魔法少女リリカルなのはStrikerS 【ブレイカー】   作:凡人Mk-II

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第五話 戦闘

扉が破壊された際に生じた煙が晴れぬ内に、一体のガジェットが飛び出してくる。それに対してディンは、真っ直ぐに突っ込む。腰から腕に到るその全てに生じるエネルギーを拳へと集約し、鋭い呼気と共に放った。拳は先頭のガジェットへ直撃し、そのボディをへこませ、他のガジェットを巻き込みながら部屋の中へと吹き飛ばされた。その行動からディンを完全に敵と認識したガジェットは丸いレンズから光線を放つ。並の魔導師よりも速いそれは、しかしディンに当たる事はなかった。腰を落とし、屈んだだけで避けてしまったのだ。もう一体、ディンはガジェットを今度は蹴り飛ばし、部屋の中へと押し込んだ。外に出ようと、波のように押し寄せていたガジェットが一旦停止する。

 

ディンはそのまま部屋の中に足を踏み入れる。自分を敵と認識するガジェット全てがこちらを向く。何十個もの黄色いレンズがディンを捉える。無機質で意思を持たない機械でも、数がいれば不気味に思うのも仕方無いのだが、ディンは一切臆さずに、いつも通り無表情のままガジェットを迎え撃つために構えた。

 

《敵対勢力数、三十三。来ます》

 

ジャッジメントが言うと同時に、全てのガジェットの射撃がディンへと殺到した。床が捲れ上がり、爆音が部屋内部に響き渡り煙が上がる。すでに、その場にディンはいない。最後尾にいるガジェットが上から飛来したディンに踏みつけられボディをへこませながら床へとめり込む。ガジェットが照準をつけ直す前に飛び上がり、ディンはムササビのように縦横無尽に飛び回り翻弄する。

 

ディンは空中に展開した魔法陣を足場とし、それを蹴る事によって空中を『跳ね回っているのだ』。通常の空戦魔導師とは多大に逸脱している機動を見せられ、プログラムにない動きをするディンに対してガジェットは動きを鈍くした。それを見逃さず、ディンは再び下降。ガジェットを踏みつけ、地面にめり込ませ行動不能にする。

 

――あと四分二十八秒

 

予想以上に早く扉が破られてしまったため、全ての社員が避難するまでの時間がそれだった。援軍が来るにはそれ以上の時間がかかる。とは言ってもガジェット程度では脅威にすらなりはしない。ディンの意識は別の方向、フォワード達へと向けられていた。強制的に発車させられた列車の中にレリックがあり、暴走する列車に新人達が初任務として赴くには随分と難度が高い。

 

「(まぁ、訓練の一貫として危険生物がうじゃうじゃいる無人世界に一週間放り込まれるよりは大分ましだろうけど)」

 

確かにましではあるのだが、危険性が高いのは違いない。隊長であるなのはとフェイトが同伴しているから大事には到る事は無いと思いたいが、レリックを密輸した組織が横槍を入れてくるとも限らない。密輸団のアジトの制圧具合をレオンに聞きたいディンだが、そんな暇あちらは無い。現状維持が今打てる最善の策。

 

「……?」

 

空中を跳ね回っていると突然ガジェット達の射撃が一斉に止んだ。空中で浮遊魔法を使い停滞し様子見をする。すると射撃が止んだのと同じように一斉にガジェットの中心にあるレンズが光を放った。

 

風が吹く。それは魔力が急速に分断された時に起きる現象の一つ。ガジェットの持つ最大の能力であり、魔導師にとって天敵となる能力、AMFが発動されたのだ。室内で発動されればAMF濃度は一層高まり、魔力の結合が難しくなる……はずであった。

 

「っし!」

 

歯牙にもかけずディンはガジェットを殴り飛ばす。強度のAMF空間にいるにも関わらず、ディンは魔法を問題なく行使する。魔力によって強化された一撃はガジェットを意図も簡単に吹き飛ばし、壁に叩き付けた。完全に予想外の事態に対して即座に反撃に転じてくるのは感情の無い機械の利点だが、攻撃方法が同じならばディンへの脅威にはならない。ここで相手が一般の魔導師であったのならばAMFを展開された時点で詰みだったが、ガジェットが相手にしている人間は少なくとも一般に当て嵌まるような人物ではない。

 

