセスがメインのエラーチェックを行うの。〈カーディナル〉のサブが私でメインがクィネラ。またの名を最高司祭アドミニストレータ」

 

名前を聞いて俺は驚愕とともに納得感も感じていた。〈administ〉とは英語で支配を意味する。支配者・執政者・管理者ということで〈アドミニストレータ〉と称したのも理解出来る。だが何故そのことを俺だけではなく、カイトやアリスを同席させて話すのだろう。ユージオを追い出した理由もわからなければ、2人がこのことを理解できるはずもないのに。

 

「ラスボスのことはわかったけどさ。どうしてユージオを除け者にしたんだ?カイトとアリスはここにいるのに」

「ユージオには聞かせたくなかったからカイトのことを」

「何故?」

「カイトは貴方と同じように外の世界(・・・・)からやってきた人だから」

 

...何を言っているんだ?カイトが〈アンダーワールド人〉ではなく俺と同じ〈現実世界〉からやってきた人間だと?では一体誰なのだ?まさかRATHのオペレーターかエンジニア?はたまた関係者なのか?そうであったならば外部と連絡を繋いでもらい、アスナに無事を報告できる。そしてこの世界のことを菊岡や比嘉さんにも聞くことが出来る。

 

「俺と同じ〈現実世界〉の人間だったのか」

「これはあらぬ誤解を与えてしまったかしら。本当のことを言えば、カイトはその外の世界から来ているの」

「...は?」

 

意味が全くわからない。〈現実世界〉の外の世界から?どうやって来たというのだ。

 

「理解できないよなキリト。悪いけどこれは事実なんだ。どうか受け入れて欲しい」

「信じたい…信じたいさ。でも証拠がない...」

「キリトは小さい頃に事故に遭って桐ヶ谷家に引き取られた。妹の直葉とはあまり上手くいかなかったが、〈ソードアート・オンライン〉に囚われ帰還してからは距離が近くなった。それから〈アルブヘイム・オンライン〉にダイブして、オベイロンなる須郷信之の陰謀を暴き、恋人であるアスナを救出。〈ガンゲイル・オンライン〉では死銃またの名を〈デス・ガン〉をシノンと共謀して撃破。〈アルブヘイム・オンライン〉で《絶剣》の2つ名を持つ紺野木綿季ことユウキと出会って、《メディキュボイド》について知った。〈アルブヘイム・オンライン〉でスリュムを〈SAO〉時代の仲間と協力して倒し、エクスキャリバーをゲット。大まかな事柄だけどこれで信用してもらえるか?」

 

俺がこれまで向き合ってきた事象を、何一つ間違えることも無く話すカイトに驚いた。実際に体験してきた俺だから否定はできない。何故見ても一緒にいた訳でもないカイトが知っているのだろう。〈現実世界〉の外側とは一体どういうことなのだろう。

 

「〈現実世界〉の外側ってどういう意味なんだ?」

「〈アンダーワールド〉がキリトの世界によって造られたのは知っているだろ?」

「まあな。そのおかげで俺はここにいるわけなんだから」

「つまりキリトがいる〈現実世界〉は俺がいた世界に作られた(・・・・)世界なんだ」

「...お、俺の世界がカイトの世界に作られた世界だって?そんなわけないだろ...だって俺は現にこうして生きてる。〈現実世界〉で息をして食事をして過ごしていた。それが偽物だって言うのか?」

「偽物なんかじゃないさ。キリトはちゃんと〈現実世界〉で生きていた。だがそれは俺にとって、俺たち(・・・)にとっては作られた世界なんだ。でも俺はこうして〈アンダーワールド〉で生きているから蔑むようなことはできないさ」

 

ようするに〈アンダーワールド〉は、俺の世界によって造られた(・・・・)世界。その実は俺にとっての〈現実世界〉はカイトがいた世界によって作られた(・・・・)世界ということ。ややこしい世界だがカイトの言葉に嘘は見られない。信じるしかないのだ。俺は作られた人間なのだと。でもカイトは作られた人間とは言わなかった。自分と同じ人間だと言ってくれた。

 

「でもなんでそんなファンタジックなことが起きているんだ?作られた世界によって造られた世界に生きているって、普通なら有り得ないだろ?」

「そりゃな。なんせ俺は〈転生者〉だから」

「は?」

 

