いや、ほんとなんかもうすんませんでした!書きたくても書く暇がなく、あったとしても疲労でモチベーションが上がらないという悪循環でした。
授業が鬼なので投稿はどうなるか分かりませんが頑張りますのでよろしくお願いします!
上層
「うぐ、頭が…」
「うぅぅぅ、気持ち悪いよぉ...」
「だから止めたろうに」
90階《大浴場》から出て95階《暁星の望楼》に至ったカイトは、二日酔いに苦しんでいるキリトとユージオにため息をつく。2人の自業自得なので、それほど心配はしていないらしい。そんな状況であるからか、〈整合騎士騎士長〉ベルクーリの同行が決定したことで、カイトの中には少しばかりの余裕ができていた。
〈整合騎士〉最強の肩書きを持つ人物が味方につくのだから、これ以上を求めるのは不可能だし、求めるのはベルクーリを侮辱することにも繋がる。だがカイトはそう思う前に、そんなくだらないことを考えようとはしなかった。考える余地も余裕もなかったわけではなく、
これ以上はいないと確信できるほどの手練れが、己の目的に賛同してくれているのだから失敗は許されない。目の前に立ちはだかる敵がいくら現れようと全員を護って討ち取る。
それが今のカイトを動かす原動力だ。
と思ってはいても、親友2人が歩くのもままならない様子でいると、頭を抱えずにはいられないらしい。現にカイトは、《暁星の望楼》に置かれた椅子を外周部に移動させて黄昏れている。その後ろではキリトとユージオが机に埋もれているので、その気持ちもわからなくはなかった。
「み、水を…」
「準備してるんだから少しぐらい我慢しろ。このとんま」
「…病人に対して、いささか扱いがぞんざいじゃないですかね?」
「へべれけ状態になるまで飲むのが悪い」
これ見よがしにカイトは、キリトの不満へ辛辣な言い方で返答していた。一見すると、カイトの態度は素っ気ないものだが、キリトの行動がそうさせたのだから責められるいわれはないはずだ。止めたにもかかわらず「此処でしか飲めない代物だから止めるな」と言う始末。確かに美味ではあったが、最終戦目前で泥酔するまで飲めるほど楽観的になれなかった。
カイトが深く考えすぎやら、キリトが楽観的すぎるというわけではない。アドミニストレータの本性を知っているかどうかという、情報量の差によるものだ。だがカイトにとっての疑問事項はもう1つある。それはベルクーリが隻眼になっているということ。左眼であったなら違和感。いや、疑いなど抱かなかった。
だが彼は「頭がない」と『原作』で言っていた。それが事実ならば簡単に気付けるはずがない。「頭がない」というのは、作戦などを考える柔軟さがないというだけで、知識が少ないというわけじゃない。むしろ誰よりも長い年月を生きているのだから、知識量は多いだろうというのが俺の見解だ。
そこから考えると、長い長い時間をかけて今の〈セントラル・カセドラル〉のあり方に疑問を募らせていった。そして俺がいない2年間の間に《コード871》を破るまでに至った。そういうことなのではないだろうか。実際に「原作」ではアドミニストレータが、ベルクーリが100年前にこの世界に違和感を覚えているのを知って、〈シンセサイズ〉をもう一度執り行っている。
俺がいる世界でどうなっているのかはわからない。封印を破っているところを見ると、100年前に〈シンセサイズ〉されていないように思える。されるような違和感を感じていなかったのか。感じていても悟られないように生活してきたのか俺にはわからない。きっとアドミニストレータと対峙した時に話してくれるだろうと信じている。そのために今は2人の介抱に全力を注いだ方がいい。
雲ひとつない月明かりが、照らす虚空を眺めながらカイトは2人へと歩を進めた。
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白亜の階段の真ん中に敷かれた緋色の絨毯によって、響くくぐもった足音は5つ。周囲が静かすぎる影響なのか。やけに足音が大きく反響しているように感じる。だがそれが自身の錯覚だと理解している。わかっていてもそう感じてしまうのは、最終局面が近い所為なのだろうか。
チラリと視線を後ろに向けると同伴者4人の姿が視界に入る。淡い草原色の上着にいつの間にか着替えたのか、純白のスカートに着替えたアリス。濃い群青色の制服らしきものに身を包むキリト。淡い水色の制服らしきものに身を包むユージオ。そして灰褐色の和服に身を包んだベルクーリ・シンセシス・ワン。