拳がガジェットのボディを貫き、蹴りが容赦なく吹き飛ばす。AMFが展開されているにも関わらず、ディンの動きに些かも変化が無いのはある魔法が関係している。AMFとは魔力を問答無用で消す技法ではなく、結合している魔力を分断しエネルギーを発生させない魔力素に戻してしまうものだ。これは、AAAランクのフィールド系魔法に分類される超高難度の魔法でもある。元はガジェットが使うのではなく、魔導師が扱うものであるだけに、量産機であるガジェットに使用されるとたまったものではない。しかし逆に、このAMFと性質が真反対のSランクのフィールド系魔法が存在する。

 

名称をマギリングフィールド。通称MF。

 

AMFが魔力結合を分断し魔力素へと還元してしまうのに対して、MFは真逆。魔力結合をより強固にし、結合されていない魔力素を結合し易くする効果を持つ。正反対の性質を持つ技能に共通しているのは、魔力素に干渉する、という点だ。

 

ガジェットが持つ魔導師への絶対的なアドバンテージが失われた今、ディンがガジェットを殲滅するのは容易であった。尤もそれをしようとしても出来ない事情があるのだが。

 

《(マスター、動体反応が二つ高速で接近中です)》

 

『こちらライトニング2、シグナム二尉だ』

 

『スターズ2、ヴィータだ。無事かディン一等陸士』

 

ジャッジメントが言うと同時に念話でディンの頭の中に会話が聞えてきた。声の主はヴィータとシグナム。予想よりも遥かに到着が速い事に素直に感心しながらディンは返事をする。

 

『少々キツイです。地下にガジェットが三十三。その他に援軍はありません。出来れば一刻も速く来てもらえると助かります』

 

『分かった、死ぬんじゃねえぞ!』

 

ヴィータの叱咤の声を最後に念話が切れる。ガジェット達はヴィータとシグナムが接近してくるのを感知したようだ。あの二人が来ればこの程度の数、二分もかからずに殲滅出来るだろう。ひとまずは安心、と言ったところか。

 

壁を蹴り、走り、跳ね回り、ガジェットへと適度な攻撃を加えつつ援軍が到着するまでディンは時間を稼ぐ。あくまで時間を稼ぐだけであって、過度にガジェットを撃破はしない。現に三体ほどしかガジェットを破壊していない。あまりに戦闘能力が高いと六課から判断されると調査の対象になるからだ。破損した列車や、捲れ上がった床を見て、即座に事態を収拾出来るのにそれをしない事で運送会社への被害が拡大し続けている事への罪悪感を心の内で感じながらも、ディンは冷然と自らに与えられた任務をこなす。

 

『ディン陸士! 全社員の避難完了しました!』

 

スピーカーからアナウンスが響く。その声の主は課長だった。社員が避難し終えたのを伝えるために今も社内に残ってくれていのだろう。ディンはこのお礼にあとでレオンへ、この件での被害金額を全額出してもらえるよう交渉しようと思った。

 

そんな事を考えている内に、一体のガジェットが射撃でもなく、AMFを展開するでもなく、その体を使って突っ込んできた。ガジェットの総重量はそこそこにあり、その質量を以って体当たりをしてくればそれなりの威力になる。この行動にディンは焦りはしなかったが、少々驚いていた。命令を実行する機械であるガジェットがプログラムされていない行動を取ったのだから。

 

「有人操作にでも切り替わったか?」

 

左足を引き、ためをつくり、打ち返すようにガジェットを迎撃しようとした

 

――その時だった。

 

ディンの顔の真横を赤い光を纏った銀色の鉄球が通り過ぎた。鉄球はガジェットに突き刺さりそのボディを、くの字に変形させるだけでは飽き足らず、突き抜けてガジェットを『千切り飛ばす』

 

援軍が到着したと判断するやいなや、ディンはバックステップで出口近くまで地面をスライドするように一気に飛ぶ。そのディンの横を今度は桃色の髪をポニーテールにした一人の女性が駆け抜ける。彼女は一息の内にガジェットへと距離を詰めて、手に持つ剣を迅速を以って振り下ろした。並の魔導師の射撃をいとも簡単に弾く装甲が容易く『真っ二つ』にされる。

 

「おう、待たせたな」

 

