魔法少女リリカルなのはStrikerS 【ブレイカー】 作:凡人Mk-II
早朝、ディンは仕事が始まるやいなや部隊長室へと向かい外出の許可を取りに行く。レオンから連絡が行っているとはいえ何も言わずに六課を出て行くのはまずい。
「失礼します。ディン・ハーミット一等陸士です」
一言断りをいれて部屋に入ると、はやては仕事を開始していたようでホロキーを打っている。隣には明らかに人間サイズではない人形のような人がいる。リインフォースⅡ曹長。はやての副官だ。彼女の机も律儀に人形サイズになっている。オーダーメイドでもしたのだろうかとディンは余計な事を考えた。
「レオン・タッカー一等陸佐より連絡は来ているでしょうか?」
連絡が行き届いていないのは有り得ぬとはいえ一応ディンは確認を取った。はやてはホロキーを打つのを止めてディンを見る。その目に疑いの色は無かった。
「ええ、聞いてます。何でも引継ぎ作業に不備があったとか」
「はい。自分の無能を相手に押し付けるのは心苦しいですので、一度一課へと戻る許可を頂きたいのです」
無論、嘘だ。ディンは引継ぎ作業を一つの不備なく終えている。これはあくまで怪しまれずに一課へと戻る口実に過ぎない。
「許可します。作業が終わり次第六課へ戻ってください」
事務的なやり取り。だがこれでいい。こうしてくれた方がディンとしても楽だったからだ。捜査する対象に気に入られすぎると流石のディンも無意識の内に少々ではあるが判断へ主観と客観が混在してしまう。
「あ、それと。少し聞いてもいいですか?」
「自分に答えられる事でしたら」
「ディン陸士は一課から出向して来たでしょう」
「はい」
まさかとは思うがこちらの思惑がばれているのか。いや、それにしたってはやての目が随分と穏やかだ。ディンの経験上そういった目で、さも当然に事実を突きつけてくるような人間もいたにはいたがはやてはそういった部類の人間ではないように思えた。
「もしよければ、一課について聞かせてもらえませんか?」
ディンは何故、はやてが一課について聞きたいのかおおよそ理解した。捜査のおいて管理局一と謳われる一課の協力を仰ぎたいのだろう。そのために自分に渡り舟となってほしいと言ったところか。
「一言で言うのならば地上捜査部第一課は『多忙』これにつきます」
「多忙、ですか」
「ええ。まず一課は捜査依頼として来るのが地上だけではなく海の依頼も来るのです。その時点で他の隊よりも作業量が倍近くになります。六課で言うのならば今の作業量に倍以上の何かが追加されます」
「うはぁ……」
嫌そうにはやてが顔を顰めた。一課は六課よりも通常の作業量が考え付かない程多い。それだけに隊員の数も多いか、と言われれば答えはNO。他の捜査部とさして変わらない。にもかかわらず部隊を回していけるのは隊長であるレオンの手腕が優れているからだ。何よりも隊長と部隊員が固い絆と信頼で結ばれている。作業効率も他の部隊とは比べ物にならないくらい良い。だからこそ、お鉢が回ってくるのだが。
「加えて、捜査部であるにも関わらず違法犯罪者の根城に押し入り逮捕するのも日常茶飯事なので、本当に多忙を極めますね」
「……? 捜査部なのにどうして逮捕までするのですか?」
基本的に捜査部の仕事は違法犯罪者の密輸ルートの特定や不正の起訴だ。大規模な違法犯罪者組織の逮捕は武装局員に回るのが常、なのだが
「海ならばそうなのでしょうね。ですが、陸はそれほど余裕があるわけではありません。それに一課は血の気が多い人物がいるので、そっちが証拠を掴めば後は逮捕に踏み切る事が多々あるのです」
少しはやての表情が動いた。意外なところで陸の逼迫具合を感じたからか。それとも一課の一面を聞いたからかはディンには分からない。
「……八神部隊長。一課に捜査依頼を申し込みたいのなら諦めた方がよろしいかと」
「へぇ、何でそう思ったんですか?」
はやての瞳の奥にきらりと、光が走った。目付きも心なしか鋭くなった気がする。リインは二人の会話を黙って聞いてる。
「一課に協力を仰ぎたい。しかし陸では捜査依頼を出そうにも蹴られる可能性がある。だから陸所属の人間を通せば多少は融通が利くかもしれない。そんなところでしょうか」
