アリシゼーション~アリスの恋人   作:ジーザス

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勉強の息抜きに書いたのでなんとか投稿。

勉強より書くことがメインになってるって?気にしたら負けですよ〜


奪取

カツンコツン、廊下というより回廊という表現が正しい空間に4人分の足音が響く。どこまでも白く床の真ん中だけに敷かれた赤色の絨毯。左右に灯る蝋燭の火が白亜の壁に反射して、幻想的な風景を生み出していた。

 

「隠れながら行かなくてもいいのか?」

 

物陰に隠れようともせず堂々と歩くカイトとアリスに、キリトが不安そうに問いかける。

 

「今はというより本来ここら辺りを徘徊する輩は、一部を除いていないから安心していいよ。その一部に見つかったら速攻戦闘開始だけどね」

「強いのか?」

「「死ぬほど」」

 

ハモリながら答えたカイトとアリスの真面目な表情に、さすがのキリトも厳しい顔を浮かべる。アリスはともかく、自分より上の技術を持つカイトが言うのだから間違いはない。〈整合騎士〉なのだからアリスの腕もその程度で済むような代物ではないとわかる。カイトと同等かそれ以上の腕前であり侮れない存在だとも。

 

長い回廊を歩き続け左に曲がると階段が見えた。少しだけ周囲を警戒しながら登りきると、有翼獣の彫像に囲まれた両開きの大扉が眼に入る。カイトとアリスが押し開けるのをユージオと2人で見ていると、音を立てず滑らかな動きで扉が少しだけ開く。

 

手招きで自分たちを呼び寄せるので、足音を立てないようにしながらも急ぎ足で、開けられた扉の隙間に身体を滑り込ませる。ユージオが入ったところで扉を閉めると、内部は真っ暗だった。

 

「〈システムコール。ジェネレート・ルミナス・エレメント〉」

 

灯りが欲しいなと式句を唱えようとしたところ、滑らかに艶やかな声音が遮った。前を見ると何かが入っている籠を床に置いて、上を向いている右の5本の指に純白の光が生まれる。

 

5つの光素が浮かび上がり、深淵のような闇を押し退けてその場を明るく照らし出す。

 

「うお...」

「壮観だねこれは…」

 

思っていた以上に広い収納室は、奥行きを予測したくもないほどだ。ウォロ元首席と立ち合いをした大修練場ほどの規模がありそうで、無駄に広いというのが初見の感想だった。防具や武器が所狭しと並べられながらも、きちんと整理されている総数はおそらく500は下らまいだろう。

 

「これは武具庫というより『宝物庫』だな。カイトもそう思うのか?」

「これだけ色とりどりの甲冑やら剣があればそう思うだろうさ。それよりもお前らのはっと。あったあった、ほれ」

「あざっす」

「ありがとう」

 

カイトが投げずに直接渡して2人が受け取る。キリトは鞘に収納されたままの愛剣を掴んだ。離されていたことへの不満と悲しみなのか、容赦なく手首にその重量を与えてくる。だがそれは不快ではなく、懐かしさと安堵感が同時に流れ込んできた。腰帯に吊るしたところでもう一度宝物庫ではなく武具庫へ視線をむける。

 

しかし見れば見るほど見事な光景で、光素の光によって磨かれて艶のある表面が自身の色を浮かび上がらせる。疑問に思うのは何故これほどまでに収集されているのかということだ。ここまでして武具をかき集める意味がわからないのだが、どちらにせよ何かしらの意味があるのだろう。

 

「これだけ武具があれば軍隊を作れそうなんだけどな」

「最高司祭は作らせないためにここにかき集めている」

「どういうことだ?」

「教会の権威をもっとも信用していないのは、最高司祭本人ってことさ。ほら、いつまでもそんなぼろ切れ着てないでこれに着替えろ」

 

