小テスト勉強が3週連続であったり、時間が少しあっても寝不足とバイトで消えていきました。頑張って投稿を続けていきますのでこれからもよろしくお願いします。
※今回、文字数が多いですが許して下さい。途中で切る場所がなかったのでこうなりました。
決して広いとは言えない空間を、一陣の風が吹き抜ける。瞬きをすれば、その間に認識可能範囲内に
それはさながら「死」を現界させたような、不気味な存在感を放っていた。
「はぁぁぁぁ!」
「なんて愚か。そして滑稽なのかしらね。なんの策もなくただ一直線に私へ向かってくるなんて。〈システムコール。ジェネレート・クライオゼニック・エレメント。バースト〉」
切っ先が鋭利で僅かな返しがついている氷柱が、カイトの突き出した剣先を避けるように飛来してくる。深く刺されば刺さるほど、痛みを与えるのはそれを見れば分かるだろう。〈ソードスキル〉を放っている状態では避けられない。型を崩せば、《肩から一直線に前へ突き出す》という定義から逸脱する。つまりそれはカイトの攻撃が行われず、敵に
そうなればカイトは終わる。何がではなくすべてが。
「さようなら騎士カイト。愚策な特攻で散らす命を、私が余さず頂くから気にしなくていいわ...「〈舞え、花たち〉!」小癪なっ!」
アドミニストレータの勝利宣言も虚しく。カイトの喉元・水月・眉間へと突き刺さる直前の巨大な氷柱が儚く砕け散る。アリスの〈武装完全支配術〉によって、カイトは届かない〈片手剣重単発技《ヴォーパル・ストライク》〉を放ち、一時的な行動不能から立ち直って危険区域から逃れた。
転がるようにして、カイトは間合いから離れ臨戦態勢をとる。顔を上げれば、周囲を飛翔しながら攻撃を行っている小太刀が見えた。だがアドミニストレータは余裕の表情で、全てをステップを踏むように軽やかな様子で避ける。その様子を見てアリスは当然だと感じていた。
この程度の攻撃で必死になって避けられては、カイトの危惧していたほどではない。だからといってアリスも手を抜いて攻撃している訳でも無い。
「あれほど特攻するなと言っておいたはずですが」
「アリスが援護してくれるとわかってたからさ。別にあのまま接近してても、〈秘奥義連携〉で迎え撃てたよ。でもそれは可能な限り見せずにおきたい」
「わかりました。可能な限り後方支援に徹します」
膝立ち状態から立ち上がったカイトは、《翡翠鬼》を左手に構えて右手を剣の側面に軽く置くような姿勢をとる。
「〈システムコール。ジェネレート・エアリアル・エレメント。バースト〉!」
「まあ、そうやるわな。さてと...」
風素で小太刀を吹き飛ばしたアドミニストレータが、カイトとアリスを銀色の瞳で射抜く。鏡のように自分の視線が跳ね返って思考を読み取れない。こちらからの情報を遮断し、〈魂〉を読み取ろうとする悪魔のような行動が身体を撫でる。視線が自分自身にではなく、〈魂〉に向けられる不快さ。それは言葉には表せないほど気持ちの悪いものだった。
「不愉快としか言いようがないわね。あれほど愛情を注いであげたというのに、それを切り捨てられるなんて」
「誰も欲しいと望んじゃいない。あんたが勝手に思い込みそして汚した。俺たちの〈魂〉そのものを」
「穢したとでも言いたいのかしら?」
「ああ、そうさ。あんたは穢した。俺をアリスをみんなを。そして〈世界〉までを」
こいつがいるから〈世界〉は回らないんだ。こいつの考えが蔓延しているが故に、貴族たちは間違いと気付かず怠惰にふけって沈堕ちていく。間違いだと知らないから。間違いだと思わないから。誰もそう言わないから。だから何も変わらず進歩せず文明は開化していかない。