「鋭いですね。しかし、六課の現状を事細かに説明しましたかね?」
「陸の一部人間の貴女への評価と対応を見ればこれくらいの予想はつくかと」
親しい者は抜きにして、はやては陸の一部の人間からは敬遠されている節がある。そういった部隊に捜査を任せるのは不安だろうし、海に捜査依頼を申し込んでいるとはいえやはり陸の事は陸に所属する局員がよく分かっている。情報伝達も陸に頼んだ方がよっぽど速い。
「流石は一課の局員、かな」
「恐れ入ります」
六課の部隊長であり、ディンが捜査をするにあたり警戒するべきはやてにこう言ったのは理由がある。一課に捜査を依頼すると自然とはやてか、フェイトが一課へと赴く事になる。それがディンにとってまずいのだ。一課で自分の評価や人なりなどを聞かれて、もし怪しい部分が出てきたのなら小狸と呼ばれるはやての事だ。自分を調べるに決まっている。その中でレジアス・ゲイズ中将と家族同然の仲だと知られれば最悪の形になる。それを避けるためにディンははやてに忠告した。はやても一課に居たという経歴から多少勘が働くのは当然かと思うはず。
「まぁ、それとなくレオン一等陸佐に伝えておいてください」
「了解しました。では失礼します」
ディンは部隊長室を出た。ドアが閉まり外へ歩こうとすると
「あ、あの時の人」
シャマルが居た。はやてに用でもあったのだろう。手には何かの資料らしき紙を持っている。機材の資料かそれとも予算関係の書類か。どちらにせよ急がなければいけないディンは一礼してシャマルの横を通り過ぎようとした。
「あ、ちょっと待って」
「何でしょうか?」
「この前はありがとう。それで名前、聞いてないと思って」
そういえば、あの時全くお互い名乗っていなかったとディンは思い出す。ディンにとってあまり珍しい事ではないのだが、あれだけ会話があって名乗らなかったのは初めてかもしれない。
「そうでした。ディン・ハーミット一等陸士です」
「そう、ディン君って言うのね」
「ディン君ではありません。ディンです」
「ふ、ふふ、やっぱり不思議な子」
ディンの返事がおかしかったようでシャマルはくすりと笑った。それにディンは何か笑うような要素があったかと不思議がった。
「すいません、用があるので失礼します」
「そう、呼び止めちゃってごめんなさいね」
振り返らずにディンはそのまま歩き、少し早足になりながら六課を出る。そして六課の駐車場へと向かう。そこにはディンの私物であるバイクが置かれている。支給品で車もあるのだが、スピード面を考えるとディンが持つバイクの方が圧倒的に速い。目立つかと思ったのだが、ヴァイス・グランセニックというパイロットやその他の局員達も自分のバイクなどを持ってきていたため、ディンはその中にバイクを紛れ込ませたので特に目立つような事にはならなかった。
ディンの乗るバイクは機能性を重視されて作られており自然と無骨なデザインとなっている。色は漆黒。これは夜間などの任務で目に止まり難くなるようにする配色だ。キーを挿入口に差し込みエンジンをかける。アクセルを踏み、ディンは目標の運送会社へと急いだ。
機動六課は少々交通の便が良くない場所に建てられているが、街まで極端に遠いわけではない。標識に書かれている速度制限ギリギリの速さでディンはバイクを走らせる。レオン達はもうアジトに到着して包囲している頃だろう。こちらも後十数分もしない内に目的地へと到着する。南部から東部へと入る道路に出た時、ディンへと通信が入った。
『よう、ディン。そっちはどうだ?』
ディンの顔の斜め前に小さなホロウィンドウが開いた。それに映るのはディンの直属の上司、レオン・タッカー一等陸佐。かの地上捜査部第一課の部隊長である。グラサンをかけて黒い髪をオールバックにしている。気さくで話しやすそうな空気を醸し出してはいるが、よく他の局員から「局員っぽくない」と評判の男である。例えるならヤクザっぽい。190に届くかと言うほどの身長と大柄な体躯、黒いグラサンがそれを助長している。グラサンはある理由からかけているのだが、ヤクザっぽいというのはあながち間違っていない。ディンは昔、レオンがそっちの世界に居たというのを聞いた事があった。尤も、ディンにとっては気さくな頼れる兄貴分なのだが。