カイトが渡してきた服を受け取り、その肌触りに眼を見開く。滑らかな上にしっかりとした生地で重さを感じさせないため、着ていないのではないかと錯覚してしまうほどだ。着替え終え顔をカイトの方に向けると、ユージオは少し顔を赤くさせキリトは露骨に嫌そうに顔を顰めた。

 

「おう、着替え終わったか?」

「「恥ずかしいもの見せ(んな)ないで」」

「偶にはいいじゃないか」

「時と場合を考えようぜ…うっし行くか」

 

カイトの左腕にしがみついていたアリスには文句を言わずに、足を大扉に向けて歩き出したキリトだったがその足はすぐに止まる。取っ手を掴んだ瞬間に襟首を引っ張られてしまったのだ。

 

「クエッ!?」

「ん?鳥の首根っこでも掴んだかな」

「「雑いですね(よ)」」

 

鳥が鳴くのをミスったような声を出したキリトだったが、文句を口にはしなかった。何故なら…どかかかっ!と鋼矢が大扉の表面に何本も突き刺さっていたからだ。着弾の威力で大扉は押し開かれ、4人は格好の的になってしまっている。

 

大階段の踊り場には、見覚えのある赤銅色の鎧を着た騎士が立っている。身の丈もある巨大な長弓に、新たな矢をつがえようとしていた。同時に4本ということは、全員に狙いを定めているということだ。彼我の距離は30mといったところだろうか。剣は決して届かないが、弓の達人であればおそらく必中距離だろう。鏃の傾き具合からして、全員の脚のどちらかを射貫こうとしているのだと推測できる。このままの体勢でいれば捕獲され記憶を抜かれてしまう。

 

「全員前方に全力疾走!」

 

カイトの指示を聞いて理解するよりも早く、3人の体は動き出していた。カイトの指示が正しいと理解して動き出したのもあったが、体が立ち止まっていては危険だと本能的に察していたからだ。

 

「〈ディスチャージ〉!」

 

途端3人の背後から式句が紡がれる。早口過ぎて最初の部分さえ聞き取れなかったが、黒い何かが長弓に矢をつがえた騎士の顔にまとわりついていく。兜で視界を塞がれさらに黒い靄によって視界を奪われては、如何に達人といえども精密射撃はできない。

 

そう4人は思っていた。

 

「笑止!」

 

顔の周りに漂う黒い靄を払うのをやめたかと思えば、慣れた手つきで矢筒から残り全ての矢を取り出しつがえた。ぎりぎりぎりっと嫌な音が目指す前方から聞こえてくる。30本を超える矢に弦が耐えきれるとは思えなかったが、今後ろに跳んでも避けることはままならないだろう。上手くいけばかすり傷か数本刺さる程度で済むだろうが、最悪の場合全身を穿れて〈天命〉を全損されてしまいかねない。

 

どうする。今このタイミングで熱素を全員で放ったとしても、数本は確実にこちらに届くだろう。だが爆風によって軌道が変わった矢が、どのように落下してくるのかを予測している間に突き刺さるのは目に見えている。

 

どうする。

 

「カイト、私が迎撃しますのでそのタイミングで突っ込んでください」

「可能なのか?」

「数と強度では負けません」

「...頼んだ」

「はい!」

 

アリスが溜めるまでにどうにか時間を稼がねばならない。それほど時間がかかる訳でもないが、5秒弱は余裕を持って見ておいた方がいい。だが眼前の騎士が反逆者である4人に時間を与えるとは思えない。

 

どうすればいい。

 

「「「〈システムコール。ジェネレート・サーマル・エレメント。フォーム・エレメント、アロー・シェイプ・フライ・ストレート。ディスチャージ〉!」」」

 

まったく同じ術式を3人が唱え13の矢が騎士へと飛翔する。

 

「〈システムコール。ジェネレート・エアリアル・エレメント。テイルウインド・ディスチャージ〉!」

 

継いで背後から風を発生させ飛翔力を上げ、避けさせる隙を与えないようにした。しかしさすがは最古参の〈整合騎士〉。手を使わずにアクロバティックな動きで全てを避けた。どうやればあれだけの重量の鎧を身につけていながら、華麗な後方宙返りができるのだろうか。