「何故そうまでして怒るの?〈世界〉とか言ったかしらね。お前の言う〈世界〉とは何?〈人界〉?〈ダークテリトリー〉?」
「言う必要があるのか?言うことはたった一つだけ。あんたが創造したこの〈世界〉が間違っているということだけだ!」
予備動作なく前方へ走り出した。《翡翠鬼》を右手で逆手に持ちながら、左手に高速詠唱で生成した凍素の槍を保持する。それをなんのために使用するのか。2人の背後にいるだけで牽制をかけるベルクーリさんや援護するアリスにもわからない。
俺はなんてダメな人間なんだろう。この世に生を与えられて、幸せな
憧れの存在だったキリトに出会えたことも。ユージオと昔のように語り合える時間が好きだった。1日のうちの僅か1時間程度が、誰の邪魔のない3人だけの世界で、どんなことでも語り合えた。〈アインクラッド流〉の極意や〈ソードスキル〉の発動方法・発動条件など。こんな体勢になっても、こうすればこの〈ソードスキル〉を発動できるとか。《秘奥義連携》や身体の動かし方などを教え合った。
消灯時間ギリギリまで楽しくいたものだから、寮監のアズリカ先生から直々の叱責も受けた。教師陣の間では俺とキリトはちょっとした有名人だ。いざこざに俺たち2人が関わっていると真っ先に疑われるほどだ。といっても俺たち2人がいざこざの原因になったことは、これまで1度もない。あるとすれば、それは上級貴族3人組とぐらいだ。
教師陣に目をつけられている理由として、キリトの場合は剣術が高得点なのに対して〈神聖術〉がかなり悪いから。俺だと修練場の丸太と稽古用の木剣を何度か折っているからだ。キリトは授業を真面目に受ければ済むんだが、俺の場合は仕方ないとしか言いようがない。そもそも〈
そんな2人を裏切ってまで此処にいる。ならばそれに値する事はしなければならないのではないか。2人が戦うことを、〈世界〉への反逆を決意してくれた心を踏み躙って此処にいる。
「勝機の見えない戦いに挑むのは、余程の馬鹿か世間知らずか。今の貴方はどちらでもないようだけどねっ!」
「そう判断してもらえるだけで光栄だな!」
凍素で生成された槍を左肩に担ぐように移動させ、そのままの状態を維持する。先程とは違い、〈神聖術〉の詠唱を破棄した手加減なしの風の刃が飛来してくる。少しでも触れれば、その部位だけではなく周囲まで余波を喰らう。そうなるほどの密度と圧力がある。俺が避けたことで、床や壁に衝突した痕跡がその威力を物語っている。だが俺はそれが何故か驚異には思えない。
手を抜いている?まさかそんなことがあるわけがない。反逆され裏切られたというのに、あいつがそんなことをする必要性が見当たらない。自身の思い通りに動く駒であったものが、
捕縛されればチェデルキンの行っていた《
...まったく笑えないなぁ。絶対的なボスにこれまでの冒険をしていた意味を白紙化されるようなことに似てる。そしたらなんのために此処まで来たのか分からなくなるじゃないか。時間の無駄でしかない。友を裏切ってまで此処まで来たというのに、何も出来ないまま終わるのか。
...そんなことさせるわけないだろ。せっかく覚悟を決めてくれたユージオやキリトを救うためにも、どんなことがあっても失敗しちゃいけないんだ。
「セアッ!」
突進の勢いを利用して、左肩に担ぐようにしていた氷の槍を腹筋・背筋・腕力を全力投与してアドミニストレータへと投げつける。その直後、薄い水色の光を纏った〈ソードスキル〉が発動する。目にも止まらぬ速度で氷の槍を追随し、右手を突き出す。
