アリシゼーション~アリスの恋人   作:ジーザス
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原作との相違があまりない…

オリジナル展開もっていくのは難しい…


二度目のルーリッド
出逢い


鼻腔に流れ込む匂いに体が歓喜する。

 

木々の芳醇な匂い、湿った土の匂い、草木の青々とした匂い。どれもがダイレクトに自分の脳を刺激する。

 

嗅覚だけではなく聴覚にも意識を傾けてみると、これもまたダイレクトに脳を刺激してくる。

 

川のせせらぎ、小鳥のさえずり、木々の葉の擦れる音、吹き抜ける風。

 

どれもが爽快に自分の胸を満たすが、自分が住む地域とはかけ離れた情報に首を傾げたくなる。人間がもっとも情報を得ている視覚で確認するために眼を開けると驚いた。

 

森の中に倒れていたらしく、俺の眼には樹齢何十年ともわからない巨木が数えきれないくらいに生えているのが見えた。

 

「どこだ?ここは」

 

呟く俺に返ってくるものはない。

 

何故ここに自分がいるのかここはどこなのか。あらゆる疑問が湧いてくるが、まずは自分の認識が先である。

 

俺の名前は桐ケ谷和人十七歳と八ヶ月。埼玉県川越市で母と妹の3人で暮らしている。

 

ソードアート・オンラインで2年間を過ごし、そのなかでアスナと出会った。クライン、エギル、リズ、シリカと色々なクエストに行った。

 

ガンゲイル・オンラインではシノンと共に《ラフィン・コフィン》の生き残りと戦った。

 

まず自分の個人情報と記憶が滑らかに出てきたことに安堵する。つまり記憶喪失のような、自分が誰かわからないということはないようで一安心だ。

 

息を吐いたことで顔をわずかながら下に向ける。そこで自分が奇妙な服装をしているのが見えた。

 

荒い木綿もしくは麻のような半袖シャツにベルトが巻かれたズボン。そして革製の鋲が靴底に打ってある靴。

 

まるで中世ヨーロッパ風の、言い換えればファンタジー風のチェニック、コットンパンツ、レザーシューズ。〈仮想世界〉でのありきたりな服装であることに気付いてもう一度安心する。

 

〈仮想世界〉であるならば自宅の付近と様子が違ってもおかしくはない。どういう理由で自分がここにいるかわからないので、さっさとログアウトしようと右手の人差し指と中指をまっすぐに揃えて縦に振った。

 

いわゆるメインメニューを呼び出すためのコマンドだが何も起こらない。もう一度振るが結果は同じ。

 

左手なのかもしれないと思い左手で行うが右手でやったことと同じになる。〈仮想世界〉ではないのかと疑問に思うが、ここが本当に〈現実世界〉であればおかしいのだ。

 

このような場所が日本にあるとは思えないし、地球上にあるとは思えない。ここまで原始的な自然が残る場所など本当に数える程度だろうし、あったとしてもそこに人間1人を放置するなどあり得ない。

 

そういう場所は国や機関によって厳重に保護されているから無断侵入は不可能だ。

 

それを踏まえるとここは、指のコマンドでは外に出ることのできない〈仮想世界〉ということになる。

 

自力では脱出できない(・・・・・・・・・・)。それは彼のデスゲームであるソードアート・オンラインを思い起こさせる。4000人が亡くなった人類史上稀に見る悲劇的な事件。

 

誰もが二度と経験したくないことがあったにも関わらず、俺は憎しみ以外の感情を抱いている。それはアスナという大切な女性と巡り会えたからだろうが、それだけではないはずだ。

 

俺はあの世界に、あの城で確かに生きた。

 

憎しみがないわけじゃない。サチや、ケイタ、テツオ、ディアベルなど自分の目の前で消えてしまった人を思い出すと、憎悪に似た感情が沸き上がってくる。

 

憎しみ以外の感情。それを言葉にするのは難しい。2年間のデスゲームの中でたった2週間という短いアスナとの生活で、16年分の幸せを噛み締めた。

 

あの時間に戻りたいという気持ちと、あれは記憶に残しておきたいという相反する感情が渦巻く。記憶にあるからこそ大切に思えて大切にしたい。

 

この世界は〈仮想世界〉であったとしてもSAOやALO、GGO以上に〈現実世界〉に酷似している。いや、もはや〈現実世界〉と言ってもいいのではないか。

 

それほどまでに再現力が高い。試しに近くの草穂を千切ってみる。今まで自分がプレイしたゲームであれば、こうして決められた座標からはずれてしまうと本来の姿を保てなくなり、ポリゴンとなって消え去るはずだ。