「あと、十二分ほどで到着します」
『おう、手は回しておいた。あっちに着いたら管理局員の証明書を見せればすぐに通してくれる』
「分かりました」
ディンは職場での態度を崩さない。今のレオンとディンの関係は上司と部下。そこに私情を入れる気はディンにはさらさらなかった。それをレオンも分かっているのだろう。必要な情報だけを伝えている。
『こっちはもうアジトを包囲してる。後は踏み込むだけだ』
「お気をつけて。こちらも、目的地が見えました」
『あいよ。こっちも馬鹿共を捕まえたらそっちに向かう。気をつけろよ』
それはお互い様である。レオンは複数の危険物やロストロギアがあるアジトへと押し入り、ディンは周囲を焼け野原にする威力を秘めたレリックがあるかもしれない場所へと赴く。どちらも命懸けで、言葉では言い表せない緊張と危険があるのだから。
通信を切り、ディンは目的地である運送会社の駐車場へバイクを止めた。中々に立派な構えの会社である。人と娯楽が集まる場所から少々離れており、交通の便もよい。人通りも激しくない事から車の出し入れも簡単に行えるのだろう。立地条件としては随分と良い。ただ、それが今回に限っては最悪の状況を招くかもしれない。人が密集している場所から二キロも離れていない。そのためレリックの最大爆発範囲に入ってしまっている。それに加えて運送会社にある複数のロストロギアに引火した場合、被害が更に広がる事は容易に想像出来る。
ディンは入り口に立っていた警備員に話しかけ、確認のために身分証明書の提示を求められた。素直に管理局員の証明書を見せると、警備員はお疲れ様です、と敬礼までして会社内へと案内してくれた。警備員の態度から会社の誠実さと、相手方への配慮の徹底振りが窺えた。ジャッジメントが調べたとおり健全な会社のようだ。
扉をくぐり、中に入るとロビーの受付に一人の男が立っていた。恰幅のよい愛想のよさそうな三十代のスーツを着込んだ人だった。話を聞くとこの男、課長の地位にいるらしい。男に再度管理局の身分証明書を見せ、ディンは今日中に運び出される荷物の検査を開始した。トラックなどにはロストロギアの反応は一つも無かったからいいのだが、問題は貨物列車だ。今日運び出されるロストロギアは課長から渡されたリストを見るだけで数個。危険性が無いためガジェットが襲撃してこようとも暴走は有り得ないのだが、相当に高価な物らしく傷つけたら一般局員の十年分の給料は全て吹っ飛ぶだろう。
「しかし、我が社に密輸物がねぇ……」
中年の課長は半信半疑のようだ。とはいってもこれが到って普通の反応だ。いきなり貴方の会社に密輸物がありますと言われれば心当たりが無い人間達からすれば困惑するし、信じられない。健全な会社の職員達ならば尚更。
「密輸物など無いと願いたいですが」
「ええ、私達もそう思います」
地下に案内され、男は強固そうな壁と扉の前で止まった。ここだけは他の場所と比べるとかなり頑丈に設計されている。男はカードキーをポケットの中から取り出して壁にあるコンソールの挿入口に入れる。電子音が鳴り扉が開く。中は数台列車がレールの上に停まっており、まるで駅のようだ。入り口から右手に列車へ番号が一番から十番まで書かれ並べられている。
「ここから地下を一度通った後に、地上に出て目的地まで物を届けます」
ディンが予想していたよりもこの運送会社は規模が大きかったらしい。ディンはジャッジメントに念話で話しかける。
「(どうだ?)」
《(ロストロギアの反応複数、それと……十番列車にかなり微弱ですがレリックの反応です)》
最悪の状況になった。
「(ジャッジメント、どうしてここまで近づくまで気付かなかった?)」
会社に入った時からジャッジメントが何も言わなかったため、ディンは油断はしなくても多少なりとも気が緩んでいた。ジャッジメントのレーダーに引っ掛からないのならばレリックは無いだろうと。
《(レリックに中途半端にですが封印術式が掛けられているようです。そのため反応が遅れました。申し訳ありません、マスター)》
