アリシゼーション~アリスの恋人   作:ジーザス
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ようやくほのぼの系?書けたかな。

物足りない気がするけれども。


夢想

「ふふっ」

 

カイトとアリスの仲むつまじい様子を見ていると、気付かぬうちにユージオは笑いをこぼしていた。笑いといってもあざ笑うような冷やかしの笑いではなく、幸せを眼にして誘われるように浮かんだというものだった。

 

「どうしたんだユージオ?いきなり笑いをこぼすなんて」

「え、僕笑ってた?」

「無意識って怖えよ。でもまあその気持ちはわからなくはないけどなぁ」

 

そうおどけるキリトも2人を視界に入れて穏やかに微笑む。空気に混じったほのかに甘酸っぱい香りが、余計にそう思わせているのかもしれない。それでもキリトはそれを気のせいだとか思い違いというような感情は抱かなかった。

 

むしろ今感じている感情が当たり前で人にはあるべきものだとそう信じていた。

 

「そうだね。あんなに幸せそうな2人を見てたら、ここが敵陣の真ん中だってこと忘れそうだよ。一瞬も気が抜けないそういう事態だっていうのにさ」

「神経の張り詰めすぎは身体に触るぜ?休めないとこれから先にも影響してくるしな」

「なんだか経験有りだっていう風な口ぶりだねキリト」

「おうよ。〈アインクラッド極意其の三『休めるときは休め』〉だぜ」

「適当に言うなよ」

 

少し強めに肩を小突いてくるが、それは信頼の証ということで俺は素直に受け取っておいた。それにしてもこの場所は変に落ち着ける不思議な何かに包まれている。天井に近い壁の上部から差し込む太陽光(ソルスの光)が、昼間にもかかわらず幻想的な空間を実現させているようだ。

 

幾何学模様に阻害され、光の柱のように降り注ぐそれを掴むように手を伸ばす。もちろん実体はない唯の光源なので、掌に収まることはなく温かい温度だけが肌を駆け巡る。

 

この世界(アンダーワールド)〉において光や虹などの非物理的なものは、人間(正確には人工フラクトライト)には作ることはできない。〈現実世界〉でも機械を使わなければ不可能だが、こちらではそういう機械さえ存在しないから比較対象にはならない。

 

(ソルス)》は神が民に捧げる恩恵の1つであり一個人が独占できるものではない。《(アバノ)》は神が民に〈掲示〉を示すものとして扱われている。

 

どちらも〈現実世界〉では非科学的と一蹴されるだろうが、俺からすれば間違っているとは思えない。《光》は太陽光と言い、水素の核融合における副産物と定義されている。《虹》は太陽光が空気中の水滴によって、屈折または反射して起こるメカニズムだ。

 

どちらも環境の一環として起こるものなのだから、〈神の御業〉やら〈神の思し召し〉とも宗教的には捉えることが出来る。それに日本人は宗教に無頓着なのだからピーピーギャーギャー言うのは可笑しいのではないだろうか。

 

バレンタインやらクリスマスやらハロウィンやら、一体何処の宗教を崇めてるんですかね?と思わなくもないぜ。バレンタインとクリスマスはキリスト教であるしハロウィンもケルト系キリスト教からだしな。ハロウィンに至っては、ケルトの自然崇拝からの派生だからキリスト教と言えるかどうかは微妙だが。

 

日本は仏教と神道が95%を占めているのに、どうしてこうも恒例行事として扱うのか疑問に思う。良く言えば宗教や文化にはオープンで、悪く言えば一貫性がないということだ。

 

俺は正直どっちでも構わないから、どっちかを選べとは言わないし強制もしない。小学生や中学生の頃はそんなことより、VRMMMOだったから気にしなかったのもあるが。今はといわれれば無視できないというのが正直なところだ。〈アインクラッド〉で恋したアスナから貰えるのが嬉しかったからだ。

 

まあ、言うかどうかはわからないし、個人的意見であるから無視してもらって構わないのだが。

 