 

なのにこれは消えない。それに葉脈や千切った瞬間の感覚などが〈現実世界〉となんら変わりがない。

 

これほどの再現度を誇る技術を有している企業を俺は知らない。これだけの技術があるのであれば特許を申請していてもおかしくないはずだ。

 

VRワールドを生成できる技術。〈仮想世界〉関係の特許等は俺も逐一調べているからある程度のことは網羅している。

 

まさか3日間のバイトとは関係あるまい。あのときの記憶は断片的で思い出せることなど…。

 

思い出せない?それはつまり中で見た記憶を消されているということ。

 

記憶とは脳の中で色々なものと絡み付いて一つの記憶を形成している。

 

心は記憶と結び付いていると考えたはずだ。心とはどこにあるのか。脳細胞のニューロンとニューロンの隙間。シナプスにあるものが心ではないかとアスナとシノンと共に、エギルが営業しているダイシー・カフェで話し合った。

 

そして細胞にはそれを支える骨格があり、それは中空の管になってその中にあるものが存在している。

 

そこには〈光〉がありそれ自体が人の心ではないかと《RATH》の職員は話していた。

 

それだけの技術力があればもしかしたらこのような〈世界〉を作り出せるかもしれない。

 

「《ソウル・トランスレイター》の中。ここは〈アンダーワールド〉なのか?菊岡さん!比嘉さん!ここから出してくれ!システムに異常が発生しているみたいだ!」

 

どれだけ叫んでも返事は返ってこない。〈仮想世界〉であるならば観察しているのだろうが、どうやら今はいないらしい。

 

もしかしたら俺の〈仮想世界における習熟度〉とかというしょうもない実験をしているのかもしれない。だから関わりを持たず俺本来の腕でできることをしてみろとでも言っているのだろう。

 

なんとも難しいお題を出してくれたものだと嘆いていると、遠くから心地よい不思議な音が聞こえてきた。半ば自然に体が動きだし、音がする方向に足を向け歩き出した。

 

どうやらその音は常時鳴り響いているわけではなく、一定間隔で鳴っては鳴らずを繰り返しているようだ。音が聞こえなくなると方向がわからなくなるので、鳴り始めるとその方角へ足を動かすという行動を繰り返した。

 

何度目とも知れない行動をしたあと目の前に広がる光景に驚く。空き地の広さは差し渡し30mほどはあるのだ。そしてその空き地の真ん中には、直径4mは軽くある巨木がそびえ立っている。

 

呆気にとられて無意識のうちに足を動かし、巨木が広げる枝の下まできていた。なんと恐ろしく巨大な樹だろうか。これほどまでに巨大な樹は日本でもそうそうないと思われる。

 

俺はその樹の裏に人がいるとは思わず足を踏み出していた。

 

「君は誰?どこから来たの?」

 

感服していると声をかけられ、とっさに愛剣があった部分へ右手を持っていってしまった。

 

誤魔化すように右手を後頭部へと持っていく。今聞こえたのは紛れもなく俺の母国の言語である日本語だ。わずかにイントネーションが異なるが気にするほどではない。

 

東洋人とも西洋人とも言えない不思議な顔立ちの少年は俺と同じような年齢に見える。

 

何より眼を惹いたのは濃いグリーンの瞳だった。それを見た瞬間、俺の脳裏に懐かしい光景が浮かび上がった。

 

夕焼けの中、空色のワンピースを着た金色の髪の少女とその手を握る茶髪の少年。そして黒髪の少年の横に立つアッシュブラウンの髪の少年。

 

見るだけで胸に込み上げてくる焦燥。いつまでも続くと願い、望んだ時間。黒髪の少年が自分であると何故か言いきれる。

 

あり得ない。俺はあのような世界で生きたことはないのだから、今の光景は気のせいのはずだ。

 

なのに何故こんなにも胸が苦しいのか。可能性があるとすれば3日間に及ぶテストプレイだが、あれは確か内部時間では10日間しか過ぎ去っていないはずだ。

 

この胸の疼きは10日間やそこらで育つような感情ではない。幼き頃から何年も何十年も一緒に暮らしていなければ感じられない感情なはずだ。

 

「君どうしたの?どこか痛むのかい?」

 

言われて頬を撫でると一筋の光の川ができていた。泣いている?俺が?

