いつから僕は狂人になったのだろうか   作:デルンタス

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第5話

雲1つない空に喜ぶかのように太陽が世界に光を浴びせる。

肌寒くなってきた季節にありがたく感じるそれは高まっている人々の気持ちを一層に盛り上げた。

 

本日は怪物祭。

大規模ファミリアであるガネーシャファミリアが主催する祭りである。

 

交通量も多いと言えど普段は詰まることなどないメインストリートが上から見て地面すら覗けない程に人が集まる。

それはオラリオ中の人々が各方角のメインストリートにしか居ないのではと考えさせられるほどだ。

 

今日はダンジョンに潜らずに自由行動になるファミリアも決して少なくはない。

 

またこの怪物祭は勿論数人での行動しているのが殆どだが、例え1人だったとしても楽しむことができるよう工夫が凝らされているのだろう。実際に1人で祭りを回っegfiugugufoホラと見受けられる。

 

しかし白髪混じりの男ロウグは道の端で壁に寄りかかりながら所在なさげにしていた。

主神は知り合いの神と用事が

あると出掛けていき、残されてしまったためだ。

初めは祭りに参加する気などはなかったが、主神ネメシスがロウグに祭りに参加するよう指示したのだ。

あわよくば彼の精神が自立してくれることを望んで。

 

そんな事も露知らず、ロウグは退屈だと言わんばかりの表情を浮かべ、空を眺めていた。

ネメシスの願いとは裏腹に彼自身、この体で楽しむことはいけないことと認識していてしまってるのだ。

また本来ならばダンジョンに潜っている時間帯のために他の事への時間の割り振りが出来ないのもあった。

彼は力を求めている。しかし戦闘狂ではない。

彼は自身の体を「これ以上」傷つけたくないのだ。この世界で自信を傷つけ得る要因を排除する。そのために力を求め傷つく原因となる戦いをしている。

それはどちらかを求めれば確実にもう一方もついてくる切ろうとも切れない性質だった。

 

太陽がいつの間にか真上に位置している。

丁度お昼頃だから。と彼は昼食を取ろうと腰をあげる。どこで摂るか、そう考えて1番に考えるのが豊饒の女主人だった。

折角の祭り、露店でもいいかと思ったが得てしてこういった催しの際に出る露店は大概が高い。

ならば少し歩いてちゃんとした場所で食べよう。そう考えながら足を動かす。

 

目前に豊饒の女主人が現れ、今日は何を食べようか考える直前、自身の前を駆けていく銀髪の少年を見かける。

 

「わかりました!届けてきます!」

 

そう言い走り出す少年を何時ぞやのエルフがその背を見送っていた。

 

ロウグもまたその少年には見覚えがあった。

まだ若く、発展途上だと言うのにも関わらず、乏され将来への道が閉じてしまうのではと思ってしまっていたのだが、その考えは杞憂であったらしい。

そう、ロウグが結論付け、今度はこの人混みの中なぜ急ぐのかと疑問が浮かぶ。が、それも自らには関係ないことと思考から切り捨たところで、エルフの店員……リューがこちらに気づく。

 

「こんにちは。中で食事を摂られますか?」

 

ロウグに気づき薄く目を見開いたのも束の間、慣れた対応で質問をする。

 

ロウグがその返答として1度頷くと店の中へと案内をする。

 

中に入るとやはり祭り故かその状況は繁盛とはお世辞にも言えない。

皆露店で食べ歩きでもしているのだろう。

 

そう考えながら自らがよく座る端の席に座る。

 

注文を伝え、リューがミアにそれを伝えた後、こちらに近づいてくる。

 

「貴方と入れ違いになってしまった少年ですが、あれ以来直接お礼と、払わせてしまった代金を返そうと毎日店に通っています。

ですのでもし、都合よく合われた場合、受け取ってあげて欲しい。」

 

面と向かって伝えられたら断れない。

それにそのぐらいならば断る必要も無い。

その考えを持って伝えるように深く頷くロウグ。

 

また、リューは意を決した様に重い口を開く。

 

「ロウグさん、質問があります。

 

貴方の2つ名である『消失』や、人々から呼ばれている『狂人』のことです。

私は……貴方がそのような名を渡される人ではないと思います。

 

昨日の一件で貴方が何か重いものを背負っている事は分かりました。

 

しかし、言ってみればそれだけです。」

 

事実、リューはベートとの争い等からロウグが“何か”重いものを持っている事は理解出来た。

しかしそれが何かは、知らない。

 

ロウグが持つ身体の表面に浮いている闇を。

ロウグが抱える精神を蝕む闇を。

 

故にリューは求める。

既に踏み込んでしまったこの身体、後戻りはしない。

嘗て、正義を掲げたこの自分成してしまったことが許されるとは思わない。しかしそれは苦しんでるであろう人に手を差し出さないことと同義にはならないのだから。

 

故にリューは悩む。

故にリューは手を差し伸べる。

故にリューはその身を抱きしめるだろう。何故なら彼は、まだ15の少年なのだから。




また間が空いてしまい申し訳ないです。
4話を投稿してからアクセス数の伸びが大きくなった気がします。
未だ拙い部分だらけですが応援お願いします

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