キリトとユージオはここまで幾つもの死線を潜り抜けてきている。普通に生活していれば決して眼にすることもなく、耳に入ることもなかった事態に後戻りできないところまで入り込んでしまった。キリトの剣の腕は文句なしだ。互角とは言えなくとも、〈整合騎士〉とそこそこ渡り合えるだけの技量を有している。キリトは〈剣の世界〉で死を間近に感じながら鍛え上げてきた。
ヒットポイントの名で知られるHPがなくなれば死。文字通りその世界からも〈現実世界〉からも永久に退場するという、危険極まりない状況を生き抜いた。主犯の目的は俺にもわからない。唯自分だけが悦に浸りたかったのか。それとも自分が〈神〉という存在になりたかったのか。
4000人以上もの命を奪ったにも関わらず、VRMMOという新しいジャンルの世界を創り出すことに成功したのはいうまでもない。キリトやその仲間たちもそれがあったからこそ出逢えたのだし、今のキリトがここにいるのだから俺が口出しできることではない。だが憎悪や哀しみがなかったわけではないとキリトは「原作」で言っていた。
デスゲームとならなければ、キリトはビーター(ズルをするチーターとβ版参加者のベータテスターを掛け合わせた造語)と揶揄されることはなかった。数多のビーターに向けられる怨みを自分1人で請け負い、嫌われるような行動を自ら買って出た。
そしてデスゲーム開始から1年が経った頃、キリトはひょんなことから5人しかいない小さなギルドに入ることになった。それがキリトの心を少なからず癒やしたのは想像に難くない。だが自身がチーターだということを言い出せず、長い間所属していた所為で全員を殺してしまった。
3人は大量のモンスターの所為で救出できず、1人は助けられたにもかかわらず手が届かなかった。パーティーメンバー全員を失ってから、残ったメンバーに詳細と自身の素性を明かした。許されると思っていなかっただろうが、そんなキリトに追い打ちをかけるかのように、その人物はキリトを糾弾した。
「ビーターのお前が、俺たちに関わる資格なんてなかったんだ」と言い放ち、仲間の後を追うように〈アインクラッド〉の外周部から飛び降り自殺した。それがキリトの心の枷となり、誰とも交わらず自身のステータス強化に繋がっていった。だが皮肉なことに強化し続けたことで、キリトはさらに周囲から孤立していくこととなる。
仲間を失わないために、自身が死なないために強くなったというだけで、周囲から嫌われるということがあって良いのだろうか。過去のことを知れば、誰もができないというだろうがキリトが口にするはずがない。ジレンマでキリトは〈自身〉という殻に閉じこもり過ごしていく。
そんなキリトを救ったのは、他でもない〈アインクラッド〉で結婚し、今でも仲睦まじいカップルとして支えているアスナだ。あの世界で彼女は〈閃光のアスナ〉と恐れられ称えられてきた。それの要因として容姿も合ったが今は関係ない。今でも〈バーサクヒーラー〉として名を馳せているのもまた別にしておこう。
傷心し自身でも己を傷つけていたキリトに、救いの手を差し出した彼女が殻にひびを入れるきっかけを作った。そのひびを割ったのはキリト自身だが、きっかけがなければキリトもそのまま居続けただろう。かく言うアスナも初期はとげとげしていたが、キリトの影響で今のアスナに変われている。
キリトの強さはきっとここから来ていたのだろう。自身を変えた愛する者を護るため。そしてこの世界から生きて帰るための原動力。そんなキリトを殺させるわけには行かない。
護るんだ。どんな方法を使っても。たとえそれがキリトとの仲がつぶれる原因になるとしてもだ。
ユージオは剣の腕でいえば、元々の性格も相まって〈整合騎士〉から一段から二段ほど落ちてしまうのは否めない。どちらかといえば〈神聖術〉を扱う方が優れている。〈整合騎士〉と比べれば熟練度がかなり低いのは仕方がないが。剣術院では2年程度しか筆記と実技をしなかった。学校で習うといっても基本知識とちょっとした応用程度だけ。実戦なんぞする機会はないしすることもない。あるとすれば、案山子に向けて放つだけであって動く標的は相手にしない。