 

何故だろう止めたくても止められない。目の前にいる少年の顔を見つめれば見つめるほど涙が、あとからあとから止めどなく溢れてくる。

 

「ユージオ…アリス…カイト。俺は…」

「え!?何で僕の名前を。それにその2人は…おい!」

 

遠くで少年の声が聞こえるが体が動かない。頬が柔らかい何かに触れたと気付いたのは、視界に緑の草が見えてからだった。倒れたのかと認識した頃には俺の思考は途切れていた。

 

 

 

僕は突然背後に現れた黒髪の少年に驚いた。服装は僕と変わらないのに、何処か孤独を味わってきたような悲しみを纏っているように見えた。

 

声をかけると不思議な動作で右手を背後に移動させ僕の顔をじっと見てきた。自分の顔に何かついているのか疑問に思ったけど、そのことは頭から消え去った。

 

何故なら目の前の少年が涙を流し始めたんだ。気になって聞いてみたら、いきなり僕の名前を呼んだんだ。

 

それだけでも驚きなのに、今度はあり得ない2人の名前を口にしたんだ。もう誰もが忘れて、ううん忘れたんじゃない消したんだ。2人がいなかったと思い込むうちに。

 

倒れた少年に呼び掛けても返事は返ってこないから怖くなって〈天職〉を一時中断して彼を村に連れていったんだ。

 

そして今に至る。

 

「森に突然現れて突然倒れたのですか?」

 

そう聞いてくるのは〈ルーリッドの村〉にある協会のシスター、シスター・アザリヤだ。厳格で規律には厳しいけど優しい人だから文句はないんだ。

 

それより彼について聞いておかなきゃ駄目だ。

 

「彼は大丈夫ですか?」

「医学の専門ではないのでなんとも言えませんがおそらく大丈夫でしょう。のちほど先生に診てもらいますから貴方は〈天職〉に戻りなさい。診察結果は明日お教えします」

「わかりました。それでは彼をお願いします」

 

お辞儀をしてから協会の外に出ると一人の少女が立っていた。橙と黄を混ぜたような明るい髪に修道女のような服装の少女は、なんとも言えない表情で僕をを見ている。

 

「どうしたの?セルカ?」

「彼は誰?どこから来たの?」

 

そう聞いてくるのが普通だろうと僕は思った。いきなり僕が午後の〈天職〉をせずに村に人を担いで帰ってきたら驚くよね。

 

「わからない。休憩のあとに振り返ったら《ギガスシダー》のところに立ってたんだ。たぶん南からやってきたんだと思う」

「南?〈ザッカリアの街〉から来たって言うの?」

「あの服装でこれるわけないよ。たぶん何かあったんだよ」

 

〈ルーリッドの村〉からもっとも近い場所にある街は、南に真っ直ぐ3日程歩いたところにある〈ザッカリアの街〉だ。

 

着替えや食料を持たずにここまでこれるとは到底思えない。

 

「もしかしたら《ベクタの迷子》なのかも」

「お伽噺でしょ?」

 

《ベクタの迷子》とはソルス神やテラリア神、ステイシア神と並ぶ神の一人だ。3柱と違ってベクタは悪の神だけど。

 

ある日突然いなくなったり逆にどことも知れない場所に現れる人を〈ルーリッドの村〉ではそう呼んでる。生まれた頃やそれまでの記憶をすべて消し去って知らない土地に悪戯で放り出す。

 

無責任だけど神だから許されるとか。

 

「それだったらできるだけ記憶を取り戻してあげないと。その人の村の人や家族が心配するわ」

「うん。でもねなんとなくだけど彼が現れてから僕は落ち着かないんだ。なんだか胸に空いていた穴に何かががはまって元に戻ったような感覚があるんだ」

 

馬鹿にされると思ったけど意外なことにセルカも驚きの言葉を口にした。

 

「あら、偶然ね。私もよ」

「え?セルカも?」

「言葉には表せないんだけど、なんだかね安心できるの」

 

確信がないのに不思議と長い間会えなかった人と会えた気がする。そんなはずがないのに。黒髪の少年なんてこの村にいなかったはずなのに。

 

「取り敢えず僕は〈天職〉に戻るよ」

「頑張ってね」

 

セルカの声に手を振ることで返事を返して、午後の分の仕事を終わらせるために《ギガスシダー》に向かって走り出した。

 




原作と少しだけ違うのはキリトが〈アンダーワールド〉で過ごした記憶を思い出すのがユージオに会ってから、そしてユージオとセルカの関係は良孝であることですね。

どうすれば皆さんが楽しんでもらえるようなオリジナリティ溢れる物語になるのか模索しています。


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