…かなり話が逸れてしまったな。つまり俺が言いたいのは神を崇めようと崇めないと、結局は変わらないのだからご自由にということだ。

 

「キリトはこれからどうするんだい?」

 

突如、ユージオから話を振られ思考を通常運転に切り替える。

 

「これからとは?」

「最高司祭を倒してからのことだよ。〈整合騎士〉が名誉ある《職》であるのは事実だったけど、正体は記憶を改竄された元は僕たちと同じ人間だったんだからさ。キリトの目標が〈整合騎士〉になることでアリスを連れ帰るのが2番目の理由だった。いざ来てみればはよくわからないけどアリスはアリスだった。だからキリトの目標がなくなったから、この先どうするのか気になったんだ」

 

うわぁ~考えてなかったな。そういえばユージオには〈整合騎士〉の存在が元は自分たちと同じ(俺は別)人間で、実際に存在した人だってこと階段を昇りながら説明していた。

 

最初は信じられなかったようだが、脱獄して最初にまみえた敵が、俺の先輩であるソルティリーナ・セルルト先輩が挑んだ《帝国剣武大会》の優勝者で、《四帝国統一神前大会》の優勝者であったことを知っていたから疑う余地もなかった。

 

相棒には申し訳ないが、俺の真の目的は《ログアウトシステム》があると思われる〈公理教会〉へ乗り込むことだった。そのためには〈整合騎士〉になる必要があったから、「何処の生まれかはわからないけど、剣士だったのは確かだ。剣士なら〈整合騎士〉になるのを夢見ても可笑しくないだろ?」とユージオに言っていた。

 

そしてユージオの目標でもある「アリスとカイトを取り戻す」ことを後押しする形で、修剣学院へ入学し腕を高めあった。だがそこではカイトが何故か入学していたし、アリスも何故か記憶を奪われずにいたから疑問には感じていた。

 

〈整合騎士〉の闇を知ってからはなる気はなくなったが。…だが疑問なのはカイトの目的だ。カイトは何を目的にこれまで生きてきたんだ?俺には想像もできない何かをしようとしているのだろうか。

 

情報がゼロな今では結論も出せないし、間違った予測で足を引っ張るのも嫌だな。今はこの疑問は棚上げにしてこれからのことを考えるべきだ。

 

ユージオの言う通り〈整合騎士〉が、〈人界〉に知られているような実態ではなかったことを考えればなるわけにもいかない。《ログアウトシステム》さえあればどうにかできるのだろうが、それは何処にあるか予想できない。

 

《ログアウトシステム》がないことを考慮すると、4人で〈ルーリッド村〉に戻って生活するという意外にはないか。時間を見つけては飛竜でそれらしきものを探す旅に出るのも面白そうだな。それに村に戻ればユージオに出会った頃の約束が果たせそうだ。

 

『何処にあるかわからない故郷の村を聞いて回る膨大な時間を使うぐらいなら、この村で俺を助けてくれた人に恩返しをする。ユージオやセルカにね』

 

「3人と一緒に〈ルーリッド〉に戻るよ。〈整合騎士〉がみんなの知ってる実態と違えばなりたくないしな」

「故郷には戻らなくていいの?キリトと一緒にいられなくなるのは嫌だけど、君のことを心配している人達の気持ちを考えたら言えないよね」

 

それを言われるのは痛いな。そりゃ還れるなら還りたいさ。アスナやスグ、シノン、クライン、リズ、シリカ、エギル、母さんにこれ以上心配をかけられないしかけたくない。

 

だがFLTが1000倍程度であればそこまで気にしなくてもいいと思う自分がいるのも確かだ。これまで出会ったみんなと別れたくないからそう思うんだろうな。これが板挟みという奴なのかと身を以て思い知ったなぁ。

 

「前にも言ったろ?俺は助けてくれたユージオやセルカに恩返しがしたいって。だから俺は恩返しができてから故郷を探すことにするよ」

「まったく君って奴は僕の気も知らないでそう言うんだね」

 