「対人戦闘をすればいい」と思うだろうが、残念なことに『理由なく他人の〈天命〉を減少させてはならない』という面倒な《禁忌目録》があるから不可能だ。ユージオがキリトより扱える理由としては、カイトとアリスを救えなかったことが影響している。
あの日、2人を救えなかったその自責の念が積もりに積もったことで、一度〈神聖術〉を嗜んでみたことがあった。独学とは行かず、セルカにそれとなく聞いてみたことで初歩的なものは扱えるようになった。〈天職〉の合間や〈安息日〉に行うことで気分転換にもなったのだ。
だが〈神聖術〉を練習することで、連行されるのを見ていることしかできなかった自分に嫌気がさす。何故あの日自分は動けなかったのか。何故手を伸ばすこともせず、空の彼方へと消えてく姿しか見ることができなかったのか。練習すればするほど心が重くなっていった。
それでもやめなかったのはエゴにも等しいものだった。あの日のような自分を見たくない。見せてはならない。そう思い込むうちに清々しい気分に浸るようになり、いつの間にかセルカには劣るが村で3番目の腕前になった。だからといって自慢する気もなかったし、誰にも話さなかった。
上達した理由が、罪人を護れなかったというものだと知られれば自分の居場所がなくなると思ったからだ。唯でさえ罪人2人と親しかったというだけで、ユージオから離れていったのだから余計に自分の立場を悪くする必要はない。おそらくユージオがそのことを口にしていたとしても、村人たちの飯能は「またか」という程度で済んでいただろう。
「類は友を呼ぶ」という諺のように避けるはずだ。〈アンダーワールド〉にそのような諺があるかは微妙だが、〈現実世界〉で起こることと似たことが起これば無視は出来ない。元々〈人工フラクトライト〉は、人間の赤ん坊の魂をコピーしたものなのだから。
そんな風に6年間を過ごしてきたユージオも失うわけには行かない。キリトと同じように〈整合騎士〉3人で護り向く。平民として育った2人は、民を護る使命がある〈整合騎士〉が命に代えても護る。
「ここが《元老院》か…」
幾つかのフロアを抜けた先には筒状の暇が広がっていた。円形の床に、見上げれば明かりによって天井が見えない。天井が湾曲しているのを踏まえて予測すれば20mほどだろうか。そして周囲には顔を顰めてしまいそうになる光景が広がっていた。
「こ、これは一体…」
「何これ...」
「…おいおい、なんだよこれは」
そのあまりの光景にキリトとユージオは予想通りの反応をした。だが疑問に思ったのは〈最古の整合騎士〉がここのことを知らなかったことだ。300年前に〈召喚〉された人物であれば、〈セントラル・カセドラル〉内部を知り尽くしていると思っていたのだが。
「騎士長はご存じでないのですか?」
「気にする余裕もないんでな。ついでに言やぁ、此処のことを知り尽くそうなんて事思わなかったからな。俺の余裕のない頭の容量には重すぎる」
「余裕はあると思いますが…」
ここで脳筋だと肯定しないのがカイトの良さだろう。実際、ベルクーリは策を考えることが一番苦手な〈整合騎士〉でもあるからだ。
「カイトは知ってたのか?」
「此処だけやけに警備が厳しかったからな。元老長は暇さえあれば此処を徘徊してる」
「よく見ようと思ったね」
「隠しているものを見たくなるのが人間の性ですから」
「「…」」
自信満々に言い放つアリスに2人は黙り込むしかなかった。キリトは自身に覚えがあったから尚更にちょっと視線を外していた。
「にしてもこれはどういうこった?最高司祭猊下がこんなことしていたら許せない事柄だぜ」
「元老長という可能性も否定できませんが、放っておける事柄ではないですね」
カイトたちの前に広がっている光景は悲惨なものだった。人外的扱いに等しい状況に、人間性を見定めることができることが長所なユージオからすれば、余計に許せないことなのは間違いない。何故ならそこには壁一面に人間が埋め込まれており、首だけが壁から生えているように見える悲惨な光景だったから。
久々なくせに内容は進んでないです...。しかも久々なので国語能力低下が甚だしい。何を書きたかったのか自分でも行方不明なのが実際です。
頑張っりますのでよろしくお願いします。
追記 アリシゼーション1期最終話ガチ泣きしました。親がいない時に見ていて正解でした。見られたら笑われたかもしれませんからね。1ヶ月経って感想を書くとは残念無念。
次まで半年...。泣きそうです!