また俺は間の抜けた返事をしてしまった。〈転生〉と言えば小説や漫画でありがちな設定で、その人にとっての〈現実世界〉から別世界または異世界へ新しい生命として生きることを示す。俺でも知ってる有名どころで言えば、「転生したらス⚪イムだった件」とかだな。もともとは某無料小説投稿サイトに掲載されていたweb小説だったが、内容がシリアルでありながらコミカルでもあったので圧倒的人気を博していた。

 

だが〈転生〉するというのは、2つのうちどちらかの条件を満たす必要がある。

 

1.事故かなんらかの原因による死。

2.偶然的か突発的な強制転移。

 

つまりカイトはなんらかの理由で死亡し、〈アンダーワールド〉に〈転生〉してきた。または空間のゆがみやひずみによって〈転生〉した。どっちであるかはカイトに悪いから聞かないほうがいいだろう。聞いても俺には理解できないだろうから。全く知らない世界に。知人が誰一人としていない世界に来てしまった辛さを知ることはできないから。

 

でも理解度がゼロってわけじゃない。俺だって目が覚めたら〈ルーリッド村〉の近くの森に倒れていたのだから。〈仮想世界〉だと認識するまで時間はかかったが、〈仮想世界〉に慣れていたこともあってしばらくすれば順応することができた。だがカイトはどうなのだろうか。〈仮想世界〉についてVRMMOについてどのくらいの知識があるのだろうか。時代によってはそういうものがあるとさえ情報が回っていないだろう。

 

話を戻そう。〈転生〉するには神様か女神様が必要で〈特典〉という特殊能力に似たものを3つほど貰えるらしい。カイトが貰ったのは何なのだろう。力か?知識か?はたまたそれを含めてもうひとつの何かなのか?

 

「小説とか漫画によくあるやつだな。カイトがその〈転生者〉なら隣の女性は〈転生〉させた女神様ってとこか」

「理解が早くて助かるわ。今はこの世界を見守る裏の管理者だけど」

「じゃあアリスもカイトと同じなのか?」

「いいえ、私はこの世界に生まれたアリス・ツーベルクです。(・・)の私はアリス・シンセシス・サーティワンですが」

()は?」

「そのことについては私から説明するわ。〈転生〉する際に、特典と呼ばれる異能あるいは特殊能力を手にすることができるの。私がカイトを〈転生〉させた暁に3つほど与えたわ」

「それは?」

「《自我保存》と《偽造》だよ」

「もう1つは?」

「秘密だ。それを使う機会は近いと思う。その時になったら眼にするかもしれない」

 

おいそれとは教えてくれないか。カイトが教えたくないのであれば無理に聞き出すことはしない。それよりその特典について説明してもらおうと思う。それがカイトの強さの秘密かもしれないから。

 

「2つの説明をお願いしてもいいか?」

「まずは《自我保存》からね。これはカイトを〈転生〉させるためにもっとも必要な特典であることを前置きしておくわ。これがなければ、万が一の時に〈転生〉させた意味がなくなるから」

「意味がなくなる?」

「ええ。アドミニストレータは、人の記憶を抜き去り偽りの記憶を埋め込み自分の駒にしいるの」

「カイトがそうならないように〈自我保存〉という特典を与えたんだな」

「ええ。奪われてしまえば、私にはどうすることもできないもの」

 

恐ろしいな。技量はともかくそんなことをして許されるはずがない。どんな理由があれ人の記憶に触れて良いのは、本人の許可を得た時だけだ。それ以外に遠回しにでも聞くことさえ許されない。

 

「〈自我保存〉のことは後ほどまた話すわ。次に貴方にとって、最大の敵となる最高司祭について。〈人界〉を統治する〈公理教会〉の最高権力者であるアドミニストレータは、その名前に恥じない〈オブジェクトコントロール権限〉と〈システムアクセス権限〉を持っている。〈システムコール。インスペクト・エンタイア・コマンド・リスト〉」

 

俺の予想通り女神様であった女性が、聞いたこともない式句を唱える。〈ステイシアの窓〉とは違った窓が手元に現れた。でも紫色で矩形なのは変わらない。しかし同時に俺は、それがこの世界でもっとも危険なものであることを直感的に察した。

