夏休みに入れば少しは書けるかな?と思っているのですが...。如何せん、忙しいのでどうなるかわかりません。
前置きはこれぐらいにして本編へ...
レッツ、パァァーリィィィ!
キリトの視線の先では、アドミニストレータがしなやかな手を口元に移動させて薄ら笑いを浮かべている。それはカイトたちに対する哀れみか。自身が存在する事への傲慢さ故か。
「あなたの詳細プロパティを参照できないのは、非正規婚姻から発生した未登録ユニットだと思って見ていたけど、…違うわね。《向こう側の世界》から来たのねあなたは」
4人に向けていた視線をキリトだけに変えて甘ったるい注ぎながら、アドミニストレータは問いかける。
「…そうだ。とは言っても俺に与えられたシステム権限は、この世界の人達と同等かそれ以下で、あんたには遠く及ばないんだけどな。クィネラさん」
「図書館の馬鹿につまらない話を吹き込まれたのかしら。それを聞いて貴方はそれを信じたの?真実かどうかを確認できないことを話されただけで」
「ああ、信じるさ」
「…」
迷うことなく信じると言い切ったキリトに、アドミニストレータは不快感を表すように笑みを消し、無表情でキリトを見定める。10m以上も距離があると言うのに、首元へ刃を突きつけられるような錯覚を覚えながら、ユージオはキリトを横目で見る。
《向こう側の世界》とは一体どういうことなのだろうか。2年前のあの日、荷物も持たず森に突如現れたことと何か関係あるのかという思考が頭の中で駆け巡る。そんなユージオの疑問を知らずして、キリトは《向こう側の世界》から来たことを認めた上で会話を続ける。
「何も知らず生きることになった俺だけど、生活することには満足してた。学院で卑怯な手段によって騙されるまでは」
「騙された...ね。それはあなた自身の弱さの現れだったのではないのかしら?」
「そうだろうな。俺は脆弱でお人好しで学習ができない大馬鹿野郎だ。でもあんたはそれ以上のクズだ」
「不愉快極まりないわね。外部からの招かれざる
言葉通りに不機嫌そうな声音で、アドミニストレータはぶっきらぼうに言い放つ。キリトからすれば、この場所に立つことを想像さえしていなかった。〈現実世界〉に帰還するためのログアウトシステムがあるかもしれないという理由だけで、此処にやって来ることになったのだから。
本当にあるかどうかもわからないのに、希望を持って長い道のりを歩んできた。あらゆる試練を乗り越え今此処に立っている。〈アンダーワールド〉の真実を知って、救おうと世界の守護者たる〈整合騎士〉を倒してきた。
隣で共に戦ってくれることのありがたさ。背中を託すことの出来る信頼性。それに感謝してもしきれないぐらいにカイトは救われてきた。〈セントラル・カセドラル〉だけでなく学院の時も同じだった。そんな優しさしか見せていない友人が
「1つ予言しようか」
「予言ですって?一介の民でしかないあなたに何が視えるというのかしら?」
「近いうちにこの世界は亡びる。あんた自身の望みが故に」
アドミニストレータの思考が一時的に停止する。
何を言っているのだろうか。外部からやってきただけの脆弱な存在が、何を知っていると言うのだろうか。これまでの苦労と情熱を、一瞬にして無駄にしようとする言葉に長年感じなかった憎悪が湧き上がってくる。
「あんたの過ちは〈ダークテリトリー〉の脅威への対抗手段として、〈整合騎士団〉を作り上げたこと。...いや、作ってしまったこと自体だからだ」
本来向けられるはずのない感情。〈人界〉を支配する自分には感じないはず。なのに、なのに何故このような感情を抱かなければならないのか。
不快!不快!不快!邪魔!邪魔!邪魔!