出口近くまで飛ぶとそこには、容姿には似合わない鉄槌、グラーフアイゼンを担いだヴィータが悠然と佇んでいた。態度にはガジェットへの恐怖や不安などは一切見て取れず、頼もしさを感じさせる。させるのだが、幼い子供の姿のヴィータとはそういったものが合わずに、妙な空気を感じさせる。言うなれば子供が持ち得ない物を持っている違和感のようなものだろうか。

 

「速いですね」

 

「ああ、随分飛ばしたからな」

 

純粋な感想を言うと、特に誇りもせずにヴィータはさも当然のように答えた。リミッターをかけられているとはいえ、流石はAAA+の魔導師だ。ただ、飛行しているさいに生じた風などで市民に混乱が起きていないかちょっとだけ心配なディンである。

 

「あとは任せろ。お前は後ろでゆっくり休んでな」

 

「お言葉に甘えさせていただきます」

 

ディンは援軍がないか確認しつつ、後退した。前方ではすでにシグナムが八体のガジェットを全て一刀のもとに切り伏せていた。容赦無く進撃するその様は、シグナムの異名にあるようにまさしく烈火が如く。

 

そこへヴィータも参戦する。シグナムを烈火と称するならば、ヴィータは破壊の嵐。隙無く、容赦無く振るわれる鉄槌は、ガジェットを押しつぶし、千切り飛ばし、行動不能にする。

 

烈火の将と紅の鉄騎。共に規格外の実力を持つ二人が合わさればこの程度のガジェットなど、紙切れにも及ばない軽さだろうか。ガジェットが蹂躙されていく様子を見て、ディンは表情には一切出さずに感心していた。卓越した技術もそうだが、何よりも二人の連携。まるでお互いの事など分かりきっているといわんばかりなのだ。攻撃の際に生じる隙一人が潰し、それを利用して一人がさらなる追撃を加える。やっている事は単純でも、その合間にあるラグはコンマ0.1秒すらない。刃が襲いかかり、鉄球と鉄槌が押し潰す。一切乱れない二人のコンビネーションは、一種のダンスを踊っているかのように見える。

 

「(なるほど、噂に違わぬ実力、か)」

 

巷で噂されている内容と寸分違わぬ実力を間近で見て、ディンはそう思う。異名を付けられるだけはある。技術も魔力も全てが一級品だ。だが、それらを全てひっくるめても仮に彼女達と対峙した場合、ディンは負ける事はまずないと確信した。とはいっても、それは今の彼女達なら、だ。リミッターとデバイスのリミッターを全て外し戦った場合、どうなるかはやってみないと分からない。尤も戦った場合、負けるつもりなど毛頭ないディンではあるが。

 

「ウリャァァァ!!」

 

「ハァァァァ!!」

 

ヴィータとシグナムの獅子吼が部屋内に響き、ガジェットが破壊される爆音がそれを上塗りするように掻き消す。蹂躙、そんな言葉がぴったりの戦況である。ガジェット達が全て撃破されるのはもう時間の問題であった。

 

「(流石、かな)」

 

ディンがそう思った数分後、ガジェットはヴィータとシグナムに傷一つ付けられずに全滅させられた。

 

 

 

 

ガジェット全滅より四十分時間後、状況も落ち着き、事後処理をしているとディンにはやてより通信が入った。

 

「お疲れ様です、ディン陸士」

 

「いえ、そちらもお疲れ様でした」

 

部隊長自ら連絡とは、何か重要な話でもあるのかと勘繰ったディンであったが、表情を見る限りそうでもないらしい。

 

「話はレオン一佐より聞きました」

 

レオンが上手い事はやてに言ったに違いない。疑いなど微塵も持っていないようだ。

 

「すいません、ご連絡をしようかと思ったのですが急を要する任務でしたので」

 

「いいえ、適切な判断です。咎めはしませんよ」

 

普通、何の連絡も無しに他の隊の任務を請け負えば多少なりとも注意やお咎めがあってしかるべきであるのだが、そんな気ははやてには毛頭無いらしい。それははやてがお人好しではなく、十分に状況を理解しているから。本来、任務を頼もうとしている部隊に対して、そこに所属していた人間を罰してしまえばあちらの機嫌を損ねるとはやては分かっている。だからこそディンへ何の罰則も与えないのだ。

 

「(人なりを聞く限り、僕がやった事なんて彼女にしてみれば『取るに足らないこと』なんだろうけど)」

 

