アリシゼーション~アリスの恋人   作:ジーザス

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期間が空いてすいません 。

バイトの連続で書き上げる暇も体力もありませんでした。

それから大学生活は余裕で継続できるようになりました!よくやったオレ!σ(゚ᴥ゚*)!

...ただ三回生になりインターンや授業が多くなりますので、投稿頻度は下がるかと思います。しかしながらどうにか投稿していくのでこれからもよろしくお願いします!


翻弄

「眼を開く」。

 

それを行うには多工程の動作が必要となるが、人間は意識して行うことはない。「眼を開く」と脳に指示すれば、眼球を支える筋肉やら筋繊維やらが指示を受け取り動作を開始する。と言うが別段その事を意識して行ったことはない。「瞼を上げる」やら「眼を開ける」といったほうが、「眼を開く」という行動原理に近い気がするからだ。だから何かの気配を感じ眼を覚まして視界に入り込む景色を見ても、驚きやがっかり感を抱いたりはしないのだ。

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ。思った以上に深い眠りだったかな」

 

独り言を呟いても返す声はない。右手を背中側に置いて上半身だけ起き上がらせる。慣れない芝生での長時間の睡眠によって、関節がポキポキと鳴るのがまた心地良い。左下に視線を向ければ、俺の腰に抱きついて至福の寝顔を浮かべているアリスがいる。右には大の字で大胆な寝相に加えて、ボリボリと自身の脇腹をかいているキリト。そして目の前には俺の両足を枕代わりにし、俯せで規則正しい寝息を立てているユージオがいる。

 

それぞれが個性のある所謂その人の性格を表した寝相に頬を緩ませてしまう。敵陣のまっただ中だというのに、周囲を警戒しないというよりする気もないらしい。まあ実際、攻撃してくる敵といえば騎士長と最高司祭そして元老長だけなのだが。

 

《バラ園》にて精神不安定に陥ったエルドリエ、《霊光の大回廊》で大怪我を負ったファナティオさん(〈四旋剣〉を含む)は〈アジト カーディナル〉において現在治療中だ。

 

颯爽と負傷者を回収し治療を施すとは、駄女神のくせになかなかやりおる。2人は殺したくもなければ死んでほしいわけでもない。むしろ生き抜いてもらわなければならないのだから感謝している。

 

それにしても何故俺はエルドリエに「師」と呼ばれるのだろうか。記憶にある限りではほんの少しアドバイスしただけだが。その程度のことで呼称される言われは無いはずだ。だって俺よりエルドリエの方が〈神聖術〉の扱いに長けているし?キリトがいなかったら俺は自分の流派を見つけられなかったし?どうせ俺は出来損ないのぺーぺー〈整合騎士〉ですよ。

 

…まあ、おふざけや自身への誹謗中傷はこれぐらいにしておいて。

 

問題はこれからの方針だ。ここ80階《雲上庭園》より上層で主な名称がついているのは4つだけ。90階《大浴場》、95階《暁星の望楼》、96~99階《元老院》そして100階《神界の間》所謂アドミニストレータの所在地。

 

《暁星の望楼》と《元老院》は危険度が高くないが、アドミニストレータがいる場所へ至るための最大の関門が90階《大浴場》。名称的には対したことないがそこにいるであろう人物には、おそらくここにいる4人は誰1人勝つことはできないだろう。あの人は圧倒的すぎる。剣の腕前と〈神聖術〉の完成度が別次元だ。

 

一振りで敵を薙ぎ払い、ニ振りで戦闘不能にし、三振りで命を絶つ。

 

実際、一振りでも敵を殺すのは容易いことだろう。一撃の重さが異次元だから稽古用木剣で受ければ、腕は痺れて数秒間は使い物にはならなくなってしまう。戦場であればそれは死と同義。敵につけいる隙を与えれば、自分どころか友人や家族などの大切なものを奪われることになる。さて、どうしたものか。腕を抱えながら悩んでいると、俺の両足を枕にして俯せに寝ていたユージオが眼を覚ました。

 

「おはようカイト」

「おはようユージオ。よく眠れたか?」

 

伸びをしながらユージオが朗らかな笑みを浮かべる。

 