ああ、腹が立つ。憎たらしい。今すぐに自身の心の臓をこの手で抉り出して掻き毟りたい。できるならばこの少年の魂までも手中に収めて、耐え難い屈辱と痛みを死ぬまで与え続けたい。
「あんたも聞いていたはずだ最高司祭アドミニストレータ。ベルクーリ騎士長・ファナティオ副騎士長・デュソルバートさんの報告でさ。『〈果ての山脈〉において、ここ10年で戦闘回数が大幅に増えている』と。俺たちは命の限り戦うつもりだったが、騎士団亡き後はどうするつもりだった?民を守る手だてがあったなんて俺には思えない」
カイトの言葉に、アドミニストレータは心中で歯ぎしりしていた。満たされぬ欲望は、底のないコップのように漏れていく。底なし沼などという言葉では表せない。矯正しよう。全てを受けいれ全てを飲み干そう。それが
「私たちは〈整合騎士〉になって何度も苦しみました。僅か7年という短い期間の中で、身も裂けるような思いを何度もしました。300年の永きにわたって、〈人界〉を守護し続けた叔父様のお気持ちが貴女にわかるのですか!?自分自身の思いどおりになる駒として、私達を造り上げた貴女に!」
「...心外ね。私はあなた達を愛していたわ。〈ダークテリトリー〉の侵入者に敗北して、情けなく帰ってきた騎士たちに愛想をつかすことも無くね」
「違います!それを愛しているとは言いません!貴女に命じられ、命を散らす覚悟を持って戦ってきた騎士を情けないと言い放つ。それは支配者がしていいことではありません!」
アドミニストレータの情を一切含まない声音に、アリスは叫ばずにいられなかった。責務を果たそうとした者に哀れと思い、労うこともしない。人を人として見ない在り方に、人を愛しているアリスには納得できない。
「いいえ、それは愛なのよ。人はいつしか壊れその身を消してしまう。でもね、
「...壊れています」
「壊れてなんかいないわ。壊れているとすればそれはあなた達。せっかく
人間性の欠けらも無いアドミニストレータの言葉がアリスに衝撃を与える。人を人と思わず物としか見ていないその考えは、
「壊れているのはあんたの方だよアドミニストレータさん。人は人であって物じゃない。知性を宿し生きる術を探していく。それは生き物として当然の義務と権利なんだ。奪い去る資格はあんたにも他の誰にもない」
「部外者がしゃしゃりでてきちゃって。なら言わせてもらうけど、あなたにも私を叱る権利はないわ。此処のそしてこの世界の支配者たる私を裁く者は誰1人いないのだから」
熱に浮かされたような言葉を漏らすアドミニストレータ。いや、実際に自身の欲に振り回されているとしか思えない。その吐き出し口は、反逆者であるカイトたち以外に向けられることは無い。
「最高司祭さんよ、あんたを裁く者がいなきゃこの世界は壊れるんだ。壊れる原因は、
今まで1度も口を開かなかったベルクーリがその口を開く。それがどういうことを意味しているのだろうか。
「私が愛するこの世界を壊す?有り得ないわね。こんなにも愛おしいというのに。では聞くけど、《向こう側の世界から来た》あなたはこの世界が終わればいいと言うのかしら?」
「いや、そんなことはない。むしろこの世界が繁栄してくれればいいと思っている」
「なら「けど、」...」
「けど、あなたのような独裁者に任せることは出来ない。自由を奪い成長する機会までも失わせるあなたの考えは、いつかこの世界を滅ぼす元凶となりうる。あなた自身までも破滅させるだろう」
自身の願望による崩壊。それは在るべき姿ではない。自信が望むのは世界の平和と安定。自分の思うがままの姿こそがあるべき本来の姿である。崩壊などさせるものか。自分はこの世界を
「クスッ、あはははははははは!可笑しい!可笑しいわね!私が望む世界を私自身が壊すなんてあるはずがないのに。...いいわ、そこまで言うのなら自身の行動が、どれだけ愚かで愚劣なのかをその身を以て知る機会を与えましょう。おいでなさい私の人形にして忠実なる僕!魂なき殺戮者よ!〈
「「「「「なっ!」」」」」
アドミニストレータの口から放たれた無慈悲極まりない宣言。それにはさしもの〈整合騎士〉の3人と、キリトとユージオは驚愕せずにはいられなかった。神器の奥の手である〈武装完全支配術〉を超える〈記憶解放〉に恐怖する。両手を広げたままの状態で何が起こるというのか。武器になるものを何一つ持たないアドミニストレータに何が出来るのか。
何が起こるかわからず、呆然としている5人の耳が微かなしかし確かな音を拾い上げた。キンキン、という高い金属音が断続的に、そしてどんどんと大きくなっていく。後ろから右から左から。最終的には全方位から同じ音が聞こえてくる。
5人が
「こ、これがっ!」
「ありえん!」
「そ、そんな、...!」
「馬鹿な!」
「無茶苦茶だ!」
眼にすれば誰もが疑ってしまう光景が目の前で行われている。直径40mにもなる巨大な空間を支える柱が無数に生えた〈神界の間〉。その柱を飾る模造の大小様々な黄金色の剣が、宙を舞って形作っていく。比較的小さな剣が脚となり巨大な剣が胴体となり、最も大きな3mにもなる大剣が両腕を成す。剣で体を形成した剣が剣を振るう。