ディンが調べた限りでは、八神はやてという人物は基本的にその場その場にあった判断をする柔軟で尚且つ現実的な思考の持ち主である。今回の迅速な対応をディンは見て、少なくとも優秀である事は疑いようがなくなったのは間違いない。部隊が置かれている状況をきちんと理解し、それに対してちゃんとした対応と処置をする。それが出来るのは優秀であり、視野が広い人間だけだ。

 

「それと、今回の件は申し訳ありません」

 

唐突にはやてが申し訳無さそうな顔になる。

 

「AMFの訓練を受けていない人間一人にガジェットの相手をさせただけではなく、防衛まで……」

 

「部隊長が謝る必要はありません。今回の事は一課の失態であり、六課に責任は一切発生しません」

 

「いえ、しかし」

 

「もし今回の件で何か六課が言われるようならば事の詳細を話し、一課の責任にしてしまって構いません。レオン一等陸佐もそう言っておりませんでしたか?」

 

「それは、そうですが」

 

今回の件に関してこの部分はディンは訂正する気はなかった。言ったとおり責任があるのは間違いなく一課の不手際だ。危険性が高いレリックがまだ運ばれていないと過程してしまったのがまず間違いだったのだから。結果、一般企業に被害が及び、六課はそれの尻拭いをした。むしろ一課から感謝されるべきであり、これで六課が何か言われようものならばそれこそお門違いというものだ。

 

「レオン一等陸佐は自分の失態を他に押し付けるような人物ではありません」

 

「そう、ですか。分かりました」

 

まだ煮え切らないような、納得出来ない顔をしているはやてだが、そこはしっかりと切り替えたようで、ディンへ事件の顛末を報告してくれた。部隊長自ら事後報告とは随分と型破りだなと思いつつ、ディンは報告を聞いた。

 

出動したフォワード陣は全てのガジェットを破壊、後にレリックを回収し現在局のラボに護送中との事。その最中、新型のガジェットに遭遇したが何とか撃破したようだ。

 

「レオン一佐は取りこぼした犯罪者はいないとは言っていましたが、一応一課の人間を護衛につけてくれています」

 

レオンの事だから取りこぼしは決してないと思っているディンではあるが、万が一があるのでその判断は妥当と言えた。

 

「そうですか。撃破された新型はすでに検証を?」

 

「ええ、あそこまで広範囲にAMFを展開されるのは脅威ですから」

 

聞く限り、新型は一体でかなりの距離で強度のAMFを展開出来る性能を保持しているらしく、検証と解析が今急ピッチで行われている。とは言っても、そう簡単にほいほいと手掛かりが見つかれば苦労しない。はやてもそれは分かっているようだが、一縷の望みを抱いてもいるようだ。

 

「今、そちらにも人員を向かわせています。もうしばらくお待ちください」

 

「ええ、分かりました。シグナム副隊長はあまりこういった事は得意ではないようなので、ヴィータ副隊長の負担が減るので助かります」

 

ディンのシグナムへの評価にはやては苦笑した。はやての中でもシグナムのこういった事への対応の下手さや苦手意識のようなものは感じているらしかった。それをディンは責める事をしない。人には得手不得手というものがあり、偶々シグナムが苦手だった。ただそれだけの話しだ。通信する後ろではヴィータが忙しなく動き回り、シグナムに指示を出している。

 

《(なんか……こう言っては大変失礼ですけど、シュールですね)》

 

見た目八歳の少女が、容姿が十代後半から二十代前半の女性へと矢継ぎ早に正確な指示を出す。成る程、確かにジャッジメントの言うとおり、シュールである。

 

「では、作業に戻るので失礼します」

 

「ええ、ありがとうございます、ディン陸士。では」

 

通信が切れる。ディンは大変そうな、いや大変なヴィータの援護に行こうと思ったのだが、ディンへと話しかける人間がいた。現場検証があるため一般人や企業の人間は入ってきてはいけないのだが、まだ進入禁止のテープすら貼っていないので入って来てしまうのも仕方ない。

 

「ありがとうございました」

 

そう礼を言ってきたのはディンを案内した課長だった。

 

「いえ、大したことは出来ませんでしたから。それに礼を言うのでしたらあちらの二名にどうぞ」

 

むしろ、ディンとしては罵られても文句は言えないのだ。ワザと手を抜き被害を拡大させたに等しいのだから。

 