「(そうか……。なら仕方ない)」
ディンは課長に振り返ると現状を告げた。するとみるみる課長の顔が真っ青になっていく。まさか自分が勤める会社に超危険なロストロギアが紛れ込んでいるなど考えもしなかったのだろう。
「今すぐに全職員を会社から避難させて下さい。それと今聞いた内容は内密にお願いします」
ディンが言うと、課長は即座に入り口の壁に備え付けられていた電話へと走り、口早に指示を出していた。アラートが社内全てに響き、どたどたと他の会社員が外へと避難している足音が響いてきた。
「だ、大丈夫でしょうか?」
顔がまだ青いままだが、課長は冷静だった。ディンとしてもパニックになって喚かれたりしない分、いくらか気が楽になった。それも今の状況からすれば気休め程度でしかないが。
「封印術式が中途半端にですが掛けられているようです。魔力で衝撃を与えない限りは大丈夫です。避難を」
「いいえ、まだ他の社員が避難していません。それに車両の扉を開けるにはカードが必要です。何かあった場合に備えて……私はここに残ります」
顔を青くしながらも、課長は断固とした口調で言った。瞳は不安と恐怖に揺れながらも、その奥には強い意志のようなものが感じ取れた。命を落とす可能性があるにも関わらず責任者として、課長として此処に残るというのか。少しだけ、ディンは男を見て昔の部隊、零課について思い出した。
――その時だった。
「な?!」
男が狼狽えた。突然列車が、レリックを乗せた十番列車が動き始めたのだ。しかも扉まで開いた。
「そんな、すべて止めてあるはずなのにっ?!」
「止められますか?」
ディンの言葉に男は頷くと、入り口にあったカードの挿入口にカードを差し込み、浮かび上がったホロキーにパスワードを入力した。新しいホロウィンドウが空中に開き、ディンにはよく分からなかったが十番列車の停止ボタンを押したように見えた。
だが、列車は一向に止まらない。それどころか更に加速して外へと向かって行ってしまった。
「(やってくれるっ!)」
相変わらず無表情のままディンは心の内で舌打ちをした。おそらく、密輸団は会社内のサーバーへと侵入し、あらかじめ一定の時刻になったら強制的に列車が発車するように仕掛けていたのだろう。列車の行き先の途中にエイリム山岳地帯と呼ばれる山を通る。そこで待機していた組織の人間が列車内に進入しレリックを回収。そのまま山へと逃走する計画だったのか。レリックにばかり気がいっていてそれに気付かなかった。
一課がアジトの鎮圧を終えてこちらに向かって来るまで行動を起こさないつもりであったディンだが、こうなってしまっては連絡を取るしかない。戦闘中で忙しいだろうが、レオンへと連絡を取ろうとポケットから通信機を出した。
だが、状況はそれすら許してはくれなかった。突如、地面が下から膨れ上がり破裂した。
「うわ?!」
男の顔面へと撥ねてきた瓦礫をディンは拳で粉々に砕く。何が起きたのか理解できない男は棒立ちになってしまっている。
《(マスター、地下からガジェット群出現! 総数不明です!)》
大穴が開いた床からガジェットがわらわらと湧いて来る。ロストロギアの反応に釣られて来てしまったようだ。
「(成る程、地下の水道を通って来たのか)」
ジャッジメントのレーダーも地下まで観測はしていなかった。人間に限りなく近い彼女は偶にこういったミスを犯す事がある。普通のデバイスならば地下も見張るが、情報不足と油断が招いた結果とも言えよう。が、仮に反応があったとしても結果は変わらなかったはずだ。地下にいる相手に回りこむ術がこちらにはない。まさか会社の床をぶち破ってガジェットを迎撃に行けるはずもない。
「ここにいては危険です。避難を」
呆然とする男の腕を強引に引張り、ディンは出口へと走る。幸いにもガジェットはロストロギアに夢中のようでまだこちらを攻撃対象として認識していない。部屋から出て、扉が閉まりロックが施されたのを確認するとディンは容赦なく拳をコンソールに突きたてた。ケーブルが断線し、完全に使用不能となる。
「な、なにを!」
「あれは機械へのハッキング能力を保持しています。これを放っておくと扉を開けられます」