普通ならばありえないことなのだ。〈記憶解放〉は自身と一体になるほどにまで使い込まれたものでなければ、扱うことなど不可能である。持ち主と愛剣が深い絆を結ぶことで、初めて剣の記憶に触れることが出来る。
〈整合騎士〉や自分を崇めている民を人間として見ていないアドミニストレータが、30本もの模造剣の記憶を共有することなどできるはずがない。彼女が解放した記憶とは一体なんなのだろうか。人間の倍以上の4本もの脚を持つ巨体。もはや剣などではなく怪物としか形容できない。
そしていつ何処から取り出したのか。アドミニストレータの左手には〈
その模様が光を放ったと思うと、激しい閃光が5人の視界を塗りつぶしていく。紫色の光は、怪物の胸部から腕・腹部・脚を舐めるように広がっていく。光が全身を覆うと、飾りでしかなかった剣の刃部分が鋭さを取り戻す。鋭利なそれは、触れるだけで裂けるのではないかと思ってしまうほどだ。
この瞬間に、アドミニストレータの術式が完成してしまったとカイトは覚る。防ぐためアリスを危険に晒したというのに間に合わなかった。会話中に飛び込むことは不可能に近いと分かっていた。
飛び込めば、5人がまとめて攻撃を受けることが容易に予測できるからだ。それにアドミニストレータは隙という隙を一切見せていない。リスクが高すぎたことがカイトの心に歯止めをかけていたのだ。
アドミニストレータが勝利の微笑みを浮かべた。
その直後。
怪物は巨体を軽々と持ち上げ高く飛翔すると、アドミニストレータとカイトたちの中間辺りに硬質な地響きを立てて着地する。身の丈5mはありそうな巨体を見上げながら、カイトたちは後退ってしまう。見た目は子供が絵に書いたようなお茶目なような...でも実際はそれほど可愛げのあるものでは無い。ましてや命を刈り取るような剣先が見えてはさらに恐怖がある。
「...有り得ない。同時に30もの武器に対して、ここまで大掛かりな術式を使役できるなど術の理に反している。アドミニストレータとはいえ、〈神聖術〉の大原則には背けないはず...」
「思い知ったかしら?これが私の望んだ力。決して逆らわず私の命令通りに動いてくれる人形。攻撃に特化した最強の兵器。そうね、名前は《
「剣の...自動人形...」
神聖語ならざる
「攻撃に特化したか。でも攻撃に特化したものは
「何?」
「聞こえなかったか?それはつまり
カイトが腰から愛剣である〈神器《翡翠鬼》〉を抜刀する。アドミニストレータに向けると思いきや、《翡翠鬼》の切っ先を天を突き上げた。
そして...。
「《
《記憶解放》を発動させた。
「ぬあっ!」
「きゃっ!」
「うおっ!」
「うわっ!」
爆発的な風圧に、近距離にいた4人が大きく吹き飛ばされる。重厚な鎧を着ていないとはいえ、軽々とベルクーリの巨体を吹き飛ばす圧力は尋常ではない。床に転がりながらも顔を上げたアリスは、カイトが持つ剣に起こる現象に眼を見開いて驚愕した。
刀身部分が引き伸ばされるかのように長くなる。80cmほどしかなかった刀身が今では1mを越えていく。すると突如として刃部分が湾曲して鎌のように形取る。さらには、持ち手部分も同様に上下に伸びていき1m50cmほどにもなる。さらに極めつけは、柄頭であった所から長い鎖が伸びていることだ。
本来の姿へと形取った瞬間に淡い緋色の光が弾ける。反射的に閉じた瞼を持ち上げてみる。そこには膝立ち程度まで腰を下げ、《翡翠鬼》を握る右手を背中まで回した姿のカイトがいた。鎌の部分が天を向いているため、
両肩から流れる毛皮のようなフード付きのロングコート。長袖の袖口にも似たものがある。肩口から袖へと伸びる緋色のラインが、そのフード付きロングコートの存在感を倍増させている。
「カ、カイト...」
フードによって見えない横顔にはどのような感情が込められているのだろう。これほど身体に吹き付ける圧力が何を意味しているのか。
吹き付ける圧力とは言っても、アドミニストレータの召喚した《ソードゴーレム》とは別種のものである。《ソードゴーレム》からは〈傲慢〉・〈憤怒〉・〈憎悪〉といった負の感情が
これが〈
カイトと《ソードゴーレム》の発する圧力がぶつかり合い、火花を散らしている
『...〈記憶解放《襲色 紫苑の鎌》〉』
カイトがカイトらしくない声音で〈記憶解放〉した《翡翠鬼》の"真名"を呟いた瞬間、《ソードゴーレム》の右腕の剣が刀身半ばから粉々に
『さあ、始めよう
カイトが目の前に立つアドミニストレータへ、本格的な宣戦を告げる。
その姿はまさに、命を刈り取る《死神》のようであった。
ちょいとカッコつけすぎましたかね?次回以降にカイトの本領がついに発揮されます!
それではまたお会いしましょう!
オッス、オラ○空。カイトの奴すんげぇもん隠してたぞぉ、おっでれぇたなぁ
。どんな風に《ソードゴーレム》っちゅうバケモンを倒すのか、オラワクワクすっぞ。
次回、アリシゼーション~アリスの恋人〈不滅〉。ぜってぇ見てくれよな!