〈片手剣下段突進技《レイジスパイク》〉。〈旧アインクラッド〉で、片手剣の中でも割と初期に入手できる〈ソードスキル〉として存在したものだ。初期から使えると言われれば、終盤になれば使われることがなくなると思うだろう。実際それは間違いではないと俺も思う。RPGというものはストーリーが進み、レベルが上がればより強い技を覚える。
だが威力が高く特殊効果のある技だけが全てなのだろうか。高威力の技を幾つも所持していたとしても、使いこなせなければ勝負には勝てない。逆に低威力でも使いこなせば、勝負に勝つことがある。
とは言うものの〈アインクラッド〉では、《レイジスパイク》という〈初期ソードスキル〉でも、対人戦闘や50層以下の階層ボスにも使われていた。通用しないという訳ではなく、ダメージが通りにくいということでもない。要は使い様なのだ。どのタイミングでどのような使い方をするかによって、〈ソードスキル〉の存在価値は変わる。
「哀れな人間。それがお前の本質なのかしらね!」
アドミニストレータが右手を伸ばして熱素を生成する。それは瞬く間に盾へと変化し氷の槍と衝突した。相反する2つの属性は、より洗練されたものが勝る。
つまりは俺の負け。
「SCA(システムコントロール権限)」が、メーターを振り切っているであろうアドミニストレータに、〈整合騎士〉にして三流の俺が勝つなど不可能だ。だから接触した部分から溶けだすことに、驚きも落胆もなかった。むしろそうでなければ俺は疑問を感じて、〈ソードスキル〉を途中で止めざるを得なかっただろう。
氷の槍が全て溶けると、今度は盾が幾重にも分裂した炎の矢に変形して、突進している俺に向けられる。槍から2mの位置にいる俺を穿つには十分すぎる距離だ。いわば必中距離であるが、驚愕も落胆も絶望も感じない。
「散りなさい!」
「させない!」
「させるかよ!」
2人の声が響く。炎の矢を弾き絞り撃ち出す瞬間、氷の鳥が飛翔して矢に突撃し、小刀程度の数多の剣がアドミニストレータを襲った。さすがの最高司祭もそれは予測していなかったのだろうか。反応が遅く、少しではあるが表情に余裕が無い。
「小癪なっ!」
「余所見は戦闘において勝敗を決する大きな要因になる。もらったぁ!」
炎の矢は氷の鳥に消滅させられ、足下や周囲は無数の小刀に包囲されている。〈神聖術〉を使おうにも、発動させてから逃げるまでにコンマ5秒はかかる。それだけの時間があれば、〈ソードスキル〉を当てることは可能である。
右手を《レイジスパイク》の発動範囲から外れる危険性があると思われるところまで伸ばす。翡翠色の切っ先が、アドミニストレータの体を今まさに貫かんとするその刹那、
雷鳴にも似た衝撃音が轟き腕に衝撃が走った。それと同時に、紫色の光の膜が短剣を中心として同心円状に現れる。輝く膜を形作るのは、ごく微細な数多の神聖文字の連なり。実体を持たないはずのその薄膜が、俺の攻撃を防いでいる。侵入を拒み傷つけるものから、我が身を守ろうとする邪魔なもの。
「っあぁぁぁぁ!」
歯を食い縛り、ありったけの力を振り絞って巨大な反発力に抵抗する。一瞬でも気を抜けば、吹き飛ばされてしまいそうなほどの力だ。それでも俺は後ろに吹き飛ばされはしない。覚悟を決めて前に進む勇気をくれるアリスを、不安にさせないためにも俺は負けられない。
そんな想いを込め、片手から両腕に持ち替えて進む。歩を進めようにも、反発力が強すぎて進めない。でも進む必要は無いんだ。
今はそれだけで十分だ。
「うっ、おぉぉぉ!」
切っ先か僅かに膜を貫いた瞬間、神聖文字が爆発して目の前を真っ白に染め上げた。
「ぐあっ!」
あまりの風圧に耐えられず、俺の身体は宙を舞い〈神界の間〉の中心から端へと吹き飛ばされる。
「カイトっ!きゃあ!」
「むうっ!」