ユージオは眼に涙を浮かべながら淡く優しい笑みを浮かべてくれた。この笑顔に一体何度俺は救われただろうか。〈ルーリッド〉を旅立って〈ザッカリア〉に着くまでと、〈央都〉にある修剣学院に入学してからも見せてくれた。

 

ライオスやウンベール、ヒョールに日常的な精神的虐待を受けた日でも癒やしてくれた。親友だから相棒だからという理由でもない。俺たちは家族(・・)に他ならない。失ってたまるかこんなに人の良いユージオを、寿命以外で死なせてたまるもんか。

 

「でもキリトが恩返しを終えるのは不可能かもね。終わるとすればキリトが恩を仇で返したときだけだ」

「この野郎。直ぐにその減らず口言わせなくしてやる!」

「やってみなよキリト。負ける気がしないからね!」

「言ったな!?おりゃ!」

「なんの!」

 

ユージオが放った言葉が売り言葉だったので俺は買うことにした。そこで俺はユージオに飛び掛かってこしょばしの刑に処すのであった。

 

 

 

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「まったく何をやっているのかしら」

「いいんじゃないか?あの頃(・・・)に戻ったみたいで」

 

丘の下において遊びで取っ組み合っている2人を、アリスはため息を吐きながらカイトはしょうがないなとばかりに微笑みながら見下ろしていた。止めない辺り2人も似たようなものだが、昔に戻ったように懐かしく思えるから傍観していたいのかもしれない。

 

愛剣を腰帯から外しているからか2人はやりたい放題で転げ回っている。19歳にしては少々大人げないが、激戦を潜り抜けてきたのだから、これぐらいの羽目の外しには眼をつぶってやるのも友人としての務めだ。そういう風に2人は思い込むことにして取っ組み合いを温かく見守るのだ。

 

時折「うひぃ!そこは駄目だぁ!」やら「あはははは!こしょばいよキリトぉ!」とか、「髪をぼさぼさにするのは反則だよ!」など「傷を擦る攻撃は万死に値するぞ!」となかなか温和な空間に反響する。

 

「何、アリス?」

 

じ~っとこちらを見るアリスにカイトは聞いてみた。

 

「キスして」

「ここでは駄目」

「ツーン」

「それって口にはしない擬音語でしょ」

 

バッシャーン!

 

「あら」

「ありゃまぁ」

 

突如可笑しな音が響いたので視線を向ける。丘をぐるりと囲んでいる小川なのか用水路なのか判別しにくい流れに、落ちた2人を見てアリスとカイトは似たような声を上げた。それでも2人は取っ組み合いをやめないどころかむしろ楽しそうに水の掛け合いを始める。

 

仕方ないなとばかりにカイトが下りていくと2人が視線をカイトに向ける。

 

「そら掴まれ2人とも」

 

カイトが両手を伸ばすが、待ってましたとばかりにキリトが悪戯小僧の笑みを浮かべたのでユージオは嫌な予感がした。そしてそれは現実となる。

 

「傍観は最大の罪だ!」

なんでや(・・・・)!?ブフォァ!」

 

キリトとユージオを引き上げるために伸ばしていた両手を、何故かキリトが握りカイトを引きずり込んだ。顔面から水面に突っ込んだカイトは、情けない声を上げながら水を飲み込んでしまう。咳き込む様子をユージオがお腹を押さえて笑っているのを見て、カイトの心に復讐心の炎が燃え盛る。

 

「…ほほ~う?よし死刑だ。〈整合騎士〉権限において2人を処分する」

「やってみやがれ!」

「返り討ちだよ!」

「悪即斬!」

 

カイトの両手が瞬時に閃いた。

 

「グフォア!」

「ぎゃん!」

 

こうしてキリトとユージオはカイトによって瞬殺されました。水面には白目をむいたキリトとユージオが浮かび上がり、流れるプールのように浮かんでは沈みを繰り返して周回を繰り返す。

 

その後、アリスによる熱烈なキスを受けカイトもまた眼を回し、アリスだけが残りましたとさ。




さてさてこのままでいけばどのくらいでアドミニストレータを倒せるのでしょうか。

先は長いぞえ。


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