「おかげさまでね。これだけ眠ったのはいつ以来かな」

「といっても此処に来てから2日しか経ってないぞ」

「そこは良かったねって言っておくべきだよカイト」

「ふふふふ。そこまで世の中は甘くないのだよユージオくん」

 

おちゃらけてくるユージオに乗って俺もおちゃらける。こうして砕けた態度でいられるのも今だけだろうな。おそらくこの先はこういった油断も許されない状況になるとしか思えない。いや、むしろそうでなければ可笑しいだろう。なんせ90階《大浴場》には、最強の刺客が鎮座しているだろうから。嫌だねぇそんな強い人と戦わないといけないなんてさ。勝てる見込みが万に一つもないというわけではないが、それでも苦戦は免れないというのだけは断定できる。

 

「さてこれからの方針だが。ユージオはどう思う?」

「あのねぇカイト。僕は部外者なんだよ?どうすればいいかなんてわかるわけないだろ?」

「それもそうだ。では簡単にこれからのことを説明しよう。まず次の岐点である90階《大浴場》が、アドミニストレータへ近づくための最大の関門だ。ここにいるであろう人物は、これまで以上の実力者であることを肝に銘じていてほしい」

 

肝に銘じたところで焼け石に水なわけだが、していて大ダメージを喰らうよりはマシになるはずだ。見た目じゃ強さは測れない。とは言うものの、あの人は見た目と性格が歯車のようにがっちりと噛み合っているからなぁ。そのままの人間としてしか形容できん。

 

「それはわかっているつもりだけど何で僕にだけ言うんだい?アリスはともかくキリトにだって言っておくべきじゃないか」

「キリトは言わなくても察しているさ。キリトはどんなことがこの先で起こるのか、何がどのように作用して俺たちを待ち受けるのかをな。こうして大胆な寝相をしていてもそれなりに危惧しているのさ」

「なんせ僕たちからしたら黒の英雄(・・・・)と呼びたくなるもんね」

 

寝返りを打ちながら「うへへ、蜂蜜パイうめぇ」とよだれを垂らすキリトに2人して苦笑する。戦闘での鬼気迫る声音と表情とのギャップがどうしてもキリトの年齢を錯覚させる。戦闘では場数を乗り越えてきた(実際、2年間をデスゲームで経験している)もあるだろう。だが好物になると眼がなくなるのか、だらしなく顔を綻ばせるから心に余裕を保たせてくれる。不思議な人間性を持ちながら人を引きつける魅力を持ち合わせる。

 

これが人の持つ「無自覚な性」というものなのだろうか。

 

「もう少ししたら出発しようか。あまり時間をかけていたら敵に防衛の余裕を与えることになるから」

「そうだね。本心を言えばもう少しだけこの空気を味わいたいけど。目的を終えればいつまでもこの空気を味わえるんだから、我が儘はもう少し後に取っておくことにするよ」

「ようやくユージオも肝が据わってきたみたいだな」

「それは今まで据わってなかったって言いたいのかな?」

「さあ、どうでしょうね」

 

本当にユージオとの会話は心が温まる。これもユージオが持つ「無自覚な性」なんだろうなと思いながらも、上層へと向かうために準備を進めることにした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

キリトとアリスを起こしたカイトとユージオは、先陣を切って上層へと足の回転を速めていた。カイトが何故誰より率先して階段を上るのかは言葉にしなくともわかるだろう。では何故ユージオがカイトと共に足を動かしているのかわかるだろうか。

 

先程の会話におけるカイトの言葉にユージオは触発されていたのだ。臆病者だと自分自身でも理解し、それのせいで誰かが傷ついてきたのも身を以て知っている。ようやく理解し始めていると言えばわかるだろうか。今すべきことが何なのかを、他人に聞くこともなく自ずと行動し始めていることが。

 

だから後ろを走る2人が若干首を傾げているのも無理がないことだった。

 

「…冗談抜きでそろそろこの何も変哲もない階段に飽きてきたぞ俺は」

「わからなくはないですけどね。デザインが統一されているというより、装飾をしていないと指摘するのが正しいと思います。〈公理教会〉の中枢である〈セントラル・カセドラル〉は、華美な装飾をされるのが当たり前ですから」

「つまりそれを眼にしないということは、する必要がないということなのか。カイトはどう思う?」

 