「いえいえ、貴方があの場にいなければ、私は死んでいたでしょうから。まずは貴方にお礼を、と思いまして」

 

「そうですか……」

 

「いやぁ~しかし、随分と派手に壊れましたなぁ。壁と扉の強度ももう少し高く設定した方がよかったですね」

 

あれだけの事態の後にもうこんな態度を取れるのだから、この人物もしかしたら相当なやり手なのかもしれない。

 

「……損害はどれくらいでしょうか?」

 

苦笑し、課長は質問に答えてくれた。

 

「そうですねぇ……ざっとですが、一億、ちょっとくらいですかね」

 

課長が言うが、それはあくまで、物を直す金額だ。他にも運営の遅延なども入れれば会社の被害総額はさらに上がる。偽善だと思いながらもディンは話を切り出した。

 

「金額はこちらが全額保証します」

 

「そ、それ有り難いのですが、その、大丈夫ですか?」

 

局は、企業などに被害が出た場合にはそれらを保障する制度は無い。管理局は事件を解決するのが最優先であり、物の被害など考慮に入れていないのだ。正確には入れられないの間違いであるが。それは何故かというと

 

「管理局は予算もギリギリだと伺っております。企業への保障をする余裕がないのでは?」

 

課長の言うとおりだ。軍事力を持つ局にとって資金は人員の不足と同じぐらいの死活問題である。基本的に陸は予算の面でも結構ギリギリな面があるのは否めない。

 

「レオン『タッカー』一等陸佐。それが自分が前に所属していた部隊の隊長の名前です」

 

「ほぅ、もしやあのタッカーですか」

 

きらりと、課長の目の奥に光が走った。抜け目ない商人の目だ。

 

「ええ、彼から資金に関して話が来ると思います。全額負担する、と」

 

「いやはや、経済界で五指に入る人間の援助を受けれるとは、我が社も鼻が高いですな」

 

もう、今ここで起こった事件など過去の物らしい。課長は顔を喜色に染めている。

 

「(やっぱり大物かも)」

 

一時間以上前に死の危険に身を晒されていた人間とは思えないほどにはきはきとしている。普通ならばもっと精神的に落ち込んでいたり、顔面蒼白なのが当たり前であるのだが。

 

「なるほどなるほど、これは社長と一旦相談しなければなりませんな。失礼します」

 

そのまま脱兎の如く部屋から出て行ってしまった。課長の商売魂に感心とも呆れとも取れない微妙な心境になりつつも、課長を見送った。入れ替わるようにシャマルが部屋に入ってきた。社員に怪我が無いかどうか確認と、現場で戦っていた自分のチェックにでも来たのだろう。

 

「あの人、何だかすごい嬉しそうだったけど、どうしたの?」

 

「商売を生業とする人間は逞しいんですよ」

 

「そう、なのかもしれないわね」

 

何だかよく分からないのだろう。シャマルは困惑しているようだった。自分の会社が滅茶苦茶にされて喜んでいたら、事情を知らぬ人が見たら戸惑うのは普通である。それだけで何かあったのかを察せれたらもうそれは超能力の域だ。

 

「……うん、怪我は無いみたいね。よかった」

 

シャマルの屈託の無い朗らかな笑み。現場にはそぐわない、ディンが見た事のないような優しく、母性的なそれを見てドキリとした。

 

「(……?)」

 

心拍数が跳ね上がり、血の巡りがよくなり体が何故か熱くなる。どうしてそんな事になっているのか、ディンには理解出来ない。

 

「問題はありません」

 

黙っていては心配されかねないのでディンは素っ気無く返事をする。

 

「ええ、問題があったら私の出番だったんだけど、出番が無くてよかったわ」

 

「え、ええ。すいません、現場検証の手伝いがありますので、これで失礼します」

 

何故か気恥ずかしくなったディンは言うなり、シャマルの反応を待たずそのまま指示を出すヴィータの元へと駆け寄っていった。

 

「……?」

 

そんなディンにシャマルは何かあったのだろうかと首を傾げた。




戦闘描写が難しい、どうも凡人Mk-IIです。

意外とあっさりと終わったファーストアラートですが、今後物語りが加速していく予定です。あんまりほのぼのとした日常はかなり先になりそうです(汗)

文章的におかしいところや、文法、ここはこうしたほうがいいなどの意見があればどうぞ遠慮なく感想やメッセージでご指摘下さい。

では、失礼します
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