 

「射ねぃ!」

「《(めぐ)れ、花たち》!」

 

どうにか間に合ったらしくアリスが、〈武装完全支配術〉を唱えあげた。アリスの神器《金木犀の剣》の刀身が分裂を起こし、小刀へと姿を変えていく。数多の小刀が宙にふわふわと漂っている様子は、言葉通りに花のように見えた。弦から放たれた30本を超える矢に向かって、花たちが渦を巻きながら迫る。全速力でアリスの背後に移動した俺たちは、渦が竜巻へと変化していく様子に目を奪われた。

 

全ての矢を跳ね返し、あるいはへし折って進撃する竜巻の威力は凄まじい。顔を腕で覆わなければ、眼を開けていられないほどの風圧が襲ってくる。ここが密閉空間であることも威力を上げる要因でもあるが、それを抜きにしてもその威力は侮れない恐れるに値するものだ。

 

「...恐ろしいね」

「アリスの神器は永劫不朽の名剣。この世界に一番最初に設置された破壊不能オブジェクトだ」

「...道理で」

 

竜巻が収まると小刀はアリスが握る柄へと舞い戻る。ジャキンっという音と共に、元の姿に戻った〈金木犀の剣〉を右大腿の少し上へと移動させ構えるアリス。〈翡翠鬼〉を逆手に右脚を前に出した半身で構えるカイト。その2人の様子にキリトとユージオは疑問を抱いた。矢筒には矢もなければ、弓の弦が切れている相手に何が出来るのかと思っているはずだ。

 

だが2人は知らなかった。未だ騎士が〈武装完全支配術〉を使っていなかったことに。

 

「ねえカイト...「〈システムコール〉」え?」

「まさか...〈神聖術〉じゃない。これは...」

 

〈大図書室〉で勉強させられたおかげか。かなりの高速詠唱をなんとか聞き分けられるほどには理解できた。主語・動詞・形容詞。それは〈神聖術〉を生成するのとは変わらない。だが聞こえてくる単語の中には威力・強度・温度といった普段詠唱しないものが聞こえてくる。

 

「〈エンハンス・アーマメント〉!」

「〈武装完全支配術〉だ!」

 

ぼっという音が聞こえたかと思うと、切れて垂れ下がっていた2本の弦の先端に橙色の炎が生まれた。炎はあっという間に弦を燃やし尽くし弓全体に広がっていく。長弓の先端に達した瞬間、真紅の火焔が巻き上がった。肌を熱するより炙るといった表現が正しい熱を、20m離れたところからでも感じる。それを手に持ち全身に浴びている騎士は、どのように感じているのだろう。

 

「凄いなぁ。あの炎は何が元になってるんだろう」

「感心してる場合じゃないよ」

「感心すんな」

「感心している暇があれば策を考えてください」

 

…キリトは興味本位で呟いた自分に萎えた。口は災いの元と言うが、まさにこれがお手本であり教本に記しておくべきである。

 

「...こうして《熾焔弓》の炎を浴びるのは久方振りだ。なるほどエルドリエ・シンセシス・サーティーツーと渡り合えるだけの技はあるようだな。評価を詫びよう咎人どもよ」

「生憎、2人は咎人じゃないんだ。あんたには理解できないことだろうけどねデュソルバートさん」

「どのような罪を犯したか我は知らぬ。だが〈整合騎士〉に連行されたというのであれば、罪を犯したのと同意!」

 

ぐうの音も出ないかな。罪を犯したのは事実だし、言い返すことは出来ない。けどもしかしたらあ貴方もなんらかの罪を犯しているかもしれないんだよ。デュソルバートさんが何故〈整合騎士〉として此処にいるのか知らない。

 