自分でも意見を口にしながらカイトに話を振る。それはカイトが〈整合騎士〉だからなのだろうか。それとも《外界》からの転移者だからなのだろうか。

 

「俺はアリスとキリトの意見と同じだよ。裕福を越えて贅沢な生活を送る輩は、心がすさみきり自分の権力を示したがる。それは剣の腕前でも人望の厚さでもない財力の他ならない。金銭があればどんなことでも可能になると思い込みそれに酔いしれる。人間って何を見れば金持ちだと思う?」

「所有物じゃないか?それか誰もが一目見てわかるような代物だ」

「ああ、だから金持ち共は豪華に飾ったオブジェや宝石などの装飾を施した像などを庭先に置く。それを見た人間に『ここに住む家主は金持ちに違いない』と思い込ませる。つまり刷り込みだな。人間は初めて眼にしたものが記憶に残りやすいから、その習性を利用しているんだよ。意識的になのか無意識のうちになのかを置いといてな。初対面で抱いたマイナスな感情を、二度目に再開して拭いきれないとかいうものがこれだろうさ」

 

まるで経験でもしているかのように話すカイト。いや、カイトだけではなくキリトもユージオも既に経験している。もう二度と戻れない剣術院で否応なく会う機会があった貴族。ライオス、ウンベールそしてヒョールといった上級貴族の跡継ぎたち。

 

 

 

 

 

階段に響く4つの足音。統率のとれた動きにはほど遠いが、反響する音を聞けば不思議と心地良い。それを感じているらしく、4人の表情は引き締められながらも穏やかに頬の筋肉がほぐれていた。

 

しばらく足を動かしていると唐突に階段が途切れた。階を通り過ぎる度に数えた階数は10。つまり今4人が足を置いている場所は90階。カイトとアリスが最大に恐れる人物が待つであろう場所。立っているだけでは別段何ともなく、むしろのんびりと形容するのが適当な空気で覆われている。

 

予想とは違う結果にキリトが片眉だけを上げてカイトを横目で見やる。それに居心地が少し悪いのかカイトが視線を逸らす。

 

「何これ」

「なんでしょうね」

「カイト…「行きましょう」」

 

キリトの間の抜けた問いに敬語で答えるカイト。何かを言おうとしたユージオを遮るように、アリスが大扉の前に移動する。アリスが口を動かしたタイミングが、ユージオと重なったのは単なる偶然であって故意ではない。

 

全員が揃ったところでアリスが少し力を込めて扉を押し開ける。見た目とは裏腹にスムーズに開いていく扉の先から、白い靄が大量に押し寄せてきた。〈神聖術〉による攻撃かと戦闘態勢に入りかけるキリトとユージオだったが、アリスとカイトが何もせずに佇んでいるので戦闘態勢を解く。

 

《大浴場》と名称があるのだがこれまで二つ名を与えられていた場で、戦闘を行ってきたのだから少しぐらい過敏に反応してしまっても仕方ないだろう。だからカイトとアリスは、キリトとユージオに冗談で嫌みを言わなかった。歩を進め内部へと入るとその面積に眼を疑う。90階すべてを使用するほどの面積の風呂場が目の前に広がっている。キリトとユージオが眼を見開いているのも当然のことだ。

 

「…広いな」

「…壮観だね」

 

それしか感想は出てこないらしい。人間は怖がったり恐怖を抱くと脳が簡単な言葉しか発せなくなってしまう。今2人の状態はまさにこれなのだろう。

 

一面白い靄で覆われ床は見えず、その湿度に汗を浮かべ呼吸が少し苦しい。水面から立ち上る白い靄の正体である湯気と、そこかしこから大量の湯が水面を叩く轟きが聞こえてくる。時折ボコっボコっという音も聞こえてくるが、どうやら巨大な泡が浴槽の底から沸き上がっているらしい。

 

開いたままの扉から外部の空気が大量に流れ込み、溢れた湯気を吹き飛ばしていく。視界が開けたことでキリトの危機感が少し下がり、浴槽の湯へ手を伸ばしている。誘惑されたのか、ユージオまでが同じように片手を湯に突っ込み頬を緩ませている。

 