 

「ここに記されているのは、この世界で使用可能なシステムコマンド。〈システムアクセス権限〉が高水準であれば、記されている文字を読み上げるだけで誰もが自由に使用できるようになっているわ」

「つまりアドミニストレータは、それをすでに見つけていたと?」

「その通り。幼き頃に驚くべき洞察力と思考力によって、それぞれの単語の意味を理解した。齢80を越え、日に日に減少していく自分の〈天命〉を眺めるしかできなくなったクィネラは、遂に〈この窓〉を開けてしまった。内部からワールドバランスを操作する必要が生じた時のために設置されていたこれを。〈カーディナル・システム〉の全権限を奪い、真の神となるためのコマンドをリストの末尾に記されているのを見つけてしまった」

 

死ぬ間際に見つけた最後の〈希望〉の味は、一体どれほどのものなのだろう。アドミニストレータを敵として見ている存在からすれば〈絶望〉の光ではあるが、もし自分が同じ立場であれば仕方がないと納得できる気がする。自分が生きたいと願ってもどうしようもなく迫ってくる魔の手。それから逃げるためにあらゆる手を以て足掻く。偶然的に見つけたあらゆる権限を自分のものにするコマンドを眼にすれば、どれほど善人であってもすがりつきたくなるだろう。

 

それを自分のものにできれば恐れるものなどないのだから。だがそれは同時に人間を捨てることに他ならない。人間に与えられていた権限を超えて、何不自由もなく扱えるようになるのだから当然のことだ。

 

「なんでそんなものが記されたリストが残っているんだよ」

「かつてこの世界に降り立った4人のオペレーターが残した最大最悪のミス。〈アンダーワールド〉から去る前に削除しておくべきだったのにしなかった。いえ、本当はそれを任されたオペレーターの1人が意図的に残したの」

「そんなことをするメリットってあるのか?」

「あるわ。何故ならその人物は敵と内通しているから」

「な、んだと!?」

 

それはつまりRATHの中にスパイが潜んでいるということ。下手をすれば極秘情報をすべて奪われる危険性があるのだ。放っておくわけにはいかない。

 

「あんたの力でどうにかできないのか?」

「残念だけどそれは不可能なの。神はあらゆる世界に干渉することは許されない。如何なる理由があろうと手を出してはならない」

「...それって矛盾してないか?現に貴女はこうして降り立っているのだから」

「そこも説明しなければならないわ。私〈転生神〉だけでなくすべての神は天照大御神、貴方達の世界が最高神と崇める最上位の存在によって束ねられています」

 

なんとなくこの女性の存在する意味が理解できた。だが理解と納得はまったくの別物だ。

 

「今回、私が特別に干渉の許可を得たのはこの世界があまりに酷すぎたから。私もこの世界の事情を知って放っておけなかった。たった1人の人間によって、すべての人間が生き方を決められるというのはあまりにも世の摂理から逸脱しすぎていると思ったの。物語に特別干渉しなければ、援助をしてもいいと許可を得ているわ。何かあれば手を貸すから安心してね」

「有効活用させていただきます。話を戻してっと。アドミニストレータのことだけど」

「そのコマンドで自分の権限レベルを最上位に引き上げ、世界をコントロールする〈カーディナル・システム〉への直接的干渉を可能としてわ。カーディナルが持つすべての権限を己に付随させ何もかもを思い通りにできるようにしていった。〈天命操作権限〉を得たクィネラは、齢80を越えていつ消失してもおかしくなかった肉体の回復を行った。つまり〈天命〉の全回復ね。あの輝くばかりの美貌を持つ10代の若々しい頃にまで。次に行ったのが〈自然減少〉の停止」

 

〈天命〉が生きている間、減らなくなるというのはいつまでも生きられるということなのだろうか。〈自然減少〉は年齢によって加算されていく。歳を取ればとるほど減少は進む。それが起こらないということは、永遠の命を手に入れたのと同意義なのでは?