此処にいるということは、つまり何らかの罪を犯した可能性が半分あるってことだ。デュソルバートさん、俺は貴方が罪を犯したのかなんてどうでもいい。〈公理協会〉と最高司祭が善で、罪を犯す民が悪という考えに縛られているのなら俺はそれを解く。

 

「ルールが全て」という呪縛に縛られているなら俺が解放しよう。貴方に罪があるならば俺が貴方の罪も背負おう。

 

「キリト、行けるか?」

「ああ。どんな性能なのかわかるか?」

 

デュソルバートさんが燃える弦に指先を添えて腕を引く。それだけで炎でできた矢が生成される。

 

「〈記憶解放〉はおろか〈武装完全支配術〉を見せてもらえたことは一度もない。最終奥義なんだから手の内を見せるわけにはいかないからな」

「弦切れも弾切れもなしか。無理ゲーだわこれ。...連射は不可能と信じていいかな?」

 

限界まで張り詰めた炎の弦が鳴く。それは解放されたが故の歓喜か反逆者が目の前にいるが故の怒りか。

 

「そうであると俺も願うよ。俺とキリトで矢を防ぐから、ユージオは俺たちの後ろを少しだけ間隔をあけて着いてきてほしい。アリスは俺たちの回復か援護を頼む」

「わかったよ」

「わかりました」

 

全員が頷いたところで、照準しているデュソルバートさんと視線が交わる。もはや同志としての想いはなく、咎人としての存在としか見ていない眼光が兜の奥にある。だがほんの一瞬だけ哀れみを含んだ光が垣間見えた気がした。

 

「行くぞ!」

「おおおぉぉぉぉ!」

「はああぁぁぁぁ!」

 

左右に駆けながら接近する。俺とキリトはジグザグに動くがユージオはただ真っ直ぐに突っ込んでいく。だがそれこそ俺が望んでいた動きだ。

 

「笑止!」

 

矢が放たれかなりの速度で接近してくる。剣で打ち落とそうした瞬間に矢が翼をはためかせ、嘴を突き出した猛禽のような姿に変貌した。

 

「せああぁぁぁぁ!」

 

臆することなく〈翡翠鬼〉で撃ち落とす。火焔と刀身が衝突した瞬間、炎が飛び散り制服と肌を妬く。熱さと痛みに顔を顰めるがここで止まる訳には行かない。俺が弾いた頃には、次の矢を構えたデュソルバートさんがそこにはいた。連射ではなく速射であったことに安堵するが、俺の身が危険なことに変わりはない。

 

スイッチ(・・・・)!」

「っ!ぜああぁぁぁぁ!ぐっ!」

 

矢が放たれた瞬間にキリトと入れ替わり、着地と同時にキリトが矢を弾く。

 

「スイッチ!」

「せいあぁぁぁ!ぐう!」

 

炎に妬かれたキリトが着地した瞬間に俺が跳び上がり剣で弾く。

 

「スイッチ!」

「はあああぁぁぁ!ぐあ!」

 

幾度も攻撃を受けながら俺とキリトは矢を防ぐ。ユージオが行く道を切り開くために自らの身を犠牲にして。

 

「「止まるなユージオぉぉぉぉ!」」

「っ!いやあぁぁぁぁぁ!」

 

僕は2人が炎に妬かれた身を床に横たえている姿に立ち止まりそうになった。けど2人の声が背中を押して僕に行けと言ってる。ここで止まってちゃダメなんだ!今しかこの一瞬しかこの〈整合騎士〉に近寄ることはできない。

 

この機会を失わせない為にも僕は失敗できない。

 

やるんだ!すべては〈想い〉で決まる。僕はみんなで暮らすことを願ってるんだ。それを剣に込めれば僕は負けない!

 

「舐めるな小僧!」

 

抜刀し奥義を発動するために構えた状態の僕に、燃える長弓を掴んだ拳を振り抜く騎士の攻撃は避けられない。できることは剣で迎え撃つことだけ。今アリスはきっと2人の治療をしている。援護は期待できないのなら僕だけの力でやるんだ。相棒と幼馴染に力を借りることは恥ずかしいことじゃない。人に頼ることは間違っていない。

 

1人で出来ない事を協力して成し遂げることは、褒められど非難されることじゃない。でも今は助けを乞うところじゃない。僕だって1人でやれることを証明するんだ!