吹き飛ばされた俺をアリスが保護しようとするが、その勢いはとどまることを知らない。俺の腕を掴んだアリスまでもがその場から吹き飛ばされる。騎士長は風圧を、腕で顔を覆うことでダメージを防いだ。壁に衝突しかけるがどうにか体勢を立て直し、両足を使って衝撃を吸収した。壁を蹴って前方へ転がり立ち上がる。
隣には厳しい表情を浮かべた騎士長が佇んでいる。先程の動きで、アドミニストレータがどれほどの強さを持つのかを知ったのだろう。それで良い。今はそれだけで。
視線を向け直すと、天蓋のレースは爆発の勢いで跡形もなくなり、円形のベッドが露になっている。その奥に直立する人影。俺と同様に障壁の爆発に吹き飛ばされたはずなのに、場所を何一つ移動していない。
長い髪が波打っているだけで、傷を負った様子はない。さすがに纏っていた薄布は、爆発の威力に耐えきれず引きちぎられ消滅しているようだ。アドミニストレータが右手を持ち上げ、長い銀髪の乱れを直した。続いて、まるで空中に椅子でも存在するかのようにふわりと腰を下ろす。
凍てつくような視線を向けられ冷や汗が頬から床に落ちる。ポタリ、という床への落下音がやけに大きく聞こえるのは何故か。空気が重く呼吸がしづらい。酸素が薄いわけでも、俺の心肺機能が衰えているわけでもないのに。でも何だろうこの窮屈さは。動きを阻害されるような不快な何かだ。
「...その剣...ふぅん、そういうこと...」
追撃せず、俺が右手に握る〈神器《翡翠鬼》〉を必要以上に凝視する銀色の瞳が恐怖。その時間は俺の心の余裕を奪うのに十分すぎた。俺の持つ〈神器〉の
「100年しか此処にいない俺にはわからねぇけどよ。あんたは何がしたかったんだ?過去も
俺とアドミニストレータの立ち位置に、割って入るかのように言葉を漏らす騎士長へと3人の視線が注がれる。
「俺より長く生きてるあんたは、そりゃ多くのことを見てきたんだろうよ。人の生死をその眼で何度も、何十回も何百回も。命がこの世界に生まれる瞬間の喜び。命がひとつ消える瞬間の悲しみ。数え切れないほど記憶にあるだろうさ。たかが1人の命が生まれ、消えていくその間にあんたの脳裏には何が駆け巡った?」
「騎士長風情がこの私を諭すとでも言うの?」
「そんなつもりはねぇよ。頭のねぇ俺には誰かを正す力はない。ただきっかけを与えるに過ぎない粗末なもんさ。...だがこの10分程度の戦闘で、俺はあんたが
騎士長という立場ではなく、1人の人間としての見解を述べるベルクーリ。100年という永きに渡って〈人界〉を護り、〈公理協会〉を支えてきた存在だからこそ言える言葉。それはとてつもない意思と決意、そして生命に溢れた言葉だ。騎士長だからこそ言えるのであって、俺やアリスが口にできるものではない。
「10分程度の戦闘で何がわかると言うの?それですべてが計れるとでも言うの?」
「無理だろうな。でもあんたはカイトを殺すつもりだった。氷の槍を溶かした後、風素で吹き飛ばして気絶させればいいはずだった。だがあんたは炎の矢を放とうとした。ほんとにそれだけのことをする必要はあったのか?」
「あったとも言えるしなかったとも言えるわ」
「...どういう意味だ」
言っていることがわからないとばかりに、騎士長が疑問を返す。俺も実際アドミニストレータが言っていることを理解できない。反逆されれば統治する者からすれば、反逆者を処断することは可能だ。統括者にはその権利が、不正を正す義務がある。だがアドミニストレータの言葉は、「反逆されれば処断しても良し、処断しなくても良し」という矛盾した意見だと推測されるものだ。