 

「〈自然減少〉が起こらない=不死ではないぞキリト。いくらアドミニストレータでも、ダメージを受ければ〈天命〉は減るんだからさ」

「おうともよ。ある程度の意味はわかったけど、貴女が〈カーディナル・システム〉の〈サブプロセス〉というのがまだ理解できないかな。そもそもなんでもともとは1つだったシステムが、わざわざ2つに別れて敵対しているのかがわからない」

 

〈カーディナル・システム〉は、2つ揃って初めてシステムとしての基礎を持つ。それぞれが別で稼働すれば、いずれ何処かでエラーが発生するはずだ。なのにまったくその様子は見られない。〈サブプロセス〉の彼女が神であるという理由も無きにしも非ずだろうが。

 

「人の記憶というのは150年までなら保管が可能と言われていて、〈人工フラクトライト〉も同じ容量よ。アドミニストレータがクィネラとして生まれ落ちてから150年が過ぎ去れば、記憶が限界を迎えるのは道理。それにより彼女は意識を失うことが多くなりやがて気付いた。〈このままでは自分の望む世界は保てない〉と。悪魔的な考えに至ったアドミニストレータはある日、〈公理教会〉の修道女見習いとして育っていた少女を呼び出した。システムのランダムパラメータというより、もともとあったことで他人より遥かに高いシステムアクセス権限を持つ自身と瓜二つの容姿をした女子を」

「...それがあんたなのか」

「ええ。呼び出された私はアドミニストレータの〈フラクトライト〉の思考領域と重要な記憶を上書き複写された。まあ、されたところで私に意味はありませんが」

 

そりゃそうでしょうとも。科学文明と縁のない〈アンダーワールド人〉であるアドミニストレータが、本当の神である〈カーディナル〉さんに勝てるはずもない。

 

神業で無効にできるだろうしな。

 

「私という存在は神であり、〈カーディナル〉のサブプロセスでもあるややこしいもの。神とサブプロセスという存在として覚醒した私は、目の前のクィネラから逃走することを決心した」

「神であるというあんたならその時に倒せたんじゃないのか?」

 

俺の質問に首を振ることで否を唱える女神様の表情は暗い。神であることさえ忘れて、俺は人間らしい様子に見つめてしまう。

 

「残念ながらそれは叶わなかった。私は神であるため先に述べた通り干渉することは禁じられているから。しかし抜け道はあるわ。私の今の立場は、本来〈カーディナル〉のサブプロセスがいるはずだった。〈本来の物語〉から逸脱しなければ、いるはずだった人の立場で干渉することが可能よ」

「...つまり本来いるはずだったサブプロセスは、俺を味方として受け入れるつもりだったということか?」

「この世界の知識について何もかもを伝える予定だったのでしょうね。キリト、貴方が望むのであれば、私は〈物語〉を逸脱しない限り手を貸そうと思っているわ。お願いできるかしら?」

 

...正直言うと、とてつもなくありがたいことだろう。俺とユージオだけでは決して成し遂げることのできない目標を抱えているから。外部とコンタクトするためのコンソールがあると思われる〈セントラル・カセドラル〉の部屋。アリスと再会するというユージオの目標。ユージオに至っては完遂しかけているのが現状だ。〈アリス〉という存在に出会えている以上、きっかけさえあれば会話をすることができるからだ。

 

問題は俺だ。1ヵ月前に召喚されたばかりと言ったエルドリエ・シンセシス・サーティーツーでさえ手強かった。味方は多ければ多いほど良い。愛剣を使えなかったのも苦戦した理由だが、愛剣があったとしても簡単には勝てなかった。

 

それは断言できるほどだ。

 

《記憶解放》という奥義を使われては勝てない。使われなければ勝てる相手もいるだろうが、それほど簡単に勝てるとも思っていない。彼よりも強い存在はきっとまだまだいる。

 

彼らに勝つためには力が必要だ。だから...。

 

「力を貸してください。そして貴女にこの世界を護ってもらいたい。だからお願いします」

「頭を下げることではないわ。お願いしているのはこっちだもの。それじゃあこれからのことについて話し合いましょうか」

「ありがとうございます」

 

待っていろよアドミニストレータ。俺はこの世界を守るためにそして外部と連絡を取るために貴女と戦う。




次話もカイトとアンダーワールド、女神様のことを話してから〈セントラル・カセドラル〉に突入しようかなと思います。これまた遅くなると思いますが宜しくお願いします。





特典

①自我保存
②偽造
③?

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