 

「お...おおぉぉ!」

 

大上段に振りかぶった〈青薔薇の剣〉を鮮やかな青い光が包み込む。〈アインクラッド流秘奥義《バーチカル》〉が赤銅色の篭手をつけた拳と激しくぶつかり合う。全身全霊を持って振り下ろした剣が、地面に根を張ったかのように微動だにしない騎士の拳を切りつけようとする。けど拳も僕の剣を折ることを目的とするかのように反抗してくる。

 

でもそれがなんだ!僕は負けない2度と誰にも負けない。そう剣に魂に誓ったんだ!想いを重くすれど拳は巌のように小動もしない。だが均衡状態は長くは続かなかった。長弓の炎が〈青薔薇の剣〉の刀身を舐め始めていたからだ。その熱に耐えかねるかのように光がチカチカと点滅を始める。ここで奥義を強制停止されれば、業火を纏った拳に顔面を強打されるだろう。

 

「はあああぁぁぁ!」

 

体重までも重みをかすが動かない。それどころか炎の熱によって刀身が赤熟されていく。カーディナルさんに命じられて見た「剣の記憶」によれば〈青薔薇の剣〉は氷属性の剣だ。

 

炎属性である〈熾焔弓〉との相性は最悪のはずで、このまま熱にやられ続けていれば〈天命〉の減少を早めるだけだ。そうなればその先の〈整合騎士〉と戦えることは無くなり3人に任せっきりになってしまう。

 

それだけは嫌だ!―剣よお前も神器であるならこんな炎に負けるな!―

 

ユージオの想いを受け取ったのか刀身から霜が広がっていく。柄を握っている右手だけでなく、柄頭に添えただけの左手にも刺すような冷感が生まれる。それと同時に熱せられていた部分から霜が業火を纏った拳へと這い上がっていく。熱をものともせずに霜で覆っていく様子に仮面の奥に光る眼が見開かれた。

 

「い...えああぁぁぁぁ!」

 

力で押勝ったが惜しいところで体には剣が届かなかった。気合を入れて喉から声を絞り出すと剣が急角度で跳ね上がる。破格の重量を持つ〈青薔薇の剣〉を全力で振り下ろしたにもかかわらず、その重さを微塵も感じさせない速度で舞い戻る剣に、デュソルバートは今度こそ心の底から驚愕した。

 

「ぐぬぅ!」

 

跳ね上がった剣、〈アインクラッド流二連撃秘奥義《バーチカル・アーク》〉が赤銅色の鎧を砕き、肉体を切りつけたことを示す紅い液体が宙に舞った。だが傷は浅い。このままいれば腰を回転させ右拳による攻撃を受けるのは必須。秘奥義を放った場合、技後硬直と呼ばれる動けない時間が生まれる。それを防ぐ方法はたった1つだけ。それはユージオとカイトの師であるキリトでさえ成功率は5割という秘技。

 

《秘奥義連携》。

 

左上から斬り下ろされる刃が、弾かれたように前方へ飛び出した体とともに迫る。〈単発秘奥義《スラント》〉が見たことのない流派による攻撃に、体が動かなくなっているデュソルバートを襲った。

 

「っ...!」

「ごはぁ!」

 

無声の気迫を発しながら振り下ろした剣が騎士の右肩を直撃する。鎧を砕き鈍く柔らかい何かに直撃した感触と衝撃がユージオの右手に伝わった。それは紛れもなく1人の人間の肉体を己が傷つけたことに他ならなかった。兜の下からくぐもった苦悶の声が上がり、白亜の大理石で造られた床に倒れる。

 

真っ白な床には、赤銅色の鎧より一際紅い真紅の液体が大量に吹き出していた。




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