処断するならば当然理解できる。それだけの罪を犯しているということなのだから。しかし処断しないというのはどういう意味だ?殺すなら殺せ。捕縛され屈辱を味わい、アリスやユージオ、キリトにまで迷惑がかかるなら俺は命を捨てる。
「私に言わせることが出来ればいいんじゃなくて?...さて、私自身が相手するのも面倒だし、チェデルキンにでも頼もうかしら」
整った顔にもかかわらず、悪魔めいた笑みを浮かべるアドミニストレータの視線を辿ると。あろうことか
「元老長なら来ないぜ」
勝利が目の前にあることを見たアドミニストレータの顔が、怪訝そうな表情に変わり頬が緩みそうになった。言葉を発したのは騎士長でその理由は俺にもわかる。何しろそうした張本人なのだから。
「何故そう言いきれるのかしら」
「なんせ元老長は死んでるからな」
「...嘘をついて私を混乱させようという魂胆かしら?」
「いやいや、そんな面倒くさいことはしねぇよ。否定しようたって、それを目の前で見ちまったから無理だしな」
「何を見たと言うかしら?」
「元老長が死ぬところをだよ」
「なっ!」
まず言わせてもらうと、アドミニストレータの驚愕した顔を見れたことが嬉しい。普段穏やかに微笑んでいるように見えているからな。実際はそれで他人の反応を楽しんでいるが。ニヤリと笑わずにはいられないな。これだけでも此処で戦う楽しみにもなる。
「誰が殺したの?」
「カイトだよ。そりゃまあ呆気なく散っていったぜあのクソ野郎はよ」
「...
こういう風に相手に都合のいい言葉で誘惑する。それがこの支配者のやり方だ。ああ、くだらない。腹が立つ。なんてドロドロした感情だろう。身体が熱い。身体中を満たそうと血流に乗って循環していく。
「誰がその誘いに乗るかよ。俺は俺の意思で元老長チェデルキンを殺した」
「呆れたわね。再三の説得も棒に振るなんて。だったら壊してあげるわ!」
「っ!」
アドミニストレータが目を見開いた瞬間に圧が押し寄せる。左手を顔の前に持ってこなければ、瞼を閉じてしまいそうなほどに。ストンっと音がした方向を見れば、アリスが体を震わせて座り込んでいた。圧に気圧され立つこともままならない。どれほどの恐怖を感じているか俺にも少しはわかる。アリスを抱き上げ壁に寄りかからせると、アドミニストレータが視線をアリスに向けていた。
「素直ねアリスちゃんは。素直な子は好きよ。だって決して私の言うことを守らないことは無いんだもの。さて、昇降盤は上げておくべきでしょうね。いつまでも開けておく必要は無いもの」
〈神聖術〉で床の一部を操作して俺へと宙を滑ってくる。隣では騎士長も、〈神器〉を抜いて臨戦態勢を取っている。10cm近づかれるだけで冷や汗が倍になって頬を伝っていく。笑えないよなこんな状況。笑える奴といえば、戦いを諦めた敗北者か余程の馬鹿か...。
「終わりよカイト・ベルクーリ。ここで貴方達は...何?」
宙を滑る椅子が途中で止まる。〈ソードスキル〉を発動させようとしていた俺は、向けられた視線を辿る。まだ何も見えない。なのに
存在感というより安心感や幸福感と言うのが正しい。心が洗われるような爽快感。何故こんなに安らぎをくれるものを切り捨てたのだろう。損にしかならないというのに。
怖かったんだ。
嫌だったんだ。
伸ばしても伸ばしても届かない存在になるのが怖かった。それが幻想か夢であったなら、これほど焦がれることはないというのに。昇降盤が上昇を続ける。
見えてきたのは漆黒の髪。さらに硝子越しに見える夜空よりなお黒く、星々より強く明るく煌めく双眸。そして最後に、不敵な笑みを浮かべる頬と唇━━━━━━━━━━━━━━。