それを見てカイトとアリスが、しょうがないなとばかりに苦笑している。

 

「良い湯加減だな。いっそ服を全部脱いで飛び込みたいぜ」

「いいねそれ」

「目的忘れてるだろお前ら」

「「それとこれは別」」

 

息の揃った返答にカイトは頭を抱える。それを紛らわすために、奥へと進んでいくと湯気の向こうに人影が見えた。その瞬間、湯気になって消えていった量を補充するかのように大量の湯が投入される。遠くで2人の声が聞こえた気がしたが、それを気にする余裕がなかった。

 

「おう?もう来ちまったのか。(わり)いけどよもう少しだけ待ってくれねえか?ついさっき飛竜で帰ってきたばっかりでよ。身体が硬直してんだわ」

 

緊張感のないそれでいて良く通る声音を発せられ、カイトとアリスの警戒心が高まる。飾り気のない言葉遣いと態度は相手を油断させるものではないのだが、2人からすれば関係のないことだった。

 

「ウウ~ム」と言いながら立ち上がり、通路に置いてあった服に袖を通しているのが見える。

 

「そう警戒心高めなくてもいいぜ。不意打ちなんてのはオレの柄じゃねえからな」

 

どうやらカイトとアリスの警戒心は相手に伝わっていたらしい。身体から滲み出ていたというよりは、その男の感覚が鋭いというのが正しい。剣を腰帯に差し込んでくるりと振り返ってこちらに歩んでくる。

 

「おう、待たせたな」

 

そう口にしながら湯気の先から現れたのは、鉄灰色の髪が短く刈り込まれ服の上からでもわかる鍛えられ上げられた肉体をした初老の男だった。眼に宿る光は鋭く自然に佇んでいるだけだというのに、身体がきしむような圧力を発している。

 

そして一番気になるのは、右眼を閉じている(・・・・・・・・)ことだった。

 

「…立っているのは咎人だと思っていたが。まさか坊主と嬢ちゃんとはな。オレと戦う気はあるのか?」

 

腕を組みながら温和に微笑んでいる恩師に、カイトとアリスは脚が震え出すのを止められなかった。それを一瞥で見破った男の観察力は称賛に値する。

 

「と聞かれれば困るよな。叩くといっても個々では俺に勝てないのは、自分がわかっているはずだが?それでも戦うというならオレはやるぜ」

「…俺は貴方に剣を向けることも剣を交わすことも嫌だ。でもアリスや2人のために戦う!」

「私も同様です叔父様。カイトがそう決めたのなら私も戦います!」

 

2人が鞘から己の〈神器〉を抜刀する。腕組みしながら佇む男に剣先を向けるも切っ先は微かに揺れている。心の動揺ではなく、勝つ力のない自分への怒りだった。それを理解しているかどうかはわからないが、男は笑みを深めて大声で笑い声を上げ始めた。突然のことで状況を理解できていない2人はキョトンとしている。

 

「はっはははははは!いいぜその心意気は気に入ったぞ。勝てない勝負だとわかっていながらも、逃げずに戦いを挑むその精神は俺の育てた賜物だな。で、此処まで来た目的は何だ?〈整合騎士〉を全員倒すことか?」

「いえ、そうではありません。俺の目的は最高司祭猊下を倒すことです騎士長閣下」

「む…」

 

予想外なのかはたまた威勢だけの発言なのか。それはさすがの〈整合騎士騎士長〉ベルクーリ・シンセシス・ワンにも察することはできなかった。だがカイトの眼に宿る光を見てベルクーリは薄い笑みを浮かべる。

 

「坊主が冗談を口にする時は、そんな真面目な顔つきじゃねぇから本気なんだろうな。それにそんなことを冗談でも口にはできねぇ。だったら信じてやるのが師としての立場ってもんだ。じゃ、飲むぜ?付き合え2人とも。咎人も連れてこい」

「「はあぁぁぁ!?」」

 

まさかの酒盛り決定にカイトとアリスは、まぬけな声を上げることしかできなかった。いそいそと準備に取りかかるベルクーリを、ぼーっと見ていることしかできない2人だった。




次回はアリスの入浴が見れますよ!←ネタバレ

情景描写が苦手ですが、アリスの魅力を精一杯描けるように頑張ります!
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