言葉の意味を理解したのか、男の顔が引き攣った。とりあえずこれで当分はガジェットを閉じ込めておける。先程の部屋の扉は相当に分厚くロストロギアが暴走した場合、被害を抑えるためにそう設計されていた。たとえガジェットであろうと多少時間を稼げる。
「社員の避難は?」
「ろ、六割は完了していると思います」
避難警告を出した時間から逆算して男は判断したようだ。ディンも大体それくらいは終わっていると予想していた。
「扉が破られるまで、予想ですが五分もかからないはずです。それまでに全ての社員を避難できますか?」
「む、難しいです。せめてあと八分は…」
「(三分間、ここで足止めか)」
ディンにとって、それは問題ではない。むしろ今中にいるガジェット達を灰にするなど造作もない。問題なのはここでディンが派手に暴れ過ぎる事だ。隠している戦闘能力を晒してしまえば任務に支障をきたす。この状態は六課に報告しなければいけないので、すでに目立ってしまう。それにガジェットを一人で全滅させたなどが加われば本気でまずい。不幸中の幸いと言うべきか、ガジェット達は地下からしか侵入してきていない。増援があればジャッジメントが警告してくれるはずだ。
「(ガジェットをこの場で『適度に』あしらいつつ、被害がこれ以上拡大しないようにする。他のガジェットが違う場所から床を破り、侵入して来た場合は……しかたない。殲滅しよう)」
ディンの受けている任務は重大であるものだが、人命には敵うはずもない。それに、任務のために人を見殺しにしました、何て報告がオーリスに出来るはずもない。
「(匙加減を間違えなければ大丈夫か)」
ホロウィンドウが表示するレーダーに映っているガジェットの影がどんどん増えていく。救いなのはロストロギア、つまり先程までいた部屋を基点にしてガジェットが現れている事だろう。
「分かりました。私がここに残り足止めをします。貴方は避難の誘導をお願いします」
「だ、大丈夫ですか?」
「これでも局員です。鍛えていますよ。……速く」
最後の一言を突き放すように言うと、男は頭を下げてから背を向けて走って行った。レーダーにはさらに多くのガジェットの影が映し出されている。ディンはそれを確認すると通信機の非常用回線を開いた。
「こちらディン・ハーミット一等陸士より機動六課へ。非常事態につき現状を報告します」
ディンは今起きている状況を全て話した。ホロウィンドウに映るはやての顔は眉が眉間に寄って顰められ、いつもの彼女ではなく機動六課部隊長としての顔となっていた。
『状況は理解しました。扉はどれくらい持ちますか?』
「予想になりますが、あと三分ほどで破られます。社員が避難するまでの間時間を稼ぎますが、正直四、五分が限界です」
『こちらで援軍を送ります。無理をせず、危険と判断した場合は社員の避難を優先してください』
命令を了承すると、目の前の扉と壁が内側から衝撃を与えられ罅が入り歪んでいく。この様子だと予想よりも持たない。
状況はさらに悪化する。新しいアラートがディンの通信機を通じで聞えた。そのアラートは一級警戒態勢を意味する。ディンははやてが言葉を言うのを待った。どうやら先程逃した列車にガジェットが群がり制御不能になってしまい、現在エイリム山岳地帯に入った辺りらしい。
はやては指示を出した。フォワード陣と隊長二人が列車に向かい、副隊長二人がこちらに援軍へと向かうとの事。六課からここまで飛行して直線で来ても、五分から七分程度は確実にかかる。
「(なる様にしかならないな)」
『ディン陸士……気をつけて』
はやてがそう言い、通信を切った。扉と壁は亀裂が大きくなり、いよいよ危ない。ディンは体に魔力を流し、体を魔法で強化する。拳を握り締めて一応体に不調がないか確認した。
《来ます》
ジャッジメントが言うのと同時に、壁と扉が雪崩れのように崩れた。
ディンの長い一日が始まった。
どうも凡人です。
ちょっと変わったファーストアラート編になります。
さて、新しいオリキャラも出てきて、これからファーストアラートへと入っていきます。
次回更新も大体このくらいの間隔になりますのでご了承ください。
では