後ろには亜麻色の髪。さらにショーケース越しに見える宝石よりなお美しく、高級品さえみすぼらしく見えてしまう程の魅力を持つ双眸。そして最後に、温和な笑みを浮かべる頬と唇━━━━━━━━━━━━━━。
「.........キリト、ユージオ.........」
俺は涙ぐんだような情けない声音で2人の名を呼ぶ。10mも離れた場所に届く声量ではなかったが、親友と幼馴染はまるでそこにいることがわかっていたかのように、俺へ視線を向ける。そして優しく穏やかに笑みを消さず頷いた。
ーキリト・ユージオ、お前らは...。
左胸の奥深くを、言葉にできない疼きが走る。だが決して不快なものではなかった。むしろ心地良い。2人を裏切った瞬間に感じた罪悪感に比べれば、ずっと優しく甘く切なく、愛おしい痛みだった。立ち尽くす俺をしっかりと見据えたまま、親友であり剣の師でもあるキリトは笑みを浮かべて言った。
「よう、カイト」
「別れを言ったのに...」
口から出た言葉はそんなものだった。
「俺が2人の言うことを反論せず素直に聞いたことあったか?」
「...ああ、忘れてたよ。...お前ってやつは、いつも言うことを聞かなくて...」
その先は言葉にならない。
親友を裏切った罪は償えない。いくらキリトが気にするなと謝ることは無いと言ったとしても、俺の中から消えはしないんだ。背に十字架を背負ったまま死んでいく。それが俺の決められた運命だ。
「僕のことも忘れないでよね」
キリトの言葉に感極まっていると、キリトの後ろからまた泣かせる言葉が聞こえてきた。
「ユージオ...」
「本当に君は頑固だよ。昔からいつもそうだった。自分の決めたことを諦めさせるのが、どれだけ大変だったか覚えてる?」
「...ははははは、お前らは揃いも揃って馬鹿だな。馬鹿を通り越して大馬鹿野郎だよ。まったく...」
「なんたってカイトの親友で師だからな」
「なんたってカイトの幼馴染で家族だからね」
本当に泣かせる言葉を淡々と言ってくれるよ。使命を果たせぬまま、2人と此処で再会してしまったというのに。いや、キリトがユージオが自らの意思で此処に来たんだ。拒絶されたことに対する恨み言を冗談でも口にせず。さらにはそんなことを思わせること無く歓喜させる優しさ。
普通なら
音がして横を見れば、壁によりかかっていたはずのアリスと、腕組みをしながら少しばかり獰猛な笑みを浮かべた騎士長がいた。
「アリス・騎士長...」
「今こそ戦うときですカイト。2人の意思は私たち全員の意志。それ以外に必要なことは無いはず」
「ま、反逆できる最大戦力が揃ったんだ。やるべきことはひとつしかないと思うが?」
まったく好戦的な人間ばかりが揃っちゃったなぁ。これじゃ、逃げることも負けることも許されないじゃないか。酷いなぁ。でも逆に言えば、それは前に進めっていう応援でもあるんだよな。逃げ出すつもりも負けるつもりはない。今この瞬間が最終決戦の始まりなんだ。
「賽は投げられた。俺たちがやるべき事、成すべきことはただ一つ。
今此処に5人の人間が〈人界〉を統べる管理者。
否、支配者へ牙を剥く。
ベルクーリさんの出番少なすぎね?と思っている作者です。ベルクーリさんを登場させるタイミングがなかなか見つからず苦戦していますが頑張ります。
2人との再会が自分で書いててジワッときちゃいました。
セントラル・カセドラル決戦編以降の章にての質問
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そのまま続編を書く
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if編と称して2人がそのままいた話を書く